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オリーブは、日照量が多いほど生育がよく、年間2,000時間以上の日照時間が望ましいとされています。
乾燥に強いイメージがありますが、良好な生育、果実肥大のためには、年間1,000mm程度の適度な降水量が必要です。
年平均気温が14〜16℃の温暖地が適当とされていますが、比較的低温には強く、短時間であればマイナス10℃でも寒害が発生する程度です。しかし、長時間の低温は枯死を招くので注意が必要です。特に、若木の時は低温に弱いため、小枝や太枝、さらに幹にまで損傷を被りやすく、枯死に至ることがあります。
一方、花芽分化に対する低温要求度は強く、1月の平均気温が10℃以下でなければ着花しづらくなります。
また、風による樹の倒伏や根傷み、果実の損傷や落果などの被害が発生しやすいため、風当たりの強い場所を避けるとともに防風対策を十分に行う必要があります。
排水良好で、十分な保水力と保肥力に富んだ肥沃地で、十分な有効土層[※]が確保された土地が適しています。
オリーブの根は土壌通気性の要求度が大きいため、排水不良な粘土質の土壌や地下水位の高い土地(水田跡地など)では、生育が極端に不良となります。
[※]作物の根が容易に伸展できる土の層
オリーブを栽培する際の注意点などです。なお、記載している時期については香川県の事例となります。
植付時期は、春(3月)と秋(9〜10月)になりますが、新梢が出始める前の春植えが最適です。植栽間隔などは十分検討を行い、植付位置を決定します。植穴は早めに準備し、完熟堆肥や土壌改良材をよく混和しておきます。深植えとならないよう土で高さを調整し、傷んだ根を切り詰め、根が四方に広がるように植え付けます。オリーブは根が浅く倒伏しやすいので、植付後は支柱を立てて誘引し、十分な灌水と敷きわらにより乾燥防止を図ります。
なお、自家不和合性が強いため、1〜2割の授粉樹(異なる品種)を混植する必要があります。
肥料は、芽が動き始める前の3月中旬、開花後の6月下旬、休眠に入る前の10月下旬に施用します。また、土壌pHを最適に保つため、2月中旬に石灰を施用します。
樹齢区分 | 未結実期 (植付後1〜3年) |
結実初期 (同4〜9年) |
成木 (同10年以上) |
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苦土石灰施用量 | 30 | 45 | 60 |
時期 | 窒素 | リン酸 | カリ | 備考 |
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春肥(3月中旬) |
8 | 5 | 7 | 未結実期(植付後1〜3年)の施肥量は成木の3分の1、結実初期(同4〜9年)は3分の2程度に減肥する。 |
夏肥(6月下旬) | 4 | 3 | 4 | |
秋肥(10月下旬) | 4 | 3 | 4 | |
計 | 16 | 11 | 15 |
オリ−ブを加害する害虫のうち、最も問題となるのがオリ−ブアナアキゾウムシです。モクセイ科の植物を好んで食害し、特にオリ−ブを加害します。成虫は体長15mm、体幅6mm程度で体色は黒褐色、6本の脚と長い口吻を持ちます。卵は平均7日(夏)〜18日(春秋)でふ化します。幼虫は皮層に潜入し、食入孔から食害したオガクズ状の木屑を出しながら60〜200日間食害を重ねます。その後、木質部に楕円形の蛹化室を作って蛹となります。蛹は10〜15日で羽化し成虫となります。
成虫は、3月下旬から10月下旬まで間断なく活動を続け、冬期は休眠状態で越冬します。成虫は、3〜4年間生存し、樹冠上部の若い緑枝の樹皮等を食害した後、地際近くに降りて樹皮を食害し、その傷口に産卵します。雌成虫1頭当たり総産卵数は300個以上で、通常1日に1個ずつ産卵します。
オリ−ブアナアキゾウムシの防除は、薬剤防除だけでなく、清耕栽培[1]による耕種的防除[2]、幼虫や成虫の捕殺も効果的です。成虫は保護色により見つけづらいですが、地際近くや枝の分岐部等に潜伏しているため、これを捕殺します。
薬剤防除は、登録農薬により行います。スミチオン乳剤、ダントツ水溶剤、アディオン水和剤等がありますが、登録内容に従って防除します。
その他、新芽が出始めるとハマキムシ類が新芽を食害します。
また、病害では炭疸病が発生します。
炭疽病は、糸状菌(カビ)が侵入することで、葉や枝、果実などに発生する病気です。果実が発病すると、褐色の病斑が円状に現れ、腐敗が広がります。病斑上に形成された胞子は、雨水に溶け出し、飛沫とともに周囲に飛散し、二次感染を繰り返します。炭疽病には果実のどの生育ステージでも感染しますが、濃緑色の頃までは発病しづらく潜在感染の状態にあり、着色期以降成熟が進むとともに発生が多くなります。なお、炭疽病に対する感受性には品種間差があります。
薬剤防除は、休眠期にICボルドー66Dを、生育期には梅雨、秋雨時期を重点にペンコゼブ水和剤、アミスター10フロアブルを散布します。薬剤防除だけに頼らず、植栽間隔を十分に取り、剪定により日当たりや風通しが良好な状態で管理します。収穫が遅くなるほど被害が多くなるため、発生の多い年は早めに収穫します。
登録内容の変更があるので注意してください。また、果実用、葉用、観賞用でも登録内容が変わりますので注意してください。
果実加工用(テーブルオリーブス)果実には、緑果用(グリーンオリーブス)と熟果用(ライプオリーブス)がありますが、本県は緑果が主体となっています。
緑果用(グリーンオリーブス)は熟度の若い黄緑色果実で、濃緑色の果実が黄化を始めた頃が収穫適期です。マンザニロ種で9月下旬〜10月下旬、ミッション種で10月上旬〜11月中旬が収穫期となります。小豆島果樹部会オリーブ班の出荷規格は、果実赤道面の横径14mm以上、損傷がない、赤紫系の着色がない、品種固有の形状をしている果実となっています。
熟果用(ライプオリーブス)にはミッション種が用いられ、赤紫色に成熟した果実が収穫されます。収穫時期は、11月下旬から12月上旬です。収穫は手摘みで行います。果実を手の中で優しく包み込むようにし、親指と人差し指で果梗部をつかみ、傷つけないよう収穫します。
どちらの場合も、傷果、炭疸病果、過熟果、未熟果、小果の混入がないように選別します。
オイル用果実は、油分含量が増加する10〜12月頃に収穫します。特に、グリーンタイプのオイル用果実は、オイルの含油率が低い10月から収穫します。オイル用果実も、採油時の油の品質に影響するため、傷果、腐敗果、炭疸病果等が混入しないように注意します。家庭でオイルを手搾りする場合は、12月に入ってから収穫すると採油しやすくなります。
農業試験場小豆オリーブ研究所池田ほ場におけるミッションの4月から11月までの生育ステージは次のとおりです。
春になり暖かくなると、オリーブは生育が盛んになり、枝を伸ばしたり、花を咲かせる準備をするなど、冬に比べて目に見えて生長します。
腋芽は冬の間(12月〜4月頃)に、葉芽や花芽になるために形態的分化をします。
腋芽のうち葉芽に分化したものは、伸長して枝となります。
また、花芽に分化したものは、5月中旬から6月上旬頃に花を咲かせます。
花芽は、前年の春から夏にかけて伸長した枝の葉腋に着生します。
なお、頂芽は葉芽になります。
葉腋(ようえき)・・・葉と枝(茎)に挟まれた部分
腋芽(えきが・わきめ)・・・葉腋にある芽
葉芽(はめ)・・・葉をつけて枝(茎)となる芽
花芽(はなめ)・・・一個あるいは複数の花からなる花のついた枝(茎)を出す芽
頂芽(ちょうが)・・・枝の頂端にある芽
5月になると、花芽が少しずつ花を咲かせる準備をします。
5月上旬には花器を完成させ、5月中旬から6月上旬頃に開花します。
なお、品種により開花時期は異なります。
花は複総状花序で、白色の小花を1花序に10個から30個程度着生します。
小花は、4片の萼(がく)と、乳白色で鐘形状に4つに分かれた合弁花、1つの雌ずい、2つの雄ずいで構成されます。
花蜜はなく、多量の花粉を風で飛散させる風媒花です。
複総状花序(ふくそうじょうかじょ)・・・花軸(花のつく中心の軸)に多数の花が均等についた状態を総状花序といい、その総状花序が枝に均等についた状態を複総状花序という。
オリーブは一つの樹にたくさんの花が咲きますが、ほとんどは実になることもなく脱落します。
また、実になっても発育途中に自然に落ちるもの(生理落果)が多く、総花数に対して収穫できる実は3%程度になります。
この生理落果は開花後1ヶ月以内に95%程度起こります。
受精した実は細胞分裂を行って急速に肥大します。細胞分裂は約40日間続きます。
オリーブの果実は、受精後急速に肥大して約40日間で果肉の細胞分裂は終了します。
この時期は種子や核を形成する硬核期(こうかくき)に当たります。
そのため、中果皮(果肉)の肥大は緩やかになり、果実の肥大は6月頃に比べて緩やかになります。
下記の写真で見ると、果実の中の内果皮(核)となる部分(うす茶色の部分)が7月半ばと比べ、7月末には大きくなっていることが分かります。
7月中旬頃から始まる硬核期(こうかくき)により、8月末頃には、果肉(中果皮)と核(内果皮)の境がはっきりとわかるようになります。核の中にある種子は、ゼリー状であった胚乳が白くなります。
硬核期が終了すると、再び果肉(中果皮)の肥大が活発になります。
そして、品種にもよりますが、9月末〜10月始めより収穫が始まります。
9月下旬になると、早生品種は成熟し、新漬用の果実の収穫が始まります。
新漬に使用される品種は主にマンザニロとミッションになりますが、マンザニロの方が先に成熟するため、収穫はマンザニロから行われます。
新漬用の果実は傷がつかないよう、一粒ずつ丁寧に収穫されます。
10月に入ると、実の色も少しずつ変わっていきます。
始めは濃い緑色であったものが少しずつ黄緑色となり、赤みを帯びたあと、最終的には黒色になります。外果皮が黒色になるに従い、果肉部分も色が付き始め、紫色になっていきます。
実の色が緑〜黄緑の時期に採油すると、美しい緑色のオリーブオイルが採れます。緑色の正体はクロロフィル(葉緑素)です。クロロフィルは光にあたると分解され、色素を失って退色します。
このため、オリーブオイルを入れる瓶は着色され、光を通さないようにしているものが多いです。
11月末頃のオリーブ果実は熟度も進み、外果皮も黒色で、果肉部分にも色が付きます。
春の頃と比べ、枝葉は生長し大きく育ちます。着果した枝と着果しなかった枝の先端の生長を比べると、着果しなかった枝のほうがよく伸びます。春から秋の始めまでに生長した枝は、来年の結果枝になります。
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