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公開日:2007年12月26日

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平成19年12月26日 答申第453号(香川県情報公開審査会答申)

平成19年12月26日(答申第453号)

答申

第1 香川県情報公開審査会(以下「審査会」という。)の結論

香川県知事(以下「実施機関」という。)が一部公開決定(以下「本件処分」という。)により非公開とした部分のうち、別表2の「公開すべき部分」に掲げる部分については、公開すべきである。

第2 異議申立てに至る経過

1 行政文書の公開請求

異議申立人は、平成17年6月14日付けで、香川県情報公開条例(平成12年香川県条例第54号。以下「条例」という。)第5条の規定により、実施機関に対し、次の内容の行政文書の公開請求を行った。

  • (1)大的場健康体育センター跡地等利用に関する事業者・利用計画提案等の募集に関する一切の文書及び当該募集に応募して提出された一切の文書(甲法人の応募書類の全部を含む。)
  • (2)大的場健康体育センター跡地等利用に関して部外者の意見聴取に係る委員会会議録及び各委員の名簿又は氏名・役職名等の分る資料
  • (3)大的場健康体育センター跡地等の鑑定評価書類の全部

2 実施機関の決定

実施機関は、公開請求のあった行政文書として次の行政文書を特定し、別表1の「公開しない部分」が「公開しない理由」に該当するとして本件処分を行い、平成17年6月28日付けで異議申立人に通知した。

  • (1)平成17年2月7日起案の標題「大的場健康体育センター跡地等活用事業者募集要綱について」の文書(以下「行政文書1」という。)
  • (2)募集要綱(以下「行政文書2」という。)
  • (3)平成17年3月7日までに提出された応募登録申込書及び同添付書類
    • (a)応募登録申込書(以下「行政文書3(a)」という。)
    • (b)現在事項全部証明書又は履歴事項全部証明書(以下「行政文書3(b)」という。)
    • (c)誓約書(以下「行政文書3(c)」という。)
    • (d)印鑑証明書(以下「行政文書3(d)」という。)
    • (e)納税証明書(国税・県税)(以下「行政文書3(e)」という。)
  • (4)「大的場健康体育センター跡地等活用事業者募集応募辞退について」の文書(以下「行政文書4」という。)
  • (5)平成17年5月10日に提出された提案書等
    • (a)提案書(以下「行政文書5(a)」という。)
    • (b)会社概要(以下「行政文書5(b)」という。)
    • (c)過去3年間の貸借対照表、損益計算書及び附属明細書(以下「行政文書5(c)」という。)
    • (d)参考資料(イメージパース等)(以下「行政文書5(d)」という。)
  • (6)平成17年5月25日に提出された追加資料、参考資料(イメージパース等)及び内容修正文書(以下「行政文書6」という。)
  • (7)第1回から第4回までの大的場健康体育センター跡地等利用計画選定委員会議事要旨(以下「行政文書7」という。)
  • (8)委員名簿(以下「行政文書8」という。)
  • (9)乙法人が平成17年2月2日に香川県知事に発行した大的場健康体育センター跡地等に係る不動産鑑定評価書(以下「行政文書9」という。)
  • (10)丙法人が平成17年2月2日に香川県知事に発行した大的場健康体育センター跡地等に係る不動産鑑定評価書(以下「行政文書10」という。)

3 異議申立て

異議申立人は、本件処分を不服として、平成17年7月5日付けで、行政不服審査法(昭和37年法律第160号)第6条の規定により実施機関に対して異議申立てを行った。

第3 異議申立ての内容

1 異議申立ての趣旨

「本件処分を取り消すとの決定を求める」というものである。

2 異議申立ての理由

異議申立書において主張している理由は、おおむね次のとおりである。

  • (1)本件処分は、香川県の情報公開条例の解釈適用を誤った違法な処分であり、本件処分を取り消し、全部公開をすべきである。
  • (2)本件「決定通知書」の「公開しない理由」は、香川県の情報公開条例の非公開事由に該当しない。
  • (3)本件「決定通知書」の「公開しない理由」には、適法に処分理由が明示されていないので、香川県行政手続条例第8条に違反し本件処分は無効である。

第4 実施機関の説明の要旨

非公開理由等説明書による説明は、おおむね次のとおりである。

1 本件行政文書の内容について

  • (1)本件行政文書1について
    大的場健康体育センター跡地等の活用事業者(以下「活用事業者」という。)を募集するための募集要綱を作成し、募集を行うことの起案文書である。
  • (2)本件行政文書2について
    (1)に基づいて作成した募集要綱である。
  • (3)本件行政文書3(a)について
    募集要綱において定めた募集に関する申込書で、応募者から提出されたものである。
  • (4)本件行政文書3(b)について
    募集要綱において応募登録しようとする者に対して提出することを義務付けている応募登録者に関する現在事項全部証明書又は履歴事項全部証明書である。
  • (5)本件行政文書3(c)について
    募集要綱において応募登録しようとする者に対して提出することを義務付けている誓約書である。
  • (6)本件行政文書3(d)について
    募集要綱において応募登録しようとする者に対して提出することを義務付けている応募登録者に関する印鑑証明書である。
  • (7)本件行政文書3(e)について
    募集要綱において応募登録をしようとする者に対して提出することを義務付けている応募登録者に関する国税及び県税の納税証明書である。
  • (8)本件行政文書4について
    一旦募集要綱に基づいて応募登録した者から提出のあった応募登録辞退の意思を表明した文書である。
  • (9)本件行政文書5(a)について
    募集要綱に基づいて、応募登録者から提出された大的場健康体育センター跡地等の活用内容に関する提案書であり、跡地等活用のコンセプト、跡地等活用計画の概要・スケジュール、施設整備計画(建物概要、施設内容・構成、施設整備事業費概算)、景観・周辺環境等への配慮、経営計画(経営方針、営業形態・特徴等、資金計画、収支計画)が記載されている。
  • (10)本件行政文書5(b)について
    募集要綱において応募登録者に提出することを義務付けている応募登録者に関する法人説明書である。
  • (11)本件行政文書5(c)について
    募集要綱において応募登録者に提出することを義務付けている応募登録者に関する過去3年間の貸借対照表、損益計算書及び附属明細書である。
  • (12)本件行政文書5(d)について
    募集要綱に基づいて、応募者から提出された提案書に関するイメージパース、計画概要(建物所在、敷地面積、用途地域、許容建築面積、許容容積用床面積、各階床面積、建築面積、屋内車庫容積緩和面積・容積用床面積、容積用延床面積、駐車・駐輪台数、住戸数、エレベーター等設置計画、各階用途別面積)、日影図、全体配置図、各階平面図、立面図である。
  • (13)本件行政文書6について
    大的場健康体育センター跡地等利用計画選定委員会で「跡地等の活用のコンセプト、施設整備計画、景観・周辺環境等への配慮及び経営計画の一部について、審査を求める上で必要な追加資料を求める」、「原提案を基本として、法令を遵守した建物となるよう、一部修正を早急に求める」こととしたことを受けて、応募登録者から提出された追加資料で跡地等の活用のコンセプト、施設整備計画、景観・周辺環境等への配慮及び経営計画概要が記載されており、参考資料(イメージパース等)及び内容修正文書は施設整備計画(建物概要、施設内容・構成、資金計画、収支計画)、イメージパース、計画概要(建物所在、敷地面積、用途地域、許容建築面積、許容容積用床面積、各階床面積、建築面積、屋内車庫容積緩和面積・容積用床面積、容積用延床面積、駐車・駐輪台数、住戸数、エレベーター等設置計画、各階用途別面積)、各階平面図、立面図が記載されてる。
  • (14)本件行政文書7について
    第1回から第4回まで行った大的場健康体育センター跡地等利用計画選定委員会における議事の要旨を記載したものである。
  • (15)本件行政文書8について
    大的場健康体育センター跡地等利用計画選定委員会の構成委員の名簿である。
  • (16)本件行政文書9について
    当該活用事業者募集に当たって、売却価格を算定するために参考とした乙法人が平成17年2月2日に香川県知事に発行した大的場健康体育センター跡地等に係る不動産鑑定評価書である。
  • (17)本件行政文書10について
    当該活用事業者募集に当たって、売却価格を算定するために参考とした丙法人が平成17年2月2日に香川県知事に発行した大的場健康体育センター跡地等に係る不動産鑑定評価書である。

2 非公開事項の該当性について

条例は、県民の行政文書の公開を請求する権利につき定め、地方自治の本旨に即した県政の発展に寄与することを目的とするのものであるが、原則公開の下であっても行政文書を公開することにより、請求者以外の者の権利、利益が侵害されたり、円滑な行政運営が損なわれるということがあってはならないため、原則公開の例外として条例第7条を規定し、その権利に一定の制限を加えているものである。
このようなことから、本件行政文書の公開・非公開の決定に当たっては、条例第7条各号の該当性について検討し、決定したものである。

  • (1)平成17年3月7日までに提出された応募登録申込書及び同添付書類のうち、法人の印影、印鑑証明書及び納税証明書並びに甲法人以外の法人の所在地、法人名、代表者名、現在事項全部証明書、履歴事項全部証明書及び納税証明書
  • (a)条例第7条第2号該当性について
    行政文書の公開義務がない情報として、条例第7条第2号本文において「法人その他の団体(国、地方公共団体、独立行政法人等、地方独立行政法人及び出資法人を除く。以下「法人等」という。)に関する情報又は事業を営む個人の当該事業に関する情報であって、公にすることにより、当該法人等又は当該個人の権利、競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがあるもの」と定め、そして、ただし書として事業活動によって生じ、又は生ずるおそれがある危害から人の生命、健康、生活又は財産を保護するため、公にすることが必要であると認められる情報を規定し、これらについては、公開しなければならないとしている。
    非公開とした、法人の印影、印鑑証明書及び納税証明書は、法人の経理、経営、事業活動上の内部管理に属する情報であって、これを公にすることは、応募事業者の権利、競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがあるので、条例第7条第2号に該当する。
    また、甲法人以外の法人の所在地、法人名、代表者名、現在事項全部証明書、履歴事項全部証明書は、応募事業者の名称がわかる情報であり、応募事業者の今後の事業展開等、経営、事業活動内容に関わる内部管理に関する情報を公にすることとなるため、応募事業者の権利、競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがあるので、条例第7条第2号に該当する。
  • (2)「大的場健康体育センター跡地等活用事業者募集応募辞退について」の文書のうち法人の所在地、法人名、代表者名、法人の印影
  • (a)条例第7条第2号該当性について 非公開とした、法人の所在地、法人名、代表者名、法人の印影は、上記(1)と同様、これを公にすることは、当該法人の権利、競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがあるので、条例第7条第2号に該当する。
  • (3)平成17年5月10日に提出された提案書等のうち次の部分
    • 大的場健康体育センター跡地等活用事業者募集申込書に表示されている法人の印影
    • 「3施設整備計画(b)施設内容・構成」のうち、各施設の規模、面積
    • 「3施設整備計画(c)施設整備事業費概算」のうち、解体工事、建設工事、計欄の金額
    • 「5経営計画(b)営業形態、特徴等」のうち、施設毎の経営形態、特徴
    • 「5経営計画(c)資産計画」のうち、金額欄、資金調達欄及び金額欄
    • 「5経営計画(d)収支計画」のうち、項目毎の内訳欄
    • 参考資料(イメージパース等)の「計画概要」のうち、各階の面積、車庫の面積、駐車台数、駐輪台数、住戸数、エレベーター等の設置数及び各階用途別面積
    • 参考資料(イメージパース等)の日影図、各階平面図及び立面図・過去3年間の貸借対照表、損益計算書及び附属明細書
  • (a)条例第7条第2号該当性について
    非公開とした部分等は、当該法人の今後の事業展開の計画に関する部分でかつ当該法人の事業上のノウハウが記載されており、経理、経営、事業活動上の内部管理に属する情報である。これを公にすることは、競合する多業者に対して、当該法人の事業計画及び企業ノウハウ等を公開することとなり、当該法人の権利、競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがあるので、条例第7条第2号に該当する。
  • (4)平成17年5月25日に提出された追加資料、参考資料(イメージパース等)及び内容修正文書のうち次の部分
    • 追加資料のうち、「5(a)想定年間利用者数」の各施設の内容
    • 追加資料のうち、「5(b)県内企業等の活用や県民の雇用について」のうち、雇用見込み人数
    • 「3施設整備計画(b)施設内容・構成」のうち、各施設の規模・面積
    • 「(c)資金計画」のうち、金額欄、資金調達欄及び金額欄
    • 「(d)収支計画」のうち、項目毎の内訳欄
    • 参考資料(イメージパース等)の「計画概要」のうち、各階の面積、車庫の面積、駐車台数、駐輪台数、住戸数、エレベーター等の設置数及び各階用途別面積
    • 参考資料(イメージパース等)の日影図、各階平面図及び立面図
  • (a)条例第7条第2号該当性について
    非公開部分とした部分等は、上記(3)と同様、法人の経理、経営、事業活動上の内部管理に関する情報であって、これを公にすることは、当該法人の権利、競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがあるので、条例第7条第2号に該当する。
  • (5)乙法人が平成17年2月2日に香川県知事に発行した大的場健康体育センター跡地等に係る不動産鑑定評価書のうち次の部分
    • 不動産鑑定士(鑑定業者の社員)の氏名及び印影
    • 法人の印影
    • 別表1土地価格比準表のうち、取引事例の概要の所在、地積、取引時点、取引価格、事情補正、時点修正、個別的要因の標準化補正、街路条件、交通接近条件、環境条件、行政的条件、格差率、比準価格
    • 取引事例の所在位置図
  • (a)条例第7条第1号該当性について
    行政文書の公開義務がない情報として、条例第7条第1号において、「個人に関する情報であって、当該情報に含まれる氏名、生年月日その他の記述等により特定の個人を識別することができるもの又は特定の個人を識別することはできないが、公にすることにより、なお個人の権利利益を害するおそれがあるもの。ただし、次に掲げる情報を除く」と定め、ただし書として、イからニまでにおいて、個人の権利利益を侵害しないと考えられ、非公開にする必要のない情報及び公開する公益上の必要があると認められる情報を規定し、これらについては、公開しなければならないとしてる。
    不動産鑑定評価書のうち、不動産鑑定士(鑑定業者の社員)の氏名及び印影、別表1「土地価格比準表」の取引事例の個人の取引に係る事例の概要の所在、地積、取引時点、取引価格、事情補正、時点修正、個別的要因の標準化補正、街路条件、交通接近条件、環境条件、行政的条件、格差率、比準価格と取引事例の所在位置図は、個人情報であって、他の情報と照合することにより特定の個人を識別することができる情報であるので、本号に該当する。また、本号ただし書のいずれにも該当しない。
  • (b)条例第7条第2号該当性について
    不動産鑑定評価書のうち、法人の印影、別表1「土地価格比準表」の取引事例の法人等の取引に係る事例の概要の所在、地積、取引時点、取引価格、事情補正、時点修正、個別的要因の標準化補正、街路条件、交通接近条件、環境条件、行政的条件、格差率、比準価格と取引事例の所在位置図は、法人等の内部管理に関する情報であって、これを公にすることは、法人等の営む事業活動を損ない正当な利益を害するおそれがあるので、本号に該当する。また、本号のただし書のいずれにも該当しない。
  • (6)丙法人が平成17年2月2日に香川県知事に発行した大的場健康体育センター跡地等に係る不動産鑑定評価書のうち次の部分
    • 不動産鑑定士(鑑定業者の社員)の氏名及び印影
    • 法人の印影
    • 別表(a)取引事例比較法を適用して求めた価格のうち、取引事例価格、取引事情と補正率、時点修正率、画地条件以外の個別的要因格差修正率、画地条件に係る個別的要因格差修正率、地域要因格差修正率、総合修正率、推定標準価格、事例地の概要、個別的要因格差修正率、街路条件、交通接近条件、環境条件、行政的条件、その他及び地域要因格差・取引事例の所在位置
  • (a)条例第7条第1号該当性について
    不動産鑑定評価書のうち、不動産鑑定士(鑑定業者の社員)の氏名及び印影、別表(a)「取引事例比較法を適用して求めた価格」のうち、取引事例の個人の取引に係る取引事例価格、取引事情と補正率、時点修正率、画地条件以外の個別的要因格差修正率、画地条件に係る個別的要因格差修正率、地域要因格差修正率、総合修正率、推定標準価格、事例地の概要、個別的要因格差修正率、街路条件、交通接近条件、環境条件、行政的条件、その他及び地域要因格差は、個人情報であって、他の情報と照合することにより特定の個人を識別できる情報であるので、本号に該当する。また、本号のただし書のいずれにも該当しない。
  • (b)条例第7条第2号該当性について
    不動産鑑定評価書のうち、法人の印影、別表(a)「取引事例比較法を適用して求めた価格」のうち、取引事例の法人等の取引に係る取引事例価格、取引事情と補正率、時点修正率、画地条件以外の個別的要因格差修正率、画地条件に係る個別的要因格差修正率、地域要因格差修正率、総合修正率、推定標準価格、事例地の概要、個別的要因格差修正率、街路条件、交通接近条件、環境条件、行政的条件、その他及び地域要因格差は、法人等の内部管理に関する情報であって、これを公にすることは、法人等の営む事業活動を損ない正当な利益を害するおそれがあるので、本号に該当する。また、本号のただし書のいずれにも該当しない。

3 香川県行政手続条例第8条について

香川県行政手続条例第8条においては、行政庁は、申請により求められた許認可等を拒否する処分をする場合は、申請者に対し、同時に当該処分の理由を示さなければならないと規定している。本条は、許認可等をするかどうかについての判断の慎重、合理性を担保してその恣意を抑制するとともに、申請者の不服申立てに便宜を与えるものである。本件行政文書に係る非公開の決定については、非公開とした部分の根拠規定及び該当する理由を具体的に説明しており、同条例第8条違反にはあたらない。

第5 審査会の判断理由

1 判断における基本的な考え方について

条例は、その第1条にあるように、県民の行政文書の公開を求める権利を具体的に明らかにするとともに、行政文書の公開に関し必要な事項を定めることにより、県の保有する情報の一層の公開を図り、県政に関し県民に説明する責務が全うされるようにし、県政に対する県民の理解と信頼を深め、もって地方自治の本旨に即した県政の発展に寄与することを目的として制定されたものであり、審査に当たっては、これらの趣旨を十分に尊重し、関係条項を解釈し、判断するものである。

2 本件行政文書について

行政文書1及び2は、活用事業者を募集するに当たって作成した募集要綱の起案文書及びその募集要綱である。
行政文書3は、募集に応じた6社の企業から提出された応募登録申込書であり、申込書のほか、現在事項全部証明書又は履歴事項全部証明書、誓約書、印鑑証明書及び納税証明書が添付されている。
行政文書4は、甲法人を除く5社の企業から提出された応募を辞退するとの届出書である。
行政文書5は、甲法人から提出された募集申込書であり、提案書、会社概要、過去3期分の決算報告書、平面図等の図面が添付されている。
行政文書6は、大的場健康体育センター跡地等利用計画選定委員会からの要求を受けて甲法人から提出された追加資料及び募集申込書の内容修正分の書類である。
行政文書7及び行政文書8は、第1回から第4回までの大的場健康体育センター跡地等利用計画選定委員会の議事要旨及び委員名簿である。
行政文書9及び行政文書10は、大的場健康体育センター跡地等を売却するに当たり、当該売却用地等の正常な取引価格を算定するため、不動産鑑定業者2社から提出された不動産鑑定評価書であり、評価対象不動産、鑑定評価額、鑑定評価額算定の理由の要旨等が記載されているほか、取引事例比較法による鑑定評価額の算定に用いられた取引事例地に関する各種情報が記載された別表等の資料が添付されている。

3 非公開情報該当性について

条例第7条第1号は、個人の尊厳及び基本的人権の尊重の立場から、個人のプライバシーを最大限に保護するために定められたものであるが、プライバシーの具体的な内容が法的にも社会通念上も必ずしも明確ではなく、その内容や範囲は事項ごと、各個人によって異なり得ることから、本条例は、プライバシーであるか否か不明確な情報も含めて、特定の個人が識別され得る情報を包括的に非公開として保護することとした上で、さらに、個人を識別することはできないが、公にすることにより、なお個人の権利利益を害するおそれがあるものについても、非公開とすることを定めたものである。しかし、これらの個人に関する情報には、個人の権利利益を侵害しないと考えられ非公開とする必要のない情報及び公益上の必要があると認められる情報も含まれているので、これらの情報を本号ただし書きで規定し、公開することを定めたものと解される。
条例第7条第2号は、法人等又は事業を営む個人の正当な利益を害することを防止する観点から、その事業活動の自由を保障し、公正な競争秩序を維持するため、公にすることにより当該法人等又は事業を営む個人の権利、競争上の地位その他正当な利益を害するおそれのある情報を非公開とすることとした上で、それらに該当する情報であっても、人の生命、健康、生活又は財産を保護するため、公にすることが必要であると認められる情報については、公開することを定めたものであると解される。
以上の基本的な考え方に基づき、別表2のとおり判断する。

4 第3の2異議申立ての理由のうち、(3)について

条例の解釈、運用に関するものでないので、審査会では判断しないものとする。

よって、当審査会は、「第1 審査会の結論」のとおり判断する。

第6 審査会の審査経過

当審査会は、本件諮問事件について、次のとおり審査を行った。

(省略)

別表1
タイトル タイトル タイトル
行政文書3
  • (a)甲法人から提出のあった申込書、誓約書に表示されている法人の印影
  • (b)甲法人以外から提出のあった申込書及び誓約書に表示されている法人の所在地、法人名、代表者名及び法人の印影
  • (c)印鑑証明書
  • (d)甲法人以外から提出のあった現在事項全部証明書又は履歴事項全部証明書
  • (e)納税証明書(国税・県税)
法人の内部管理に関する情報であり、公にすることにより当該法人の正当な利益を害するおそれがあるため
(条例第7条第2号本文該当)
行政文書4
  • (a)提出者の所在地、法人名、代表者名及び法人の印影
法人の内部管理に関する情報であり、公にすることにより当該法人の正当な利益を害するおそれがあるため
(条例第7条第2号本文該当)
行政文書5
  • (a)大的場健康体育センター跡地等活用事業者募集申込書に表示されている法人の印影
  • (b)「3施設整備計画(b)施設内容・構成」のうち、各施設の規模・面積
  • (c)「3施設整備計画(c)施設整備事業費概算」のうち、解体工事、建設工事、計欄の金額
  • (d)「5経営計画(b)営業形態、特徴等」のうち、施設毎の営業形態、特徴
  • (e)「5経営計画(c)資金計画」のうち、金額欄、資金調達欄及び金額欄
  • (f)「5経営計画(d)収支計画」のうち、項目毎の内訳欄
  • (g)参考資料(イメージパース等)の「計画概要」のうち、各階の面積、車庫の面積、駐車台数、駐輪台数、住戸数、エレベーター等の設置数及び各階用途別面積
  • (h)参考資料(イメージパース等)の日影図、各階平面図及び立面図
  • (i)過去3年間の貸借対照表、損益計算書及び附属明細書
法人の内部管理に関する情報であり、公にすることにより当該法人の正当な利益を害するおそれがあるため
(条例第7条第2号本文該当)
行政文書6 (a)追加資料のうち、「5(a)想定年間利用者数」の各施設の内訳
(b)追加資料のうち、「5(b)県内企業等の活用や県民の雇用について」のうち、雇用見込み人数
(c)「3施設整備計画(b)施設内容・構成」のうち、各施設の規模・面積
(d)「(c)資金計画」のうち、金額欄、資金調達欄及び金額欄
(e)「(d)収支計画」のうち、項目毎の内訳欄
(f)参考資料(イメージパース等)の「計画概要」のうち、各階の面積、車庫の面積、駐車台数、駐輪台数、住戸数、エレベーター等の設置数及び各階用途別面積
(g)参考資料(イメージパース等)の日影図、各階平面図及び立面図
法人の内部管理に関する情報であり、公にすることにより当該法人の正当な利益を害するおそれがあるため
(条例第7条第2号本文該当)
行政文書9
  • (a)不動産鑑定士(鑑定業者の社員)の氏名及び印影
個人に関する情報であり、特定の個人が識別できるため
(条例第7条第1号本文該当)
  • (b)法人の印影
法人の内部管理に関する情報であり、公にすることにより当該法人の正当な利益を害するおそれがあるため
(条例第7条第2号本文該当)
  • (c)別表1「土地価格比準表」のうち、取引事例の概要の所在、地積、取引時点、取引価格、事情補正、時点修正、個別的要因の標準化補正、街路条件、交通接近条件、環境条件、行政的条件、格差率、比準価格
  • (d)取引事例の所在位置図
取引事例の収集は、土地所有者等の任意の情報提供に支えられており、それらを公にすることにより不動産鑑定士に対する信頼を損なう可能性が高く、今後の鑑定業務に支障が生じ、当該法人の正当な利益を害するおそれがあるため
(条例第7条第2号本文該当)

取引の対象が個人の場合は、個人に関する情報であり、他の情報との照合により特定の個人を識別することができ、また、取引の対象が法人の場合は、法人の内部管理に関する情報であり、公にすることにより当該法人の正当な利益を害するおそれがあるため
(条例第7条第1号又は第2号該当)
行政文書10
  • (a)不動産鑑定士(鑑定業者の社員)の氏名及び印影
個人に関する情報であり、特定の個人が識別できるため(条例第7条第1号本文に該当)
  • (b)法人の印影
法人の内部管理に関する情報であり、公にすることにより当該法人の正当な利益を害するおそれがあるため(条例第7条第2号本文該当)
  • (c)別表(a)「取引事例比較法を適用して求めた価格」のうち、取引事例価格、取引事情と補正率、時点修正率、画地条件以外の個別的要因格差修正率、画地条件に係る個別的要因格差修正率、地域要因格差修正率、総合修正率、推定標準価格、事例地の概要、個別的要因格差修正率、街路条件、交通接近条件、環境条件、行政的条件、その他及び地域要因格差修正率
  • (d)取引事例の所在位置
取引事例の収集は、土地所有者等の任意の情報提供に支えられており、それらを公にすることにより不動産鑑定士に対する信頼を損なう可能性が高く、今後の鑑定業務に支障が生じ、当該法人の正当な利益を害するおそれがあるため
(条例第7条第2号本文該当)

取引の対象が個人の場合は、個人に関する情報であり、他の情報との照合により特定の個人を識別することができ、また、取引の対象が法人の場合は、法人の内部管理に関する情報であり、公にすることにより当該法人の正当な利益を害するおそれがあるため
(条例第7条第1号又は第2号該当)
別表2
公開しない部分 審査会の判断 公開すべき部分
【本件行政文書9、10】
不動産鑑定士(鑑定業者の社員)の氏名及び印影
当該非公開部分は、本件不動産の鑑定を担当した不動産鑑定士の氏名及び印影であり、これらは、個人に関する情報で特定の個人を識別することができるものであるので、条例第7条第1号本文に該当し、ただし書に該当しないと判断される。  
【本件行政文書3(a)、3(c)】
甲法人以外から提出のあった申込書及び誓約書に表示されている法人の所在地、法人名、代表者名
審査会で見分したところ、当該非公開部分はいずれも、応募登録したが提案書等を提出せず、応募辞退した法人が識別できる情報であり、どのような提案公募事業に応募したかという情報は経営上の内部管理情報であって、採択された場合は別として、通常は競合他社に知られたくない情報であると認められる。
よって、これらの情報が当該法人の事業活動に関わりなく、本条例により広く一般に公開されると、当該法人の経営方針等が明らかとなり、そうなれば当該法人の正当な利益が害されるおそれがあると認められるので、条例第7条第2号本文に該当し、ただし書に該当しないと判断される。
 
【本件行政文書3(b)】
甲法人以外から提出のあった現在事項全部証明書又は履歴事項全部証明書
【本件行政文書4】
甲法人以外から提出のあった辞退届に表示されている所在地、法人名、代表者名
【本件行政文書3(a)、3(c)、4、5(a)、9、10】
法人の印影
印影は、一般的に、法人等が事業活動を行う上での重要な内部管理に属する情報であり、このような情報を外部に対して明らかにするかどうかは、本来、法人等が自らの業務の関わりの中で自主的に決定すべきことであり、法人等は、公開すべき相手方を限定する利益を有しているというべきである。しかしながら、このような情報であっても、当該法人がこのような管理などをしていないと認められる場合等には、これが公開されても、当該法人の正当な利益を害するものとは認められない。
本件印影は、当該各法人から実施機関に提出された応募登録申込書、誓約書及び不動産鑑定評価書等に押印されているものであり、当該法人がこのような文書を提出する相手方は、実施機関等に限定されていると考えられる。
すなわち、本件印影はいずれも当該法人が真正かつ真意に基づいて作成した文書であることを示す機能を有する性質のものであるとともに、特定の書類に限定して用いられ、当該法人においてむやみに公にしていないものと認められることから、公にした場合には、当該法人等の各種書類の偽造等に悪用されるおそれなどが考えられる。
よって、本件印影は、当該法人の内部管理情報として管理されているものと判断され、本件印影を当該法人の事業活動に関わりなく、本条例により広く一般に公開することは、当該法人の正当な意思、期待に反し、当該法人の正当な利益が害されるおそれがあると認められるので、条例第7条第2号本文に該当し、ただし書に該当しないと判断される。
 
【本件行政文書3(d)】
印鑑証明書
これらの情報は、応募登録した企業が提出した印鑑証明書等の書類、甲法人の提案書に記載された施設整備に要する事業費の金額等であり、当該法人の極めて内部的で機密性の高い経理、経営、事業活動上の内部管理に属する情報に当たると判断される。
よって、これらの情報が当該法人の事業活動に関わりなく、本条例により広く一般に公開されると、当該法人の経営内容や事業規模等が明らかとなり、そうなれば当該法人の正当な利益が害されるおそれがあると認められるので、条例第7条第2号本文に該当し、ただし書に該当しないと判断される。
 
【本件行政文書3(e)】
納税証明書(国税・県税)
 
【本件行政文書5(a)】
  • 「3施設整備計画(c)施設整備事業費概算」のうち、解体工事、建設工事、計欄の金額
  • 「5経営計画(c)資金計画」のうち、金額欄、資金調達欄及び金額欄
  • 「5経営計画(d)収支計画」のうち、項目毎の内訳欄
 
【本件行政文書6】
  • 「(c)資金計画」のうち、金額欄、資金調達欄及び金額欄
  • 「(d)収支計画」のうち、項目毎の内訳欄
  • 追加資料のうち、「5(a)想定年間利用者数」の各施設の内訳
  • 追加資料のうち、「5(b)県内企業等の活用や県民の雇用について」のうち、雇用見込み人数
 
【本件行政文書5(c)】
過去3年間の貸借対照表、損益計算書及び附属明細書
当該行政文書は、当該法人の過去3期分の決算報告書であり、表紙、目次、営業報告書、貸借対照表、損益計算書、利益処分案及び附属明細書から構成されている。
このうち、表紙及び目次には、当該法人の内部管理等に属する情報は記載されておらず、公にしても、当該法人の正当な利益を害するおそれはなく、条例第7条第2号には該当しないと判断される。
営業報告書には、当該法人の営業概況及び会社概況が記載されているが、このうち主な事業所及び店舗等の頁の情報は、当該法人のホームページ等ですでに公にされている情報であり、また取締役及び監査役の頁の情報のうち、役名又は会社における地位欄の代表取締役社長、取締役及び監査役の名称、氏名欄の氏名、担当または主な職業欄の丁法人代表取締役社長及び丁法人取締役の名称、(注)欄の取締役の異動に関する情報は、法務局で交付される現在事項全部証明書等で公開されている情報と認められる。よって、これらの情報は、これを公開しても、当該法人の正当な利益を害するおそれはなく、条例第7条第2号には該当しないと判断される。しかし、その余の情報は、当該法人の内部管理に属する情報と判断され、公にすることで当該法人の正当な利益を害するおそれがあると認められることから、条例第7条第2号本文に該当し、ただし書に該当しないと判断される。
貸借対照表は、当該法人の経営上の内部管理に属する情報であるが、そのうち資産の部の流動資産及び固定資産、資産合計、負債の部の流動負債及び固定負債、負債合計、資本の部の資本金、資本剰余金、資本準備金、利益剰余金、利益準備金、(うち当期利益)、株式等評価差額金及びその他有価証券評価差額金、資本合計、負債・資本合計の各々の科目名及び金額については、法令により貸借対照表の要旨として公告しなければならない情報であることから、これを公開しても、当該法人の正当な利益を害するおそれはなく、条例第7条第2号には該当しないと判断される。しかし、その余の科目名及び金額は、公告しなければならない情報ではなく、公開することで当該法人の正当な利益を害するおそれがあると認められることから、条例第7条第2号本文に該当し、ただし書に該当しないと判断される。
損益計算書、利益処分案及び附属明細書については、当該法人の経営上の内部管理に属する情報であり、公開することで当該法人の正当な利益を害するおそれがあると認められるので、条例第7条第2号本文に該当し、ただし書に該当しないと判断される。
各決算報告書の表紙、目次、営業報告書の主な事業所及び店舗等の頁並びに取締役及び監査役の頁のうち役名又は会社における地位欄の代表取締役社長、取締役及び監査役の名称、氏名欄の氏名、担当または主な職業欄の丁法人代表取締役社長及び丁法人取締役の名称、(注)欄の取締役の異動に関する情報、貸借対照表のうち資産の部の流動資産及び固定資産、資産合計、負債の部の流動負債及び固定負債、負債合計、資本の部の資本金、資本剰余金、資本準備金、利益剰余金、利益準備金、(うち当期利益)、株式等評価差額金及びその他有価証券評価差額金、資本合計、負債・資本合計の各々の科目名及び金額
【本件行政文書5(a)、5(d)、6】
  • 「3施設整備計画(b)施設内容・構成」のうち、各施設の規模・面積
  • 「5経営計画(b)営業形態、特徴等」のうち、施設毎の営業形態、特徴
  • 参考資料(イメージパース等)の「計画概要」のうち、各階の面積、車庫の面積、駐車台数、駐輪台数、住戸数、エレベーター等の設置数及び各階用途別面積
  • 参考資料(イメージパース等)の日影図、各階平面図及び立面図
これらの情報は、すでに公表されている建設予定施設の具体的な規模や詳細な内部構造等が分かる当該事業に関する当該法人の営業戦略に属する情報であると考えられる。
よって、これらの情報が当該法人の事業活動に関わりなく、本条例により広く一般に公開されると、公開された情報を入手した競合他社などが、そうした情報をもとに何らかの対抗的手段を講じるとも想定され、そうなれば当該法人の競争上の地位その他正当な利益が害されるおそれがあると認められるので、条例第7条第2号本文に該当し、ただし書に該当しないと判断される。
 
【本件行政文書9】
  • 別表1「土地価格比準表」のうち、取引事例の概要の所在、地積、取引時点及び取引価格、事情補正、時点修正、個別的要因の標準化補正、街路条件、交通接近条件、環境条件、行政的条件、格差率、比準価格
1 条例第7条第1号該当性について
  • (1)所在について
    所在の欄には、町名までの情報しか記載されておらず、この情報だけで当該取引事例地の正確な所在地を特定することは困難といえる。
    しかし、鑑定評価における取引事例地が、鑑定評価対象地の面積と著しく相違していない土地から収集されるのが通例であることからすると、当該取引事例地は、当該鑑定評価対象地と同様、ある程度の規模を有する土地であると推測することができる。また、こうした取引事例地は、取引の時点が鑑定評価の価格時点と異なることにより、価格水準の変動が大きくならないように、鑑定評価の価格時点に近い取引事例地の中から収集されたものと推測できる。加えて、本件行政文書に記載された当該取引事例地の所在地をみる限り、その地域(町)においては、規模の大きな土地が活発に取引されているとまではいえない。
    そうすると、当該取引事例地に関連して、上記のような土地取引事情等が存在している限りにおいては、当該取引事例地が所在する町名の情報が公開されると、本件行政文書記載の街路条件、環境条件、行政的条件等の情報と組み合わせ、法務局で交付される登記事項証明書等の情報と照合することにより、当該取引事例地及びその所有者等の取引当事者を特定することが可能になると考えられる。
    ただし、当該取引事例地が所在する市名の情報については、対象となる地域(市域)が広範囲であるため、たとえその情報が公開されても、当該取引事例地等を特定するきっかけとなる情報には該当しないと考えられる。
  • (2)地積、規模について
    鑑定評価における取引事例地が、鑑定評価対象地の近隣地域又は同一需給圏内の類似地域から収集されるのが通例であることから考えると、当該取引事例地も鑑定評価対象地の近隣地域等に所在していると推測することができる。また、上記(1)のとおり、当該取引事例地は鑑定評価の価格時点に近い取引事例地の中から収集されたものであると推測でき、加えて、鑑定評価対象地の近隣地域等においては、当該取引事例地のような規模の大きな土地は活発に取引されているとまではいえない。
    そうすると、当該取引事例地に関連して、上記のような土地取引事情等が存在している限りにおいては、当該取引事例地の具体的な面積が記載された情報が公開されると、本件行政文書記載の街路条件、環境条件、行政的条件等の情報と組み合わせ、法務局で交付される登記事項証明書等の情報と照合することにより、当該取引事例地及びその取引当事者を特定することが可能になると考えられる。
  • (3)取引時点、(年/月)について
    上記(1)及び(2)のとおり、当該取引事例地については、鑑定評価対象地の近隣地域等に所在していること、ある程度の規模を有する土地であることが推測でき、加えて、そうした近隣地域等においては、当該取引事例地のような規模の大きな土地は活発に取引されているとまではいえない。
    そうすると、当該取引事例地に関連して、上記のような土地取引事情等が存在している限りにおいては、当該取引事例地の取引時点が記載された情報が公開されると、本件行政文書記載の街路条件、環境条件、行政的条件等の情報と組み合わせ、法務局で交付される登記事項証明書等の情報と照合することにより、当該取引事例地及びその取引当事者を特定することが可能になると考えられる。
  • (4)時点修正欄の変動率、時点修正率欄の変動率について
    時点修正の変動率の情報は、それが明らかになると、その数値から取引時点を容易に計算することができ、取引時点が明らかになれば、上記(3)のとおり、当該取引事例地及びその取引当事者を特定することが可能になると考えられる。
  • (5)交通接近条件欄の距離について上記(1)及び(2)のとおり、当該取引事例地は、鑑定評価対象地の近隣地域等に所在していること、ある程度の規模を有する土地であること、鑑定評価の価格時点に近い取引事例地の中から収集されたものであることが推測でき、また、鑑定評価対象地の近隣地域等においては、当該取引事例地のような規模の大きな土地は活発に取引されているとまではいえない。
    そうすると、当該取引事例地に関連して、上記のような土地取引事情等が存在している限りにおいては、当該取引事例地から高松駅までの具体的な距離が記載された情報が公開されると、本件行政文書記載の街路条件、環境条件、行政的条件等の情報と組み合わせ、法務局で交付される登記事項証明書等の情報と照合することにより、当該取引事例地及びその取引当事者を特定することが可能になると考えられる。
  • (6)以上のことから、当該取引事例地の取引当事者が個人である場合には、上記(1)(市名を除く。)ないし(5)の取引当事者の特定に資する情報は、特定の個人を識別できる個人に関する情報に当たり、条例第7条第1号本文に該当し、ただし書のいずれにも該当しないと判断されるが、上記(1)の市名は、同条同号には該当せず、公開が妥当である。
  • (7)上記以外のその余の情報について
    これらの情報は、上記(1)(市名を除く。)ないし(5)の情報が明らかにされない限り、これらを公開したとしても、その情報のみによっては、当該取引事例地の取引当事者である個人を特定することはできないと考えられることから、条例第7条第1号には該当せず、公開が妥当と判断される。

2 条例第7条第2号該当性について
当該取引事例地の取引当事者が法人等である場合においては、上記1の(1)(市名を除く。)ないし(5)の情報は、個人の場合と同様、本件行政文書記載の街路条件、環境条件、行政的条件等の情報と組み合わせ、法務局で交付される登記事項証明書等の情報と照合することにより、当該取引事例地及びその取引当事者である法人等を特定することができる情報と考えられる。
そして、通常、法人等にとっては、個別の土地取引の内容は、法人等の経営上の内部管理に属する情報として秘匿されるのが一般的であると認められる。
そうすると、上記1の(1)(市名を除く。)ないし(5)の取引当事者の特定に資する情報が公開されると、当該取引事例地を取引した法人等が明らかとなり、そうなれば当該法人等の正当な利益が害されるおそれがあると認められるので、これらの情報は、条例第7条第2号本文に該当し、ただし書には該当しないと判断される。
しかし、上記1の(1)(市名を除く。)ないし(5)以外のその余の情報は、その情報のみによっては、当該取引事例地の取引当事者である法人等を特定することはできないと考えられることから、条例第7条第2号には該当せず、公開が妥当と判断される。
別表1のうち所在欄の町名、地積、取引時点、時点修正欄の変動率、交通接近条件欄の距離を除く部分
【本件行政文書10】
  • 別表(a)「取引事例比較法を適用して求めた価格」のうち、取引事例価格、取引事情と補正率、時点修正率、画地条件以外の個別的要因格差修正率、画地条件に係る個別的要因格差修正率、地域要因格差修正率、統合修正率、推定標準価格、事例地の概要の所在、規模等、個別的要因格差修正率、街路条件、交通接近条件、環境条件、行政的条件、その他及び地域要因格差修正率
別表(a)のうち(年/月)、所在欄の町名、規模、時点修正率欄の変動率を除く部分
【本件行政文書9】
取引事例の所在位置図
本件行政文書9及び10の取引事例の所在位置図には、当該取引事例地の位置が地図上に示されており、当該取引事例地及びその取引当事者の特定が可能な情報であると認められる。
よって、当該取引事例地の取引当事者が個人である場合には、これらの情報は、特定の個人を識別できる個人に関する情報に当たり、条例第7条第1号本文に該当し、ただし書のいずれにも該当しないと判断される。
また、当該取引事例地の取引当事者が法人等である場合には、これらの情報は、当該法人等の経営上の内部管理に属する情報に該当し、公開することにより当該法人等の正当な利益を害するおそれがあると認められるので、条例第7条第2号本文に該当し、ただし書には該当しないと判断される。
 
【本件行政文書10】
取引事例の所在位置図
 

401号~450号 451号~500号 501号~

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