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公開日:2010年5月31日

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平成22年5月31日 答申第471号(香川県情報公開審査会答申)

平成22年5月31日(答申第471号)

答申

第1 香川県情報公開審査会(以下「審査会」という。)の結論

1 平成21年9月4日付け21総学第28317号による諮問(一部公開決定関係。以下「平成21年度諮問8号」という。)について

香川県知事(以下「実施機関」という。)が行った一部公開決定(以下「本件処分1」という。)により非公開とした部分のうち、宗教法人の認証申請処理簿の「種別」欄が変更の場合の「番号」欄及び「種別」欄以外の部分については、公開すべきである。

2 平成21年9月4日付け21総学第28328号による諮問(非公開決定関係。以下「平成21年度諮問9号」という。)について

実施機関が行った非公開決定(以下「本件処分2」という。)は、妥当である。

第2 異議申立てに至る経過

1 行政文書の公開請求

異議申立人は、香川県情報公開条例(平成12年香川県条例第54号。以下「条例」という。)第5条の規定により、実施機関に対し、次の内容の行政文書の公開請求を行った。

  • (1)平成21年6月9日付け請求
    • (a)香川県知事の認証を受けた特定宗教法人の認証に係る申請に関する一切の文書(一切の添付書類・附属書類を含む。)(以下「本件請求1の(a)」という。)
    • (b)特定宗教法人から宗教法人法第25条第4項の規定に基づき香川県知事に提出された一切の文書(ただし、平成15年度以降に提出されたものに限る)(以下「本件請求1の(b)」という。)
    • (c)上記(b)の文書について文化庁の見解として非開示とできる旨を記載した平成10年1月23日付の文化庁作成の文書の全部(以下「本件請求1の(c)」という。)
    • (d)上記(b)以外の特定宗教法人から香川県知事に提出された一切の文書(以下「本件請求1の(d)」という。)
    • (e)特定宗教法人について宗教法人法第78条の2の規定に基づき報告を求め又は質問をした際の一切の文書(以下「本件請求1の(e)」という。)
    • (f)昭和30年以降に宗教法人法の規定に基づき任意に解散した宗教法人名の分かる資料(以下「本件請求1の(f)」という。)
    • (g)昭和30年以降に宗教法人法の規定に基づき(f)以外の事由に基づき解散した宗教法人名の分かる資料(以下「本件請求1の(g)」という。)
  • (2)平成21年6月10日付け請求
    • (a)宗教法人法に規定する過料事件に関する通知文書の全部(以下「本件請求2の(a)」という。)
    • (b)特定宗教法人から提出された規則(新旧の各全部)(以下「本件請求2の(b)」という。)
    • (c)特定宗教法人に関する香川県知事の認証に関する起案文書の全部(認証書類の控え又は写しを含む。)(以下「本件請求2の(c)」という。)
    • (d)文化庁文化部から各都道府県宗教法人事務担当課あてに送付された平成14年7月4日付事務連絡文書(以下「本件請求2の(d)」という。)
    • (e)特定宗教法人に関する登記簿謄抄本又は写し(以下「本件請求2の(e)」という。)

2 実施機関の決定

  • (1)本件請求1の(c)及び2の(d)について
    実施機関は、公開請求のあった行政文書として、本件請求1の(c)については、平成10年7月23日付け文化庁文化部宗務課長通知「情報公開条例に基づく宗教法人の提出書類の開示請求について」を、本件請求2の(d)については、平成14年7月4日付け文化庁文化部宗務課事務連絡「宗教法人に関する行政文書の開示請求について」をそれぞれ特定して公開決定を行い、平成21年6月23日付けで異議申立人に通知した。
  • (2)本件請求1の(f)及び1の(g)について
    実施機関は、公開請求のあった行政文書として、宗教法人の認証申請処理簿(昭和30年以降分)(以下「本件行政文書1」という。)を特定し、別表1の左欄の「公開しない部分」が右欄の「公開しない理由」に該当するとして、本件処分1を行い、平成21年6月23日付けで異議申立人に通知した。
  • (3)本件請求1の(a)、1の(b)、1の(d)、1の(e)、2の(a)、2の(b)、2の(c)及び2の(e)について 実施機関は、公開請求のあった行政文書として、本件請求1の(a)については、昭和58年6月28日付け58学A第151号「特定宗教法人にかかる宗教法人規則認証申請の受理について」の起案文書又はその写し及び平成6年1月13日付け5学A第143号「特定宗教法人にかかる規則変更認証申請の受理について」の起案文書又はその写し(以下「本件行政文書2」という。)を、本件請求2の(b)については、特定宗教法人から提出された規則(新旧の各全部)(以下「本件行政文書3」という。)を、本件請求2の(c)については、昭和58年9月7日付け58学A第151号「特定宗教法人にかかる宗教法人規則の認証について」の起案文書又はその写し及び平成6年1月17日付け5学A第143号「特定宗教法人にかかる規則変更認証について」の起案文書又はその写し(以下「本件行政文書4」という。)を、本件請求2の(e)については、特定宗教法人に関する登記簿謄抄本又は写し(以下「本件行政文書5」という。)をそれぞれ特定し、条例第28条第1項の規定により条例の適用除外になるとして、本件請求1の(b)については、請求対象となる行政文書の存否を答えることは条例第7条第4号の非公開条項に該当するので条例第10条により当該行政文書の存否を明らかにしないとして、本件請求1の(d)、1の(e)及び2の(a)については、請求対象となる行政文書が不存在であるとして、本件処分2を行い、平成21年6月23日付けで異議申立人に通知した。

3 異議申立て

異議申立人は、本件処分1及び本件処分2を不服として、平成21年6月23日付けで、行政不服審査法(昭和37年法律第160号)第6条の規定により、実施機関に対して異議申立てを行った。

第3 異議申立ての内容

1 異議申立ての趣旨

平成21年度諮問8号については本件処分1を、平成21年度諮問9号については本件処分2を、それぞれ取り消すとの決定を求めるというものである。

2 異議申立ての理由

異議申立書において主張している理由は、2件の異議申立てとも、おおむね次のとおりである。

  • (1)本件処分1及び2は、条例の解釈適用を誤った違法な処分であり、本件処分1及び2を取り消し、全部公開をすべきである。
  • (2)本件処分1及び2の通知書に記載の非公開事由は、条例の非公開事由に該当しない。

第4 実施機関の説明の要旨

非公開理由等説明書による説明は、おおむね次のとおりである。

1 21年度諮問8号関係

  • (1)本件行政文書1の内容について
    本件行政文書1は、法人格を有する「宗教法人」を設立することを目的として宗教法人法第13条の規定により宗教団体が知事に提出した「規則の認証の申請」及び、宗教法人が同法第27条の規定により提出した「規則の変更の認証の申請」、同法第38条の規定により提出した「合併の認証の申請」、同法第45条の規定により提出した「任意解散の認証の申請」について、その後の事務処理の状況等を記した受付処理簿である。
    また、本件行政文書1に記載されている内容は、受付番号、認証申請の種別、包括団体の名称、法人(団体)の名称、法人(団体)の所在地、法人(団体)の代表者名、受理年月日、決定期間(事務処理期限)、認証(不認証)年月日、認証番号及び備考である。
  • (2)非公開条項の該当性について
    • (a)条例第7条第1号の該当性について
      条例第7条第1号では、個人に関する情報であって、当該情報に含まれる氏名、生年月日その他の記述等により特定の個人を識別することができるもの又は特定の個人を識別することはできないが、公にすることにより、なお個人の権利利益を害するおそれがあるものを非公開情報と定めている。ただし、本号のただし書に掲げる情報については、非公開情報から除くこととしている。
      本件行政文書1のうち、「種別」欄が解散の場合の「備考」欄のうち、個人情報が記載されている部分(「番号」欄が元-5及び3-8の「備考」欄)の情報については、特定の個人が識別される可能性が極めて高いことに加えて、公にすることにより、個人の権利利益を害するおそれがあることから、条例第7条第1号に規定する非公開情報に該当する。
    • (b)条例第7条第2号の該当性について
      条例第7条第2号では、法人等に関する情報又は事業を営む個人の当該事業に関する情報であって、公にすることにより、当該法人等又は当該個人の権利、競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがあるものを非公開情報と定めている。ただし、事業活動によって生じ、又は生ずるおそれのある危害から人の生命、健康、生活又は財産を保護するため、公にすることが必要であると認められる情報については、非公開情報から除くこととしている。
      本件行政文書1のうち、「種別」欄が変更の場合の「備考」欄の部分の情報については、当該法人の公知の事実である登記事項以外の内部管理情報が含まれており、公にすることにより、当該法人の権利その他正当な利益を害するおそれがあることから、条例第7条第2号に規定する非公開情報に該当する。
    • (c)条例第7条第4号の該当性について
      条例第7条第4号では、県の機関等が行う事務又は事業に関する情報であって、公にすることにより、当該事務又は事業の性質上、当該事務又は事業の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあるものを非公開情報と定めている。
      宗務行政の一つに、不活動法人の解散を促進し法人格の悪用を防止する不活動法人対策があるが、どの法人が現在不活動状態にあるかとの情報は、不活動宗教法人の法人格を買収して脱税等に悪用する契機を与えることにもなりかねず、不活動法人対策に支障を来たすおそれがある。このため、宗教法人が活動していることを把握する手段の一つである宗教法人法第25条第4項に基づき提出される書類(役員名簿、財産目録等)の提出状況については、これを公開すればどの法人が現在不活動状態にあるかとの情報を開示する結果となるため、国においても存否を明らかにすることなく開示を拒否することとなっている。
      本件行政文書1のうち、「種別」欄が変更の場合は、当該法人が何らかの理由により「規則の変更の認証の申請」を行っていること、言い換えれば当該法人が活動状態にあるということを表しているとも言え、「番号」欄及び「種別」欄以外の部分には当該法人が特定できる情報が含まれていることから、これらの情報を公開することは、どの法人が活動状態にあるかを公開するのと同様である。また、知事の所轄する宗教法人の名簿が香川県のホームページ上に公開されているため、両者の情報を合わせると、不活動法人の特定がある程度可能になり、結果的にどの法人が現在不活動状態にあるかとの情報を公開することにつながり、不活動法人対策に支障を来たすおそれがある。
      よって、「種別」欄が変更の場合の「番号」欄及び「種別」欄以外の部分の情報は、公にすることにより、宗務行政の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあることから、条例第7条第4号に規定する非公開情報に該当する。

2 21年度諮問9号関係

  • (1)本件行政文書2ないし5の内容について
    本件行政文書2は、特定宗教法人を設立することを目的として宗教法人法第13条の規定により特定宗教団体が知事に提出した「規則の認証の申請」及び特定宗教法人が同法第27条の規定により提出した「規則の変更の認証の申請」に係る申請書類一式と、これらの申請に対して、同法第14条第1項及び同法第28条第1項の規定により知事が受理したことを通知するための起案文書である。
    本件行政文書3は、本件請求1の(a)及び本件請求2の(c)の行政文書の一部である。
    本件行政文書4は、本件請求1の(a)で受理した申請について、宗教法人法第14条第1項及び同法第28条第1項の規定により知事が認証する旨の決定をするとともに、認証したことを申請者に通知するための起案文書である。
    本件行政文書5は、宗教法人法第65条で準用する商業登記法に基づいて登記所から交付を受けた特定宗教法人の登記事項証明書である。
  • (2)非公開条項の該当性について
    • (a)条例第7条第4号及び条例第10条の該当性について
      条例第10条では、行政文書が存在しているか否かを答えるだけで、非公開情報を公開することとなるときは、当該行政文書の存否を明らかにしないで、当該公開請求を拒否することができると定めている。
      本件請求1の(b)の対象となる行政文書については、公開することにより、特定宗教法人が不活動宗教法人であるかどうかを特定することになりかねないので、不活動法人対策に支障を来たすおそれがある。したがって、当該行政文書は、公にすることにより、宗務行政の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあることから、条例第7条第4号に規定する非公開情報に該当する。
      また、当該行政文書が提出されているか否かを答えるだけも、特定宗教法人が不活動宗教法人であるかどうかの非公開情報を公開することになることから、条例第10条の規定により、当該行政文書の存否を明らかにしないものである。
    • (b)条例第28条第1項の該当性について
      条例第28条第1項では、法律の規定により、行政機関の保有する情報の公開に関する法律(平成11年法律第42号)の規定が適用されないこととされたものについては、条例を適用しないと定めている。
      本件行政文書2、3及び4については、平成20年に捜査当局に押収された経緯があることから、刑事訴訟法第53条の2第1項に規定する訴訟に関する書類及び押収物に該当するので、条例第28条第1項に規定する適用除外の対象に含まれる。
      また、本件行政文書5については、宗教法人法第65条で準用する商業登記法第140条に規定する登記簿及びその附属書類に該当するので、条例第28条第1項の規定に基づき適用除外になる。
  • (3)行政文書の不存在について
    本件請求1の(d)については、本件行政文書2及び本件請求1の(b)の対象となる行政文書以外には特定宗教法人から提出された行政文書は無いため、保有していない。
    また、本件請求1の(e)については、特定宗教法人に対し、宗教法人法第78条の2の規定に基づく当該宗教法人の業務又は事業の管理運営に関する事項に関する報告を求め、又は質問をしたことが無いことから、これに係る行政文書を作成又は取得していないため、保有していない。
    さらに、本件請求2の(a)については、これまで宗教法人に対して過料を課した事件が無いことから、過料事件に関する通知文書を作成しておらず、保有していない。

第5 審査会の判断理由

1 判断における基本的な考え方について

条例は、その第1条にあるように、県民の行政文書の公開を求める権利を具体的に明らかにするとともに、行政文書の公開に関し必要な事項を定めることにより、県の保有する情報の一層の公開を図り、県政に関し県民に説明する責務が全うされるようにし、県政に対する県民の理解と信頼を深め、もって地方自治の本旨に即した県政の発展に寄与することを目的として制定されたものであり、審査に当たっては、これらの趣旨を十分に尊重し、関係条項を解釈し、判断するものである。
なお、非公開情報の該当性の判断に当たっては、実施機関が主張する非公開理由のうちのいずれかに該当すると判断した情報については、他の非公開理由の該当性についての判断は行わないものである。

2 審査の併合について

平成21年度諮問8号及び平成21年度諮問第9号は、同一の異議申立人に係るものであり、相互に関連している事案であるため併合して審査する。

3 本件行政文書の内容について

  • (1)本件行政文書1は、実施機関が所管する宗教法人の宗教法人法第13条の規定による規則の認証の申請、同法第27条の規定による規則の変更の認証の申請、同法第38条の規定による合併の認証の申請及び同法第45条の規定による任意解散の認証の申請の処理状況を記載した受付処理簿であり、「受付番号」、「種別」、「包括団体の名称」、「名称」、「事務所」、「申請人住所氏名」、「受理年月日」、「決定期間」、「認不年月日」、「認証番号」及び「備考」の各欄がある。
  • (2)本件行政文書2は、実施機関が特定宗教法人から提出された規則の認証の申請及び規則の変更の認証の申請を受理した旨を通知するための起案文書であり、起案理由、通知の案文、規則認証申請書等が添付されている。
  • (3)本件行政文書3は、特定宗教法人が規則の認証の申請等を行う際に提出した規則の写しである。
  • (4)本件行政文書4は、実施機関が特定宗教法人の規則の認証の申請及び規則の変更の認証の申請に対して認証する旨を決定し、それを通知するための起案文書であり、起案理由、通知の案文、規則認証書の案文等が添付されている。
  • (5)本件行政文書5は、実施機関が宗務事務に必要であるとして公用で取得した特定宗教法人の履歴事項全部証明書である。

4 非公開条項該当性について

条例第7条第1号は、個人の尊厳及び基本的人権の尊重の立場から、個人のプライバシーを最大限に保護するために定められたものであるが、プライバシーの具体的な内容が法的にも社会通念上も必ずしも明確ではなく、その内容や範囲は事項ごと、各個人によって異なり得ることから、本条例は、プライバシーであるか否か不明確な情報も含めて、特定の個人が識別され得る情報を包括的に非公開として保護することとした上で、さらに、個人を識別することはできないが、公にすることにより、なお個人の権利利益を害するおそれがあるものについても、非公開とすることを定めたものである。
しかし、これらの個人に関する情報には、個人の権利利益を侵害しないと考えられ非公開とする必要のない情報及び公益上の必要があると認められる情報も含まれているので、これらの情報を本号ただし書で規定し、公開することを定めたものと解される。
条例第7条第2号は、法人等又は事業を営む個人の正当な利益を害することを防止する観点から、その事業活動の自由を保障し、公正な競争秩序を維持するため、公にすることにより、当該法人等又は事業を営む個人の権利、競争上の地位その他正当な利益を害するおそれのある情報を非公開とすることとした上で、それらに該当する情報であっても、人の生命、健康、生活又は財産を保護するため、公にすることが必要であると認められる情報については、公開することを定めたものであると解される。
条例第7条第4号は、県の機関等が行う事務又は事業の目的達成又は適正な執行の確保の観点から、当該事務又は事業に関する情報の中で、当該事務又は事業の性質、目的等からみて、執行前あるいは執行過程で公開することにより、当該事務又は事業の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがある情報については、非公開とすることを定めたものであると解される。
この基本的な考え方に基づき、実施機関が非公開とした部分について検討する。

  • (1)本件行政文書1のうち、「種別」欄が解散の場合の「備考」欄のうち、個人情報が記載されている部分について
    当該非公開部分には、宗教法人の解散理由となった特定個人の個人的事情等の情報が記載されている。
    これらの情報は、いずれも個人に関する情報であって、特定の個人が識別できるものであり、また、公にすることにより個人の権利利益を害するおそれがあることから、条例第7条第1号本文に該当し、ただし書には該当しないと判断される。
  • (2)本件行政文書1のうち、「種別」欄が変更の場合の「番号」欄及び「種別」欄以外の部分について
    審査会が見分したところ、本件行政文書1の「種別」欄に記載された変更には、規則の変更と所轄庁の変更があることから、まず規則の変更に係る非公開部分について検討する。
    当該非公開部分には、宗教法人法第27条の規定に基づく規則の変更の認証を申請した宗教法人の名称、事務所の所在地、包括団体の名称、申請人の氏名等、受理年月日、認証の決定期間、認証年月日、変更の内容等が記載されており、これらの情報は、規則の変更を行った宗教法人及びその変更内容等が分かる情報である。
    同法第25条第3項の規定によれば、宗教法人が事務所に備え付けなければならない規則、認証書、役員名簿、財産目録、収支計算書、貸借対照表等の書類や帳簿については、その閲覧を請求できる者が、閲覧することについて正当な利益があり、かつ不当な目的をもたない信者その他の利害関係人に限定されていることから、宗教法人の規則の変更に関する情報は、一般に公にされている情報とはいえず、宗教法人の管理運営上の内部管理情報であると認められる。
    しかしながら、これらの規則の変更に関する情報は、宗教法人が実施機関に提出した規則の認証申請書等から転記されたものであり、当該認証申請書等が公開請求された場合の取扱いについて実施機関に確認したところ、当該認証申請書等は、上記の事務所備付書類と同様に一般に公にされていないものであるため、登記情報等の公知の事項を除き原則非公開とすべきであるが、当該非公開部分と同じ情報については、認証審査の合法性を証するため公開しているとのことであった。
    そうすると、これらの情報については、別途、個別に規則の認証申請書等を公開請求すれば、公開される情報と認められる。
    よって、これらの情報を公にしても、宗教法人の権利、競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがあるとまでは認められず、条例第7条第2号には該当しないと判断される。
    次に所轄庁の変更に係る非公開部分について検討する。
    当該非公開部分には、同法第5条の規定に基づき所轄庁が変更された宗教法人の名称、事務所の所在地、申請人の氏名、包括団体の名称、認証番号、変更原因等が記載されている。
    これらの情報は、所轄庁が変更された宗教法人やその変更内容が分かる情報であるが、仮にこれらの情報が公になり、所轄庁の変更が行われた宗教法人が明らかになったとしても、そのことにより宗教法人の権利、競争上の地位その他正当な利益を害するおそれはないと認められる。
    また、これらの情報の中には、所轄庁が変更される原因となった宗教法人の内部事情等が記載された部分があるが、その内容は具体的なものではなく、同法に規定する所轄庁の変更事由等が記載されているに過ぎないことから、これを公にしても、宗教法人の権利、競争上の地位その他正当な利益を害するおそれはないと認められる。
    よって、これらの情報は、条例第7条第2号には該当しないと判断される。
    次に、条例第7条第4号の該当性について検討する。
    当該実施機関は、「当該非公開部分は、宗教法人が規則の変更の認証を申請していること、言い換えればその宗教法人が活動状態にあることを表している情報であることから、これらの情報を公にすると、公開されている宗教法人の名簿と照合することによって不活動状態にある宗教法人がある程度特定できるようになり、そうなると不活動法人対策に支障を及ぼすおそれがあるので、条例第7条第4号に該当する」と主張する。
    しかしながら、宗教法人の規則の変更の認証申請については、同法第26条の規定により、規則を変更するときに所轄庁に提出されるものであり、宗教法人の活動状態を把握する手段の一つである同法第25条第4項の規定に基づく事務所備付書類の写しの提出(毎会計年度終了後4月以内に提出)の場合とは異なり、毎年度、定期的に提出されるというものではない。
    そうすると、これらの情報が公にされ、仮に宗教法人の規則の変更の認証申請が行われた時期等が明らかになったとしても、その情報から宗教法人の継続的な活動状態を推測することは困難と考えられ、結果として不活動法人を特定することはできないものと認められる。
    また、所轄庁の変更に係る非公開部分についても、規則の変更の場合と同様に、それらの情報から不活動法人を特定することはできないと認められる。
    よって、これらの情報を公にしても、今後の不活動法人対策に関する事務に支障を及ぼすおそれがあるとは認められず、条例第7条第4号には該当しないと判断される。
    以上のとおり、当該非公開部分は、条例第7条第2号及び第4号に該当せず、公開すべきであると判断される。

5 本件請求1の(b)の対象となる行政文書の存否応答拒否について

実施機関は、本件請求1の(b)に関して、「請求対象行政文書の存否を明らかにするだけで条例第7条第4号に規定する非公開情報を公開することとなるため、条例第10条により本件処分をした」と主張する。
条例第10条は、「公開請求に対し、当該公開請求に係る行政文書が存在しているか否かを答えるだけで、非公開情報を公開することとなるときは、処分庁は、当該行政文書の存否を明らかにしないで、当該請求を拒否することができる」と定めている。
そこで、本件請求1の(b)に対し、請求対象行政文書が存在するか否かを明らかにすることが、条例第7条第4号に規定する非公開情報を公開することとなるか検討する。
本件請求1の(b)は、「特定宗教法人から宗教法人法第25条第4項の規定に基づき香川県知事に提出された一切の文書」であることから、本件請求1の(b)に対して対象となる行政文書の有無を明らかにすることは、同条同項の規定に基づき知事に提出された文書が存在するか否かという情報を明らかにするものと認められる。
同条同項の規定によると、宗教法人は、毎会計年度終了後4月以内に、宗教法人の事務所に備えられた役員名簿や財産目録等の書類の写しを所轄庁に提出しなければならないとされている。しかし、不活動状態にある宗教法人がこれらの書類を提出することはないため、これらの書類の提出状況が不活動法人であるか否かを判断する際の一つの目安になるものと考えられる。
そうすると、仮に特定宗教法人が不活動法人であった場合、これらの書類が不存在であることを公にすると、特定宗教法人が不活動法人であるということが明らかとなり、その結果、その法人格を買収して悪用する契機を与えることにもなりかねず、不活動法人の解散を推進し、法人格の悪用を防止するといった不活動法人対策事務の適切な遂行に支障を及ぼすおそれがあると認められる。
よって、本件請求1の(b)に対して請求対象行政文書の存否を答えることは、条例第7条第4号の非公開情報を公開することになるため、実施機関が条例第10条に基づき行政文書の存否を明らかにしなかったことは妥当であると判断される。

6 条例第28条の該当性について

  • (1)本件行政文書2、3及び4について
    実施機関は、「本件行政文書2、3及び4については、平成20年に捜査当局に押収された経緯があることから、刑事訴訟法第53条の2第1項に規定する「訴訟に関する書類及び押収物」に該当し、条例第28条第1項に規定する適用除外の対象に含まれる」と主張しているので、条例第28条第1項の適用の妥当性について検討する。
    条例第28条第1項は、「この条例の規定は、法律の規定により、情報公開法の規定が適用されないこととされたものについては、適用しない」と定めており、刑事訴訟法第53条の2では、「訴訟に関する書類及び押収物については、情報公開法の規定は適用しない」と定められている。
    • (a)刑事訴訟法第53条の2の趣旨について
      刑事訴訟法第53条の2により「訴訟に関する書類及び押収物」を情報公開法の適用から除外した趣旨は、「総務省行政管理局編・詳解情報公開法」によれば、次のとおりである。
      • ア 「訴訟に関する書類及び押収物」については、刑事司法手続の一環である捜査・公判の過程において作成・取得されたものであるが、捜査・公判に関する国の活動の適正確保は、司法機関である裁判所により図られるべきであること。
      • イ 刑事訴訟法第47条により、公判開廷前における訴訟に関する書類の公開を原則として禁止する一方、被告事件終結後においては、同法53条及び刑事確定訴訟記録法により一定の場合を除いて何人にも訴訟記録の閲覧を認め、その閲覧を拒否された場合の不服申立てにつき準抗告の手続によることとされるなど、これらの書類は、刑事訴訟法(第40条、第47条、第53条、第299条等)及び刑事確定訴訟記録法により、その取扱い、開示・非開示の要件、開示手続等が自己完結的に定められていること。
      • ウ これらの書類及び押収物は類型的に秘密性が高く、その大部分が個人に関する情報であるとともに、開示により犯罪捜査、公訴の維持その他の公共の安全と秩序の維持に支障を及ぼすおそれが大きいものであること。
        すなわち、「訴訟に関する書類及び押収物」については、これらの書類が類型的に秘密性が高く、開示により犯罪捜査や公訴の維持等に支障を及ぼすおそれが大きいものであることや、刑事訴訟手続の特殊性等を総合考慮した結果、これらの書類の取扱いは刑事訴訟手続にゆだねることとされ、情報公開法の規定の適用が除外されたものと考えられる。
    • (b)本件行政文書2、3及び4について
      本件行政文書2、3及び4は、特定宗教法人の規則認証申請、規則及び規則変更認証申請の受理並びにその認証に関する起案文書である。
      審査会で調査したところ、実施機関は捜索差押許可状及び還付請書の原本を書き写した書類を保有しており、それらの書類から、平成20年2月18日に本件行政文書2、3及び4が差し押さえられていること、そして同日に還付されていることが確認された。また、実施機関に確認したところ、司法警察員は本件行政文書2、3及び4の写しを持ち帰ったとのことであった。
      一般的に司法警察員が入手したこのような写しについては、捜査や公判の手続の過程で作成される書類(捜査報告書、供述調書等)に添付されるなどして、司法警察員や検察官等によって保管されることになるが、このうち犯罪事実の証明に必要なものは、公判において証拠調べの請求が行われ、証拠調べが終了したものは裁判所に提出される。裁判所に提出されたものについては、明らかに「訴訟に関する書類」に該当すると考えられ、一方、裁判所に提出されなかったものについても、公判の準備において利用されたものであるため、「訴訟に関する書類」に該当すると考えられる。
      さらに、原本が還付されても写しが「訴訟に関する書類」に該当するものについては、原本を公開すると、刑事訴訟法第53条の2の趣旨を損なうものと考えられる。
      よって、司法警察員が入手した本件行政文書2、3及び4の写しは「訴訟に関する書類」と認められるので、その原本であり、同一の内容が記載されている本件行政文書2、3及び4についても刑事訴訟法第53条の2に規定する「訴訟に関する書類及び押収物」に該当すると認められ、条例第28条第1項を適用したことは妥当であると判断される。
  • (2)本件行政文書5について
    条例第28条第2項では、個別法において、公表、公示、閲覧等により県民に行政文書を公開する手続が規定されている場合には、当該行政文書について、この条例による公開請求の対象とする必要性は乏しいことから、当該手続による公開と同一の方法による公開を行わないことを定めている。
    本件行政文書5は、実施機関が宗務事務に必要であるとして法務局から公用で取得した特定宗教法人の履歴事項全部証明書であるが、これは登記所に備え付けられた登記簿に記録されている登記事項を商業登記法第10条の規定に基づき法務局が証明した書類(登記事項証明書)であって、何人でもその交付を請求することができるものである。すなわち、他の法令等の規定により、何人にも条例による公開と同一の方法で請求できることから、本件行政文書5は条例第28条第2項が適用される行政文書であると認められ、非公開とすることが妥当であると判断される。
    なお、実施機関が、「宗教法人法第65条で準用する商業登記法第140条に規定する登記簿及びその附属書類に該当するので、条例第28条第1項の規定が適用される」として本件行政文書5を非公開にしたことについては、本件行政文書5は登記事項証明書であって、同法に規定する「登記簿及びその附属書類」には当たらないため、条例第28条第1項を適用したことは妥当でないと認められるが、改めて当該部分の非公開決定を取り消して条例第28条第2項の規定を適用する意味はなく、当該部分の非公開決定は結論において妥当であると判断される。

7 本件請求1の(d)の対象となる行政文書の不存在について

実施機関は、本件請求1の(d)に関して、「本件請求1の(a)及び1の(b)に係る行政文書以外には、特定宗教法人から県に提出された行政文書はなく、保有していない」と主張する。
宗教法人法の規定によると、宗教法人が所轄庁に提出する書類としては、これら以外に、同法第9条の登記に関する届出、同法第38条の合併の認証の申請、同法第43条第3項の破産による解散の届出、同法第45条の任意解散の認証の申請、同法第78条の2の報告、同法第79条第3項の公益事業以外の事業の停止命令に係る弁明の申出がある。
そこで、特定宗教法人のこれらの書類の提出状況について検討する。
まず、同法第9条の登記に関する届出については、同条の規定によると、宗教法人は、同法第7章の規定による登記をしたときは、遅滞なく、登記事項証明書を添えて、その旨を所轄庁に届け出なければならないとされている。審査会で特定宗教法人から提出された当該届出の有無を調査したところ、実施機関が保有する行政文書の中に、そのような行政文書の存在を確認することはできなかった。したがって、特定宗教法人から当該届出は提出されていないものと認められる。
次に、合併や解散に関する認証の申請等については、審査会で実施機関が所轄する宗教法人の合併、解散等の状況が記載された認証申請処理簿を調査したところ、特定宗教法人に関して、合併や解散に係る認証申請等の受理及びその認証は行なわれていないことが確認された。したがって、同法第38条の合併の認証の申請、同法第43条第3項の破産による解散の届出及び同法第45条の任意解散の認証の申請は、実施機関に提出されていないものと認められる。 次に、同法第78条の2の報告については、後記8で判断するとおり、実施機関では保有していないものと認められる。
次に、同法第79条第3項の公益事業以外の事業の停止命令に係る弁明の申出については、このような事業を宗教法人が行なう場合には、同法第12条の規定により、規則にその旨を記載しなければならないとされているが、実施機関が認証した特定宗教法人の規則には、そうした事項は規定されていなかった。したがって、特定宗教法人がこのような事業を行っていると実施機関が認識していたとは考えられず、特定宗教法人から事業の停止命令に係る弁明の申出が提出されることはないと認められる。
以上のとおり、同法の規定に基づき提出される書類については、本件請求1の(a)及び1の(b)に係るもの以外に実施機関が保有しているものはないと認められる。
また、審査会で実施機関の保有する行政文書を調査したところ、これら以外に特定宗教法人から提出された文書の存在は確認できなかった。
よって、実施機関が本件請求1の(d)に対応する行政文書が存在しないとして非公開とした本件処分は、妥当であると判断される。

8 本件請求1の(e)の対象となる行政文書の不存在について

実施機関は、本件請求1の(e)に関して、「香川県では特定宗教法人に対し、宗教法人法第78条の2の規定に基づく当該宗教法人の業務又は事業の管理運営に関する報告を求め、又は質問をしたことがないことから、これに係る行政文書を作成又は取得しておらず、保有していない」と主張する。
同条第1項には、所轄庁が宗教法人に対して業務又は事業の管理運営に関する事項に関し報告を求め、又は当該職員に質問させることができる場合が列挙されており、第2項には、そのような場合は、あらかじめ文部科学大臣を通じて宗教法人審議会の意見を聞かなければならないと規定されている。
このような規定からすると、仮に実施機関が特定宗教法人に対して上記の報告徴収及び質問を行っていたならば、事前に文部科学大臣の諮問機関である宗教法人審議会の意見を聞いているはずである。
審査会で調査したところ、文化庁のホームページで公開されている当該審議会の第135回(1998年2月10日開催)から第156回(2009年6月29日開催)までの議事録には、上記の報告徴収及び質問に関する記載はなかった。したがって、1998年以降については、特定宗教法人に対し、上記の報告聴取及び質問は行われていないと認められる。
また、上記の報告聴取及び質問に関する行政文書については、文書分類表に保存期間の定めはなく、この点について実施機関に説明を求めたところ、報告聴取及び質問を行ったことがないため、保存期間を定めていないが、文書の内容から考えると保存期間は5年もしくは10年になるとの回答があった。そうすると、1997年以前については、仮に実施機関がこれらの行政文書を作成又は取得していたとしても、すでに保存期間を経過しているため、保有していないと認められる。
よって、実施機関が請求対象行政文書が存在しないとして非公開とした本件処分は、妥当であると判断される。

9 本件請求2の(a)の対象となる行政文書の不存在について

実施機関は、本件請求2の(a)に関して、「香川県では宗教法人に対し、過料を課した事件がないことから、過料事件に関する通知文書を作成しておらず、保有していない」と主張する。
宗教法人法第88条及び第89条には、宗教法人に過料が課せられる場合が規定されている。この場合の過料とは、行政上の義務違反ないし法秩序違反に対する制裁として課せられる行政上の秩序罰であり、非訟事件手続法の規定により、過料が課せられる者の所在地を管轄する地方裁判所が過料の裁判によって過料を決定することになるが、その審理は所轄庁等が当該裁判所に過料事件を通知すること等によって職権で開始される。
こうした過料事件については、過料が刑罰ではないことから刑事訴訟法の規定は適用されず、所轄庁等には同法第239条に基づく告発義務はない。また、所轄庁等が、過料の裁判を行なう裁判所に対して、過料事件について通知することを義務づける法令上の規定もない。したがって、所轄庁等が過料に処せられるべき違反事実を知った場合には、その違反行為が行政目的の達成に支障を及ぼすかどうか等を具体的に勘案し、自己の裁量により裁判所に通知するかどうかを判断することになるのであって、必ず過料の措置を取らなければならないというものではないと考えられる。
このようなことからすると、実施機関が、所轄する宗教法人に対して、これまで一度も同法に規定する過料を課したことがなかったとしても、そのことが不自然、不合理であるとまではいえず、また、異議申立人も請求対象行政文書の存在を推測させる具体的な主張をしていない。
よって、実施機関が請求対象行政文書が存在しないとして非公開とした本件処分は、妥当であると判断される。

よって、当審査会は、「第1 審査会の結論」のとおり判断する。

第6 審査会の審査経過

当審査会は、本件諮問事件について、次のとおり審査を行った。
(省略)

別表1

公開しない部分 公開しない理由
認証申請処理簿の「種別」欄が解散の場合の「備考」欄のうち、個人情報が記載されている部分 (条例第7条第1号本文該当)
特定の個人が識別される個人に関する情報に該当するため
認証申請処理簿の「種別」欄が変更の場合の「番号」欄及び「種別」欄以外の部分
  • (条例第7条第2号本号該当)
    当該法人の内部管理情報であり、公にすることにより、当該法人の権利その他正当な利益を害するおそれがあるため
  • (条例第7条第4号該当)
    公にすることにより、宗教法人格の悪用を防止する不活動法人対策など宗務行政の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあるため

401号~450号 451号~500号 501号~

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