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公開日:2017年10月10日

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平成29年9月22日 答申第526号(香川県情報公開審査会答申)

平成29年9月22日(答申第526号)

答申

第1 香川県情報公開審査会(以下「審査会」という。)の結論

香川県教育委員会(以下「実施機関」という。)が行った一部公開決定(以下「本件処分1」という。)は妥当である。実施機関が行った行政文書の不存在を理由として行った非公開決定(以下「本件処分2」という。)については、これを取り消し、訴訟以前に実施機関に提出された報告書等を含めて本件請求対象の行政文書として特定し、改めて公開非公開の判断をすべきである。

第2 審査請求に至る経緯

1 行政文書の公開請求

審査請求人は、平成29年1月10日付けで、香川県情報公開条例(平成12年香川県条例第54号。以下「条例」という。)第5条の規定により、実施機関に対し、次の内容の公開請求を行った。

  • (a)県立高教諭停職4ヶ月「教え子にわいせつ行為」わかるもの。事実関係、事情聴取、弁明書、学校等からの報告書、処分内容、処分理由書、説明書
  • (b)善通寺の中学校の教諭「体罰」で停職4ヶ月わかるもの(平手打ちくりかえす)。事実関係、事情聴取、弁明書、学校等からの報告書、処分内容、処分理由書、説明書

2 実施機関の決定

  • (1)実施機関は公開請求のあった行政文書として、次の行政文書を特定し、別表1の「公開しない部分」が「公開しない理由」に該当するとして、平成29年1月23日付けで本件処分1を行い、審査請求人に通知した。
    • (a)県立学校教職員の懲戒処分等について(平成27年11月18日付け)(以下「本件行政文書1」という。)
    • (b)県費負担教職員の懲戒処分等について(平成27年9月24日付け)(以下「本件行政文書2」という。)
    • (c)(b)に係る事案について善通寺市教育委員会から香川県教育委員会に提出された学校事故報告書(以下「本件行政文書3」という。)
  • (2)実施機関は審査請求を受けて、県立高教諭停職4ヶ月「教え子にわいせつ行為」に係る学校等からの報告書について特定をし、当該行政文書を不存在として本件処分2を追加決定し、審査請求人に通知した。

3 審査請求

審査請求人は、本件処分1を不服として、平成29年2月6日付けで、行政不服審査法(平成26年法律第68号)第2条の規定により実施機関に対して審査請求を行った。

第3 審査請求の内容

1 審査請求の趣旨

「本件請求に関して、全部公開がなされるとの裁決を求める。」というものである。

2 審査請求の理由

審査請求書において主張している理由は、次のとおりである。

  • ア 2月2日、確認した内容は、「一部開示」により、文書で、「黒塗り」されている部分は、学校名、教諭名、等である。
    高校教諭及び中学校教諭については、職務上に関する違法行為であるので公開されるべきである。中学校教諭については、「悪質性の高いものであった」ということが処分説明書で述べられている。同様なことが、高校教諭についてもいえる。行政として、一部でも黒塗りする理由にはならない。もし黒塗りにするなら、行政自らが、教諭を擁護している。事件の隠ぺいをしている。問題解決を遅らせているということになるといえる。
  • イ 請求にある事実関係、事情聴取、弁明書、高校からの事故報告書については「通知書」では、その文書に関しての存在等について触れられていない。あえて触れずに全面的に非公開にしているといわざるを得ない。処分庁の明らかな誤りといえる。請求者の請求に対して、具体的に文書を特定して、開示すべきである。今回中学校からの事故報告書(職員等事故)は、一部黒塗りであるが、公開されている。事故の概要について(学校事故報告書にもある)、事実関係及び事情聴取についての文書や記録があることは、当然のことであるといえる。処分に関する事案であるからには、明確な事実関係の確定及びその前後での事情聴取がなされているのが当然である。
    今回の問題点の解明及び今後の防止のためにも、正確な事実確認、その原因、背景等が明らかにされたものが必要である。今回公開するしないにかかわらず、文書の特定がなされていないので、その特定等を処分庁はなされ、公開等の結論を出されるべきである。

3 反論書による主張

次のとおりである。

  • (ア)教諭の住所については公開を求めない。関係者が生徒の場合については、氏名、年齢、性別、住所、学年組の公開を求めない。但し、生徒本人またはその保護者の同意があれば、公開することを求める。当事者に確認の上、公開するかどうかを明確にしてもらいたい。
  • (イ)調査報告書とあるが、報告書とはどのようなものがあるのか不明である。文書の表題、作成者、作成日、報告内容、文書の報告先等は明確にされていないが、公開されても問題ない部分があるといえるので、処分庁としては、文書の表題等を具体的に明らかにした上で、公開非公開の判断をしてもらいたい。
  • (ウ)損害賠償請求訴訟ということであるから、当事者、学校、教育委員会からの報告等が必要になっているといえる。訴訟以前、それ以後に、事件ということから、また、処分ということからも報告書等が必要である。職員のセクハラということからも報告等が一切ないということはあり得ないといわざるを得ない。裁判所の判断がすべてであるということは信じがたい。処分日が停職4月13日間ということからすると、教育委員会としてもその基となる理由等があることは明らかであるといえる。報告をすべて口頭で行ったということはあり得ない。
  • (エ)生年月日については公開を求めない。
  • (オ)「公にすることにより、なお個人の権利利益を害するおそれ」がということは、推測憶測の段階であり、推測憶測だけでの処分は違法であり、処分庁としては具体的に説明する責任がある。具体的に説明できない、しない事案に対して、公開しないということはできないということである。
  • (カ)事情聴取が行われていたことは明らかである。そうであるなら、まずは処分庁としては、文書があること、文書名等を明らかにする責任がある。公開できる、できないは審査会等で明らかにされることである。しかしながら、処分に関することであるので、全面的に公開しないということは無理がある。
  • (キ)事情聴取について、処分庁側の質問等基本的なことは公開できるはずである。全面的に公開しないということは、違法である。
  • (ク)調査報告書とは具体的な文書名を特定される必要がある。文書名が明らかになされないと反論等できない。また、調査報告書に関する文書名や形式等だけが明らかになったとしても、非公開に該当するとは言えない。もしそうであるなら、非公開にしなければならない理由根拠について処分庁は説明をしなければならない。相当無理なことであることが推測できる。
  • (ケ)権利利益を害するおそれとは、具体的にどのような権利利益を侵害するのか説明されることを求める。説明もなく一方的に害するという言葉だけで、公開しないことは容認できない。
  • (コ)今後の学校教育活動に支障をきたすとは、具体的にどのような支障か説明がなされていない。
  • (サ)被処分者の住所、被害者に係る氏名、住所は公開を求めない。
  • (シ)被害の具体的状況等からすると指導には当たらない。処分庁が指導とするなら、つまり、職務中の行為であるとするなら、公務員の職務行為は、当然公の場であり、公開されるべきである。また、指導に当たらない、学校、職員に問題があり継続していたとするなら大人のいじめ、暴力行為ということになるから、今後の安全配慮ということからしても公開されるべきである。
  • (ス)審査会の答申について、過去の件が該当するとされても、請求者としては具体的な説明がないので反論できない。
  • (セ)「『あえて触れずに非公開としている』」というのは誤りである。」と断定しており、事実関係、事情聴取及び弁明書については調査報告書に含まれるということであるが、含まれるとされる文書名をそれぞれ、述べられたうえで含まれるということなら理解できるが、具体的文書名、作成者、作成日、文書の内容など全く説明がない。極端なことを言えば、非公開文書に全面的に含まれているとしたら、全面的な非公開が可能になる。文書を持っているのは、処分庁であり、処分庁の特別権力関係で、非公開にする、しないが決められるものではない。住民の知る権利を満たすのが情報公開法の精神である。
  • (ソ)非公開情報について、請求者には知る権利があり、知りたいと主張しているものである。その情報のもと、処分庁、行政に対する提言、意見の申立て等をするのである。これも知る権利に含まれる表現の自由ということになる。処分庁は、知る権利について理解されていないのか、あえて公開を求める請求者の権利擁護に対して妨害していることに気づかれないのか疑問を持つ。もし理由等があるならまずはそのことを明らかにしてもらいたい。
    • 追記1 請求書(a)の県立高教諭に関する事案については、開示された処分説明書によると「卒業生」という言い方である。
      大学の卒業研究の実験の打ち合わせのため(中略)を触り」ということである。職務中であり、セクシャル・ハラスメントに該当するという判断を処分庁は取られている。
      公開された事実関係が、ほとんど不明であるから反論等がしにくい。しかしながら、本件は、わいせつ行為と判断される事案ではないかといえる。本来であれば、免職ぐらいの処分が出る可能性がある事案ではないかといえる。具体的に被害者のことの公開を求めるものではないが、教諭に関することについては、裁判でも明らかになったはずであるから公開されるべきである。
      相手は卒業生であり、未成年者ではないようであるから、自校生に対するわいせつ行為とは異なるといえる。非公開にすることは、処分庁が事件の隠ぺいをしているという誤解を受けるということである。香川県では、わいせつ等の行為は免職に値するということなら、処分庁がこの教諭を誤解というより、かばっていることになる。
    • 追記2 処分庁において、学校事故報告書ということで、約1年間に及ぶ「体罰」言動に問題があったとの報告がなされている。
      校長意見では、日頃から(中略)繰り返し指導し(中略)遺憾であるということである。
      この教諭の問題点だけではなく、この学校、校長の問題点について明らかにされなければ、信頼回復もあり得ない。そのためには、公開できることはすべて公開して信を問われなければならない。そのためには学校名等の公開が最初の一歩であるといえる。
      しかしながら、公開されない学校名、校長名という具体的なことが明らかにされなかったら、何が起きたか、どこで起きたか不明で、その後どうなったのかも確かめようがないということになってしまい、今後取組みがなされているのかいないのか、確認のしようがない。
      処分庁と学校が学校だけで再発防止ができると考えているとしたら、自らを何ら顧みていないということである。学校内の出来事に職員がなぜこれまで教諭の行為に気付けなかったのか、気づいていたが取り組めなかったのかどこに問題があったのか、それらを含めて明らかにすることが求められているのに、現在までなされていないということである。この教諭の「体罰」言動については「指導する際(中略)何度も」については指導ということではないことは明らかである。教諭の違法行為、不当な行為ということである。
      事故報告書で「指導する際・・・」という言葉を使って表現された校長の感覚に疑問をもつ。教諭に問題があって起きた事件であり、教諭のどこに問題があって起きたことであるという視点がなかったのではないかと言わざるを得ない。
      教諭の「体罰」および問題のある言動については、起きたことをどう受け止めて、これからの取り組みをするのか、全面的に公開して、信を問う姿勢が無ければ、取り組めない問題であると考えられる。
      本件事案も含めて、全面的な公開を求めるものである。
    • 追記3 両者とも職務遂行中である。
      高校教諭は、学校内の実験室での問題行動であり、その関係からセクシャル・ハラスメントということである。中学校教諭については、学校内での「体罰」生徒への「不適切言動」ということである。
      つまり職務遂行の内容については、個人に関する情報に当たらない(新・情報公開法の逐条解説 第7版 宇賀克也 71頁 資料4)ということからすると、学校における授業と同じで、常に公開されていなければならない。
      公開に耐えられない職務内容とはありえないということである。確かに生徒の氏名等の問題があるが、生徒は何ら非がないから、社会が生徒への誤った思いをしたりしないという(環境が許す)なら、問題点の把握、問題克服のため、今後の取り組みのため、全面的な公開を求める。

第4 実施機関の説明の要旨

弁明書による説明は以下のとおりである。

1 処分の理由について

  • (1)条例第7条第1号の該当性について
    条例第7条第1号では、個人に関する情報であって、当該情報に含まれる氏名、生年月日その他の記述等により特定の個人を識別することができるもの又は特定の個人を識別することはできないが、公にすることにより、なお個人の権利利益を害するおそれがあるものを非公開情報と定めている。ただし、本号のただし書に掲げる情報については、非公開情報から除くこととしている。
    本件行政文書1及び2のうち、調査報告書には、被処分者の所属、氏名及び経歴、事件の概要及び経緯、事件当事者の主張及び行動、懲戒処分等を行うに当たっての検討事項等が具体的かつ詳細に記載されている。また、本件行政文書1及び2のうち、調査報告書以外の部分には、被処分者に係る氏名及び所属や被害の具体的状況等が記載されている。本件行政文書3には、被処分者に係る氏名、住所及び所属、被害者に係る氏名、住所及び年齢、被害の具体的状況等が記載されている。これらの情報は、条例第7条第1号本文に規定するところの、特定の個人を識別することができる情報又は特定の個人を識別することはできないが、公にすることにより、なお個人の権利利益を害するおそれがある情報であり、同号ただし書にも該当しない。
  • (2)条例第7条第4号の該当性について
    条例第7条第4号では、県の機関等が行う事務又は事業に関する情報であって、公にすることにより、当該事務又は事業の性質上、当該事務又は事業の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあるものを非公開情報と定め、当該支障を及ぼすおそれのあるものとして、人事管理に係る事務に関し、公正かつ円滑な人事の確保に支障を及ぼすおそれが挙げられている。
    本件行政文書1及び2のうち、調査報告書に関して、このような事件が発生した場合、実施機関においては、被処分者本人のほか、上司、同僚等の関係者に対する事情聴取を行い、調査、分析を行っているが、当該事情聴取は、実施機関に強制捜査権限がないことから、他に公表しないことを前提に任意に行われるものである。したがって、調査報告書が公開されることとなれば、関係当事者間の協力関係、信頼関係を損ない、関係者が報告を躊躇し、調査に対し十分な協力をしなくなることが考えられ、正確な情報を収集することが困難となるため、調査に支障をきたすおそれがある。
    さらに、懲戒処分等を行うに当たっての検討事項等については、懲戒処分を公正に行うため、秘密を前提に記載されるのが通常であることから、一般に知られることにより、的確な記載がされず、公正かつ円滑な人事の確保に支障を及ぼすおそれがあるため、条例第7条第4号に該当する。
    本件行政文書1及び2のうち、調査報告書以外の部分及び本件行政文書3には、関係者しか知り得ない当該事故に関する詳細な情報が記載されており、公開することにより関係者との信頼関係が損なわれ、今後の学校教育活動に支障をきたすおそれが生じることから、条例第7条第4号に規定するところの、公正かつ円滑な人事の確保に支障を及ぼすおそれのある情報である。
    なお、調査報告書については、審査会答申第245号(平成15年9月30日)、審査会答申第446号(平成19年10月17日)、審査会答申第462号(平成21年9月11日)及び審査会答申第463号(平成21年9月11日)により、条例第7条第4号に該当すると判断されているものである。また、学校事故報告書については、過去に審査会において審査され、審査会答申第226号(平成15年7月10日)、審査会答申第227号(平成15年7月10日)及び審査会答申第369号(平成18年12月26日)により、条例第7条第4号に該当すると判断されているものである。

2 審査請求の理由に対する反論について

  • (1)「職務上に関する違法行為であるので公開されるべきで、行政自らが教諭を擁護し、事件の隠ぺいをしており、問題解決を遅らせている」との主張について
    いずれも条例第7条第1号ただし書に該当せず、理由のないものである。
  • (2)「事実関係、事情聴取、弁明書、高校からの事故報告書等については決定通知書において、存在すら触れられていない」との主張について
    事実関係、事情聴取、弁明書については、本件行政文書1・2のうち調査報告書に含まれているものであり、調査報告書については、平成29年1月23日付け28教高第◯◯号行政文書一部公開決定通知書において公開しない部分である旨、記載している。なお、高校からの事故報告書等については、平成29年2月24日付け28教高第◯◯号行政文書非公開決定通知書により、非公開決定を行ったものである。
  • (3)「今回の問題点の解明及び今後の防止のためにも、正確な事実確認、その原因、背景等が明らかにされたものが必要である」との主張について
    当該主張は、本件行政文書の非公開情報該当性の議論とはなんら関係のないものであり、非公開理由に該当しないという主張にはなっておらず、理由のないものである。

第5 審査会の判断

1 判断における基本的な考え方について

条例は、その第1条にあるように、県民の行政文書の公開を求める権利を具体的に明らかにするとともに、行政文書の公開に関し必要な事項を定めることにより、県の保有する情報の一層の公開を図り、県政に関し県民に説明する責務が全うされるようにし、県政に対する県民の理解と信頼を深め、もって地方自治の本旨に即した県政の発展に寄与することを目的として制定されたものであり、審査に当たっては、これらの趣旨を十分に尊重し、関係条項を解釈し、判断するものである。

2 本件行政文書の内容について

本件行政文書1~3の内容については、別表2のとおりである。

3 本件処分1について

  • (1)非公開情報該当性について
    次に掲げる各非公開条項についての基本的な考え方に基づき、判断する。
    • ア 条例第7条第1号の該当性について
      本号は、個人の尊厳及び基本的人権の尊重の立場から、個人に関する情報は最大限に保護されることが必要であるため、特定の個人が識別され得る情報は、原則として非公開とすることを定めたものである。また、我が国において、プライバシーの具体的な内容が法的にも社会通念上も必ずしも明確ではなく、その内容や範囲は事項ごと、各個人によって異なり得ることから、本条例は、プライバシーであるか否か不明確な情報も含めて、特定の個人が識別され得る情報を包括的に非公開として保護することとした。加えて、個人を識別することはできないが、公にすることにより、なお個人の権利利益を害するおそれがあるものについても、非公開とすることを定めたものである。しかし、これらの個人に関する情報には、個人の権利利益を侵害しないと考えられ非公開とする必要のない情報及び公益上の必要があると認められる情報も含まれているので、これらの情報を本号ただし書で規定し、公開することとしている。
    • イ 条例第7条第4号の該当性について
      本号は、県の機関等が行う事務又は事業の目的達成又は適正な執行の確保の観点から、当該事務又は事業に関する情報の中で、当該事務又は事業の性質、目的等からみて、公開することにより、将来の当該事務又は事業の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがある情報については、非公開とすることを定めている。
  • (2)別表1「非公開部分」の調査報告書について
    審査請求人は、事実関係、事情聴取、弁明書について存在等について触れられていないので、実施機関は文書を特定して公開非公開の判断をすべき旨、主張している。これに対して、実施機関は、事実関係、事情聴取、弁明書については調査報告書に含まれている旨を主張している。審査会で見分したところ、調査報告書には、当該事件の事実関係、当該懲戒処分を受けた教諭及び関係者からの事情聴取、教諭の当該事件に関する弁明の内容が含まれており、特定がされており、非公開の判断がなされている。
    まず、調査報告書について条例第7条第1号の該当性について検討する。調査報告書は、いずれもセクシャル・ハラスメント又はわいせつ行為、体罰及び不適切な言動に関する事件について調査した結果をまとめた文書であり、被処分者の所属、氏名、住所、年齢及び経歴、事件の概要及び経緯、事件当事者やその家族の主張及び行動、懲戒処分を行うに当たっての検討事項等が、具体的かつ詳細に記載されている。これらの情報は、加害者である被処分者、被害者等の個人に関する情報であり、関係者からの事情聴取等によって取得した情報又はそれに基づいて作成した情報である。そして、セクシャル・ハラスメント又はわいせつ行為、体罰及び不適切な言動という事件の性格から、被害者にとっては他者に知られたくない個人情報の中でも特に取扱いに注意すべきセンシティブな情報であり、関係者しか知り得ない情報であると認められる。
    よって、調査報告書は、特定の個人を識別することができる情報又は特定の個人を識別することはできないが、公にすることにより、個人の人格権など権利利益を害するおそれがある情報であるので、条例第7条第1号本文に該当し、ただし書に該当しないと判断される。
    次に、条例第7条第4号の該当性について検討する。このような事件が発生した場合、実施機関は、事件の当事者である本人のほか、上司、同僚等の関係者から事情聴取を行うとともに、関係機関に照会を行い、必要に応じて参考となる関係資料の提出を求め、調査、分析を行っている。そして、これらの事情聴取等は、実施機関に強制捜査権限がないことから、他に公表しないことを前提に任意に行われるものであり、調査報告書を公にすれば、関係当事者間の協力関係や信頼関係が損なわれる。したがって、調査報告書を公にすれば、将来の同様な事件の調査において、関係者からの事情聴取等に際し関係者が報告することを躊躇したり、調査に対し十分な協力をしなくなったりするなど、懲戒処分の決定に必要とされる正確な情報を収集することが困難になると認められる。
    よって、調査報告書は、公にすることにより、公正かつ円滑な人事の確保に支障を及ぼすおそれがあるので、条例第7条第4号に該当する。
    次に、審査請求人は、調査報告書について、公開されても問題がない部分がある旨、主張しているので、一部公開の可否について検討する。
    条例第8条第1項は、公開請求に係る行政文書の一部に非公開情報が記録されている場合において、非公開部分を容易に区分して除くことができるときは、当該部分を除いた部分につき公開すること、また同第2項は、公開請求に係る行政文書に条例第7条第1号の情報が記録されている場合において、個人を識別することができることとなる記述等の部分を除くことにより、公にしても個人の権利利益が害されるおそれがないと認められるときは、当該部分を除いて公開することを規定している。
    上記で検討したとおり、調査報告書の内容は、関係者からの任意の事情聴取等によって取得した情報である。これを一部でも公にすれば、関係当事者間の協力関係や信頼関係が損なわれ、公正かつ円滑な人事の確保に支障を及ぼすおそれがあるので、非公開部分を容易に区分して除くことはできない。よって、全体として条例第7条第4号に該当することから、条例第8条第1項の規定による一部公開はできない。
    また、調査報告書には、全体にわたって事件関係者の権利利益に関わる個人情報が記載されており、個人識別性のある部分を除いたとしても、公にすることにより、なお個人の人格権など権利利益を害するおそれがあるので、全体として条例第7条第1号に該当することから、条例第8条第2項の規定による一部公開はできない。
  • (3)本件行政文書1~3のうち、教員の氏名及び所属が分かる情報について
    実施機関は、これらの情報は、条例第7条第1号本文に規定するところの、特定の個人を識別することができる情報又は特定の個人を識別することはできないが、公にすることにより、なお個人の権利利益を害するおそれがある情報であり、同号ただし書にも該当しないとしている。一方で、審査請求人は、高校教諭及び中学校教諭の氏名については、職務上に関する違法行為であるので公開されるべきである旨、主張している。
    そこで、条例第7条第1号ただし書ウの該当性について検討する。条例第7条第1号ただし書ウでは、「公務員等の職務の遂行に係る情報に含まれる当該公務員等の職の名称その他職務上の地位を表す名称及び氏名(公にすることにより、当該個人の権利利益を不当に害するおそれがあるもの及びそのおそれがあるものとして実施機関が定める職にある公務員の氏名を除く)」を例外的に公開することとしている。ここでいう、「職務の遂行に係る情報」とは、当該個人がその担当する職務を遂行する場合に記録された情報をいう。したがって、公務員の職員としての身分取扱いに係る情報などは、当該公務員にとっては、その職務遂行に係る情報ではない。判例(平成15年11月21日最高裁判所判決:平成12年(行ヒ)第334号)では、「職員が懲戒処分を受けたことは、公務遂行等に関して非違行為があったということを示すにとどまらず、公務員の立場を離れた個人としての評価をも低下させる性質を有する情報というべきであるから、私事に関する情報の面を含むものということができる」とし、当該公務員を識別できる部分を非公開としている。
    ここで、本件行政文書1及び2を見たところ、教員の懲戒処分に係る内容であり、上記調査報告書以外の部分については、当該教員の氏名及び所属が分かる情報が含まれている。当該情報は、公務員の職員としての身分取扱いに係る情報に当たる。
    よって、本件教員の氏名及び所属が分かる情報は条例第7条第1号ただし書ウに該当しない。
    次に、審査請求人は、教諭に関することについては裁判でも明らかになったはずであるから公開されるべきである旨、主張していることから、本件教員の氏名及び所属が分かる情報の条例第7条第1号ただし書アの該当性について検討する。条例第7条第1号ただし書アでは、「法令又は条例の規定により又は慣行として公にされ、又は公にすることが予定されている情報」を例外的に公開することとしているが、条例の解釈においては、当該情報は何人にも容易に入手できる状態に置かれている情報をいい、法令に「何人も」と規定されていても請求目的等により閲覧が制限され、実質的に何人にも閲覧を認める趣旨でないものは該当しないとされている。
    これについて、裁判所において実際に訴訟記録の閲覧制度があり、何人も訴訟記録の閲覧を請求できる旨の規定がある。しかしながら、「何人も」と規定されてはいても、あらゆる場合に閲覧ができるわけではなく、秘密保護のための閲覧制限など一定の制限がある。また、訴訟記録の謄写を請求できる者も当事者及び利害関係者に限られている。よって、訴訟記録は「何人にも容易に入手できる状態」に置かれている情報とは言えず、法令又は条例の規定により又は慣行として公にされ、又は公にすることが予定されている情報には当たらない。また、審査会で調査したところ、本件行政文書は、実施機関において懲戒処分等の内容を公表している事案に係るものであることが確認された。審査会において当該懲戒処分について公表された資料を確認したところ、本件処分において公開した部分を除く懲戒処分に係る教員の氏名及び所属が分かる情報は公表内容には含まれていない。以上より、条例第7条第1号ただし書アに該当しない。また、ただし書イ及びエに該当しないことは明らかである。
    次に、本件行政文書3における教員の氏名及び所属が分かる情報について、条例第7条第1号ただし書の該当性を先述の基準に照らして検討する。本件行政文書3は、学校事故報告書であり、その内容は授業中等における生徒に対する暴力行為等に関するものである。当該事故は授業中に起こったものであり、教員の職務上の行為において発生したものであると考えられるが、公開することにより、なお当該教員の権利利益を不当に害するおそれがあると考えられる。よって、条例第7条第1号ただし書ウのうち、「公にすることにより、当該個人の権利利益を害するおそれがあるもの」に該当すると判断される。
    ここで、実施機関が主張しているもう一方の理由である条例第7条第4号の該当性について検討する。学校事故報告書については、事件に関する詳細な内容が記載されている。当該職員の氏名及び所属が分かる情報を明らかにすることにより、同様の事件が発生した際に事件に関係する教員が報告を行うことを躊躇したり、学校、市町教育委員会及び実施機関の調査に対する十分な協力が得られなくなったりするなど、同種の事件に関する正確な事実の把握が困難になる。これにより、実施機関における懲戒処分等の人事管理に関する事務に支障が生じるおそれがある。さらに、学校からの市町教育委員会に対する報告及び市町教育委員会から実施機関に対する報告が、重要又は異例に属するかどうかの判断が微妙な場合に行われなくなったり、報告内容が簡略化したりするなど、市町教育委員会及び実施機関における正確な事実の把握が不十分となり、学校事故に係る事実関係を正確に把握して適切な学校の管理運営を確保することが目的である学校事故報告の事務に支障が生じるおそれがあると認められる。よって、当該教員の氏名及び所属が分かる情報は条例第7条第4号に該当すると判断される。
  • (4)上記(2)、(3)以外の非公開部分について
    審査会で見分したところ、当該非公開部分には、関係者の氏名、年齢、性別、住所、学年組、関係する日時及び場所、被害の程度等が記載されているので、これらの情報について実施機関が主張する条例第7条第1号の該当性について検討する。
    本件行政文書は、セクシャル・ハラスメント又はわいせつ行為、体罰及び不適切な言動の事件に関するものである。本件公開請求により既に公開している情報だけでなく、事件に関係する学校の生徒、保護者等が入手可能と思われる情報を合わせれば、当該非公開部分を公にすることにより、特定の学校の事件に関するものと推測され、結果的に被害者が識別されるおそれがあることは否定できない。また、当該非公開部分のうち、特定の個人を識別することができる可能性が少ないと考えられる部分であっても、セクシャル・ハラスメント又はわいせつ行為、体罰及び不適切な言動に係る事件の被害者にとっては他者に知られたくない内容が記載されているので、公にすることにより、被害者等に精神的な苦痛を与え、人格権など個人の権利利益を害するおそれがある。よって、条例第7条第1号本文に該当し、ただし書に該当しないと判断される。
  • (5)審査請求人のその他の主張について
    審査請求人は、その他種々の主張をしているが、いずれも公開非公開について当審査会の上記判断を左右するものではない。

4 本件処分2について

文書の特定の妥当性について

実施機関は、「県立高教諭停職4ヶ月『教え子にわいせつ行為』に係る学校等からの報告書」について、当該懲戒処分は、県及び被処分者に対する損害賠償請求訴訟において、被処分者の行為が不法行為と認定され、当該判決が確定したことに伴い実施したものであり、学校等からの報告は不要であるため、当該請求に係る行政文書は存在しないとして、本件処分2を行っている。
審査請求人は、高校からの事故報告書等を具体的に特定して公開すべきである旨主張している。また、教え子にわいせつ行為をした案件は損害賠償請求訴訟であることから、当事者、学校、教育委員会からの報告等が必要であり、訴訟以前、それ以後に報告書等が必要である旨、主張している。
そこで、実施機関に文書の特定に関して詳細な説明を求めたところ、請求書の記載内容には「県立高教諭停職4ヶ月」とあり、当該停職4ヶ月の処分は、裁判の判決確定に伴い実施したものであることから、特定する文書を裁判の判決確定以後に実施機関に提出されたものとして特定したとのことであった。なお、実施機関は当該文書の特定に当たって、「停職4ヶ月」という文言を請求書に記載している意図が、停職4ヶ月の懲戒処分の前に行われた当初の服務上の措置に係る報告書等を含むのではなく、裁判の判決確定後に実施機関に提出された報告書等に限ることを示すものである旨の確認を請求者に行ってはいない。これに対して、審査請求人は、反論書において訴訟以前、以後に報告書が必要である旨を主張しており、当該請求に当たって、実施機関が述べているように判決確定後に提出された文書に限定している意図はなく、当初の請求時点から判決確定以前の文書も念頭に入れていたと推認できる。よって、本件請求においては、裁判の判決確定以後に学校等から実施機関に提出された報告書等のみを特定するのではなく、裁判の判決確定以前に提出された報告書等も対象に含めて特定すべきだったと判断される。
なお、実施機関に確認したところ、当該懲戒処分に係る裁判以前に当該懲戒処分を受けた教諭に関して、当時の所属高校から報告書等が提出されているということであった。
したがって、実施機関は行政文書の不存在を理由として行った非公開決定を取り消し、訴訟以前に実施機関に提出された報告書等を含めて本件請求対象の行政文書として特定し、改めて公開又は非公開の判断を行うべきである。

よって、当審査会は、「第1 審査会の結論」のとおり判断する。

第6 審査会の審査経過

(省略)

別表1
非公開部分 行政文書 該当号 非公開理由
公開請求に係る行政文書のうち、次の部分(公開部分を除く。)
  • (a)教員及び関係者に係る氏名、年齢、性別、住所、学年組など、個人が特定され、又は個人の権利利益を害する部分
  • (b)関係する年月日、曜日など、日が特定される部分
  • (c)個人及び学校の特定につながる場所の所在地・住所など
  • (d)事実関係、状況等のうち、個人及び学校の特定につながる部分、個人の権利利益を害することにつながる部分、任意の協力に基づく調査等に関する情報又は人事管理に関する情報
  • (e)文書番号、校長の所属・氏名・公印の印影など、学校の特定につながる部分

1~3

条例

第7条

第1号

 

第4号

  • 第1号について
    特定の個人を識別することができる情報又は特定の個人を識別することはできないが、公にすることにより、なお個人の権利利益を害するおそれがある情報であるため。
  • 第4号について
    関係者しか知り得ない当該事案に関する調査情報、教職員の人事管理に関する情報等が記載されており、公開することにより、関係者との信頼関係が損なわれ、今後の学校教育活動に支障をきたすおそれがあるとともに、人事管理に関する事務又は将来の同種の事務事業の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあるため。
調査報告書

1、2

別表2
行政文書の内容  

本件行政文書1

懲戒処分を行うに当たり、調査の内容及び検討事項等が記載され、処分等の検討、決定に用いるもの。
  • ア 起案文書の表紙、起案理由
  • イ 教育委員会定例会説明資料
  • ウ 処分等の内容が記載された辞令書案
  • エ 処分理由が記載された処分説明書案
  • オ 教育長からの関係学校長あての処分通知案
  • カ 教育長から香川県人事委員会委員長あての通知案
  • キ 調査報告書

本件行政文書2

懲戒処分を行うに当たり、調査の内容及び検討事項等が記載され、処分等の検討、決定に用いるもの。
  • ア 起案文書の表紙、起案理由
  • イ 教育委員会定例会説明資料
  • ウ 調査報告書
  • エ 処分等の内容が記載された辞令書案
  • オ 処分理由が記載された処分説明書案
  • カ 教育長から西部教育事務所長及び善通寺市教育委員会あての処分通知案
  • キ 教育長から香川県人事委員会委員長あての通知案
  • ク 善通寺市教育委員会から香川県教育委員会への内申書

本件行政文書3

懲戒処分を行うに当たり、調査の内容及び検討事項等が記載され、処分等の検討、決定に用いるもの。
  • ア 善通寺市教育委員会から香川県教育委員会教育長あての学校事故報告書の副申書
  • イ 関係学校長から善通寺市教育委員会教育長あての学校事故報告書

401号~450号 451号~500号 501号~

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