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公開日:2016年4月13日

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平成28年4月13日答申第44号(香川県個人情報保護審議会答申)

平成28年4月13日(答申第44号)

第1 香川県個人情報保護審議会(以下「審議会」という。)の結論

西部子ども相談センター(以下「処分庁」という。)が行った一部開示決定(以下「本件処分」という。)により不開示とした部分のうち、表1、表2及び表3の「開示すべき部分」欄に掲げる部分については、開示すべきである。

第2 審査請求に至る経過

1 保有個人情報の開示請求

平成27年7月2日、審査請求人は、香川県個人情報保護条例(平成16年条例第57号。以下「条例」という。)第14条第1項の規定に基づき、処分庁に対し「請求者本人○○における相談面接記録」(以下、「本件請求1」という。」)、「子 ○○における相談等の面接記録」(以下、「本件請求2」という。」)及び「子 ○○における相談等の面接記録」(以下、「本件請求3」という。」)の開示請求を行った。

2 処分庁の決定

処分庁は、本件請求1に係る審査請求人の保有個人情報が含まれる行政文書として、「○○・○○における相談記録」(以下「本件保有個人情報1」という。)を、本件請求2に係る審査請求人の保有個人情報が含まれる行政文書として、「子 ○○における心理面接記録」(以下「本件保有個人情報2」という。)を、また、本件請求3に係る審査請求人の保有個人情報が含まれる行政文書として、「子 ○○における心理面接記録」(以下「本件保有個人情報3」という。)を、それぞれ特定し、平成27年7月16日付で本件処分を行い、審査請求人に通知した。

3 審査請求

審査請求人は、本件処分を不服として、平成27年9月14日付けで行政不服審査法(昭和37年法律第160号)第5条の規定により、香川県知事(以下「諮問庁」という。)に対して審査請求を行った。

第3 審査請求人の主張

1 審査請求の趣旨

審査請求の趣旨は、「本件審査請求に係る処分のうち、一部不開示とした処分を取り消し、全てを開示する旨の決定をするとの裁決を求める。」というものである。

2 審査請求の理由

審査請求書において主張している審査請求の理由は次のとおりである。

  • (1) 処分庁は、一部不開示とした処分の理由として、香川県個人情報保護条例(以下、「県条例」という。)第16条第2号、第5号、及び第6号を挙げる。しかし、次のとおり、その決定には理由がない。
  • (2) ア 第16条第2号について
    本件の情報はいずれも、人の生命、健康、生活又は財産を保護するため、開示することが必要である(同号但し書き)。○○及び○○(以下、「○○ら」という。)は、平成27年○月○日、○○地方裁判所○○支部において、父である○○を被告とし、同人による○○及び虐待等に基づく損害賠償を求めて提訴した(同庁平成27年(○)第○○号)。○○(父)は、○○らの主張する前記虐待等の事実を全て否認し、実子である同人らが虚偽の主張をしているとして徹底的に争う姿勢を見せている。これを受け、○○らが、虐待等の事実を立証するため、処分庁に対し、相談記録及び心理面接記録の開示を求めたところ、一部のみしか開示されず、立証に役立つ資料は一切開示されなかった。本件の情報のほか、立証に有効な証拠はなく、このままでは、虐待等の事実を立証するには、○○らが自ら、法廷において証人尋問を受け、○○の代理人弁護士からも厳しい反対尋問を受けるという望まない方法によらざるを得なくなる。○○は現在○歳と年少である上、○○に罹患して治療を受けている最中であり、また、○歳と年少であって外部からのストレスに非常に弱い状態であるため、厳しい証人尋問を受けさせることは絶対に避けねばならないところである。他方で、証人尋問を回避した上で本件の情報が開示されなければ、○○らの請求は認められないこととなり、勇気を振り絞って実父を相手に提訴したことが徒労に終わって、虐待等を受けたことによる深い人格権等の侵害が救済されないばかりか、自己の正当な権利すら実現されないと感じることによる、さらなる深い精神的苦痛をも抱えてこれからの長い人生を過ごすことを余儀なくされることとなる。したがって、少なくとも、本件の情報はいずれも、人の生命、健康、生活又は財産を保護するため、開示することが必要であるといわねばならない。
    イ 第16条第5号について
    本件の情報のいずれを開示しても、事務又は事業の適正な遂行に「著しい」支障を及ぼすおそれはない。
    本決定のいずれにおいても、「開示することができない理由」欄に、「今後の事務の遂行に支障を及ぼすおそれがある」と記載されているのみであり、「著しい」支障を及ぼすおそれがあるとは一切、記載されていない。したがって、本件の情報のいずれを開示しても、事務の適正な遂行に「著しい」支障を及ぼすおそれはないといえ、少なくともこの点に本決定の誤りがあると言わねばならない。また、(2)ア記載のとおり、全ての開示を求める理由は、本件情報の対象である○○及び○○の生命、健康、生活及び財産を保護するためであり、これに優先する利益はない。したがって、一部不開示とした本決定に理由はない。
    ウ 第16条第6号について
    本件の情報のいずれを開示しても、事務又は将来の同種の事業の適正な遂行に「著しい」支障を及ぼすおそれはない。本決定のいずれにおいても、「開示することができない理由」欄に「相談業務の遂行に支障を及ぼすおそれがある」と記載されているのみであり、「著しい」支障を及ぼすおそれがあるとは一切、記載されていない。したがって、本件の情報のいずれを開示しても、当該事務又は将来の同種の事務の適正な遂行に「著しい」支障を及ぼすおそれはないといえ、少なくともこの点に本決定の誤りがあると言わねばならない。また、(2)ア記載のとおり、全ての開示を求める理由は、本件情報の対象である○○及び○○の生命、健康、生活及び財産を保護するためであり、これに優先する利益はない。したがって、一部不開示とした本決定に理由はない。

3 意見書による主張

意見書による主張は、おおむね次のとおりである。

  • (1)理由説明書における条例第16条第2号の該当性について
    不開示とした部分の内容が、(a)「開示請求者及びその子らの発言のみに基づくものであり、第三者に関する情報の内容が真実であることを立証したものではない」ため、(b)「開示することが必ずしも開示請求者及びその子らの利益につながるとは限らず、人の生命、健康、生活又は財産を保護するため、開示することが必要である情報とは言えない」(c)「よって、開示請求者以外の個人に関する情報であって、開示することにより、当該個人の権利利益を侵害するおそれがあると認められる」と主張する。
    (a)について、開示請求者(審査請求人)は、本記録をもって、西部子ども相談センターによる事実の立証がなされたとして利用することを予定しておらず、記録が開示されなければ、立証手段が子らの尋問のほかになく、子らへの負担を考え、できる限り尋問を回避したいため、開示請求者やその子らの発言を記録した本記録を、尋問に代わる立証手段として利用することを予定している。つまり、開示請求者は、発言内容の真実性を立証するためではなく、開示請求者やその子らがそのように発言したことを立証するために利用することを予定している。
    (b)について、これが誤りであることは上記のとおりである。また、「開示することが必ずしも開示請求者及びその子らの利益につながるとは限ら」ないから、「人の生命、健康、生活又は財産を保護するため、開示することが必要である情報とは言えない」との論理にも飛躍があり、誤りである。
    また、理由説明書は、(b)「人の生命、健康、生活又は財産を保護するため、開示することが必要である情報とは言えない」。(c)「よって、開示請求者以外の個人に関する情報であって、開示することにより、当該個人の権利利益を侵害するおそれがあると認められる」と主張するが、(b)ならば(c)であるという関係にはない。
  • (2)理由説明書における条例第16条第5号及び同条第6号の該当性については、審査請求書に記載のとおりである。(3)以上のとおり、理由説明書の主張は誤りであり、その主張に理由がないことは明らかである。少なくとも、開示請求者及びその子らが発言した内容については、本人らの発言内容をそのまま記載したものであって本人らの情報そのものであり、発言内容の真実性を立証するものではないとの注意書きを加えてでも、すべて開示されなければならない。

第4 諮問庁の理由説明

1 本件処分における不開示条項の該当性

  • (1)条例第16条第2号の該当性
    • ア 趣旨
      条例第16条第2号では、開示請求者以外の個人に関する情報であって、開示することにより、当該個人の権利利益を害するおそれがあるものを不開示情報と定めている。また、ただし書きでは「人の生命、健康、生活又は財産を保護するため、開示することが必要であると認められる情報」については開示しなければならないと定めている。
    • イ 該当箇所
      (ア)本件保有個人情報1「表1」中、条例第16条第2号該当(不開示)とした部分
    • ウ 該当性
      これらは、西部子ども相談センター等で実施された面接の記録のうち、開示請求者以外の個人に関する情報であるが、その内容はあくまでも開示請求者及びその子らの発言のみに基づくものであり、第三者に関する情報の内容が事実であることを立証したものではない。そのため、開示することが必ずしも開示請求者及びその子らの利益につながるとは限らず、人の生命、健康、生活又は財産を保護するため、開示することが必要である情報とは言えない。よって、開示請求者以外の個人に関する情報であって、開示することにより、当該個人の権利利益を害するおそれがあると認められることから、条例第16条第2号の不開示情報に該当する。
  • (2)条例第16条第5号の該当性
    • ア 趣旨
      条例第16条第5号では、県の機関等が行う事務又は事業に関する情報であって、開示することにより、当該事務又は事業の性質上、当該事務又は事業の適正な遂行に著しい支障を及ぼすおそれがあるものを不開示情報と定めている。
    • イ 該当箇所
      • (ア)本件保有個人情報1
        「表1」中、条例第16条第5号該当(不開示)とした部分
      • (イ)本件保有個人情報2
        「表2」中、条例第16条第5号該当(不開示)とした部分
      • (ウ)本件保有個人情報3
        「表3」中、条例第16条第5号該当(不開示)とした部分
    • ウ 該当性
      • (ア)本件保有個人情報1
        これらは、条例第16条第5号に該当する内容である。具体的には、児童相談所の事務に関する情報であって、開示することとなると、児童相談所の対応に関するノウハウや関係機関との連携体制が明らかになり、関係機関等との連携に大きな影響を受けるものである。よって、これらを開示すると児童に必要な支援を実施する上での今後の事務の遂行に支障を及ぼすおそれがあることから、不開示情報に該当するものである。
      • (イ)本件保有個人情報2及び3
        これらは、条例第16条第5号に該当する内容である。具体的には、開示することで児童相談所の心理面接における着眼点、記載形式等が明らかになり、面接において心理面接本来の目的に沿った成果が得られなくなるものである。面接の成果が得られなくなると、今後の児童相談所の主要業務である相談援助に支障を及ぼすおそれがあることから、不開示情報に該当するものである。
  • (3)条例第16条第6号の該当性
    • ア 趣旨
      条例第16条第6号では、個人の評価、診断、選考、相談等の事務に関する情報であって、開示することにより、当該事務又は将来の同種の事務の適正な遂行に著しい支障を及ぼすおそれがあるものを不開示情報と定めている。
    • イ 該当箇所
      • (ア)本件保有個人情報1
        「表1」中、条例第16条第6号該当(不開示)とした部分
      • (イ)本件保有個人情報2
        「表2」中、条例第16条第6号該当(不開示)とした部分
      • (ウ)本件保有個人情報3
        「表3」中、条例第16条第6号該当(不開示)とした部分
    • ウ 該当性
      • (ア)本件保有個人情報1
        これらは、条例第16条第6号に該当する内容である。具体的には、児童相談所の担当職員が開示請求者からの相談内容や情報を基に、担当者の判断や評価を加えて記録したものであり、開示することとなると、担当者が問題の本質に結びつく情報の記載に消極的になる可能性が否定できず、今後児童相談所における記録が形骸化するなど、相談業務の遂行に支障が生じるおそれがあることから、不開示情報に該当するものである。
      • (イ)本件保有個人情報2及び3
        これらは、条例第16条第6号に該当する内容である。具体的には、児童相談所で行われた心理面接の内容について、担当者が心理的視点からの評価や見立てを交えて記録したものである。開示することとなると、開示することを前提に個人の評価等が行われ、画一的な個人の評価等がなされることにより、今後事務の形骸化を招いたり、事務の持つ本来の目的である心理面接を通した子どもの状況の把握ができなくなるおそれがあることから、不開示情報に該当するものである。

第5 審議会での検討

1 本件保有個人情報の内容等について

諮問庁に確認した内容は次のとおりである。
児童相談所(本県においては、子ども女性相談センター及び西部子ども相談センター)は、児童福祉法(昭和22年法律第164号)第1条に規定する児童福祉の理念を実現するため、同法第12条に基づき設置される行政機関であり、市町村と適切な役割分担・連携を図りつつ、子どもに関する家庭その他からの相談に応じ、子どもが有する問題又は子どもの真のニ−ズ、子どもの置かれた環境の状況等を的確に捉え、個々の子どもや家庭に最も効果的な援助を行い、もって子どもの福祉を図るとともに、その権利を擁護することを主たる目的として都道府県、指定都市等に設置される行政機関である。 「児童相談所運営指針について」(平成25年12月27日付け雇児発1227第6号)によると、児童相談所では、子どもや保護者等の相談内容を理解し、児童相談所に何を期待し、また、児童相談所は何ができるかを判断するために相談が開始され、その相談の中で、主訴、問題の内容、現在の状況等、子どもや保護者の様子などの把握が行われるとともに、緊急対応の必要性等の判断や、今後の相談援助方法についての説明等が行われ、その内容が「相談記録」としてまとめられる。本件処分に係る行政文書である本件保有個人情報1は、これに該当する。
また、同運営指針によると、問題に直面している子どもの福祉を図るためには、その子どもの状況及び家庭、地域状況等について十分に理解し、問題解決に最も適切な専門的所見を確立する必要があるため、医学(特に精神医学及び小児医学)、心理学、教育学、社会学、社会福祉学等の専門的知識・技術を効果的に活用し、客観的に診断することとされており、診断は、専門性を有する者が担当することとされている。
このうち児童心理司による心理診断については、面接、観察、心理検査等をもとに心理学的観点から援助の内容、方針を定めるために行われ、面接による情報の収集については、できる限り子どもや保護者等の気持ちに配慮しながら実施され、その内容が「心理面接記録」としてまとめられる。本件処分に係る行政文書である本件保有個人情報2及び3は、これに該当する。

2 本件処分における条例第16条各号の該当性について

審査請求人から提出された審査請求書及び意見書並びに諮問庁から提出された理由説明書等を踏まえ、その不開示情報該当性について、以下のとおり判断する。

<○○・○○における相談記録(本件保有個人情報1)>

  • 処分庁が条例第16条第2号該当(不開示)とした部分[表1]
該当部分
(開示する部分を除く。)
審議会の判断
(結論)
審議会の判断
(開示すべき部分)
審議会の判断
(判断の根拠)
2 22行目〜23行目 開示 22行目〜23行目 既知情報に該当
  25行目〜26行目 開示 25行目〜26行目 既知情報に該当
3 2行目28文字目〜32文字目 開示 2行目28文字目〜32文字目 既知情報に該当
  3行目 開示 3行目 既知情報に該当
  10行目〜11行目 開示 10行目〜11行目 既知情報に該当
  13行目〜14行目 開示 13行目〜14行目 既知情報に該当
  16行目〜17行目 開示 16行目〜17行目 既知情報に該当
  20行目〜21行目 開示 20行目〜21行目 既知情報に該当
  22行目 開示 22行目 既知情報に該当
  23行目〜25行目 開示 23行目〜25行目 既知情報に該当
5 5行目〜6行目 開示 5行目〜6行目 既知情報に該当
  8行目〜9行目 開示 8行目〜9行目 既知情報に該当
  11行目〜13行目 開示 11行目〜13行目 既知情報に該当
  17行目 開示 17行目 既知情報に該当
  20行目〜21行目 開示 20行目〜21行目 既知情報に該当
  25行目〜26行目 開示 25行目〜26行目 既知情報に該当
6 1行目 開示 1行目 既知情報に該当
  4行目 開示 4行目 既知情報に該当
12 18行目 開示 18行目 既知情報に該当
  20行目 開示 20行目 既知情報に該当
  22行目〜25行目 開示 22行目〜25行目 既知情報に該当
13 5行目 開示 5行目 既知情報に該当
  14行目〜15行目 開示 14行目〜15行目 既知情報に該当
15 11行目〜12行目 開示 11行目〜12行目 既知情報に該当
  16行目〜21行目 開示 16行目〜21行目 既知情報に該当
18 1行目〜7行目 開示 1行目〜7行目 既知情報に該当
  10行目〜13行目 開示 10行目〜13行目 既知情報に該当
  14行目 開示 14行目 既知情報に該当
  19行目〜20行目 開示 19行目〜20行目 既知情報に該当
19 25行目〜26行目 開示 25行目〜26行目 既知情報に該当
20 1行目〜2行目 開示 1行目〜2行目 既知情報に該当
  4行目〜6行目 開示 4行目〜6行目 既知情報に該当
21 4行目 開示 4行目 既知情報に該当
  8行目〜15行目 開示 8行目〜15行目 既知情報に該当
  26行目 開示 26行目 既知情報に該当
22 1行目〜6行目 開示 1行目〜6行目 既知情報に該当
  7行目〜17行目 一部開示 8行目〜14行目
16行目〜17行目
7行目と15行目は16条6号に該当
23 6行目〜8行目 開示 6行目〜8行目 既知情報に該当
  10行目 開示 10行目 既知情報に該当
  25行目〜26行目 開示 25行目〜26行目 既知情報に該当
24 全て 開示 全て 既知情報に該当
26 11行目 開示 11行目 既知情報に該当
  17行目 開示 17行目 既知情報に該当
  23行目〜24行目 開示 23行目〜24行目 既知情報に該当
  26行目 開示 26行目 既知情報に該当
27 1行目 開示 1行目 既知情報に該当
  2行目〜3行目 開示 2行目〜3行目 既知情報に該当
29 8行目〜12行目 不開示   16条6号に該当
  15行目〜18行目 開示 15行目〜18行目 既知情報に該当
  21行目〜26行目 開示 21行目〜26行目 既知情報に該当
30 1行目〜8行目 開示 1行目〜8行目 既知情報に該当
  21行目 開示 21行目 既知情報に該当

条例第16条第2号では、開示請求者以外の個人に関する情報であって、開示することにより、当該個人の権利利益を害するおそれがあるものを不開示情報と定めている。また、同号の解釈においては、法令等の規定により又は慣行として開示請求者が知ることができる個人情報については、開示することにより当該第三者の権利利益を侵害するおそれが乏しいため、同条同号における不開示情報には該当しないとされている。
本件処分により同条同号該当として不開示とされた部分については、確かに審査請求人(母親)以外の第三者の事が記載された部分であるが、それらは母親が既に知り得ている情報(既知情報)を自ら話した内容であって、同号の解釈からも、条例第16条第2号における不開示情報には該当せず、開示することが妥当であると判断される。
なお、表1の22ページ7行目〜17行目の部分中、7行目及び15行目の部分を精査すると、これらの部分は職員が相談対応の中で母親に問いかけた発言部分である。また、表1の29ページ8行目〜12行目の部分は、母子が来所した際に職員が母子の様子を観察、評価した部分である。これらの部分につき処分庁は条例第16条第2号に該当するとして不開示としているが、これらの部分は個人の評価、相談等の事務に関する情報であって、開示することにより、今後、開示することを前提に評価等が行われ、画一的な評価等がなされるなど事務の形骸化を招いたり、事務本来の目的が損なわれるおそれがあるものと認められる。
したがって、当該情報は開示することにより、個人の評価、相談等の事務の適正な遂行に著しい支障を及ぼすおそれがあるものと認められる。よって、条例第16条第2号ではなく、条例第16条第6号に該当し、不開示とすることが妥当であると判断される。

  • 処分庁が条例第16条第5号該当(不開示)とした部分[表2]
該当部分
(開示する部分を除く。)
審議会の判断
(結論)
審議会の判断
(開示すべき部分)
審議会の判断
(判断の根拠)
1 2行目 不開示   16条5号に該当
  4行目〜9行目 不開示   16条5号に該当
  11行目 不開示   16条5号に該当
  13行目〜14行目 不開示   16条5号に該当
4 12行目〜26行目 不開示   16条5号に該当
6 14行目〜26行目(開示する部分を除く) 不開示   16条5号に該当
7 (開示する部分を除く) 不開示   16条5号に該当
8 (開示する部分を除く) 不開示   16条5号に該当
9 (開示する部分を除く) 不開示   16条5号に該当
10 (開示する部分を除く) 不開示   16条5号に該当
11 (開示する部分を除く) 不開示   16条5号に該当
12 1行目〜6行目 不開示   16条5号に該当
  15行目〜16行目(開示する部分を除く) 開示 15行目〜16行目 既知情報に該当
13 16行目 開示 16行目 既知情報に該当
  23行目〜25行目(開示する部分を除く) 不開示   16条5号に該当
14 (開示する部分を除く) 不開示   16条5号に該当
16 (開示する部分を除く) 不開示   16条5号に該当
17 (開示する部分を除く) 不開示   16条5号に該当
19 3行目〜6行目(開示する部分を除く) 開示 3行目〜6行目 既知情報に該当
23 4行目から5行目(開示する部分を除く) 開示 4行目から5行目 既知情報に該当
25 5行目〜6行目(開示する部分を除く) 不開示   16条5号に該当
26 2行目 不開示   16条5号に該当
27 5行目 開示 5行目 既知情報に該当
  22行目〜26行目(開示する部分を除く) 不開示   16条5号に該当
28 ※経過欄の記載事項全て 不開示   16条5号に該当
31 22行目〜23行目(開示する部分を除く) 不開示   16条5号に該当

条例第16条第5号では、県の機関等が行う事務又は事業に関する情報であって、開示することにより、当該事務又は事業の性質上、当該事務又は事業の適正な遂行に著しい支障を及ぼすおそれがあるものを不開示情報と定めている。
本件処分により同条同号該当として不開示とされた部分のうち、表2の12ページ15行目〜16行目の部分、13ページ16行目の部分、19ページ3行目〜6行目の部分、23ページの4行目〜5行目の部分及び27ページの5行目の部分を精査すると、これらの部分は、母親が発言した内容を単に記録したものであり、処分庁が主張するところの、県の機関が行う事務又は事業に関する情報であって、開示することにより当該事務又は事業の性質上、当該事務又は事業の適正な遂行に著しい支障を及ぼすおそれがあるものとは認められず、同条同号には該当しない。また、母親の発言の中に第三者の情報が含まれているとしても、前記、条例第16条第2号の検討段階で判断したとおり、同条同号にも該当しない。よって、開示することが妥当であると判断される。
表2のうちそれ以外の部分については、処分庁と他の関係機関(子らが通う学校、市、警察等)との連絡調整の内容が記載されており、本件相談に係る関係機関担当者の発言や案件処理の進め方に関する意向、保護時の状況記録等、処分庁及び関係機関が案件を処理していく際の詳細な進め方が、その主な内容となっている。
児童相談所が行う相談援助業務は、児童相談所単独でその情報収集を行うことは少なく、その後の援助業務においても、関係機関、関係者等との密接、迅速な連携と協力体制が必要となることから、対象となる児童との間だけでなく関係機関、関係者等との信頼関係が必要である。このような児童相談所における相談援助業務の性質を踏まえると、本件児童に係る情報提供をした関係機関、関係者等としては、処分庁に提供した情報及び処分庁との調整内容が、対象となる本件児童や法定代理人に開示されることは想定していないと解すべきである。したがって、本件個人情報に記録されたこれらの情報を開示することは、この信頼関係の構築、維持にとって重大な支障があるものと推察され、今後、関係機関、関係者等の協力が得られなくなることにより、児童相談所が適切な相談援助業務を実施するために必要となる情報の聴取や関係機関等との連携が困難になるおそれがあるなど、今後の相談援助業務の適正な遂行に著しい支障を及ぼすおそれがあるものと認められる。
よって、これらを開示すると、児童に必要な支援を実施する上で今後の事務の適正な遂行に著しい支障を及ぼすおそれがあるものと認められるため、条例第16条第5号に該当し、不開示とすることが妥当であると判断される。

実施機関が条例第16条第6号該当(不開示)とした部分[表3]
該当部分
(開示する部分を除く。)
審議会の判断
(結論)
審議会の判断
(開示すべき部分)
審議会の判断
(判断の根拠)
2 5行目〜8行目 不開示   16条6号に該当
  24行目(開示する部分を除く) 不開示   16条6号に該当
3 2行目4文字目〜5文字目 不開示   16条6号に該当
  2行目12文字目〜16文字目 開示 2行目12文字目〜16文字目 既知情報に該当
4 1行目〜10行目(開示する部分を除く) 不開示   16条6号に該当
5 18行目(開示する部分を除く) 開示 18行目 既知情報に該当
6 7行目〜8行目 不開示   16条6号に該当
  10行目〜12行目(開示する部分を除く) 不開示   16条6号に該当
13 19行目〜22行目 不開示   16条6号に該当
15 22行目〜24行目 不開示   16条6号に該当
18 21行目〜23行目 不開示   16条6号に該当
20 9行目〜10行目 不開示   16条6号に該当
22 7行目〜17行目 一部開示 8行目〜14行目
16行目〜17行目
左は既知情報に該当
7行目と15行目は16条6号に該当
  19行目〜25行目 不開示   16条6号に該当
25 24行目〜25行目(開示する部分を除く) 不開示   16条6号に該当
27 7行目〜12行目 不開示   16条6号に該当
31 7行目〜11行目 不開示   16条6号に該当

条例第16条第6号では、個人の評価、診断、選考、相談等の事務に関する情報であって、開示することにより、当該事務又は将来の同種の事務の適正な遂行に著しい支障を及ぼすおそれがあるものを不開示情報と定めている。
本件処分により同条同号該当として不開示とされた部分のうち、表3の3ページ2行目12文字目〜16文字目の部分、5ページ18行目の部分、22ページ8行目〜14行目の部分及び16行目〜17行目の部分を精査すると、これらの部分は、母親が発言した内容を単に記録したものであり、処分庁が主張するところの、県の機関が行う個人の評価等の事務に関する情報であって、開示することにより当該事務又は将来の同種の事務の適正な遂行に著しい支障を及ぼすおそれがあるものとは認められず、同条同号には該当しない。また、母親の発言の中に第三者の情報が含まれているとしても、前記、条例第16条第2号の検討段階で判断したとおり、同条同号にも該当しない。よって、開示することが妥当であると判断される。
上表のうちそれ以外の部分については、処分庁の職員が母親と面接した際の内容が記載されており、母親と会話した際の、母親の発言や観察した様子に対する評価や見立て、感想や希望、母親に対するアドバイスなどがその主な内容となっている。
これらの部分は個人の評価、相談等の事務に関する情報であって、開示することにより、今後、開示することを前提に評価等が行われ、画一的な評価等がなされたり、担当者が問題の本質に結びつく情報の記載に消極的になる可能性が否定できないなど、事務の形骸化を招いたり、事務本来の目的が損なわれるおそれがあるものと認められる。
よって、これらを開示すると、個人の評価、相談等の事務の適正な遂行に著しい支障を及ぼすおそれがあるものと認められるため、条例第16条第6号に該当し、不開示とすることが妥当であると判断される。

<子 ○○における心理面接記録(本件保有個人情報2)>
<子 ○○における心理面接記録(本件保有個人情報3)>
・処分庁が条例第16条第5号及び第6号該当(不開示)とした部分
【実施年月日】【実施場所】【担当】【児童氏名】以外の部分

条例第16条第6号では、個人の評価、診断、選考、相談等の事務に関する情報であって、開示することにより、当該事務又は将来の同種の事務の適正な遂行に著しい支障を及ぼすおそれがあるものを不開示情報と定めている。
諮問庁に確認したところ、心理面接についての記録は、相談者から聴取した内容だけでなく、専門的知識・技術を活用して行った面接・観察を通しての所見や支援の見立て等についても記載しており、児童相談所が判定を行うための資料となるものであって、その内容については、事案に対する見解や評価、判断の過程が明らかとなり得るものであるとの事であった。よって、これらを開示することにより、今後職員が開示されることを恐れて当たり障りのない情報のみを記載するようになるなど、記録の形骸化を招くことが予測されるとともに、職員が評価、判定等を行った内容について、被相談者との間に見解の相違や誤解、不信感、無用の反発等が生じ、被相談者との信頼関係を損なうおそれがあるなど、相談業務の適正又は円滑な遂行に著しい支障を及ぼすおそれがあるものと認められる。
よって、これらを開示すると、個人の評価、診断、相談等の事務又は将来の同種の事務の適正な遂行に著しい支障を及ぼすおそれがあると認められるため、条例第16条第6号に該当し、同条第5号の該当性について判断するまでもなく、不開示とすることが妥当であると判断される。

3 その他審査請求人の主張について

  • (1)条例第16条第2号の適用について審査請求人は、人の生命、健康、生活又は財産を保護するため、同条但し書きを適用して開示することが必要である旨主張しているが、第5において検討したとおり、開示するという点では結果的に審査請求人の主張は認められることになる。ここで、「但し書きを適用して」という審査請求人の主張の妥当性であるが、母親の既知情報に該当すると認められる部分については、同条同号本文には該当しないと判断していることから、但し書き該当の有無について検討の必要性は認められない。
  • (2)また、条例第16条第5号及び同条第6号の適用について、審査請求人は審査請求書の中で、処分庁が行った不開示決定の理由に「著しい」という文言が欠落していることをもって、当該情報を公開しても著しい支障を及ぼすおそれはないと主張しているが、諮問庁は理由説明書において、条例第16条第5号及び同条第6号の本文を引用した上で、それらに該当する旨主張しており、開示することにより著しい支障を及ぼすおそれがあるとの趣旨であると理解できる。また、既に検討したとおり、本件保有個人情報における同条第5号及び同条第6号の適用については、開示した場合の支障が著しいと判断される。
    このほか、審査請求人は、審査請求の理由において、条例第16条第5号及び同条第6号の適用を否定する根拠として、「○○及び○○の生命、健康、生活及び財産を保護するためであり・・・」ということを重ねて主張しているが、同条第5号及び同条第6号の解釈及び運用に関するものでないため、当審議会では判断しないものとする。

以上の結果、当審議会は「第1 香川県個人情報保護審議会の結論」のとおり判断する。

第6 審議会の審査経過

(省略)

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