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公開日:2020年12月10日

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2竹林整備の必要性

竹林は毎年たくさんのタケノコを出し、地下茎を四方に伸ばし面積を拡大します。竹林も人が手を加えることにより資源として有効に活用することが出来ますが、放置された荒廃竹林では様々な問題が発生します。

1.周囲への侵入・拡大

樹木が竹と同じ樹高となるまでに最低でも10年程度が必要であるのに対し、竹はわずか2~3ヶ月で高さ10~20mに成長します。また、主な樹木は更新するのに空間が必要で、しかも林内が暗いと成長が困難ですが、タケは樹高成長した後に葉を出すことから樹高成長には光を必要とせず、空間を埋める早さの競争でも圧倒的に有利です。この特性により、放置竹林は周辺の森林に侵入・拡大し、森林の上にタケの樹冠を形成することにより光が当たらなくなり、樹木を枯らすなどの影響を及ぼします。

  • 樹冠とは…樹木の上部、枝や葉の集まった部分。

2.里山景観の変化

四季折々の変化に富んだ自然景観も、竹林が周辺の森林に侵入・拡大することにより、単一な竹林となります。また、適切に管理された竹林は景観として趣がありますが、放置された竹林は高密度化が進み、立ち枯れが発生し、立ち枯れた竹が倒伏し、中に入ることができないほど、荒れ果てた様相となり里山の景観としては望ましくありません。

3.生物多様性の低下

タケ類が優占する林分では、高密度に密生するために林内が暗くなり、下草が生えず、他の樹種が育たなくなるため、植物相が単純になります。
また、鳥が営巣したり、採餌したりする空間が少なくなり、鳥類の餌となる昆虫の種数・個体数や種子・果実等をつける樹木の種類や数などが減少してしまうことが考えられます。そして、全体の動植物種数が減少し、生物多様性が低下することになります。

  • 林分とは…林相(構成樹種、樹高の均一さ)がほぼ一様で、しかも周囲の森林とはっきり区別ができるような林地。

4.水源かん養・県土保全機能の低下

竹林の外縁では、竹の地下茎が直線的に伸長し、その地下茎から根が広がります。地下茎は、1年間に5m以上も伸びるといわれています。地下茎が縦横に伸長すると、地上も竹が密生し、他の植物が阻害され、タケという単一な植物が地上・地中を占めることとなります。

また、竹林では地表30cm程度まで地下茎が集中し、斜面及び地下茎に沿った水の流れが多くなり、地中深くへの水の浸透が少なくなるため、保水能力の低下(水源かん養機能の低下)が懸念されます。さらに手入れされず放置された荒廃竹林では地下茎が枯死し、浅い根になる傾向があります。そして、林床には植生が少ないため、土壌侵食や土砂崩壊の危険性が高くなります。
2004年(平成16年)の10月、台風23号に伴う降雨により、手入れ不足の放置された竹林が崩壊した箇所もありました。

5.地球温暖化防止吸収源としての機能低下

森林は、地球温暖化の主な要因である二酸化炭素を吸収し、炭素として貯留する機能を有しています。その貯留量は概ね樹木の現存量から換算され、木材の乾燥重量のおよそ半分が炭素です。竹林の地上部現存量の推定値は、およそ100ton/ha前後で、炭素貯留量に換算すると、50C-ton/ha前後で、若齢の人工林の値に近く、他の成熟した広葉樹や針葉樹に比べて低い値を示しています。したがって、竹林が放置され、隣接した森林に侵入・拡大することは炭素貯留量が頭打ちとなり、二酸化炭素の吸収源としての機能が低下するものと考えられます。

  • 現存量とは…ある時点である地域に現に存在する生きている生物の量的な推定値を指し、森林の場合、単位面積当たりの生物体量を材積あるいは絶乾重量で表す。

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