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公開日:2020年12月10日

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讃岐国府跡 調査現場から 7

香川県埋蔵文化財センター

土地等級の分析 ―坂出市神谷町・高屋町―

讃岐国府跡探索事業は、屋外作業ばかりではありません。
屋内で行う作業もあります。
前回調査をしてきた明治時代の地籍図に記された土地の等級(収穫高による田畑のランク分け)を基に、現代の公図に色塗りを行う作業を行います。
文字で書かれた等級を色に置き換えることで、視覚的に把握しやすくなります。
2010年8月、旧神谷村(坂出市神谷町)の色塗りは終わり、引き続き旧高屋村(坂出市高屋町)に取り組んでいます。

塗り絵の様子1「大人の塗り絵」に真剣に取り組むボランティア調査員。
背後には昨年度の色塗りの成果が。

塗り絵の様子2土地の等級に応じて色鉛筆を持ち替えて色を塗っていく。
最初は「サササ」と色鉛筆の走る音のみが響く室内。
しばらくすると・・・

地籍図ボランティア調査員A「ここらの区画はウエダさんばっかり載ってるなあ」
ボランティア調査員B「どれどれ・・・違うがな、これはジョウデン(上田)で、ランクが上の田んぼ!」

塗り絵の様子3ボランティア調査員C「こっちは字が小さくて読めないなあ。何て書いてあるんだ?」
ボランティア調査員B「パラララッパパーン!秘密兵器、両手が使える拡大鏡!」
一同「おおおおぉ!」

塗り絵の様子4思った以上に活躍する天眼鏡と、色塗りの進んだ公図。
かくして、大人の塗り絵は、子どもに負けず劣らずにぎやかに進んでいく。

明治時代の地籍図の調査 ―坂出市高屋町・神谷町―

この座布団みたいな四角いものは何?

広げてみると…明治時代の地籍図だった

讃岐国府が存在した綾北平野(坂出市東部の平野)では、土地の区割りを図示してそこに地番や土地の等級、所有者などを書き込んだ地籍図が保管されている所もあります。
そこに記された土地の等級(収穫量などによって田畑を上々・上・中・下・下々にランク分けしたもの)を調べると、一見平らな平野でも、ランク上位の田畑が固まる部分が微高地、下位の田畑が連続する部分が河川跡というような推定が出来ます。
この成果と、地形測量の成果を重ね合わせて、過去の地形を復原する作業が進んでいくのです。
2010年8月11日、旧高屋(たかや)村(坂出市高屋町)と旧神谷(かんだに)村(坂出市神谷町)の地籍図を実際に見ながら検討しました。

第3回研修会

大坂越の歴史について講義を受ける

現地で大坂越の基点を学ぶ

2010年8月2日、ボランティア調査員の平成22年度第3回研修会を東かがわ市引田の引田公民館で開催しました。
7月の活動成果報告に続いて、東かがわ市教育委員会の職員から旧南海道にもつながる大坂越(おおさかごえ)についての座学を受けた後、現地におもむいて大坂越の石碑や丁石、石畳などを見学し解説を受けました。

大坂越途中の石碑前にて

展望台からの眺め

最後に行った大坂峠の展望台からの引田を一望する雄大な眺めに、調査員の皆さんから思わず感嘆の声があがりました。
かつて南海道を歩いて大坂越をしたいにしえの旅人も、調査員の皆さんと同じように風光明媚な瀬戸内の景色を眺めて感動に浸ったことでしょう。
古代と現代の感動が交わった瞬間を感じた研修会となりました。

第2回研修会

復元された窯跡の解説

窯跡からかつての海岸線を見る

2010年6月26日、讃岐国府跡探索事業ボランティア調査員の平成22年度第2回研修会を、センターを飛び出して、三豊市三野町の宗吉かわらの里展示館で開催しました。
5・6月の活動成果の報告の後、国指定史跡の宗吉瓦窯(むねよしがよう)跡と、飛鳥時代の瓦造りなどについての研修を行いました。
現在は海岸線から遠く離れている宗吉瓦窯跡ですが、当時は海が近くまで入って来たために、海運で瓦を奈良の都(藤原京)へ運んだことが推測されています。
これは地名や地形の調査の成果によるものでもあり、現在、我々が行っている調査の有効性を示すものとして励みになります。
実物大で復原された窯跡の解説を受けた後、窯跡からかつての海岸線を見下ろしました。
きっとボランティア調査員の皆さんの脳裏には、当時の風景が再現されていたことと思います。
我々も、讃岐国府跡から綾川下流を眺めながら同じように当時の風景を思い描けるよう、地道な活動を続けいきたいと感じました。

土地の高さの測量 ―坂出市加茂町 西鴨神社周辺―

 水準器を使って何をのぞいている?

讃岐国府が置かれた時代の地形を推定・復原するため、現在の田畑の標高を測っていきます。
この調査で得られたデータをもとに、等高線を引いて土地の起伏を見ていきます。
それによって、水を得ていたと考えられる河川の跡や、集落などの立地に適した微高地などの場所を明らかにし、当時の地形を考えていきます。
昨年測量した坂出市府中町本村地区に引き続き、2010年5・6月は同市加茂町の西鴨神社近辺を測量しました。

 箱尺という物差しの数字を読み取る。

第1回研修会

研修会のようす

取材を受けるボランティア調査員

2010年5月8日に、讃岐国府跡探索事業ボランティア調査員の平成22年度第1回研修会を埋蔵文化財センターで開催しました。
23名のボランティア調査員は、微笑みの中にも国府跡探索に対する熱い想いが見え隠れする自己紹介をして下さいました。
続いて、今年度の調査内容の説明を行い、地名・地形調査は坂出市加茂町・神谷町・高屋町を中心に、発掘調査は同市府中町で行うことを申し合わせました。
その後、伊賀・伊勢(三重県)・三河(愛知県)・美濃(岐阜県)の国府の調査事例について研修を行いました。
地名が国府探索に結びついた伊賀国府の例は、我々が行っている調査の有用性を示すものとして注目されます。

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