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公開日:2020年12月10日

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平成18年7月3日 答申第374号(香川県情報公開審査会答申)

平成18年7月3日 答申第374号

答申

第1 香川県情報公開審査会(以下「審査会」という。)の結論

香川県知事(以下「実施機関」という。)が行った一部公開決定(以下「本件処分」という。)は、妥当である。

第2 異議申立てに至る経過

1 行政文書の公開請求

異議申立人は、平成15年6月25日付けで、香川県情報公開条例(平成12年香川県条例第54号。以下「条例」という。)第5条の規定により、実施機関に対し、次の内容の行政文書の公開請求を行った。

  • (1)平成14年(ヨ)第104号物件撤去仮処分申立事件の「決定」の全部、同事件に関する申立書類・添付書類の全部、審尋調書・陳述書の全部、その他の裁判所に提出し及び裁判所・債務者から取得した一切の書類(以下「本件請求1」という。)
  • (2)上記(1)に関連する〇〇の物件撤去等に関する仮処分命令の決定に関する記者発表に係る一切の起案文書・添付書類の全部(以下「本件請求2」という。)
  • (3)上記(1)の事件に関する弁護士との委任契約書類、弁護士報酬等の支出金調書・請求書類(以下「本件請求3」という。)
  • (4)上記(1)の事件に関して〇〇付近等へ出向いた職員の出張に関する書類(復命書類、支出金調書を含む)・タクシー使用に関する業者からの請求書類、仮処分の執行に際しての供託金の支出金調書・供託関係書類(以下「本件請求4」という。)

2 実施機関の決定

実施機関は、平成15年8月8日付けで、本件請求1に対応する行政文書として「「平成14年(ヨ)第104号物件撤去仮処分申立事件」に関する仮処分命令申立書、疎明資料、仮処分命令申立補正書、答弁書、審尋調書(第1回)、決定、仮処分執行申立書、仮処分調書」(以下「行政文書1」という。)を、本件請求2に対応する行政文書として「〇〇の物件撤去等に関する仮処分命令の決定について(平成14年6月24日付け起案文書)」(以下「行政文書2」という。)を、本件請求3に対応する行政文書として「平成14年6月11日に起案した妨害物撤去等仮処分命令事件に関する着手金の支出にかかる執行伺書及びそれにかかる支出命令書並びにその添付書類(2件)」(以下「本件行政文書1」という。)、「平成14年8月1日に起案した妨害物撤去等仮処分命令事件の処理が終了したことに伴う報酬金の支出にかかる執行伺書及びそれにかかる支出命令書並びにその添付書類(2件)」(以下「本件行政文書2」という。)及び「平成14年6月11日に締結した妨害物撤去等仮処分命令事件に関する弁護士との契約書(1件)」(以下「本件行政文書3」という。)を、本件請求4に対応する行政文書として「平成14年7月10日に起案した高松地方裁判所平成14年(ヨ)第104号仮処分命令申立事件の供託金及び高松地方裁判所平成14年(執ハ)第8号仮処分執行申立事件の執行官予納金の支出にかかる執行伺書及びそれにかかる支出命令書並びにその添付書類(2件)」(以下「本件行政文書4」という。)、「平成15年6月17日に起案した仮処分執行申立事件の執行官予納金の返還にかかる調定伺書、領収済通知書及びその添付書類(2件)」(以下「本件行政文書5」という。)、「県内旅行命令簿(26件)」(以下「本件行政文書6」という。)、「県内旅費請求書(3件)」(以下「本件行政文書7」という。)、「県内旅費計算書(56件)」(以下「本件行政文書8」という。)及び「乗車料金請求書(タクシー)(3件)、県有車の運転日誌(10件)、県有自動車使用簿(3件)、執行伺兼支出命令書(県内旅費)(3件)及び執行伺兼支出命令科目内訳書(県内旅費)(2件)」(以下「行政文書3」という。)をそれぞれ特定し、行政文書1が条例第7条第2号、第4号、第7号に該当するとして非公開決定を、行政文書2及び行政文書3について公開決定を、本件行政文書1ないし本件行政文書8の県内旅行命令簿及び県内旅費計算書のうち行政職相当級が記載されている部分及び県内旅費請求書のうち支払先金融機関名、店舗名、預金種目、口座番号及び口座名義が記載されている部分が条例第7条第1号に、債権者(弁護士)の銀行口座に関する取引金融機関名、預金種目、口座番号、口座名義、金融機関コード及び支店コード並びに印影が記載された部分及び債務者(被供託者)の住所及び氏名が記載されている部分が条例第7条第2号に、それぞれ該当するとして、本件処分を行い、それぞれ異議申立人に通知した。

3 異議申立て

異議申立人は、本件処分を不服として、平成15年8月19日付けで行政不服審査法(昭和37年法律第160号)第6条の規定により実施機関に対して異議申立てを行った。

第3 異議申立ての内容

1 異議申立ての趣旨

「本件処分を取り消すとの決定を求める」というものである。

2 異議申立ての理由

異議申立書において主張している理由は、おおむね次のとおりである。

  • (1)本件処分は、香川県の情報公開条例の解釈適用を誤った違法な処分であり、本件処分を取り消し、全部公開をすべきである。
  • (2)本件「決定通知書」の「公開しない理由」は、香川県の情報公開条例の非公開事由に該当しない。
  • (3)本件「決定通知書」の「公開しない理由」には、適法に処分理由が明示されていないので、香川県行政手続条例第8条に違反し本件処分は無効である。

第4 実施機関の説明の要旨

非公開理由等説明書による説明は、おおむね次のとおりである。

1 条例第7条第1号の該当性について

条例第7条第1号では、個人に関する情報であって、当該情報に含まれる氏名、生年月日その他の記述等により特定の個人を識別することができるもの又は特定の個人を識別することはできないが、公にすることにより、なお個人の権利利益を害するおそれがあるものを非公開情報と定めている。ただし、本号のただし書に掲げる情報については、非公開情報から除くこととしている。

行政職相当級については、県職員給与が条例で給与表により、定められていることから給料の等級を公にすることにより、容易に所得が推測されるとともにその昇任及び昇格の状況が分かる情報であり、支払先金融機関名等については、公にすることにより、特定個人の財産が識別され得る個人に関する情報であることから、本号の非公開理由に該当する。

2 条例第7条第2号の該当性について

条例第7条第2号では、法人等に関する情報又は事業を営む個人の当該事業に関する情報であって、公にすることにより、当該法人等又は当該個人の権利、競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがあるものを非公開情報と定めている。ただし、事業活動によって生じ、又は生ずるおそれのある危害から人の生命、健康、生活又は財産を保護するため、公にすることが必要であると認められる情報については、非公開情報から除くこととしている。

債権者(弁護士)の銀行口座に関する取引金融機関名、預金種目、口座番号、口座名義及び印影については、一般に公開されているものではなく、個人の事業に関する経理上極めて重要な内部管理に属する情報であり、公開することにより、当該債権者(弁護士)に不利益を与えることが明らかであり、債務者(被供託者)の住所及び氏名については、公開することにより事業活動を行う上での信用、社会的評価が損われるおそれがあることから、本号の非公開理由に該当する。

第5 審査会の判断理由

1 判断における基本的な考え方について

条例は、その第1条にあるように、県民の行政文書の公開を求める権利を具体的に明らかにするとともに、行政文書の公開に関し必要な事項を定めることにより、県の保有する情報の一層の公開を図り、県政に関し県民に説明する責務が全うされるようにし、県政に対する県民の理解と信頼を深め、もって地方自治の本旨に即した県政の発展に寄与することを目的として制定されたものであり、審査に当たっては、これらの趣旨を十分に尊重し、関係条項を解釈し、判断するものである。

2 本件行政文書の内容等について

本件行政文書1及び本件行政文書2は、妨害物撤去等仮処分命令申立事件について、弁護士費用の支払のために作成した会計規則で様式として定められている執行伺書及び支出命令書で、起案年月日、会計区分、支出科目、支出負担行為及び支出命令額、経費名、債権者氏名及び口座情報等が記載されており、「報償等支出調書兼請求(領収)書」、「報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書」、報酬金の算定等が添付されている。

本件行政文書3は、妨害物撤去等仮処分命令申立事件に関する、実施機関と弁護士との間の契約書であり、弁護士の行う業務の内容、報酬の額、支払方法等に関する事項及び受任者である弁護士の住所、氏名及び印影が記載されており、報酬金の算定が添付されている。

本件行政文書4は、妨害物撤去等仮処分命令申立事件について、供託金及び執行官予納金の支払のために作成した会計規則で様式として定められている執行伺書及び支出命令書で、起案年月日、会計区分、支出科目、支出負担行為及び支出命令額、経費名、債権者の住所、氏名、印影及び口座情報等が記載されており、添付書類として供託者の住所氏名印、被供託者の住所氏名、裁判所の名称及び件名等などの記載された「供託書」、供託金に関して事件の内容等の記載された「委任状」、仮処分執行に関して事件の相手方等が記載された「訴訟委任状」及び事件番号、保管の事由及び債権者氏名等が記載された「保管金受領証書」が添付されている。

本件行政文書5は、妨害物撤去等仮処分命令申立事件について、執行官予納金の返還を受けるために作成した会計規則で様式として定められている調定伺書で、振込先として受任弁護士の口座情報が記載された「保管金振込通知書」が添付されている。

本件行政文書6は、県内旅行命令簿:所属(在勤地)、住所地(又は居住地)、職・氏名、行政職相当級、年度、命令月日、命令権者印、旅行月日、用務地、用務、旅行形態、旅行手段、支出科目等が記載され、審査済印が押印されている。

本件行政文書7は、県内旅費請求書:旅費の請求を行うための書類であり、その記載内容は、請求年月日、請求額、個々の職員の職・氏名、計算額計、受領区分、支払先、請求者の所属・職・氏名等であり、請求者の印及び審査済印が押印されている。

本件行政文書8は、県内旅費計算書:旅費の請求を行う際に旅費額を計算した書類であり、その記載内容は、所属(在勤地又は住所地)、職・氏名、行政職相当級、年度、命令確認印、旅行命令番号、旅行月日、用務地、用務、旅費額、支出科目(目名)、内訳額等であり、審査済印が押印されている。

3 非公開情報該当性について

  • (1)条例第7条第1号の該当性について
  •    条例第7条第1号は、個人の尊厳及び基本的人権の尊重の立場から、個人のプライバシーを最大限に保護するために定められたものであるが、プライバシーの具体的な内容が法的にも社会通念上も必ずしも明確ではなく、その内容や範囲は事項ごと、各個人によって異なり得ることから、本条例は、プライバシーであるか否か不明確な情報も含めて、特定の個人が識別され得る情報を包括的に非公開として保護することとした上で、さらに、個人を識別することはできないが、公にすることにより、なお個人の権利利益を害するおそれがあるものについても、非公開とすることを定めたものである。
  •    しかし、これらの個人に関する情報には、個人の権利利益を侵害しないと考えられ非公開とする必要のない情報及び公益上の必要があると認められる情報も含まれているので、これらの情報を本号ただし書きで規定し、公開することを定めたものと解される。
  •    この基本的な考え方に基づき、実施機関が本号に該当するとして非公開とした部分について検討する。
    • ア 県内旅行命令簿及び県内旅費計算書のうち行政職相当級が記載されている部分について
    •    当該情報は、行政職給料表に定める職務の級に対応するものであり、既に職・氏名が公開されている職員の所得額が推測できることから、本号本文に該当し、ただし書に該当しないと判断される。
    • イ 県内旅費請求書のうち支払先金融機関名、店舗名、預金種目、口座番号及び口座名義が記載されている部分について
    •    当該情報は、実施機関からの給与等の振込先として申請されたものであり、職員の給与の受け取り方法がわかる情報であることから、本号本文に該当し、ただし書に該当しないと判断される。
  • (2)条例第7条第2号の該当性について
  •    条例第7条第2号は、法人等又は事業を営む個人の正当な利益を害することを防止する観点から、その事業活動の自由を保障し、公正な競争秩序を維持するため、公にすることにより当該法人等又は事業を営む個人の権利、競争上の地位その他正当な利益を害するおそれのある情報を非公開とすることとした上で、それらに該当する情報であっても、人の生命、健康、生活又は財産を保護するため、公にすることが必要であると認められる情報については、公開することを定めたものであると解される。
  •    この基本的な考え方に基づき、実施機関が本号に該当するとして非公開とした部分について検討する。
    • ア 債権者(弁護士)の銀行口座に関する取引金融機関名、預金種目、口座番号、口座名義、金融機関コード及び支店コード(以下「口座情報」という。)並びに印影が記載された部分について
    •    弁護士の口座情報び印影は、事業を行う個人が事業活動を行う上での重要な内部管理に属する情報であり、このような情報を外部に対して明らかにするかどうかは、本来、事業を行う個人が自らの業務の関わりの中で自主的に決定すべきことであり、事業を行う個人は、公開すべき相手方を限定する利益を有しているというべきである。
    •    しかしながら、このような情報であっても、事業を行う個人がそのような管理をしていないと認められる場合には、これが公開されても、事業を行う個人の正当な利益を害するものとは認められない。
    •    非公開とされた弁護士の口座情報及び印影は、実施機関との契約書、支出命令書(受入伺書)、報償等支出調書兼請求(領収)書、供託金に関する実施機関への請求書等に表示されたものであり、弁護士の業務態様をみれば、取引相手先等が限定されていることから、本件口座情報及び印影は内部管理情報として取り扱われているものと考えられ、そのような口座情報及び印影を条例により広く一般に公開することは、当該事業を行う個人の正当な利益を害するおそれがあると認められることから、本号本文に該当し、ただし書に該当しないと判断される。
    • イ 債務者(被供託者)である法人の住所及び名称が記載されている部分について
    •    当該情報は、仮処分命令申立事件及び仮処分執行申立事件の債務者(被供託者)である法人の住所及び名称である。
    •    実施機関は、当該情報を公開することによって、「公開することにより、債務者(被供託者)が事業活動を行う上での信用、社会的評価が損なわれるおそれがあるため、本号の非公開理由に該当する」と主張している。
    •    本件行政文書に記載された債務者(被供託者)は、仮処分命令申立事件及び仮処分執行申立事件の債務者(被供託者)である。民事保全法(平成元年法律第91号)第5条は、事件の記録の閲覧等を利害関係を有する者に限っており、また、執行官法(昭和41年法律第111号)第17条第2項も同様の規定であることから、本件行政文書に記載された債務者(被供託者)である法人の住所及び名称は公にされていないものと考えられる。
    •    一般的に、債権者である実施機関と争訟関係にあるということが明らかとなることは、社会的によい評価を与えられるものではなく、また、本件行政文書に記載された債務者(被供託者)である法人の住所及び名称を公開すると当該法人が不適切な事業を行っているかのような印象を与えることとなり、当該法人の名誉や社会的評価等を損なうおそれがあるものと認められる。
    •    よって、当該情報は、本号本文に該当する。また、本号ただし書のいずれにも該当しないことは明らかである。

4 第3の2異議申立ての理由のうち、(3)について

条例の解釈、運用に関するものでないので、審査会では判断しないものとする。。

よって、当審査会は、「第1 審査会の結論」のとおり判断する。

第6 審査会の審査経過

(省略)

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