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かがわの昆虫

昆虫

 香川県にはたくさんの昆虫が生息しています。しかし、日常生活の中で、わたしたちになじみの深い昆虫は、四季の変化に彩りを添えるチョウやセミ、トンボの仲間、子供たちに人気のあるカブトムシやクワガタムシなど、一部の種類にすぎません。多くの種類は、夜に現れたり、小さすぎたり、人目に触れることが少ないところに生息しているなど、ひっそりと生きています。これまでに、県内に分布していることが判明している昆虫は、名前が分かるものだけで5,000種を超えています。将来、分類の難しい微少な甲虫やガ、ハチやハエの仲間にも調査が及ぶと、総種類数は倍以上になるでしょう。

 香川県は面積が狭く、高い山地や黒潮に洗われる海辺もないことから、地理的・気候的変化があまりありません。したがって、熱帯性や亜熱帯性の種類が少なく、高山性の種類も欠いているので、県内に生息している昆虫の総種類数や分布上の珍しい種類は、ほかの四国3県に比べると少ないようです。

 しかし、ヒメヒカゲ・フタキキシタバ・ヒメタイコウチのように、日本における分布の南限に当たり、ほかの3県には分布しない昆虫がいくつか発見されています。高松市女木島洞窟の中で発見されたチュウジョウムシ、琴平山の地中にすむコンピラメクラチビゴミムシは数少ない香川の特産種です。ニョタイササキリモドキは女体山一帯など讃岐山脈東部にのみ分布しています。

 一般的に、地域の昆虫相は、食物連鎖の出発点となる植生によって決まります。香川県のような西南日本の低地では、人間の影響をまったく受けない自然の植生はシイやカシ、クスノキのような冬でも落葉しない常緑広葉樹の林となります。また、標高の高いところでは、ブナやコナラのような落葉広葉樹の林となります。

写真:昆虫たち
■ヒメタイコウチの拡大写真はこちらから>>>
■ニョタイササキリモドキ♀の拡大写真はこちらから>>>
■シロスジカミキリ♂の拡大写真はこちらから>>>
■スミナガシの拡大写真はこちらから>>>

写真:ツノアオカメムシ

 したがって、人の手が加わる以前には、ムラサキシジミやアオスジアゲハ、カラスアゲハなど暖地性あるいは熱帯起源のチョウが飛びまわるなど、県内の大部分に常緑広葉樹の林に生息する昆虫が分布し、讃岐山脈の上部に、オオミドリシジミやアカアシクワガタ、ツノアオカメムシなど落葉広葉樹の林に生息する昆虫が分布していたと推測されます。ブナアオシャチホコ、マダラクワガタなどブナ林を生息地とする昆虫は大滝山竜王山などの山頂部を中心に分布していたと思われます。

■ツノアオカメムシの拡大写真はこちらから>>>

 以後、常緑広葉樹の林は伐採や開発が続けられ、そこに生息する昆虫の勢力は衰退してきました。しかし、その後には、草原やマツ林、クヌギ・コナラのような落葉広葉樹の林が広がり、それぞれの植生に生息していた昆虫が勢いを得たのです。モンシロチョウやベニシジミ、オンブバッタやクルマバッタのような草原の昆虫や、ウラナミアカシジミやオオミズアオなどクヌギ・コナラ林の昆虫が生息地を拡大して、今日の香川県の昆虫相の基盤が形成されたのでしょう。

 さらに、戦後になって始められた人工造林による落葉広葉樹の林の減少、近年の松くい虫被害の拡大によるマツ林の減少、平野部の河畔林の減少など、森林の面積的、質的な変化はそれぞれの森林に住む昆虫に大きい影響を与えています。

 樹林の少ない平野部では、茂みの多い池や川の土手、河原などにいろいろな草原の昆虫が生息しています。昼間はモンキチョウやヤマトシジミ、キアゲハなどのチョウが草花を訪れ、トノサマバッタやショウリョウバッタなどが草の間で活動しています。夏から秋の夜には、スズムシやマツムシ、クサヒバリやエンマコオロギなどがにぎやかな演奏会を開きます。

写真:キアゲハ・クルマバッタ♀

■キアゲハ(雄)の拡大写真はこちらから>>>
■クルマバッタ(雌)の拡大写真はこちらから>>>

 今日、かつての香川県の昆虫相が比較的良好に残されている貴重な地域に、琴平山と大滝山があります。琴平山の東斜面には豊富な植物相を有する常緑広葉樹の森があり、ベーツヒラタカミキリ、アシナガオニゾウムシなどの甲虫類やウスイロキシタバ、サヌキキリガなどのガ類をはじめとする多数の森林性昆虫を産し、学術上重要な種類も少なくありません。大滝山に残されたブナを含む落葉広葉樹の林はエゾヨツメ(ガ類)、ムツボシハチモドキハナアブ、エゾゼミをはじめ多数の寒地性昆虫が生息していることなど、豊富であった讃岐山脈の昆虫相の様子をとどめています。

 一方、小豆島にはヒメヒカゲやウラミスジシジミのように、県内のほかの地域では見ることができない昆虫が分布しています。この2種のチョウは、中国地方や中部地方に生息地が点在している昆虫です。このことは、小豆島の昆虫相が本州の昆虫相とつながりの深いことを示しています。

 また、香川県の昆虫相の特徴の一つに、水田と多数のため池などで生息する水生昆虫の世界があります。たとえば、県内では87種ものトンボが発見されていますが、四国4県のうちでは高知県についで多いといわれています。

 しかし、水質汚染等で、ハグロトンボやゲンジボタルをはじめとする多くの水生昆虫の生息地や個体数が減少しています。香東川や土器川の源流に生息する、「生きた化石」と呼ばれるムカシトンボは生息地の急速な環境変化で存続が危ぶまれています。

 その一方で、近年、県内まで分布を広げてきたり、目立って増えた昆虫がいます。たとえば、ミカドアゲハは九州以南と四国南部沿岸、紀伊半島沿岸や山口県西南部に分布している熱帯系のチョウですが、県内では、1994年8月、琴平町においてはじめて生息が確認されました。同様に、暖かいところを好み、四国南部などでは数の多いナガサキアゲハ、モンキアゲハなどは県内では生息地も個体数も少ない貴重種でした。しかし、1970年代後半から増え始め、1980年代半ばには、市街地や農村部でも飛んでいる姿をよく見かけるようになりました。その理由の一つに、近年の地球の温暖化による気候の変化が考えられています。

写真:昆虫たち
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■ハグロトンボの拡大写真はこちらから>>>
■ナガサキアゲハの拡大写真はこちらから>>>
豊嶋 弘
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