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かがわの植物

植物

 香川県に自然に生えている植物は、現在のところシダ植物以上の高等植物で約2,400種が知られています。表は、その構成内訳ですが、元から県内に生育していた在来植物のほかに、人間のさまざまな活動とともに外国から渡ってきて住み着いた帰化植物や、栽培起源のものが逃げ出して野生化した植物が含まれています。ある地域に自生している植物の総数に対して占める、帰化植物の種類数の割合を帰化率と呼びますが、これはその地域の自然がどれほど「かく乱」されているかという指標にもなります。

 香川県は、温暖な気候に恵まれて古くから開けた土地ですが、県土面積と降水量が少なく、森林率も約47%であることに加え、高い山地もないことから、植物は貧弱なものと思われています。しかし、表を見てもわかるとおり在来植物の種類数は1,700種に余り、種類構成は決して貧弱なものではありません。ただ、県内の在来植物は、個体数の少ないものが多く、希少な植物が多いという特徴があります。そのため、ちょっとした環境の変化で、絶滅してしまうおそれのある種類が多くみられます。また、帰化率を見ても、被子植物で約30%の高率を占めており、海岸部の埋立地から奥地まで、人間活動の影響の大きいことがうかがわれます。


香川県の高等植物種類数(2005年現在)

  種子植物 シダ植物 合計
被子植物 裸子植物
双子葉植物 単子葉植物 小計
合弁花類 離弁花類 小計
在来植物 426 634 1060 472 1532 9 1541 211 1752
帰化・野生化植物 190 295 485 156 641 3 644 3 647
616 929 1545 628 2173 12 2185 214 2399
*分類学上の変種、亜種は1種類として数えた。

 植物の種類相は、ふつう標高とともに変化しますが、高山のない香川県では、顕著な標高差は見られません。香川県の植物分布の特徴は、むしろ東西方向に伸びた帯状の地域区分にあります。これは、香川県の地史に関係した地形的な特徴によるものです。瀬戸内海よりの島しょ部から海岸沿いには讃岐岩質安山岩と呼ばれる地質帯がありますが、この地域には満鮮要素(注1)と呼ばれるチョウジガマズミ、キビヒトリシズカが分布しており、中国地方の阿哲地域(注2)につながる植物です。

 また、海岸部には、南方系のハマボウやハマナタマメがあり、ネコノシタ、ハマニガナ、ナミキソウ、スナビキソウ、ウンランなどの海岸植物も現在貴重な存在になっています。

 一方、讃岐山脈に沿った山地部の植物は、襲速紀要素(注3)と呼ばれる種類が多く、中国大陸西南部につながるものといわれています。この山地部の植物は、香川県の植物の主体をなすものです。しかし、各種ラン科植物やシコクカッコソウ、ヤマシャクヤク、シャクナゲ、クロフネサイシンなど、もともと個体数の少ないものが園芸目的に採取され、絶滅にひんしているのは悲しいことです。

写真:ハマナタマメ・ハマボウ・チョウジガマズミ・シコクカッコソウ
■ハマナタマメの拡大写真はこちらから>>>
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写真:モチツツジ

 この南北の帯状の分布に対して、東西に分かれた分布をしているものに、アワコバイモとトサコバイモ、モチツツジがあります。アワコバイモとトサコバイモは、南部の山地部に見られますが、仲南町あたりを境にして、東側にアワコバイモ、西側にトサコバイモが分布しています。この両種も近年激減しています。モチツツジは、竜王山から五色台を結ぶ地域を境に東側に分布していますが、境界線はどうやら土器川あたりにあるようです。
■モチツツジの拡大写真はこちらから>>>


 平野部の多くのため池と水田を結ぶ用水路を含めた水環境は、香川県の水草相を豊かなものにしています。水中に生育する植物を水生植物といいますが、ヒシ類をはじめ豊富な水生植物相を形成しています。

 しかし、この水環境も、近年はアオコの発生など、水質の汚濁が進行し、豊かであった水生生物相も危険な状態にあります。アサザ、オニバス、ヒシ類など、本来、富栄養の水域に生育している種類さえ、消滅したため池が多く見られるようになってきました。とくに、オニバスは全国的に絶滅が心配されている植物です。

写真:オニバス

 現在、オニバスの産地は、全国で300ヵ所ほど知られています。このうち、香川県の確実な産地は約60ヵ所ですから、香川県は全国有数の産地といえます。県内では、かつてオニバスはそれほど珍しいものではなかったようですが、現在では、既存の産地のうち毎年生育しているのは20ヵ所程度です。

 それも年により不安定で変動が大きく、けっして予断を許さない状況です。ちなみに、オニバスやヒシ類が消滅した後に生育できる水生植物は、何もありません。

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 人間の活動の結果、失われる植物もあれば、逆に活動をやめた結果、消えていく植物があります。キキョウ、オミナエシ、フジバカマなどの人里植物と呼ばれるもので、人間が定期的に行う草刈りなどの行為により維持されている環境で生育している植物たちです。春のあぜ道に咲きほこるカンサイタンポポもその一つといえます。

 わたしたち香川県に住むものにとって、カンサイタンポポの群生はさほど珍しいものではありません。しかし、他県では、香川県のように咲き乱れる光景は帰化タンポポ以外ではほとんど見られません。このような香川県特有の春の風景も、農家の人たちのたゆまない草刈りによって維持されているのです。

 ササユリやヒメユリ、レンゲツツジなどは地域的に偏った分布をしていますが、昔は、その周辺の地域では、今ほど希なものではありませんでした。衰退の原因は園芸用の採取圧と思われますが、生育地のマツ林を人間が適度に使用しなくなったことも大きな原因といえるでしょう。

写真:アッケシソウ
 かつて、県内に塩田の名残が見られたころ、そこにはアッケシソウが生育していました。アッケシソウは、北海道原産の塩生植物ですが、江戸時代に行われた北海道との海運による交流により持ち込まれたものといわれています(注4)。香川県のアッケシソウは、塩田とともに生きてきた植物ですが、塩田の廃止という塩の文化の消滅とともに消えていきました。
■アッケシソウの拡大写真はこちらから>>>

 地球上でその地域だけに生育している植物を、その地域の特産種といいます。

 香川県の特産種は、少数で、ショウドシマレンギョウ、ミセバヤ、カンカケイニラ、ヒメソクシンランの4種です。ただし、ショウドシマレンギョウは、中国地方に分布するヤマトレンギョウの変種とされていますから、厳密な意味では特産種とはいえないかもしれません。ミセバヤについても、紀伊半島に生育する種類と同種とする意見もあり、特産種の地位が揺らいでいます。いずれにしても特産種といわれる4種のうち、3種までが小豆島の特産種ですから、小豆島の植物相の特異性がうかがわれます。

写真:ショウドシマレンギョウ・ミセバヤ・カンカケイニラ・ヒメソクシンラン
■ショウドシマレンギョウの拡大写真はこちらから>>>
■ミセバヤの拡大写真はこちらから>>>
■カンカケイニラの拡大写真はこちらから>>>
■ヒメソクシンランの拡大写真はこちらから>>>
久米  修

 注1 満鮮要素(まんせんようそ)
 ある地域の植物の種類構成について、その地域に共通した特徴的な種でまとめられる地域を「植物区系」という。阿哲地域もその一つで、朝鮮半島中部および北部、満州と関連した特有の植物種群を満鮮要素という。

 注2 阿哲地域(あてつちいき)
 中国地方の岡山県西部から広島県東部にかけての山陽側の地域で、石灰岩地域が多い。

 注3 襲速紀要素(そはやきようそ)
 襲速紀要素は、南九州、種子島から四国、中国地方の瀬戸内海側、紀伊半島南部から赤石山脈(南アルプス)にかけた地域の多くの種で、その近縁種を中国大陸の西部に持ち、日本の古い特色を持つ植物種群をいう。

 注4 最近の研究成果として、北海道と瀬戸内海沿岸のアッケシソウは、遺伝的に異なるという研究報告があります(平成19年11月)

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