近代能楽がつむぐ縁(えにし)-松平頼寿と中野武営
香川県初公開の能楽関係作品が必見です!
展示の概要
江戸時代、幕府の重要な儀式とされた能は、近代に入ると政府高官や実業家、文化人など各界の名士たちの間で盛んになっていきました。高松藩旧臣で、松平家の相談役を務めていた中野武営(たけなか)(1848-1918)も宝生流(ほうしょうりゅう)の謡(うたい)に熱心にとり組んだひとりで、長男の岩太は「素人の宝生九郎」と称され宝生流の名手として名を馳せました。
高松藩の能は喜多(きた)流でしたが、12代当主松平頼寿(よりなが)(1874-1944)も宝生流の謡と能、葛野(かどの)流の大鼓(おおつづみ)をたしなみました。本展示では、頼寿所用の近代能面などの道具類を紹介するとともに、金沢能楽美術館の協力のもと、中野家伝来の能楽資料を特別公開します。
会期 |
令和6年9月10日(火曜日)から10月27日(日曜日) |
開館時間 |
午前9時から午後5時 *入館は閉館の30分前まで |
休館日 |
月曜日 *月曜日が休日の場合は翌火曜日
<9月休館日>
9月17日(火曜日)、24日(火曜日)、30日(月曜日)
<10月休館日>
10月7日(月曜日)、15日(火曜日)、21日(月曜日)
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会場 |
香川県立ミュージアム(高松市玉藻町5番5号)常設展示室1 |
展示数 |
64件145点 |
観覧料 |
一般410円、団体(20名以上)330円
- 高校生以下、65歳以上、障害者手帳をお持ちの方は無料
- 特別展「美術を探求 ギモンにせまる」開催中(9月14日~11月10日)は特別展観覧券でご覧いただけます。
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関連行事
展示内容について担当学芸員がわかりやすくお話しします。
ミュージアムトーク
日時 |
令和6年9月22日(日曜日)、10月19日(土曜日)
各日午後1時30分から
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場所 |
常設展示室1 |
参加料 |
無料
*ただし観覧券が必要
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申込 |
不要 |
主な展示品
中野随郷(ずいきょう)(武営)購入 宝生流(ほうしょうりゅう)謡本 大正3年(1914)発行 中野家コレクション |
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箱の蓋うらの墨書(ぼくしょ)により、中野武営が大正4年に購入したことがわかる宝生流の謡本のセットです。
武営は、謡の武士道に通じる精神性や品位を重んじて真摯に鍛錬し、150曲を暗記し無本で謡うことができたといわれています。
各謡本には、長男岩太による仕舞や舞台についての覚書(おぼえがき)が朱筆や墨筆で細かく書き込まれています。
大正12年の関東大震災の火災で家財道具ほか能面や能装束を失う中、岩太が救い出した品のひとつです。
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能面標本(のうめんひょうほん) 中村直彦(なかむらなおひこ)作 昭和17年(1942) 中野家コレクション |
(蓋表:松野奏風画)
(4段目)
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東京美術学校出身で、古面修理や新作を手がけていた能面作家の中村直彦(1877~1945)。
明治44年(1911)に発足した直彦の後援会には細川護立(もりたつ)ほか井伊直忠( なおただ)、松平頼和(よりかず)(高松藩10代藩主頼胤(よりたね)7男)の華族や中野岩太が名を連ねました。
この能面標本は岩太の依頼で製作され、6段重の箱に小形の97面が収められています。
裏も作り、目は抜かないが一部に口を彫り抜き、面紐をかけたものもあります。彩色は繊細で髪の乱れ毛に極めて細い描線をみることができます。
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能面 獅子口(ししぐち) 甫閑満猶(ほかんみつなお)作 享保9年(1726) 高松松平家歴史資料 |
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高松松平家12代頼寿は、10代後半の頃に宝生流(ほうしょうりゅう)地謡(じうたい)方の命尾寿六(めいおじゅろく)(1831~1919)について謡を始め、能は後年に17世宗家・宝生九郎重英(しげふさ)(1900~74)に学んで20余番をこなしたそうです。
頼寿は大名時代から受け継ぐ能面や装束のほかに、新たな道具類も集めていたとみられます。〈石橋(しゃっきょう)〉で獅子の役に用いられる「獅子口」の面(おもて)も新たに収集されたひとつです。大正8年(1919)に売立てられた鳥取藩池田家の旧蔵品です。 |
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