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【対談】童絵作家 池原昭治

対談の写真

おとぎ話の聖地香川県

知事 香川県高松市でお生まれになった池原昭治さんは、1963年、東映動画に入社なさり、「太陽の王子ホルスの大冒険」「狼少年ケン」などで原動画を中心に担当されたと伺いました。「まんが日本昔ばなし」では、作画・演出・美術等を手掛けられたとのこと。ほのぼのとした作風は、温かく懐かしく心に染みます。本県の県民向け広報誌でも、表紙絵を担当していただいております。素晴らしい童絵の数々が県民の皆さんにも大好評で、私も毎月楽しみにしております。

池原 表紙絵のお話を受けた時は、興奮するほどうれしかったですね。今まで讃岐をあちこち歩き、描きためたものがあります。これを発表できる、ありがたい場所を提供していただきました。

知事 広報誌の表紙解説においても、香川県の思い出を語ってくださっておりますが、民話や童話など、どのようなお話が心に残っておられるのでしょうか。

池原 私は文章が苦手で、絵を描くことで表現したいと、スケッチブックを持って歩き回りました。ある日、峠道で野仏を拝むお孫さんを連れたおばあさんに出会いました。話を伺ったところ、地元にはタヌキの民話が伝わっているとのこと。「サヌキのタヌキ」というのは実に語呂も良く、それからは、タヌキの話ばかりずいぶん集めました。

知事 確かに、讃岐といえばタヌキ。実にタヌキの話が多く残されています。四国霊場第84番札所屋島寺の境内には、タヌキの総大将ともいわれる太三郎狸(たさぶろうだぬき)の石像が立っています。

 昔話といえば、桃太郎や浦島太郎を思い出しますが、例えば、高松市の沖合に浮かぶ女木(めぎ)島は桃太郎の鬼ヶ島といわれ、三豊市の荘内(しょうない)半島には浦島太郎にちなんだ地名が点々とあります。まさに「おとぎ話の聖地香川県」と言いたいところです。なんといっても、ポコポコと顔をのぞかせるおむすび山には、「まるでおとぎ話の絵のようだ」と皆さんが感心します。これも、池原さんが童絵に描いてくださったおかげです。

池原 「桃太郎」と「浦島太郎」が伝わる香川県は、おっしゃる通り「おとぎ話の聖地」と言えますね。それぞれ、ゆかりの地名が一つや二つでなく残されているというのがすごい。特に浦島太郎伝説の地である荘内半島を歩くと、「なるほど、ここで太郎が玉手箱を開けたのか」とうなずける、昔話そのままの風景が広がります。

知事 玉手箱の煙がなびいたという紫雲出(しうで)山や竜宮城があるという瀬戸内海と、荘内半島の風景は本当に素晴らしいですね。

池原 私は今までこの風景が、どうして世に出なかったのかと不思議なくらいです。また、讃岐平野には、讃岐富士と呼ばれる美しい飯野(いいの)山があります。その周辺にもおむすび山があちこちにあり、その傍らにはため池が点在しています。この風景は、全国のどこを探してもそうはないでしょう。それに、すぐ隣においしいうどん屋さんがある(笑)。

 私は岬を巡るのも好きですね。志度から高松市の庵治町へと岬をたどるのも心が躍ります。四国霊場の札所でもある志度寺に残る龍神伝説も興味深いですね。香川県の西にある観音寺市から三豊市の仁尾(にお)に向かうと、ミカン畑が広がります。これも素晴らしいふるさとの情景です。

 そういう懐かしの風景に対して、衝撃を受けた香川の新しい顔が壮大な瀬戸大橋でした。その建設中には、架橋の島々などを歩き、瀬戸の島々は民俗学的にも大変に貴重な文化が残されていることを知りました。

知事 架橋の島である櫃石(ひついし)島には、県指定無形民俗文化財の「櫃石ももて祭」が伝わります。讃岐の祭りというと、何が心に残っておられるのでしょうか。

池原 私はやっぱり「ちょうさ」、いわゆる太鼓台ですね。大迫力の音が体の芯から響き渡ります。観音寺市豊浜の「ちょうさ祭」を見ましたが、勇壮というか、豪華というか、香川県にこのようにすごい祭りがあるのかと驚きました。讃岐の獅子舞も印象的です。カキの実が枝一杯にたわわに実る頃、鎮守の森から聞こえてくる(かね)や太鼓の音も、讃岐の懐かしい音の風景ですね。

知事 秋祭りのシーズンの10月からは、瀬戸内国際芸術祭の秋会期が始まりますが、今年は芸術祭の柱の一つとして獅子舞などの伝統文化もしっかり発信してまいります。そのため、「獅子舞王国さぬきin高松港」などのイベントも予定されています。

 池原先生には、これからもぜひ讃岐の伝統文化につながる風景を描き続けていただきたいと思います。本日は、お忙しい中、本当にありがとうございました。

池原昭治(童絵作家)
1939年香川県高松市生まれ。高校卒業後、東映動画に入社しアニメーターとして働く。テレビアニメ「まんが日本昔ばなし」では演出・作画・美術を担当。日本各地を訪ね歩き「童絵」という独自の画風を確立する。2011年から香川県広報誌「THEかがわ」の表紙絵を担当。著書に「讃岐の絵本」、「カッコウの鳴く朝 わらべのいる風景」ほか多数。日本漫画家協会会員、高松短期大学客員教授、香川県子育て心配無用教え隊などを務める。

池原昭治さんの写真

池原昭治さんの絵

池原昭治さんの絵