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食と農わくわく講座
農産物と食品の衛生・品質管理手法

3.HACCPってなんですか?

 食品の安全性を確保するために必要なこととしては、食品に危害をおよぼすもの、例えば異物混入、毒物(化学物質)、基準値を超える農薬や抗生物質の残留、食中毒の原因となる微生物などを含まないことを確認することと言い換えることができます。
 このうち異物混入、毒物や残留抗生物質は人為的なミスによって発生することが多いため、防止することは可能です。
 従って、食品の安全性を保証するためには、微生物による危害を防ぐことが最も重要で、その対策としては、現在のところHACCPシステムがよいとされており、従来の「勘と経験」ではなく、製造過程全体が科学的管理体制にあることが求められます。

(1)定義

 HACCPとはHazard Analysis and Critical Control Point(危害分析重要管理点)の略で、1960年代にNASAのアポロ計画において、宇宙食製造の際の安全性確保を目的として開発された品質管理プログラムです。
 HACCPでは、最初に食品にどのような危害があるかを分析します。そして、その危害を防止するために、重要なチェックポイントを決めて、徹底的にそのポイントを管理し、食品による危害が出ないようにするシステムです。
 これまでの安全管理の確認は、最終製品によって細菌などの汚染がないかどうか製造者自身で確認し、場合によっては食品衛生監視員が立ち入り、調査や製品の検査を実施することで確かめられてきました。
 この方法で食品の安全性に対する信頼性を高めるには、検査する件数をより多くする必要がありますが、検査費用が増大することや検査しなかった製品の安全性については保証できません。

 そこで、HACCP方式は、

  • 最初から「今作っている食品には、どのような危害の可能性があるか」をまず分析するところから始まります。
  • 危害を分析した後、「重要管理点」を決め、製造する食品の危害を、どうしたら防ぐことができるか、その最も重要なポイントを決めます。
  • そして、最も重要な点を重点的に管理します。
  • 重要管理点以外のものは、「一般的な衛生管理プログラム」として管理します。従業員の手の洗い方から始まり、作業場や機器の清掃など、衛生の基本があり、これをマニュアルで管理したり、教育で徹底します。

 このようにHACCP方式は、最終製品を検査する方法と異なり、食品の安全に危害を及ぼす工程を事前に予測し、その工程を重点的に管理し、危害を起こさせないようにすることによって、工程全般の危害の発生を防止し、製品の安全確保を図るものです。

(2)どういった手順で進めるのですか?

 HACCPは「重要管理点」の管理が実現できるように、12の手順と7原則で構成されています。
 具体的な手順および原則は次のとおりです。

手順1 HACCPチームの編成
手順2 製品特徴の記述
手順3 意図される使用方法の記述
手順4 製造工程一覧図、施設の図面および標準作業手順書の作成
手順5 文書などの現場での確認
手順6 原則1 危害分析
原材料の生産から、できあがった製品が消費者に消費されるまでのすべての工程ごとに、食品の安全を損うおそれのある微生物や化学物質、異物などにはどのようなものがあるかを明確にします。さらに、それらの危害を取り除く方法を決定します。
手順7 原則2 重要管理点の設定
明らかにした危害の中から、食中毒等の発生を防ぐうえで極めて重要な場所や方法などを重要管理点として決定します。
手順8 原則3 管理基準の設定
管理点ごとに管理が適正に行われている時に守られるべき基準(加熱温度・加熱時間等)を決めます。
手順9 原則4 測定方法の設定
基準が守られているかどうか、どのように測定・監視するのかを決めます。
手順10 原則5 改善措置の設定
基準が守られているかどうかを測定して、基準から逸脱した場合はどのような対策を取ればよいのか、基準から逸脱した時の製品や半製品をどうするのか、改善措置や対応方法を決める。
手順11 原則6 検証方法の設定
各工程の作業内容については、標準作業手順書として文書化しておき、その検査方法や頻度を決める。
手順12 原則7 記録の維持・管理方法の設定
測定の結果などは、記録して保管しておくことで、HACCPに基づいて安全に製造されていることの証拠になります。正しい記録の取り方を決定します。
(3)HACCPは万全ですか?

 しかし、HACCPを採用しても事故を起こすことがあります。
 第1に、HACCPを取り入れても、原材料のチェック、各工程ごとの管理が不適切であれば事故を起こすことがあります。原料に原因がある場合は、原料の生産者に問題がありますが、その原料を使用した側にも責任があります。原材料のチェックは重要ですが、すべての原材料を検査することはできないので、どの程度の頻度で検査するかが重要になります。

 第2に、HACCPシステムは化学的危害に対して十分に機能するシステムではありません。
 と畜・食肉処理過程のHACCPシステムは農家飼養段階において家畜に生じた生物的危害をと畜前に完全に防止する措置が取られておらず、と畜・食肉処理過程に持ち込む可能性があります。
 さらに、食肉製品の製造工程におけるHACCPシステムは食品による生物的危害、物質的危害の防止には有効ですが、農薬、ホルモン剤や抗生物質、添加物等の残留した原材料、あるいは遺伝子組換え技術によって生産された原材料の使用に起因する化学的危害に対する防止措置が取られていません。

(4)HACCPは普及するのですか?

 HACCPシステムを導入するには、多大な投資と人材を必要とします。
 現在、国内においてHACCPシステムを導入しているのは、一部の大手企業に限られていますが、今後、広く普及させるために経費や労力がかからない方向で見直しが行われています。

(引用文献)
石井営次著 「HACCPシステムによる食品衛生管理」(2000年)、生活衛生、vol44、No6、261-269)
佐々木悟著 「食品の安全性と品質表示」(2001年) 、日本農業市場学会編集第5章、筑波書房
日佐和夫著 「HACCPがよくわかる本」(1998年)、PHP研究所
米虫節夫編著「こうすればHACCPシステムが実践できる −HACCP実践講座第3巻−」(2000年)日科技連出版社
加藤光夫著 「HACCP導入のポイント」(1999年)日本経済新聞社