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食と農わくわく講座
農薬Q&A

1.農薬ってなあに?

Q1.どうして農薬をつかうの?

 日本のような雨が多く、高温多湿な気候は、病害虫や雑草が発生しやすい環境といえます。また,ハウス栽培などは旬に関係なく,病害虫の発生しやすい時期に収穫するため,農薬が必要になる場合があります。

  • 安定した収量を得るため
  • 虫食いのない見栄えの良いものを作るため
  • 労働力を軽減するため,農薬を使っています。

Q2.農薬はどんな種類があるの?

 農薬を使用する目的で分類すると,殺菌剤、殺虫剤,除草剤,植物成長調整剤に分かれます。

  • 殺菌剤:農作物に発生する病気から農作物を守ります。 例:ベンレート,ダコニール
  • 殺虫剤:害虫から農作物を守ります。 例:スミチオン,アドマイヤー
  • 除草剤:農作物の生育を悪くする雑草を防ぎます。例:ラウンドアップ,トレファノサイド
  • 植物成長調整剤:植物の背丈を抑制したり,種なしぶどうを作るのに使われます。
    例:ジベレリン,セリタード

 その他にネズミを退治する殺そ剤などもあります。
 また,農薬と同じ成分が家庭用の殺虫剤として使われることもあります。


農薬の使い方

 農薬の使用方法は,ビンや袋に記載されています。効果的,安全に使うための必要不可欠な事項が表示されています。
 生産者は,この記載事項を守って農薬を使用しています。
 使用基準に違反すると罰せられます。

Q3.農薬の安全性はどのようにして確かめられているのですか?

 農薬の製造(輸入)、販売をするには、農薬取締法にもとづき国の登録を受けなければなりません。登録を受けるためには,病害虫や雑草への効果や薬害試験の結果だけではなく、さまざまな安全性評価試験の結果の提出が要求され、毒性、残留性について厳しい審査がおこなわれます。  毒性については,急性毒性、慢性毒性(発がん性、胎児に奇形をもたらす催奇形性など)、生殖能力に対する影響のある繁殖毒性(遺伝子に変異を起こさせる変異原性など)など,全部で約30種類の試験があります。


農薬開発に係る時間と費用

 農薬の開発にはこのように非常に長い年月がかかります。新規化合物が合成されてから、市場に出るまで一般的には10年、長い場合には20年、費用も30億円から50億円はかかるといわれます。新規化合物が商品になる確率は,農薬に求められる条件が年を追うごとに厳しくなり、現在では、その確率は約5万分の1といわれます。

Q4.農薬の毒性とはなんですか?

 農薬の持つ毒性には二種類あり、一つは急性毒性、もう一つは慢性毒性です。
 「急性毒性」は口,皮膚,呼吸器などから一時に比較的多量の物質が体内に取り込まれるような場合に現れる毒性をいい、主に農家の人に対する危険性を示します。
 この強さは,「半数致死量(LD50)」で表され,その強さによって毒物,劇物,普通物に分かれています。
 「慢性毒性」は毎日繰り返し長期間にわたって継続して体内に入った場合に現れる毒性をいい、農作物に残留した農薬による毒性が該当します。
 慢性毒性試験によって得られた無毒性量(NOAEL)から1日摂取許容量(ADI)が設定されます(Q4)参照)。


天然物にも毒がある

 植物は外敵から身を守るためさまざまな物質を体内に作ります。そのなかには,農薬と同じような物質もあります。家庭用の殺虫剤にも使われ、現在、もっとも普及している殺虫剤(ピレスロイド系の薬剤)は,もともとの出発点は除虫菊に含まれる薬効成分ピレトリンです。
 天然物の毒性が必ずしも十分に調べられていないのに対して、農薬は、毒性試験などの試験研究をもとにして毒性が評価され、また、ごく微量まで分析できる技術が確立されています。

Q5.残留農薬基準とは?

 私たちが1日に食べるすべての食品中に含まれる残留農薬を推定し,その合計が一日摂取許容量(ADI)を下回るように決められています。残留農薬基準は私たちが毎日食べる量が作物ごとに違うため,作物ごとに決められています。  また,農作物以外にも肉,魚,水や空気などからも体内に取り込まれますので,その分を考慮して,ADIの80%を超えない範囲で残留農薬基準は設定されています。


ADIとは

 その農薬を人が一生涯にわたって、仮に毎日摂取し続けたとしても危害を及ぼさないと見なせる量のことです。まず、ラットやマウスの動物を用いた慢性毒性試験などの長期毒性試験の結果の中から最も低濃度でも影響の見られる試験を選び、その試験で影響のみられなかった投与量(NOAEL)を求めます。この値は動物試験による結果であることと人においては個人差があることを考慮して、不確実係数(通常1/100[1/(10[種間差]×10[個人差])])を乗じ人に影響のない量を求めます。この結果がADIとなります。  このADIは、体重1kg当たりの許容1日摂取量であり、これに日本人の平均体重(53.3kg)を乗じることにより、日本人1人当たりの摂取が許容される量となります。この値が農薬の残留基準を設定する際の基となります。

2.農薬は健康に影響するの?

Q1.農作物には農薬が残っているのですか?

 食品衛生法では,農作物ごとに「残留農薬基準」が設定され,この基準を超えたものは流通できないことになっています。スーパーマーケットなどで売っている野菜や果物には心配するような量の農薬は残っていないと考えてよいでしょう。
 また,農薬の使用時期,使用量,使用回数などの使用方法は残留農薬基準を超えることのないように設定されており,県やJAでは,安全な農産物を生産するために,農薬の適正使用についての農家指導,研修会やパンフレットの配布を行っています。

Q2.体の中に入った農薬はどうなるのですか?

 一般的には、体内に入った農薬は、(1)そのまま消化されず体を素通りして排せつされる、(2)消化管で分解され吸収・排せつされる、(3)消化管から吸収され主として肝臓で分解されて排せつされる、(4)尿や胆汁と一緒に体外に出る――などの経路をとります。


 30〜40年前のDDTやBHCの経験から、現在、環境中で分解されにくいものや、いったん生体内に取り込まれると体外に排出されにくく蓄積するようなものは農薬登録をされず使用することはできません。現在,農薬を登録する際は、安全性、残留性についてのさまざまな試験をパスすることが必要になります。その一つに動物代謝試験があり、農薬が動物の体内でどのように吸収、代謝・分解、排せつされるかを調べます。農作物に残留した農薬を摂取し続けたとしても、健康に影響のないよう使用条件も厳しく定められたうえで、農薬は登録されています。

Q3.農薬は発がん性があるのではないですか?

 農薬は、登録の際、安全性試験の一つとして、変異原性試験(遺伝子に影響して突然変異を引き起こす性質を調べる試験)や発がん性試験(マウス・ラットのほぼ一生涯:約2年にわたってできるだけ多量に食べさせて、がんができるかどうかを調べる試験)がおこなわれ、現代の科学技術の最高水準でヒトへの発がん性のリスクについて評価されています。そして、発がん性のリスクがないと考えられる使い方で登録され商品化され、使われています。


 一般的に、食品添加物や農薬が、がんの主な原因とのイメージをもたれていますが、病気や死亡の原因を統計学的に研究している疫学者は、食事と喫煙が主な原因で、食品添加物や農薬による発がんはほとんど無視できると考えています。

【発がんの原因についての主婦とがん疫学者の考え方の違い】
(出典:黒木登志夫「暮らしの手帖」1990年4・5号)

Q4.農薬は環境ホルモンとの関係はあるのですか?

 環境ホルモン、正確には内分泌撹乱化学物質といいます。
 1998年5月に当時の環境庁は、内分泌撹乱作用をもつと疑われる物質として67の物質(群)をリストアップし、そのなかには農薬とその関連物質も含まれていました。しかし、このリストは、文献などより、内分泌撹乱作用があると疑われると指摘された物質を集めただけで、内分泌撹乱作用の有無が確認されたわけではなく、「優先して調査研究を進めていく化合物リスト」に変更されました。
 なお,農薬の毒性試験のなかの繁殖毒性試験は、内分泌撹乱作用の典型的な結果とされている生殖や次世代に及ぼす影響を評価するのに有効であることが再確認されています。
 現在、世界的レベルで内分泌撹乱作用の試験方法や影響評価法について国際的標準化が進んでいます。今後、こうした研究が進展するなかで、農薬について新たな対応が必要になった場合は、当然、しかるべき対応がとられることになります。

Q5.複合毒性は心配ないのですか?

 複合毒性を心配するのは良く解りますが,実際に全ての農薬の組み合わせについて試験するのは困難です。多くの研究者が研究を続けていますが、複合毒性を肯定するような事例は報告されていません。

Q6.輸入食品の検査は行われているのですか?

 収穫後に農薬を使用することを「ポストハーベスト」と呼んでいます。外国では,バナナに限らず穀物や果実などで,輸送過程や貯蔵中に発生するかびや虫を防ぐために使用されています。日本では貯蔵穀物の害虫を防ぐためだけしか使用されていません。
 ポストハーベスト農薬への不安の背景には、海外からの膨大な量の農産物輸入があります。そのため、輸入農産物に使われる農薬についても残留基準値を設定し,輸入農産物についても日本の基準によって検疫所で残留農薬のチェックを行っています。


 平成11年度に実施された地方公共団体における検査結果、検疫所における検査結果及び基準未設定農薬を対象に厚生労働省の依頼により調査した結果を集計したものです。検査の結果、国産・輸入品を含む全検査中で農薬を検出した割合、また、そのうち基準値を定めている農薬で当該基準値を超えた割合がいずれも低かったことから、我が国で流通している農産物における農薬の残留レベルは極めて低いものと判断されます。

Q7.野菜や果物に残った農薬を家庭で落とすことができますか?

 落とすことはできます。水で洗ったり,皮をむいたり、また、熱を加えて調理をすることによって農薬は減少します。いくつかの農薬について、野菜で「水洗い」、「皮むき」、「ゆでる」、「炒める」、「揚げる」ことによる農薬の減少を確認している試験があります。皮をむくことが農薬の除去に最も効果的であり、調理法で除去効果の大きかったのは油で揚げる、ついで炒める、ゆでるの順でした。


マーケットバスケット調査

 マーケットバスケット調査とは,国民が日常の食事を介して食品に残留する農薬などをどの程度摂取しているかを把握するため、市場で流通している農産物等を、通常行われている調理方法に準じて調理を行った後、化学分析を実施し、対象となる農薬の摂取量を調べることです。平成12年度の食品中の残留農薬の1日摂取量調査結果を取りまとめたところ、推定される摂取量のADIに占める割合は、0.08〜5.96%であり、現状ではこれらの農薬の摂取では健康上の問題はないと考えられます。