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公開日:2020年12月10日

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彫漆展-第2回ギャラリートーク

7月5日、彫漆展第2回ギャラリートークを開催しました。解説者は石原雅員氏。
1960年香川県高松市生まれ。香川県漆芸研究所第23回(昭和54年)修了生。在所中に音丸耕堂氏や、北岡省三氏との出会いもあり、漆芸の道に進むことを決断。修了後、当時東京で活動をしていた音丸耕堂氏の内弟子に入りました。2011年香川県指定無形文化財彫漆保持者認定。石原氏は、伝統工芸の高い技術を使い、全国規模の展覧会に作品を出品する一方で、普段の暮らしの中で使われる漆芸作品作りも目指しています。

 

彫漆の難しいところ・魅力的なところ

彫漆は小刀で彫るために緻密な表現ができません。
また、彫ることで模様が立体的になり、影がつき、アウトラインがクッキリと現れます。
このため、彫漆独特のデザイン、フォルムを考える必要があります。
対象物を彫漆流にアレンジしてデザインすることが難しいところです。
そして、色漆を塗り重ね、それを彫りさげることで表現しますので、斜めに彫った時に美しく見える色の重ね具合と、全体の色合いを考える必要もあります。

表現が全く異なる二つの作品

「彫漆小箪笥早春譜」作/石原 雅員

「彫漆熱帯幻想飾箱」作/石原 雅員

一方は古典的な梅の模様を、もう一方は熱帯をイメージした作品。
デザインも形も色合いも全く違います。
「彫漆熱帯幻想飾箱」は20年前の作品です。乾漆で作っています。
乾漆の面白さは、自由に自分が思ったように形を作れることです。
この頃は、乾漆ばかりで作品を作っていました。

次に何を作りたいか・・・と考えた時、“小箪笥”を作ろうと思い立ちました。
引き出しを作るには、自由な曲線を作ることができる乾漆よりも指物のほうが適しています。

また、指物は形がシンプルなので、その分、デザインを自由にできます。
乾漆は形を自由に作れますが、模様付けには制限があります。
形も模様も自由すぎると、行き過ぎたものになってしまいますから・・・。

「彫漆小箪笥早春譜」は、扉をあけると引き出しになっています。
ボディは全て檜です。300年ほど経った檜を使っています。
柾目で使うと、素地の伸縮を最小限に出来ます。

扉に使う蝶番(ちょうばん)は福井県の鯖江市にある眼鏡の専門店に発注しています。
あと何年間は、こういう蝶番を作った作品を作っていこうと思っています。

音丸耕堂師匠について

「彫漆延齢草菓子器」作/音丸耕堂

「堆漆柿香合」作/音丸耕堂

音丸師匠の作品の特徴は、器物のデザイン、フォルムの美しさにつきると思います。
「彫漆延齢草菓子器」は乾漆の素地に漆を40層ほど塗っています。

彫られた延齢草は、植物の姿そのままではなく、アレンジされています。
音丸師匠がスケッチブックにスケッチする時、すでに、その対象物はデフォルメされています。

私が弟子入りしていた時、仕事場の棚にはスケッチブックが整然と並んでいました。
それと、複数の器物も常に棚に置いてあり、ある時、ふと思い立ったかのように、スケッチブックと器物を取り出し
スケッチブックをみながら、器物に直接、筆でデザインして、すぐに彫っていました。
その早さと確かさに感嘆したものです。

「堆漆柿香合」は、全て漆でできています。器物に刷毛(はけ)で塗る方法とは違い、木やガラスの上に漆をローラーとヘラで塗り重ねていきます。120回から150回塗り重ねて5〜7mmほどになります。刷毛で塗る時よりも、1回で塗る量が厚いため、漆が乾くために必要な湿度や温度、乾き具合を調整しないと、すぐに縮んでしまいます。厚くは塗れますが、調整は難しいものです。

音丸師匠は柿の香合を、いくつか作られています。
80歳を超えても、作る度にそのデザインが常に変わっていくことに感銘を受けました。

お歳をとられても、毎朝10時には仕事場へ入り、夕方5時までの間、きっちりと仕事をされていました。

師匠の言葉で忘れない言葉は「楽而不疲」。
楽しんで熱中すれば疲れないということです。

生活の中で使われる漆芸作品

展覧会に出品する作品とは別に、実用的なものも作っています。
漆といえば“お椀”というイメージが強いようですが、もっと様々な場面で使えるものです。
漆の可能性を感じてもらいたいと考えています。

使いにくいというイメージを持つ方も多いようですが
実際使ってみると思っている以上に強く、きちんと作られたものは長く使えます。
たとえ角が傷んでも漆を塗り直せば良いですし、どんどん使ってほしいですね。

いろんな場所に行くと、つい木に目がとまります。
オリーブの木目の美しさにも魅かれますし、屋久島に行った時に、店の隅に置かれた屋久杉の端材を買い求めたもこともあります。
それらを使って、小さな杯などを作っています。

カップ部分はオリーブの木で、脚部分は堆漆で作りました。
これでお酒を飲むと味が変わります。
器が好きで、いろいろな作家が作ったものを集めています。
日本酒を、ガラスや陶器のものと、漆のものとに入れて飲み比べると、漆のもののほうが断然にまろやかな味になっていました。
皆さんにも是非試していただきたいと思います。

これから

展覧会に出品するような作品も作りたいけれど、実用的なものも作りたい。
もっと早く、やり始めれば良かったと思っているところです。

漆工芸は、ガラスや陶磁器比べると、制作時間がかかります。
ガラス作家は一年に1500点くらい作る人もいますが、漆は数点しか作れません。
一生のうちに作れるものが少なさすぎる・・・。と言って嘆いてもいても仕方ありません。
もっと合理的に出来るところがあるのではないか、試行錯誤しているところです。

良い評価をいただくことは、もちろん嬉しいことですが自分の思うもの、今までにない、新しく斬新な漆工芸は出来ないかと考えています。
他人の評価よりも、自分は何をやりたいか・・・、どうやれたのか・・・、自己評価のほうを大事にしたいと思っています。

そして、日本の漆工芸の技、これだけの素晴らしい技術を、もっと多くの人に知ってもらいたいですね。
国内はもちろん、海外の人にも知ってもらうことができればと考えています。

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