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高松松平家歴史資料で香川県立ミュージアム所蔵の石井磬堂(けいどう)作「狭貫彫 堆朱料紙文庫(さぬきほりついしゅりょうしぶんこ)」は、大正十五年(1926)の作品で、外箱の箱書には「今、この料紙文庫と硯箱の図を見るに、意を写し、尚運刀精緻にして、両品相待って完作と為す」とあることから、もともとこの料紙文庫は硯箱(すずりばこ)とセットであることは知られていました。しかしその後、硯箱のほうの所在がわからなくなり、長らく磬堂の失われた名品として美術関係者や愛好家のなかで惜しまれていました。
この硯箱が再び姿を現したのは平成二十八年(2016)のことでした。様々な調整を経て、このたび香川県の所有となり、石井磬堂の代表作である「狭貫彫 堆朱料紙文庫」、「同 堆朱硯箱」が、本来の一揃いのセットで県立ミュージアムに収蔵されることになりました。このことは、江戸末期の玉楮象谷(たまかじ ぞうこく)に始まり、石井磬堂から音丸耕堂(おとまる こうどう)につながる本県漆芸、とりわけ彫漆の分野において非常に重要な意義を持つものです。
本展では石井磬堂作「狭貫彫 堆朱硯箱」の収蔵を記念して、同「狭貫彫堆朱料紙文庫」と一揃いにして初公開するとともに、磬堂の内弟子となり、後に人間国宝となった音丸耕堂の作品(県立ミュージアム蔵)もあわせて展示し、石井磬堂から音丸耕堂につながる彫漆の系譜を、15点の作品等で紹介します。
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