高齢者施設での陽性者対応のポイント
1.個人防護具の使い方について
個人防護具の使い方で大切なことは、メリハリを意識することです。
個人防護具を全て着用して勤務を続けていると疲労が蓄積しすぎてしまい、ミスが増えたり体調不良を引き起こす原因となってしまいます。
必要な時だけ着用し、不要な時には外すようにすることで持続可能な感染対策となります。
個人防護具の原則は、陽性者の部屋(レッドゾーン)に入る時に着て、部屋から出る時に必ず脱いで出るということです。
以下に施設指導の際に指摘することが多いポイントをお示しします。
- N95マスクは陽性者の部屋に入る時のみ使用する。グリーンゾーン内で使用する必要はない。(N95マスクを空気の漏れなく正しく装着できた場合、陽性者のケアなどの比較的身体的負荷のかかる行動をすると、15分や20分で息苦しさ等のため限界がくるはずです。もし1時間以上装着してケアができるのであれば、N95マスクが正しく装着できていません。)
- N95マスクの下にサージカルマスクを着用してはいけません。(サージカルマスクによって作られた隙間から空気が漏れて、N95マスクの意味がなくなります。)
- N95マスクは使い捨てにする必要はない。(1日1枚として、使わない時にはビニール袋に入れて保管する等は可能。)
- フェイスシールドは、ケア対象者がマスクを着用できない場合(食事介助時や認知機能低下のある患者)や、咳がひどい場合のみ必要。(飛沫を浴びる可能性が低い時には不要)
- ガウンやエプロンは、身体密着がなく、体液・排泄物を浴びる可能性が低い場合には使用しなくてもよい。
- 濃厚接触者に対しては、平時の基本的な感染対策でよい。ただし、症状が出現すれば陽性者と同様の感染対策が必要。
2.ゾーニングの基本的な考え方
- 陽性者がいる部屋の中だけをレッドゾーンとして、廊下はグリーンゾーンにすることが基本です。レッドゾーンは可能な限り小さくしないと、ケアする側の負担が大きくなり、デメリットの方が大きくなります。
- 陽性者は大部屋にまとめても問題ありません。濃厚接触者はできれば個室がよいのですが、難しい場合は大部屋にまとめることも可能です。症状はあるが抗原検査で陰性となっている入所者(疑似症者)は個室対応が原則です。また、陽性者と濃厚接触者と疑似症者はそれぞれ分けて違う部屋にしなければなりません。
- ゾーニングはケースバイケースな性質が強いので、保健所に問い合わせていただければ医師や保健師からアドバイスができます。
3.食事について
- 陽性者、濃厚接触者、体調不良者(疑似症者)は部屋の中で食べていただくのが基本ですが、それ以外の入所者は食堂でまとまって食べていただくことは可能です。ただし、同じ方向を向いてもらって対面とならないような配置とし、間の距離を少なくとも1メートル以上とってもらい、食事中の換気を実施するなどの対策が必要です。
- 食器は普段通りのもので提供し、普段通りの洗浄で問題ありません。普段通りの洗浄で感染性はなくなります。使い捨てに変更してもよいのですが、ゴミの処分が面倒になるなど負担が大きくなることがありますので、施設の状況に応じて手間がかからない方を選んでください。
4.洗濯について
- 陽性者の衣類は普段通りの洗濯を行って干せば感染性はなくなります。他の入所者の衣類と混ぜて洗濯しても問題ありませんが、脱いだ後の衣類を触る際には手袋を使用するなどの接触感染対策が必要です。新型コロナウィルスは72時間経過すれば感染性はなくなると言われていますので、洗濯物をビニール袋に入れておいて、3日間経過すれば普段通りに洗濯するという対応をとっている施設も多いです。
5.参考資料