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公開日:2019年12月27日

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平成19年10月17日 答申第445号(香川県情報公開審査会答申)

平成19年10月17日 答申第445号

答申

第1 香川県情報公開審査会(以下「審査会」という。)の結論

香川県知事(以下「実施機関」という。)が行った一部公開決定(以下「本件処分」という。)により非公開とした部分のうち、実施機関が公開することとした工事金額についての記載を除く部分について非公開としたことは妥当である。

第2 異議申立てに至る経過

1 行政文書の公開請求

異議申立人は、平成17年9月30日付けで、香川県情報公開条例(平成12年香川県条例第54号。以下「条例」という。)第5条の規定により、実施機関に対し、「平成17年度農業試験場移転整備事業1号調整池施設工事に関して、指名業者の15社を選んだ経緯が判る資料」の行政文書の公開請求を行った。

2 実施機関の決定

実施機関は、公開請求のあった行政文書として、「工事業者一覧表(一次選定資料)(以下「本件行政文書1」という。)及び「指名競争入札者に対する評価(以下「本件行政文書2」という。)を特定し、本件行政文書1のうち「各業者の個別情報とそれに基づく評価部分」及び「工事金額について記載された部分」並びに本件行政文書2のうち「各業者の個別情報、評価方法及びそれに基づく評価部分」が条例第7条第4号に該当するとして、平成17年8月4日付けで一部公開決定を行い、異議申立人に通知した。

3 異議申立て

異議申立人は、本件処分を不服として、平成17年9月30日付けで行政不服審査法(昭和37年法律第160号)第6条の規定により実施機関に対して異議申立てを行った。

第3 異議申立ての内容

1 異議申立ての趣旨

「本件処分を取り消すとの決定を求める」というものである。

2 異議申立ての理由

異議申立書において主張している理由は、おおむね次のとおりである。

  • (1)本件行政文書1の各業者の個別情報について
    適正な競争を阻害するおそれは全く無く、条例第7条第4号には該当しない。
  • (2)本件行政文書1の工事金額について
    公にしても事務の適正な執行に支障は無く、むしろ公にする方が事務を適正にすることになる。したがって、条例第7条第4号には該当しない。
  • (3)本件行政文書2の評価部分について
    公にすることにより、業者に対し、各業者の自戒に役立ち、適正な競争を増進し、事務の適正な執行をもたらすことになる。条例第7条第4号には該当しない。
  • (4)公開行政文書は、ほとんど全面的な真っ黒な公開文書で、これでは行政文書公開が有名無実である。
  • (5)本件は、○○が経営する特定法人が役所に業者名を出し、特定法人が指名され、談合しやすくなる談合体制である。これを打破するためには、本件行政文書の完全な公開が必要である。

3 異議申立人の意見書による主張

非公開部分は、条例第7条第4号に該当せず、公開すべきである。
公共工事入札、契約適正化法が制定され、独禁法の入札談合関係規定が改正され、さらには、入札談合等関与行為防止法が平成14年に制定されて、平成18年度に至っては特に官製談合の防止の気運が高まっている。
香川県の措置は、そのような官製談合防止の世間の流れに逆行するものである。
なお、本件対象業者は、正に犯罪行為をしているもので、その情報を開示しないことは不当である。

第4 実施機関の説明の要旨

非公開理由等説明書による説明は、おおむね次のとおりである。
条例は、県民の行政文書の公開を請求する権利につき定め、地方自治の本旨に即した県政の発展に寄与することを目的とするものであるが、原則公開の下であっても行政文書を公開することにより、請求者以外のものの権利、利益が侵害されたり、円滑な行政運営が損なわれるということがあってはならないため、原則公開の例外として条例第7条を規定し、その権利に一定の制限を加えているものである。
このようなことから、本件行政文書の公開・非公開の決定に当たっては、条例第7条各号の該当性について検討し、決定したものである。
行政文書の公開義務のない情報として、条例第7条第4号では、「県の機関、国の機関又は県以外の地方公共団体が行う事務又は事業に関する情報であって、公にすることにより、当該事務又は事業の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあるもの」が定められている。

1 本件行政文書1のうち、各業者の個別情報とそれに基づく評価部分、本件行政文書2のうち、各業者の個別情報、評価方法及びそれに基づく評価部分

県が指名競争入札の方法により発注する工事に関しては、「香川県建設工事指名競争入札指名業者指名基準」(平成6年告示第279号、以下「指名基準」という。)及び「香川県建設工事指名競争入札指名業者指名基準の運用基準について」(以下「指名運用基準」という。)により、指名しようとする者の選定基準について、必要な事項を定め、公表している。
また、県発注工事の入札及び契約に関する情報に関しては、「香川県公共工事等の入札及び契約に関する情報の公表に関する要綱」(平成16年告示第218号、以下「公表要綱」という。)に基づき、以下の書類を閲覧に供している。

  • ア 発注予定工事一覧
  • イ 指名業者一覧表
  • ウ 入札結果表
  • エ 契約内容表
  • オ 業者選定表
  • カ 契約変更内容表

上記のように、県発注工事に係る指名基準、入札及び契約に関する情報を公表している現状において、それらの情報に加え、指名競争入札参加者の具体的な選定方法等がわかる当該非公開部分を公開することにより、将来の県発注工事についての指名競争入札参加者を容易に推測できるようになる。そうなることで、各業者が将来の指名を見込み、現に指名を受けている工事について、真摯な見積りを行わなくなるなど、業者間の適正な競争を阻害し、当該事務又は事業の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあるので、条例第7条第4号に該当する。

2 本件行政文書1のうち、工事金額について記載された部分

当該部分は、異議申立てを受けて再度検討を行った結果、異議申立てに理由があることから、公開することとする。

第5 審査会の判断理由

1 判断における基本的な考え方について

条例は、その第1条にあるように、県民の行政文書の公開を求める権利を具体的に明らかにするとともに、行政文書の公開に関し必要な事項を定めることにより、県の保有する情報の一層の公開を図り、県政に関し県民に説明する責務が全うされるようにし、県政に対する県民の理解と信頼を深め、もって地方自治の本旨に即した県政の発展に寄与することを目的として制定されたものであり、審査に当たっては、これらの趣旨を十分に尊重し、関係条項を解釈し、判断するものである。

2 本件行政文書の内容等について

本件行政文書は、工事施行等審議会規程第5条第1項の規定により設置された農政水産分科委員会における、香川県農業試験場移転整備事業1号調整池施設工事に係る指名競争入札参加者の選定経緯が分かる資料である。

3 非公開情報該当性について

本件行政文書1のうち工事金額についての記載を除く非公開部分及び本件行政文書2の非公開部分

  • (1)条例第7条第4号の該当性について
    条例第7条第4号は、県の機関等が行う事務又は事業の目的達成又は適正な執行の確保の観点から、当該事務又は事業に関する情報の中で、その性質、目的等からみて、当該事務又は事業の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがある情報については、非公開とすることを定めたものであると解される。
    この基本的な考え方に基づき、実施機関が本号に該当するとして非公開とした部分について検討する。
    本件行政文書1には、表形式で上段に項目欄を、下段に選定対象工事業者ごとに概要や評価内容等を記載する方式で、工事業者の名称、格付、代表者、所在地その他の個別の情報及び一次選定に当たっての工事業者の個別の評価が記載されており、本件行政文書2には、同様な方式で、一次選定を経た工事業者について、工事業者の名称等の個別の情報並びに指名競争入札参加者の選定に当たっての具体的な評価基準及び工事業者の個別の評価が記載されている。これらの各表の上の工事名、工事場所等を記載した部分、並びに本件行政文書1の項目欄及び本件行政文書2の具体的な評価基準を除く項目欄は公開としているが、その他の部分は非公開としている。
    実施機関の説明によると、非公開としている本件行政文書2の具体的な評価基準は、一次選定資料である本件行政文書1の工事業者から指名競争入札参加者を選定するための具体的な選定方法であり、公表していないとのことである。
    県が指名競争入札の方法により発注する工事については、「香川県建設工事指名競争入札参加者資格基準」(昭和55年告示427号、以下「資格基準」という。)により、建設工事の種類ごとに設計金額によって指名すべき工事業者の格付が定められ、さらに、指名基準及び指名運用基準により、指名競争入札に指名しようとする者の選定について必要な事項が定められ、これらの基準に基づき、指名競争入札参加者の選定が行われており、これらの基準は、香川県ホームページで公表されている。
    また、工事業者の個別の情報並びに発注予定工事及び入札・契約等に関する情報は、次の文書等で閲覧することができる。
    • (a)建設業法(昭和24年法律第100号)第13条に基づき閲覧に供している工事業者の建設業の許可申請書
    • (b)財団法人建設業情報管理センターのホームページに掲示している各工事業者の経営事項審査結果通知書
    • (c)「香川県建設工事成績評定要領」第9条及び第10条に基づき閲覧に供している各工事業者が施行した工事に係る工事成績評定結果通知書、工事成績評定結果変更通知書及び評価項目別評定点表
    • (d)公表要綱に基づき閲覧に供している、発注予定工事一覧、指名業者一覧表、入札結果表、契約内容表、業者選定表、契約変更内容表、建設工事指名競争入札参加資格者名簿(以下「資格者名簿」という。)等
      まず、本件行政文書2の非公開部分である具体的な評価基準は、最終的に指名競争入札参加者を決定するための点数化基準等であり、これを公開すれば、上記のような資格基準、指名基準及び指名運用基準、並びに工事業者の個別の情報及び入札・契約等に関する情報等により、指名競争入札参加者を特定できる可能性が高い。
      また、上記のように資格基準、指名基準及び指名運用基準、並びに工事業者の個別の情報及び入札・契約等に関する情報等を公表している現状において、本件行政文書1及び本件行政文書2の非公開部分である工事業者の個別の情報及び評価を公開すれば、本件行政文書のような入札選定に係る資料を集約することにより、本件行政文書2で非公開としている具体的な評価基準が推測され、指名競争入札参加者の具体的な選定方法が明らかになるおそれがある。
      次に、指名業者一覧表及び入札結果表により公開されている指名競争入札参加者となった工事業者の名称等を公開した場合について検討する。審査会で確認したところ、本件行政文書の表は、指名競争入札参加者の選定資料とするために、選定対象事業者を一定の基準に基づき並べて記載していることから、指名競争入札参加者の名称等を公開した場合、本件行政文書のような入札選定に係る資料を集約し、資格者名簿に掲載されている工事業者の所在地、業種、格付、点数等や資格基準に掲載されている設計金額ごとの格付等の情報を照合することにより、公開していない工事業者名が推測される可能性が高く、ひいては指名競争入札参加者の具体的な選定方法が明らかになるおそれがある。
      そうなれば、公表されている発注予定工事一覧により将来の県発注工事についての指名競争入札参加者を事前に推測することができるようになり、各工事業者が将来の指名を見込み、現に指名を受けている工事について、真摯な見積りを行わなくなるなど、工事業者間の適正な競争を阻害し、入札事務の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあるとの実施機関の説明は是認できる。
      なお、平成18年度までは、指名業者一覧表を作成し、指名競争入札参加者を入札前に公表していたが、「公共工事の入札及び契約の適正化を図るための措置に関する指針」(平成18年5月23日閣議決定)で、「入札前に指名業者名が明らかになると入札参加者間での談合を助長しやすいとの指摘があることを踏まえ、各省各庁の長等は、指名業者名の事後公表の拡大に努めるもの」とされたことを考慮し、本県においては、平成19年度以降は、指名業者一覧表の作成及び公表を廃止したことからも、入札前に指名競争入札参加者を容易に推測できるような情報を公開することは、入札事務の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあると認められる。
      したがって、当該非公開部分は、条例第7条第4号に該当すると判断される。

4 本件行政文書1のうち、工事金額について記載された部分

実施機関に確認したところ、本件行政文書1の工事金額は設計金額であるが、第4の2のとおり実施機関はこれを公開することとしているので、審査会では判断しないものとする。

よって、当審査会は、「第1 審査会の結論」のとおり判断する。
(省略)

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