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公開日:2020年3月13日

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令和2年2月25日答申第51号(香川県個人情報保護審議会答申)

令和2年2月25日(答申第51号)

第1 香川県個人情報保護審議会(以下「審議会」という。)の結論

西部子ども相談センター所長(以下「処分庁」という。)が行った、一部開示決定(以下「本件処分」という。)により不開示とした部分のうち、別表の「開示すべき部分」に掲げる部分については、開示すべきである。

第2 審査請求に至る経過

1 保有個人情報の開示請求

平成30年〇月〇日、審査請求人は、香川県個人情報保護条例(平成16年香川県条例第57号。以下「条例」という。)第14条第1項の規定に基づき、処分庁に対し「私、〇〇を一時保護として、子供ハウスに連れていった事になる理由と、子供ハウスの生活内容などすべてのほうこく書」の開示請求(以下「本件請求」という。)を行った。

2 処分庁の決定

処分庁は、本件請求に係る審査請求人の保有個人情報が含まれる行政文書として、「〇〇の児童記録のうち、一時保護中の全ての文書」(以下「本件保有個人情報」という。)を特定し、平成30年〇月〇日付けで本件処分を行い、審査請求人に通知した。

3 審査請求

審査請求人は、本件処分を不服として、平成31年〇月〇日付けで行政不服審査法(平成26年法律第68号)第2条の規定により、香川県知事に対して審査請求を行った。

第3 審査請求人の主張

1 審査請求の趣旨

審査請求の趣旨は、「本件処分を取り消すよう求める。」というものである。

2 審査請求の理由

審査請求書において主張している審査請求の理由はおおむね次のとおりである。
不開示部分が想像以上に多すぎ、十分な内容の確認ができなかった。対象文書につき、十分な範囲を開示するよう求める。

3 反論書による主張

反論書による主張はおおむね次のとおりである。
処分庁は対象文書につき、その一部を不開示としているが、条例第16条に反する違法な処分である。
処分庁の記載している内容と私の記憶にある真実が一致するか、確かめるために開示を求める。

第4 処分庁の理由説明

処分庁が弁明書において主張している本件処分を行った理由は、おおむね次のとおりである。
請求人は、黒塗り部分につき、実施機関が必要以上に不開示としており、条例第16条違反だと主張しているが、一部開示決定処分とした条例の該当性については、次のとおりである。

  1. 児童記録を開示することで、遺族以外の開示請求者の生命、健康、生活又は財産を害するおそれがある情報に該当すると考えられるため(条例第16条第1号)。
  2. 児童記録のうち、開示請求者以外の個人に関する情報であって、開示することにより、当該個人の権利利益を害するおそれがある情報であるため(条例第16条第2号)。
  3. 児童記録のうち、県の機関、国の機関、県以外の地方公共団体、独立行政法人等又は地方独立行政法人が行う事務又は事業に関する情報であって、開示することにより、当該事務又は事業の性質上、当該事務又は事業の適正な遂行に著しい支障を及ぼすおそれがある情報であるため(条例第16条第5号)。
  4. 児童記録のうち、個人の評価、診断、選考、相談等の事務に関する情報であって、開示することにより、当該事務又は将来の同種の事務の適正な遂行に著しい支障を及ぼすおそれがある情報であるため(条例第16条第6号)。

第5 当審議会の判断

1 本件保有個人情報の内容等について

児童相談所(本県においては、子ども女性相談センター及び西部子ども相談センター)は、児童福祉法(昭和22年法律第164号)第1条に規定する児童福祉の理念を実現するため、同法第12条第1項に基づき設置される行政機関であり、市町村と適切な役割分担・連携を図りつつ、子どもに関する家庭その他からの相談に応じ、子どもが有する問題又は子どもの真のニ−ズ、子どもの置かれた環境の状況等を的確に捉え、個々の子どもや家庭に最も効果的な援助を行い、もって子どもの福祉を図るとともに、その権利を擁護することを主たる目的として都道府県、指定都市等に設置されるものである。児童相談所では、児童福祉法第11条により都道府県が行わなければならないと定められる児童の福祉に関する業務を行っており、児童の一時保護を行うこと(以下「一時保護事務」という。)もその一つである(児童福祉法第11条第1項第2号ホ及び同法第12条第2項)。
「児童相談所運営指針について」(平成25年12月27日付け雇児発1227第6号)によると、児童相談所では、子どもや保護者等の相談内容を理解し、児童相談所に何を期待し、また、児童相談所は何ができるかを判断するために相談が開始され、その相談の中で、主訴、問題の内容、現在の状況等、子どもや保護者の様子などの把握が行われるとともに、緊急対応の必要性等の判断や、今後の相談援助方法についての説明等が行われ、その内容が相談記録としてまとめられる。
また、同運営指針によると、問題に直面している子どもの福祉を図るためには、その子どもの状況及び家庭、地域状況等について十分に理解し、問題解決に最も適切な専門的所見を確立する必要があるため、医学(特に精神医学及び小児医学)、心理学、教育学、社会学、社会福祉学等の専門的知識・技術を効果的に活用し、客観的に診断することとされており、診断は、専門性を有する者が担当することとされている。
このうち児童心理司による心理診断については、面接、観察、心理検査等をもとに心理学的観点から援助の内容、方針を定めるために行われ、面接による情報の収集については、できる限り子どもや保護者等の気持ちに配慮しながら実施され、その内容が心理面接記録としてまとめられる。
本件保有個人情報は、一時保護事務の結果作成された一連の記録からなるものである。その内容には相談記録部分や心理面接記録部分等を含んでおり、詳細は次表のとおりである。

保有個人情報の概要
区分(該当ページ番号) 概要
保有個人情報1(1) 家族構成等児童に関する情報と、相談の主訴が記載されたもの
保有個人情報2(3〜7) 事案の発生から終了、事後経過までの経緯をまとめたもの
保有個人情報3(9) 虐待相談・通告に関する情報をまとめたもの
保有個人情報4(10〜15) 会議の内容及び会議後〜一時保護決定通知をするまでの経過記録
保有個人情報5(17〜27) 虐待の調査記録
保有個人情報6(29)※ 一時保護決定通知書
保有個人情報7(31) 児童相談所が取得した資料
保有個人情報8(33〜57) 一時保護から解除後の経過までの記録
保有個人情報9(59〜78) 児童の作成した文書等
保有個人情報10(79)※ 西部子どもセンターが作成した事務連絡
保有個人情報11(81) 児童が作成した文書
保有個人情報12(83)※ 一時保護解除通知書
保有個人情報13(85〜88) 児童と児童心理司との面談記録
保有個人情報14(89〜99) 児童に関する経過記録
保有個人情報15(101〜112)※ 一時保護所で児童が回答したもの

※注 保有個人情報6、10、12及び15については全て開示されている。

2 検討事項について

本件処分における本件保有個人情報の不開示部分は多岐にわたるが、不開示事由は次の4点である。すなわち、条例第16条第1号(本人の生命等を害するおそれがある情報)、同第2号(本人以外の個人に関する情報)、同第5号(事務又は事業に関する情報)、同第6号(個人の評価等情報)である。
審査請求人は、本件保有個人情報について、これらの不開示事由は該当しないとの主張をしている。そこで、当審議会は、処分庁の行った不開示事由の判断が妥当であるか検討する。

3 不開示事由について

  • (1)条例第16条第1号について
    条例第16条第1号は、本人の生命、健康、生活又は財産を保護する観点から、本人に関する保有個人情報を開示することにより、本人の生命、健康、生活又は財産を害するおそれがある場合には、本人に関する保有個人情報であっても、本人又は代理人に開示しないことについて定めたものである。通常、本人の情報を開示しても本人の権利利益は侵害されないことから、本号は事案に即し限定的に適用されなければならない。
    本号に該当するかは、諸般の事情を総合的に考慮して決するところ、未成年者から請求される保有個人情報の開示においては、保有個人情報の内容、本人と保護者の関係性や生活状況、本人の年齢等の事情を考慮し、本人に保有個人情報を開示することで、本人の生命、健康、生活又は財産を害するおそれが認められる場合には、当該保有個人情報は不開示となる。
    本件保有個人情報は、審査請求人自らが一時保護された際の記録であるところ、一時保護に関する情報は秘匿性の極めて高いものであることから、同記録の内容が第三者に知られると本人の権利利益を害するおそれが極めて高い。また、同記録には〇〇の情報をはじめとした様々な情報が記載されており、その内容の真実性にかかわらず、当該内容を第三者に知られることは本人の不利益となり得る。さらに、審査請求人は現在〇歳であり〇〇状況にある。これらのことからすると、本件において同号を検討する際には、本人に開示することにより本人の生命、健康、生活又は財産を害するおそれがないかを判断するのに加え、〇〇にも同様のおそれがないか慎重に判断することを要する。
  • (2)条例第16条第2号について
    条例第16条第2号は、本人以外の個人の権利利益を保護する観点から、開示請求に係る保有個人情報の中に本人以外の個人に関する情報が含まれている場合において、当該本人以外の個人に関する情報を開示請求者に開示することにより、当該本人以外の個人の権利利益が侵害されるおそれがある場合には、当該本人以外の個人に関する保有個人情報を開示しないことを定めたものである。また、法令等の規定により又は慣行として開示請求者が知ることができる個人情報については、開示することにより当該第三者の権利利益を侵害するおそれが乏しいため、同号の不開示情報には該当しない。一時保護事務においては、事実確認のため第三者に照会することが考えられるが、そのような情報を開示することにより当該第三者の権利利益侵害が生じるおそれがないか判断することが必要である。
  • (3)条例第16条第5号について
    条例第16条第5号は、県の機関等が行う事務又は事業に関する情報であって、開示することにより、当該事務又は事業の性質上、当該事務又は事業の適正な遂行に著しい支障を及ぼすおそれがあるものを不開示情報と定めている。
    一時保護事務は、各種関係機関の連携が非常に重要であり、秘匿性の高い情報を共有する必要のある事務である。安易に保有個人情報を開示すると、これら関係機関が不確かな情報を共有することをおそれ、関係部署への情報提供が慎重になり過ぎ、迅速な情報共有ができなくなる等のおそれがある。保有個人情報の開示に際しては、このような事務事業の支障の有無につき慎重に判断する必要がある。
  • (4)条例第16条第6号について
    条例第16条第6号は、個人の評価、診断、選考、相談等の事務に関する情報であって、開示することにより、当該事務又は将来の同種の事務の適正な遂行に著しい支障を及ぼすおそれがあるものを不開示情報と定めている。
    一時保護事務は、被保護者たる児童との信頼関係が重要な事務であり、開示することによりかかる信頼関係が失われるおそれがないか判断しなければならない。

4 保有個人情報に対する判断の妥当性について

  • (1)保有個人情報1について
    保有個人情報1における不開示部分は、受付日欄、通告者欄、電話欄、保護者欄、主訴欄、家族構成欄及び欄外記載部分である。
    • ア 受付日欄について
      受付日欄には、保有個人情報1が作成された日付が記載されている。受付日を開示するといつ虐待の通告があったのかがわかるが、本件のように〇〇状況にあっては、これを開示することにより通告者が特定されるおそれがある。児童相談所は、通告者の情報を秘匿する義務を負っており、これを開示すると児童相談所の児童保護事務に著しい支障が生じるおそれがあるといえる(条例第16条第5号該当)。
      したがって、受付日欄の情報を不開示とした処分庁の判断は妥当である。
    • イ 通告者欄について
      通告者欄には、通常、虐待のおそれがあるとして通告した者の情報が記載されるものである。かかる情報が開示されることとなれば、虐待の事実があると思慮した者が、通告した事実を第三者に知られることをおそれ、児童相談所への通告をためらう相当程度の可能性が認められる。そのため、児童相談所の児童保護事務に著しい支障が生じるおそれがあるといえる(条例第16条第5号該当)。
      したがって、通告者欄の情報を不開示とした処分庁の判断は妥当である。
    • ウ 電話欄について
      電話欄には、審査請求人の所属する学校の担当者名が記載されている。かかる情報は審査請求人以外の情報であるが、これを開示することで当該担当者の権利利益を侵害するおそれがあるとは認められず、条例第16条各号に定めるその他不開示事由にも該当しない。
      したがって、電話欄の情報を不開示とした処分庁の判断は妥当でなく、これについて開示すべきである。
    • エ 保護者欄について
      保護者欄には、審査請求人の保護者に関する情報が記載されている。かかる情報は審査請求人以外の情報であるが、これを開示することで当該保護者の権利利益を侵害するおそれがあるとは認められず、条例第16条各号に定めるその他不開示事由にも該当しない。
      したがって、保護者欄の情報を不開示とした処分庁の判断は妥当でなく、これについて開示すべきである。
    • オ 主訴欄について
      主訴欄には、通常、通告者から提供される情報が記載されるものである。かかる情報は虐待調査の端緒となった重要な情報であり、これを開示すると、通告者が開示されることをおそれ、虐待に関する情報が得られなくなることが考えられ、事務事業の遂行に著しい支障を及ぼすおそれがあると認められる(条例第16条第5号該当)。
      したがって、主訴欄の情報を不開示とした処分庁の判断は妥当である。
    • カ 家族構成欄について
      家族構成欄には、審査請求人本人及びその家族の情報が記載されている。このうち、その他参考事項欄は事案に応じた必要な情報を記載する欄であり、どのような情報を記載するかにつき、児童相談所職員の裁量が認められる。審査請求人に関する情報であることを理由に、一律に当該欄記載の情報を開示することになると、児童相談所職員に委縮効果を与えることになりかねない。一方で、その他の参考事項欄の記載事項の多くは審査請求人の家族の基本的な情報であるから、その全てを不開示とすることは妥当でない。
      審議会において見分したところ、その他の参考事項欄のうち、個人の携帯電話の番号については、当該個人と連絡するために業務上必要となり得る情報である一方、プライバシー性の高い情報であることから、これを開示することとなると、児童相談所職員に委縮効果を与えることとなると認められる。
      一方、その他参考事項欄以外については、審査請求人の家族にかかる基本的な情報であり、開示したとしても権利利益の侵害は認められず、条例第16条各号に定めるその他不開示事由も該当しない。
      したがって、家族構成欄うち、本人以外の情報を不開示とした処分庁の判断は妥当でなく、その他の参考事項欄の携帯番号以外の情報については開示すべきである。
    • キ 欄外記載部分について
      欄外記載部分には、関係する教育委員会の担当者名や連絡先、学校長名が記載されている。これらの情報は、第三者の情報であるが、審査請求人に開示したとしても権利利益を害するおそれは認められない。加えて、かかる情報を審査請求人に開示したとしても、事務事業上の著しい支障が生じるおそれも認められない。
      したがって、欄外記載部分の情報を不開示とした処分庁の判断は妥当でなく、これについて開示すべきである。
  • (2)保有個人情報2について
    保有個人情報2は、経過概要を記載した文書である。保有個人情報2における不開示部分は、年月日欄及び経過・措置欄である。
    • ア 年月日欄について
      年月日欄のうち、3ページ目1行目については、通告に関する年月日が記載されていることから、開示すると児童相談所の児童保護事務に著しい支障が生じるおそれがあるといえる(条例第16条第5号該当)。一方、それ以外の年月日については、事務事業上の著しい支障が生じるおそれがあるとは認められず、その他不開示事由にも該当しないと認められる。
      したがって、年月日欄の情報を全て不開示とした処分庁の判断は妥当でなく、年月日欄のうち、3ページ目1行目以外の部分は開示すべきである。
    • イ 経過・措置欄について
      経過・措置欄には、児童相談所が関係機関との連携をした事実が記載されており、通常これを開示してしまうと、関係機関が委縮するおそれがあると認められる(条例第16条第5号該当)。ただし、審査請求人が自ら経験した事項などについてはこのようなおそれが認められないため、開示すべきである。
      審議会で見分したところ、3ページ目11行目9字目から12字目、5ページ目6行目及び17行目、7ページ目1行目、2行目、4行目、13行目、22行目10字目から17字目及び24行目については審査請求人が自ら経験した事項であると認められ、関係機関が委縮するおそれは認められない。また、7ページ目25行目にある記載は、児童相談所が関係機関との連携をした事実が記載されておらず、関係機関が委縮するおそれがあるとは認められない。
      したがって、経過・措置欄の情報を全て不開示とした処分庁の判断は妥当でなく、上記の部分については開示すべきである。
  • (3)保有個人情報3について
    保有個人情報3における不開示部分は、受理日欄、受付欄、被虐待児童欄、家族構成・状況欄、虐待の状況欄及び通告者欄である。
    • ア 受理日欄について
      通告に関する情報であり、本件においてこれを開示すると、児童相談所の児童保護事務に著しい支障が生じるおそれがあると認められる(条例第16条第5号該当)。
      したがって、受理日欄の情報を不開示とした処分庁の判断は妥当である。
    • イ 受付欄について
      受付欄には、虐待の相談等を受けた職員の氏名が記載されている。職員の氏名を開示したとしても、受付をした者が誰であるかがわかるに過ぎず、それによって事務事業上の支障その他条例第16条各号に定める不開示事由に該当するとは考え難い。
      したがって、受付欄の情報を不開示とした処分庁の判断は妥当でなく、開示すべきである。
    • ウ 被虐待児童欄について
      被虐待児童欄のうち、住所欄右側に記載されている情報は、担当教育委員会及び担当者名であり、保有個人情報1と同様、これらの情報を審査請求人に開示したとしても、何らかの支障が生じるおそれがあるとは認められない。
      一方、それ以外の部分については被虐待児童に関する事項が記載されているところ、これを開示すると職員が同事項の記載をちゅうちょするおそれがあり、事務事業の遂行に著しい支障を及ぼすおそれがあると認められる(条例第16条第5号該当)。
      したがって、被虐待児童欄のうち、住所欄右側に記載されている情報について不開示とした処分庁の判断は妥当でなく、同部分については開示すべきである。
    • エ 家族構成・状況欄について
      家族構成・状況欄には、審査請求人の家族に関する情報が記載されている。これらの情報は、審査請求人の家族に関する基本的な情報であり、本件において開示したとしても何らかの支障が生じるおそれがあるとは認められない。
      したがって、家族構成・状況欄の情報を不開示とした処分庁の判断は妥当でなく、これについて開示すべきである。
    • オ 虐待の状況欄について
      虐待の状況欄には、虐待に関する詳細な情報が記載されている。これを開示すると、開示されることを前提とした記載しかしなくなることが考えられ、事務事業の遂行に著しい支障を及ぼすおそれがあると認められる(条例第16条第5号該当)。
      したがって、虐待の状況欄を不開示とした処分庁の判断は妥当である。
    • カ 通告者欄について
      通告者欄には、通常、虐待のおそれがあるとして通告した者の情報が記載されるものである。かかる情報が開示されることとなれば、虐待の事実があると思慮した者が、通告した事実を第三者に知られることをおそれ、児童相談所への通告をためらう相当程度の可能性がある。そのため、児童相談所の児童保護事務に著しい支障が生じるおそれが認められる(条例第16条第5号該当)。ただし、通告者欄の項目名については、これを開示したとしても前述の支障が生じるおそれはないと考えられる。処分庁は項目名の一部を不開示としているが、これらは開示すべきである。
      したがって、処分庁の判断は一部妥当でなく、通告者欄のうち不開示とした項目名について、これを開示すべきである。
  • (4)保有個人情報4について
    保有個人情報4における不開示部分は、児童虐待ケース受理会議録及び受理から一時保護決定処分までの経過記録である。
    • ア 児童虐待ケース受理会議録について
      児童虐待ケース受理会議録の内容を開示することとなると、児童相談所の方針などが明らかとなるが、公開を前提とした内容のみを記載し、手続が形骸化するなど、事務事業上の支障が生じるおそれが認められる。
      しかしながら、同会議録の項目名などについては、開示したとしてもそのようなおそれが認められないことから、開示すべきである。
      審議会で見分したところ、10ページ目1行目の不開示とされた部分には、項目名が記載されている部分があることが認められる。
      したがって、10ページ目1行目全てを不開示とした処分庁の判断は妥当でなく、項目名部分は開示すべきである。
    • イ 経過記録について
      経過記録部分は、年月日欄と経過欄からなる。
      このうち年月日欄については、通告に関する年月日は不開示妥当、それ以外は開示妥当であると認められる。したがって、年月日欄全てを不開示とした処分庁の判断は妥当でなく、11ページ目1行目以外は開示すべきである。
      経過欄について、児童相談所が関係機関との連携をした事実が記載されており、通常これを開示してしまうと、関係機関が委縮するおそれがあると認められる(条例第16条第5号該当)。ただし、審査請求人が自ら経験した事項の概要などについては保有個人情報2と同様、このようなおそれが認められないと考えられる。
      審議会で見分したところ、当該経過欄において審査請求人が自ら経験した事項が記載された部分はないと認められる。したがって、経過欄を不開示とした処分庁の判断は妥当である(条例第16条第5号該当)。
  • (5)保有個人情報5について
    保有個人情報5は、児童相談所職員が関係者から提供を受けた資料である。かかる資料は、児童相談所がその業務に利用することのみを想定して提供しているものである。このような資料が開示請求により開示されることとなると、関係者は開示される前提でしか資料を作成・提供しなくなる可能性が認められる。そのため、児童相談所の児童保護事務に著しい支障が生じるおそれが認められる(条例第16条第5号該当)。
    したがって、保有個人情報5を不開示とした処分庁の判断は妥当である。
  • (6)保有個人情報7について
    保有個人情報7の不開示部分は、審査請求人の保護者が審査請求人に宛てた文書の写しである。かかる文書は、職員が審査請求人に交付することを前提に受領したものであり、審査請求人はその内容を既に知っていると認められる。そうすると、かかる文書を開示したとしても、児童相談所の事務事業に支障が生じるおそれはないし、審査請求人にとって不利益となるおそれも認められない。
    したがって、処分庁の判断は妥当でなく、保有個人情報7の不開示部分は開示すべきである。
  • (7)保有個人情報8について
    保有個人情報8は、審査請求人が一時保護決定を受けてから一時保護所を退所するまでの経過について記載した文書である。同文書は年月日欄と経過欄からなる。
    • ア 年月日欄について
      年月日を開示したとしても、条例第16条各号に定める不開示事由に該当する事情は認められない。したがって、処分庁の判断は妥当でなく、年月日欄は開示すべきである。
    • イ 経過欄について
      経過欄には、児童相談所が対応した記録が記載されている。保有個人情報4と同じく、これらは原則として不開示妥当であるが、審査請求人が自ら経験した事項などについては開示が妥当である。
      審議会で見分したところ、次に示す箇所については審査請求人が自ら経験した事項であることが認められた。
      33ページ目3行目、43ページ目26行目、50ページ目7行目ないし8行目及び12行目、52ページ目9行目及び13行目、52ページ目15行目ないし55ページ目16行目、56ページ目15行目ないし16行目及び19行目ないし20行目、57ページ目1行目及び8行目。
      したがって、経過欄を全て不開示とした処分庁の判断は妥当でなく、同欄については、上記の箇所について開示すべきである。
  • (8)保有個人情報9について
    保有個人情報9は、一時保護所にて審査請求人が作成した文書である。保有個人情報9は、作文部分、依頼文部分、絵日記部分からなる。
    このうち、作文及び絵日記は、一時保護所職員が専門的な知見に基づき、一時保護児童の心理状態を把握するため作成されたものであることが認められる。そのような文書が開示されることとなると、同職員が委縮し、一時保護事務の遂行に支障が生じるおそれが認められる(条例第16条第5号該当)。
    一方、依頼文については、一時保護児童の心理状態を把握するために作成されたものではなく、これを開示したとしても、職員が委縮するなどの事務事業上の支障のおそれが生じるとは認められない。
    したがって、処分庁の判断は一部妥当でなく、保有個人情報9については、依頼文部分を開示すべきである。
  • (9)保有個人情報11について
    保有個人情報11は、児童相談所の職員が職務上取得した文書である。当該文書は、職員がその職務遂行のために取得した文書であると認められるところ、当該文書が開示されることとなると、職員が委縮し必要な文書について収集及び保管することをためらうことにつながる。よって、児童相談所の児童保護事務に著しい支障が生じるおそれが認められる(条例第16条第5号該当)。
    したがって、保有個人情報11について不開示とした処分庁の判断は妥当である。
  • (10)保有個人情報13について
    保有個人情報13は、児童心理司が審査請求人と面接した際の記録である。保有個人情報13は年月日欄、内容欄、所感欄からなる。
    年月日欄について、これを開示したとしても、条例第16条各号に定める不開示事由に該当するとは認められない。したがって、年月日欄は開示が妥当である。
    内容欄について、当該部分は、児童心理司がその知識と経験に基づき行った、対象児童とのやりとりついての記載がある。当該部分の内容が開示されることとなると、児童心理司が委縮し、開示されることを前提にしか記録を作成しない可能性が認められる。そのため、児童相談所の児童保護事務に著しい支障が生じるおそれが認められる(条例第16条第5号該当)。
    所感欄について、当該部分は児童心理司が対象児童に対し抱いた感想などを自由に記載する部分であり、これが開示されることとなると、開示をすることを前提に個人の評価等が行われ、画一的な個人の評価等がなされることにより義務の形骸化を招いたり、事務の持つ本来の目的が失われたりするおそれがある(条例第16条第6号該当)。
    したがって、処分庁の判断は一部妥当でなく、保有個人情報13については、年月日欄を開示すべきである。
  • (11)保有個人情報14について
    保有個人情報14は、一時保護所にて一時保護所職員が作成した児童の記録である。保有個人情報14は、年月日欄と経過欄からなる。
    年月日欄について、これを開示したとしても、条例第16条各号に定める不開示事由に該当するとは認められない。したがって、年月日欄は開示が妥当である。
    経過欄について、かかる記録は、一時保護所の職員がその知識と経験に基づき、対象児童の状態について自由に記載する書面である。当該記録が開示されることとなると、一時保護所の職員が委縮し、開示されることを前提にしか記録を作成しない可能性が認められる。そのため、経過欄を開示すると児童相談所の児童保護事務に著しい支障が生じるおそれが認められる(条例第16条第5号該当)。
    したがって、処分庁の判断は一部妥当でなく、保有個人情報14については、年月日欄を開示すべきである。

5

以上、当審議会で判断したところ、処分庁の判断は一部妥当でなく、別表の部分については開示すべきである。

以上の結果、当審議会は、「第1 香川県個人情報保護審議会の結論」のとおり判断する。

第6 審議会の審査経過

(省略)

別表
名称 開示すべき部分
保有個人情報1 電話欄
保護者欄
家族構成欄(その他参考事項欄の携帯番号以外)
欄外記載部分
保有個人情報2 年月日欄(3ぺージ目1行目以外)
経過・措置欄(3ページ目11行目9字目から12字目、5ページ目6行目及び17行目、7ページ目1行目、2行目、4行目、13行目、22行目10字目から17字目、24行目及び25行目に限る。)
保有個人情報3 受付欄
被虐待児童欄(住所欄右側に記載されている情報に限る。)
家族構成・状況欄
保有個人情報4 児童虐待ケース受理会議録(10ページ目1行目の項目名に限る。)
経過記録のうち、年月日欄(11ページ目1行目以外)
保有個人情報7 審査請求人に宛てた文書の写し
保有個人情報8 年月日欄
経過欄(33ページ目3行目、43ページ目26行目、50ページ目7行目ないし8行目及び12行目、52ページ目9行目及び13行目、52ページ目15行目ないし55ページ目16行目、56ページ目15行目ないし16行目及び19行目ないし20行目、57ページ目1行目及び8行目に限る。)
保有個人情報9 依頼文部分(65ページ目)
保有個人情報13 年月日欄
保有個人情報14 年月日欄

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