ホーム > 組織から探す > 農村整備課 > ふるさと文化たからばこ 2016 > [農業技術と伝統文化] ため池王国「さぬき」

ページID:12717

公開日:2020年12月10日

ここから本文です。

[農業技術と伝統文化] ため池王国「さぬき」

技伝農業技術と伝統文化

ため池王国「さぬき」

かつては水争いが絶えなかった讃岐。
その暮らしを救ってきたのが、「ため池」です。
「ため池」は、先人の苦労と知恵の結集。
その一つ一つに歴史や物語が秘められています。

満濃池の写真

満濃池/1300年を超える時を経て今も讃岐平野を潤す日本一のかんがい用のため池。空海や西嶋八兵衛も修築に関わったことがあるふるさと遺産です。

技時を超えて水のネットワーク

讃岐の稲作は古代から広がり、奈良時代には約2万2千ヘクタールもの水田があったと推測されています。その稲作を支えてきたのが、大小のため池です。例えば、川とつながり、多くの水田とつながり、香川県のため池は、網の目状に讃岐平野を網羅しています。その水のネットワークで香川の米はおいしく育ちます。

その水のネットワークを補佐するのは「香川用水」。水不足に悩む香川県では、早明浦ダムを水源とし徳島県側から阿讃導水トンネルで水を引くという「香川用水」を1981年に完成させました。これにより、水不足は大きく改善され、さらに2009年には香川用水の内、水道用水を一時的に貯留し、渇水時の補給や緊急時に活用するため、三豊市財田町と山本町にわたる「宝山湖」が完成しました。

宝山湖の写真

宝山湖/宝山湖は水道用水の貯水池ですが、同時にもともとあった「神田大池」の役目も担い農業用水としても利用されています。

財田里山ビオトープの写真

財田里山ビオトープ/宝山湖の上流には、水田や水路といった里山の環境を再現したビオトープがあり、田植えなどの体験をすることができます。

財田里山ビオトープ/Googleマップで拡大表示(外部サイトへリンク)

宝あなたの残したい讃岐の”おたから”提供 ふるさとおたから情報

「国市池(三豊市高瀬町)」

農林水産省のため池百選にも選ばれ、珍しい鳥が飛来するため、野鳥愛好家が多く訪れています。また、うどん県副知事の要潤氏の母校でもある高瀬高等学校のカヌー部の練習場にもなっており、池周辺のジョギングや散歩道などの親水空間としても活用されています。

水位が下がると、なんと池の中から延長350mにも及ぶ曲がりくねった道が現れます。特に朝日の輝く姿は神秘的。この道は、れっきとした堤防で、現在もため池台帳に掲載されている「五丁池」のもの。国市池には、満水すると見えなくなる幻の池が沈んでいるのです。

国市池の写真

投稿写真/国市池

技ゆる抜き

ユルとは、ため池の水を抜くための栓のようなもの。漢字では「樋管」と書きます。昔のため池には、竪樋(たてひ)や底樋(そこひ)があり、ここに水を流すための筆木などを引き上げて、放水をしていました。俗にスッポンユルともいわれ、威勢の良い男の人たちが池に飛び込んで、ユルを抜いていた時代もありました。けれども、現在ではバルブ開閉方式、多くはバルブのハンドルを回して「ゆる抜き」をします。

6月中旬には、満濃池において江戸時代から続く「ゆる抜き」の行事が行われます。日本初のマルチプルアーチダムを持つ「豊稔池」のゆる抜き(放流)も見応えがあります。

ゆるの縦構図

ゆる(縦構図)/香川用水資料館に展示されている木製の「ゆる」。

満濃池のゆる抜きの写真

満濃池のゆる抜き/昔は池に飛び込んで行っていたそうですが、今では取水塔で神事を行い、神野神社の太鼓に合わせて放水が始まります。

伝水利慣行

香川県では少ない水を分かち合うために「水利慣行」という風習がありました。大きく分けると、ため池に水をためるための「承水慣行」、親池と子池などため池の水を分配するための「分水慣行」、そして分水した水をそれぞれの田んぼに配水するための「配水慣行」の3つ。中でも他では見られない「配水慣行」の一つが、「水ブニ慣行」。“水ブニ”は各人の水の持ち分のこと。「水ブニ慣行」には、あらかじめ田の大きさにより線香の長さを決め、線香が燃えている間だけ、田に水を引き入れることができるという「線香水」もありました。
そんな水の苦労をしのぶことができるのが「香川用水資料館」や香川用水記念公園の「水の資料館」です。

水の資料館の写真

水の資料館/香川用水記念公園にあり、讃岐の水の歴史を学ぶことができます。
(休館12月~3月の毎週木曜・年末年始 電話0875-67-3760)

技手ノミ一つで

さぬき市大川町の丘陵地帯に、上池・中池・通池の3つの池があり、総称して「弥勒(みろく)池」と呼ばれています。文政8年(1825年)、上池の増築工事に着工、三つ石山を迂回して1450間(2610m)の掛け井手(導水路)を造りましたが、「器あれど盛る水なし」といわれるほど漏水が多く、いっこうに水は上池に流れません。そこで、庄屋の軒原庄蔵(のきはらしょうぞう)は、山を抜いて最短距離の井手を造るため、高松藩に石穴工事を願い出ました。そして、東西双方から穴掘り作業が始まり、着工から3年後の安政4年(1857年)に手ノミ一つで150間(270m)を掘り抜く大工事が完成しました。

さぬき市寒川町の「花の山池」にも、地域の人々が人力で完成させた水路トンネルがあります。

弥勒石穴の写真

弥勒石穴(みろくせっけつ)/みろく自然公園にある「弥勒石穴」。坑口は石積の壁で保護され、中は人がようやくかがんで歩ける程度。立ち入りは禁止されています。

掛け井手づくりの写真

掛け井手づくり/みろく公園にある「さぬき市歴史民俗資料館」には、弥勒池の掛け井手造りを再現したジオラマがあります。

技荒れ野を救うため池

水不足のため開墾がかなわず大野ヶ原と呼ばれる荒地が広がっていたという現在の観音寺市大野原町。そこに、柞田(くにた)川をせき止め「井関池」が築かれました。けれども、井関池の水のみで周辺の田を潤すことはできず、そこで誕生したのが、日本初のマルチプルアーチダムを持つ「豊稔池」。農業用のコンクリートダムとしても日本初、5連のアーチダムとしては日本唯一という貴重な土木遺産。国の登録有形文化財に指定されています。このダムは、手作りのダムとしても知られ、付近の谷で採取した石材を運び、地元農家の人々が、一つ一つ手積みをしたと伝えられています。

香川県には、「豊稔池」のように人々の汗の結晶で生まれたため池が、数限りなく点在しています。

豊稔池ダムの写真

豊稔池ダム/一帯は公園として整備され、放水の時期には多くの見学客でにぎわいます。

宝あなたの残したい讃岐の”おたから”提供 ふるさとおたから情報

「半夏生(はんげしょう)(さぬき市寒川)」

6月下旬から7月中旬頃、東遊良池の南側に半夏生の花が咲きます。ドクダミ科の半夏生は、夏至を過ぎた半夏生の頃に花を咲かせますが、花のすぐ下の葉の表面が白く変化します。そこで、「半化粧」という説もあります。

半夏生の写真

投稿写真/半夏生

「オニバス(善通寺市稲木町)」

JR金蔵寺駅近くの前池には、絶滅の危険があるという珍しい植物「オニバス」を見るとができます。2~3mにもなるという葉の間から茎が伸びて、8月から9月頃には赤紫の花が開きます。

さぬきのおたから総力取材

地域を繫ぐどじょう汁

さぬき市に伝わる伝統料理に味噌仕立ての「どじょう汁」があります。たっぷりのうどんに、ニンジン、ダイコン、サトイモなどの野菜に油揚げなども入り、食べ応えがあります。料理手順は以下のとおり。まずは、どじょうをきれいな水に入れて泥を吐かせます。塩と酒で洗ってから油で炒め、野菜などを入れてさらに炒めます。出汁を加え、煮えてきたら生のうどんを入れ、うどんが煮えたら味噌を加えて蒸らして、出来上がり。どじょうのうま味が加わった味噌出汁と、コシのあるうどんの相性は抜群。体も心も温まる一杯です。

どじょう汁の写真

どじょう汁/うどん入りを際立たせようと、最近はどじょううどんの呼び名も広めています。熱々の鉄鍋から取り分け、みなでふうふうと吹きながらすするのが醍醐味です。

その昔、長尾の造田周辺の小川にはどじょうがたくさんいて、どじょう汁がよく作られていました。用水路がコンクリートで囲われ始めてから、その姿を見る事は少なくなりましたが、どじょう汁は今も受け継がれています。「ため池の掃除や用水ざらえ、秋のお祭りなどに、大鍋で作って皆で分け合って食べます。農家の暮らしには欠かませない、地域の集まりのための料理で、神社にお供えしたと書かれている文献もあります」。そう話してくれたのはさぬき市の松原壮典(たけのり)さん。どじょう汁は昔から男性が作ることが多く、地域の集まりでは料理する人が自然に定まり、「おれのが一番うまい」という猛者があちこちに現れたのだそうです。「ほなら、どれが一番か決めよう」と立ち上げたのが、《どじょ輪ピック》なるイベントです。

伝統料理を絶やしたくない、田んぼにどじょうが住む水のきれいな町にしたい、という地域への思いも込めながら、どじょう汁を伝えるイベントは、平成28年で23回目。松原さんの夢は、「どじょ輪ピックにちなんで、どじょう汁をオリンピックにPRに行くこと」と、熱いのです。

嵯峨野/長尾東にある「嵯峨野」では、1年中どじょう汁が食べられます。 電話/0879-52-4715

どじょうの写真

どじょう/今は養殖どじょうを使用します。味噌で煮こむと臭みも気になりません。

どじょ輪ピックの写真

どじょ輪ピック/11月の第3日曜日に行われるどじょ輪ピック。毎年、大盛況です。

このページに関するお問い合わせ

農政水産部農村整備課

電話:087-832-3879

FAX:087-806-0205