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公開日:2020年8月25日

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令和2年7月31日 答申第531号(香川県情報公開審査会答申)

令和2年7月31日 答申第531号

答申

第1 香川県情報公開審査会(以下「審査会」という。)の結論

栗林公園観光事務所長(以下「処分庁」という。)が行った一部公開決定(以下「本件処分」という。)により非公開とした部分のうち、アート灰皿の提案者の名称については、公開すべきである。

第2 審査請求に至る経緯

  1. 行政文書の公開請求
    審査請求人は、令和元年6月13日付けで、香川県情報公開条例(平成12年香川県条例第54号。以下「条例」という。)第5条の規定により、処分庁に対し、次の内容の行政文書の公開請求を行った。
    栗林公園の漆器デザインの灰皿5つの寄贈関連文書(寄贈申出、デザイン(漆器の他色々)の提案、漆器デザインの選択、覚書など。ただし31栗観第9509号にて公開決定された文書を除く。)
  2. 処分庁の決定
    処分庁は、公開請求のあった行政文書として、次の行政文書を特定し、別表の「公開しない部分」が「公開しない理由」に該当するとして、令和元年6月27日付けで本件処分を行い、審査請求人に通知した。
    • (1)アート灰皿制作 栗林公園様向け デザイン集(以下「本件行政文書1」という。)
    • (2)寄付申込書についての起案文書(以下「本件行政文書2」という。)
    • (3)平成31年2月19日付けスタンド灰皿受領書の作成についての起案文書(以下「本件行政文書3」という。)
  3. 審査請求人は、本件処分を不服として、令和元年9月20日付けで、行政不服審査法(平成26年法律第68号)第2条の規定により、香川県知事に対して審査請求を行った。

第3 審査請求の内容

1 審査請求の趣旨

「本件処分のうち、本件行政文書1のA案以外のデザイン案の名称、説明内容、デザインの図柄を公開しないとした部分を取り消し、公開するとの決定を求める。」というものである。

2 審査請求の理由

審査請求書において主張している理由は、次のとおりである。

  • (1)処分庁は公開しない理由を「生産技術上のノウハウに関する情報であり、公にすることにより、当該法人の権利、競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがあるため。(条例第7条第2号本文該当)」としたが、該当せず、条例の適用に誤りがある。仮にこれに該当するとしても、ただし書「事業活動によって生じ、又は生ずるおそれのある危害から人の生命、健康、生活又は財産を保護するため、公にすることが必要であると認められる情報」に該当するため、やはり条例の適用に誤りがある。
  • (2)WHOたばこ規制枠組条約(以下「条約」という。)第5条3項の実施のためのガイドライン「たばこ規制に関する公衆衛生政策をたばこ産業の商業上及び他の既存の利益から保護すること」(以下「ガイドライン」という。)が処分庁には適用される。ガイドラインの原則1は「たばこ産業と公衆衛生政策の間には、根本的かつ相容れない利害の対立が存在する。」と示す。栗林公園内における喫煙場所整備は、健康増進法(平成14年法律第103号)第25条の趣旨を酌み受動喫煙防止を考慮した上でなされたと考えるべきものであり、灰皿の置換またその継続使用期間の設定を含め、たばこ規制に関する公衆衛生政策の実施と理解されるところ、灰皿の寄贈に先立ちたばこ産業である●●が自ら処分庁に提供した文書が生産技術上のノウハウに関する情報(以下「ノウハウ情報」という。)であるとするのは、原則1に立ち返り●●と処分庁とが根本的利害関係にあることに鑑みると不自然極まりなく、処分庁の公開しないとした判断は不当と言うべきほかない。
  • (3)仮にこれがノウハウ情報に当たるとしても、次の3点を総合的に鑑みると、これが条例第7条第2号ただし書の「事業活動によって生じ、又は生ずるおそれのある危害から人の生命、健康、生活又は財産を保護するため、公にすることが必要であると認められる情報」に該当することが分かる。
    • 同原則1にはさらに「たばこ産業は、常習性があり、疾患や死亡の原因となり、また貧困の増加など様々な社会悪を引き起こすことが科学的に実証されている製品を生産し、販売促進している。」とあることから分かる、たばこ産業の持つノウハウ情報の本来的性質や目的
    • ガイドラインの勧告2.2は、たばこ産業との接触の記録一般開示を行うべき、としているところ、一部公開文書がたばこ産業との接触の過程で取得されたこと
    • 条約のそもそもの目的が「たばこの消費及びたばこの煙にさらされることが健康、社会、環境及び経済に及ぼす破壊的な影響から現在及び将来の世代を保護すること」であること

3 反論書による主張

反論書による主張は、おおむね次のとおりである。
A案以外のデザイン案の名称、説明内容、デザインの図柄デザインについて、デザイン事業者は●●に協力してデザイン案を提示したのであるから、そのデザイン案には当然に●●の意向が反映されていることと考えられ、●●がたばこをいかなるイメージや属性に関連付けしたいかが影響しているものと考えられる。
ガイドラインには、「たばこ産業は、製造、販売する製品の致命的性質からイメージを引き離すため又は公衆衛生政策の制定及び実施を干渉するために社会的責任と称する活動を行っている。」と指摘されるところであり、●●がたばこをいかなるイメージや属性に関連付けしたいかをより具体的に明らかにすることは、致命的性質を備えるたばこの消費及びその煙にさらされることから人の生命、健康を保護するために、公にすることが必要であると認められるため、条例第7条第2号ただし書に該当する。

第4 処分庁の説明の要旨

弁明書による説明は、おおむね次のとおりである。

  1. A案以外のデザイン案の名称、説明内容、デザインの図柄デザインについて
    処分庁が公開しないとした「A案以外のデザイン案の名称、説明内容、デザインの図柄デザイン」については、デザイン事業者がアート灰皿のデザインとして●●に提示したものであり、当該デザイン事業者におけるデザイン業としてのノウハウ情報であるため、公にすることにより、当該事業者の権利、競争上の地位その他の正当な利益を害するおそれがあるものであることから、審査請求人が主張するたばこ産業の持つノウハウ情報とは異なるものであり、条例第7条第2号ただし書にも該当しないものである。
  2. アート灰皿の提案者の名称について
    処分庁が公開しないとした「アート灰皿の提案者の名称」については、デザイン事業者と●●との間で行われた事業活動に関する情報であり、●●が当該デザイン事業者を公にしていないことを鑑みると、公にすることにより、当該デザイン事業者の権利、競争上の地位その他の正当な利益を害するおそれがあるものであることから、こちらも審査請求人が主張するたばこ産業の持つノウハウ情報とは異なるものであり、条例第7条第2号ただし書にも該当しないものである。
    以上のことから、本事案に係る一部公開決定は、適法かつ妥当なものである。

第5 審査会の判断

1 判断における基本的な考え方について

条例は、その第1条にあるように、県民の行政文書の公開を求める権利を具体的に明らかにするとともに、行政文書の公開に関し必要な事項を定めることにより、県の保有する情報の一層の公開を図り、県政に関し県民に説明する責務が全うされるようにし、県政に対する県民の理解と信頼を深め、もって地方自治の本旨に即した県政の発展に寄与することを目的として制定されたものであり、審査に当たっては、これらの趣旨を十分に尊重し、関係条項を解釈し、判断するものである。
なお、本件審査請求で、審査請求人は、非公開とされた本件行政文書1のアート灰皿の提案者の名称及び本件行政文書2の寄附申込書における申込人の印影について公開を主張していないが、本件処分の適否を判断する上で審査が必要な事項であると判断されるため、これらについても検討する。

2 本件文書の内容等について

本件行政文書の内容等については、次のとおりである。
平成31年1月25日付けで、○○、△△及び▲▲の3法人の連名により、香川県知事に対し、栗林公園内に設置するアート灰皿5台の寄附申込みがあった。
本件行政文書1は、▲▲が栗林公園あてに作成したアート灰皿のラッピング仕様案で、アート灰皿のデザイン事業者名(本件処分では「提案者」と表記)、同事業者が提案したアート灰皿のデザイン案(A~G案)が記載されており、本件処分において非公開とされた部分は、アート灰皿のデザイン事業者の名称及びA案以外のデザイン案の名称、説明内容、デザインの図柄で一体となったものである。
また、本件行政文書2は、上記3法人からの寄附申込書の提出を受けた処分庁が県の当該事務所管課へ進達するに当たり作成した起案文書であり、非公開情報は寄附申込書に押印された3法人の印影である。
さらに、本件行政文書3は、寄贈されるアート灰皿の受領書の作成に関し、処分庁が作成した起案文書であり、全部公開されている。

3 非公開情報該当性について

条例第7条第2号は、法人その他の団体(以下「法人等」という。)又は事業を営む個人の正当な利益を害することを防止する観点から、その事業活動の自由を保障し、公正な競争秩序を維持するため、公にすることにより当該法人等又は事業を営む個人の権利、競争上の地位その他正当な利益を害するおそれのある情報を非公開とすることとした上で、それらに該当する情報であっても、人の生命、健康、生活又は財産を保護するため、公にすることが必要であると認められる情報については、公開することを定めたものであると解される。
この基本的な考え方に基づき、処分庁が本号に該当するとして非公開とした部分について検討する。

  • (1)本件行政文書1について
    • a 条例第7条第2号本文該当性について 本件行政文書1の非公開情報は、(ア)アート灰皿のデザイン事業者の名称及び(イ)案以外のデザイン案の名称、説明内容、デザインの図柄である。
      (ア)については、審査会が見分したところ、▲▲はアート灰皿の寄贈に当たり、(ア)の情報を含んだ報道資料を作成し、これにより、新聞報道で公にされていることが確認された。そのため、(ア)の情報は、むしろ法人等が公表することを目的とした情報といえ、条例第7条第2号の公にすることにより当該法人等又は事業を営む個人の権利、競争上の地位その他正当な利益を害するおそれのある情報とはいえず、公開するべきである。
      次に、(イ)のデザインの図柄は上記(ア)のデザイン事業者が創作したものであるため、デザイン事業者がそのノウハウにより生み出したものにほかならない。また、(イ)は、実際に栗林公園に寄贈されたアート灰皿とは異なるデザイン及びそれに関する情報であるため、当該情報は公表されておらず、また何人でも知り得る情報とはいえない。そのため、これを公開することは、当該デザイン事業者の権利、競争上の地位その他の正当な利益を害するおそれがあるものであって、条例第7条第2号本文に該当する。
    • b 条例第7条第2号ただし書該当性について
      審査請求人は、デザイン事業者は●●に協力してデザイン案を提示したのであるから、そのデザイン案には当然に●●の意向が反映されていることと考えられ、●●がたばこをいかなるイメージや属性に関連付けしたいかが影響しているものと考えられる。●●がたばこをいかなるイメージや属性に関連付けしたいかをより具体的に明らかにすることは、致命的性質を備えるたばこの消費及びその煙にさらされることから人の生命、健康を保護するために、公にすることが必要であると認められるため、条例第7条第2号ただし書に該当すると主張している。
      そこで、(イ)について、同号ただし書に該当するかを検討する。
      審査会で見分したところ、(イ)にはB~G案の図柄とその説明文等が記載されているが、それらは全てたばことは無関係なものであり、たばこのイメージ及び属性に影響するものであるとはいえない。
      健康増進法によれば、たばこは受動喫煙等、公衆衛生上一定の配慮が必要であるものであるが、(イ)の情報は、上記のとおりであり、これ以外の理由においても人の生命、健康を保護するために公開する必要があるものとは認められない。
      よって、条例第7条第2号ただし書には該当しない。
  • (2)本件行政文書2について
    本件行政文書2の非公開情報は、3法人の印影である。
    これらの印影は、審査会が見分したところ、当該法人の内部管理情報として管理されているものと判断され、当該印影を当該法人の事業活動に関わりなく、本条例により広く一般に公開することは、当該法人の正当な意思、期待に反し、当該法人の正当な利益を害するおそれがあると認められるので、条例第7条第2号本文に該当し、明らかに同号ただし書に該当しないと判断される。
    よって、当審査会は、「第1 審査会の結論」のとおり判断する。

第6 審査会の審査経過

(省略)

別表
文書 公開しない部分 公開しない理由
本件行政文書1 アート灰皿の提案者の名称 団体が考案したアイディアを創出する能力に関する情報であり、公にすることにより、当該団体の権利、競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがあるため。(条例第7条第2号本文該当)
A案(※採用案)以外のデザイン案の名称、説明内容、デザインの図柄 生産技術上のノウハウに関する情報であり、公にすることにより、当該法人の権利、競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがあるため。(条例第7条第2号本文該当)
本件行政文書2 寄附申込における申込人の印影 法人の事業に関する内部管理情報であり、公にすることにより、当該法人の権利、競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがあるため。(条例第7条第2号本文該当)
本件行政文書3(全部公開) ―(全部公開) ―(全部公開)

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