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公開日:2017年3月3日

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平成29年2月15日 答申第525号(香川県情報公開審査会答申)

平成29年 2月15日(答申第525号)

答申

第1 香川県情報公開審査会(以下「審査会」という。)の結論

香川県知事(以下「実施機関」という。)が行った一部公開決定(以下「本件処分」という。)のうち、住民訴訟の原告並びに住民監査請求人の氏名及び住所の市名については、公開すべきである。

第2 審査請求に至る経緯

1 行政文書の公開請求

審査請求人は、平成28年10月3日付けで、香川県情報公開条例(平成12年香川県条例第54号。以下「条例」という。)第5条の規定により、実施機関に対し、次の内容の公開請求を行った。

高松地方裁判所平成27年(行ウ)第11号の住民訴訟についての(1)訴状、(2)甲号証、(3)甲号証の証拠説明書、(4)答弁書、(5)乙号証、(6)乙号証の証拠説明書、(7)各当事者から提出された準備書面及び各種申立書

2 実施機関の決定

実施機関は公開請求のあった行政文書として、次の行政文書を特定し、別表1の「公開しない部分」が「公開しない理由」に該当するとして、平成28年10月17日付けで本件処分を行い、審査請求人に通知した。住民訴訟についての

  • (1)訴状(平成27年6月8日)(以下「本件行政文書1」という。)
  • (2)訴状訂正の申立書(平成27年6月19日)(以下「本件行政文書2」という。)
  • (3)証拠説明書(平成27年6月19日)(以下「本件行政文書3」という。)
  • (4)証拠説明書2(平成27年7月6日)(以下「本件行政文書4」という。)
  • (5)答弁書(平成27年8月26日)(以下「本件行政文書5」という。)
  • (6)証拠説明書(平成27年8月26日)(以下「本件行政文書6」という。)
  • (7)証拠説明書3(平成27年8月27日)(以下「本件行政文書7」という。)
  • (8)準備書面1(平成27年9月29日)(以下「本件行政文書8」という。)
  • (9)準備書面2(平成27年10月23日)(以下「本件行政文書9」という。)
  • (10)準備書面(2)(平成27年12月10日)(以下「本件行政文書10」という。)
  • (11)準備書面3(平成27年12月11日)(以下「本件行政文書11」という。)
  • (12)証拠説明書4(平成27年12月11日)(以下「本件行政文書12」という。)
  • (13)文書提出命令申立書(平成27年12月11日)(以下「本件行政文書13」という。)
  • (14)求釈明申立書1(平成27年12月11日)(以下「本件行政文書14」という。)
  • (15)証拠説明書5(平成28年3月3日)(以下「本件行政文書15」という。)

3 審査請求

審査請求人は、本件処分を不服として、平成28年10月23日付けで、行政不服審査法(平成26年法律第68号)第2条の規定により実施機関に対して審査請求を行った。

第3 審査請求の内容

1 審査請求の趣旨

「本件処分を取り消すとの裁決を求める。」というものである。

2 審査請求の理由

審査請求書において主張している理由は、次のとおりである。

  • ア 本件処分は、条例の解釈適用を誤った違法な処分であるから、本件処分を取り消し、全部公開する必要がある。
  • イ 本件決定通知書記載の「公開しない理由」記載の主張は、誤りである。いずれも、条例に規定する非公開理由に該当しない。
  • ウ 本件公開請求対象の行政文書は、いずれも裁判所に提出された民事訴訟記録であって、何人も、閲覧可能な文書であり、非公開とする理由はない。民事訴訟法(平成8年法律第109号。以下「法」という。)第91条第1項は、「何人も、裁判所書記官に対し、訴訟記録の閲覧を請求することができる。」と規定している。
  • エ 地方自治法(昭和22年法律第67号)第242条第9項は、住民監査請求の監査結果について監査委員に「公表」を義務付けているので、住民訴訟の原告つまり請求人の氏名も公表されている。

3 反論書による主張

次のとおりである。

  • (1)実施機関は、民事訴訟記録の閲覧制度について、法第91条第2項及び同法第92条に例外規定が存在すると主張するが、本件公開請求対象文書(高松地方裁判所平成27年(行ウ)第11号の住民訴訟に係る訴訟記録)は、例外規定の適用されない訴訟記録なのである。
  • (2)実施機関が主張する理由は、過去の本件実施機関の行政処分の理由とは全く異なっているのである。例えば、本件審査請求人が過去に情報公開請求を行った2002年に起こった「A幼児園」の殺人事件に関連する香川県を被告とする民事訴訟の訴訟記録は、法第91条第1項の規定により「全部公開」の処分を行っているのである。
    過去の審査会の答申においても、法第91条第1項の規定により「全部公開」すべき文書を一部非公開とした前例も存在しないのである。
  • (3)実施機関は、監査委員の公表は「請求人氏名」であると主張するが、もともと、住民監査請求書は、本件民事訴訟記録の一つであって、上記(1)及び(2)に記載した通り、民事訴訟記録は「全部公開」をする必要があるのである。

第4 実施機関の説明の要旨

弁明書による説明は以下のとおりである。

(1)処分の理由について

  • (a)条例第7条第1号の該当性について
    条例第7条第1号では、個人に関する情報であって、当該情報に含まれる氏名、生年月日その他の記述等により特定の個人を識別できるもの又は特定の個人を識別することはできないが、公にすることにより、なお個人の権利利益を害するおそれがあるものを非公開情報と定めている。ただし、本号のただし書に掲げる情報については、非公開情報から除くとしている。
    本件行政文書1には原告の氏名及び住所が、本件行政文書2から本件行政文書15には原告の氏名が記載されている。またそれ以外にも、本件行政文書3には住民監査請求人の住所、氏名、印影及び職業が、本件行政文書11及び本件行政文書12には関係者の個人の氏名が、本件行政文書14には領収書に発行人等の個人の氏名、住所及び印影が記載されており、これらの情報は、個人に関する情報であって、特定の個人を識別できるものである。よって、条例第7条第1号本文に該当する。(ただし書に該当するものは除く。)
  • (b)条例第7条第2号の該当性について
    条例第7条第2号では、法人等に関する情報又は事業を営む個人の当該事業に関する情報であって、公にすることにより、当該法人等又は個人の権利、競争上の地位その他正当な利益を害するおそれのあるものを非公開情報と定めている。ただし、事業活動によって生じ、又は生ずるおそれのある危害からの人の生命、健康、生活、又は財産を保護するため、公にすることが必要であると認められる情報については、非公開情報から除くこととしている。
    本件行政文書1から本件行政文書15には、訴訟代理人である弁護士の印影が、本件行政文書14には訴訟代理人の印影並びに領収書に法人等の印影及び口座情報が、本件行政文書15には訴訟代理人の印影及び法人等の印影が記載されており、これらの情報は、当該法人等又は個人の権利、競争上の地位その他正当な利益を害するおそれのあるものである。よって、条例第7条第2号本文に該当する。

(2)審査請求の理由アからエに対する反論について

  • ア及びイ「条例の解釈適用を誤った違法な処分であること、公開しない理由が条例の非公開事由に該当しない。」との主張について
    当該処分は、上記処分の理由に記載のとおり条例の規定に基づいた適法な処分である。
  • ウ「本件行政文書は、裁判所に提出された民事訴訟記録であって、何人も閲覧可能な文書であり、非公開とする理由はない。」との主張について
    訴訟記録の閲覧等については、法第91条第1項において、「何人も裁判所書記官に対し、訴訟記録の閲覧を請求することができる。」と定められている。しかし、訴訟記録の閲覧については、同条第2項(公開を禁止した口頭弁論に係る訴訟記録の制限)及び同法第92条(秘密保護のための閲覧等の制限)に例外規定があり、あらゆる場合に閲覧できることにはなっていない。
    訴訟記録の閲覧制度は、裁判の公正と司法権に対する信頼を確保することなどの理念に基づき、特定の裁判所の具体的な判断のもとに実施されているもので、その手続及び目的の限度において訴訟関係者のプライバシーが開披されるものであり、何人も訴訟記録の閲覧を請求できることをもって、あらゆる場合に、条例に基づく訴訟記録の公開が個人のプライバシーを侵害しないとはいえない。また、条例では、個人に関する情報の保護については、最大限の配慮を行うことが求められていることを勘案すると、保有する訴訟記録に記載された個人に関する情報が、条例に基づく情報公開手続において、直ちに一般的に公表することが許されているものと解することはできない。また、訴訟記録に秘匿性が高いと判断される法人又は事業を営む個人に関する情報も含まれている場合、個人情報に関する場合と同様に、訴訟記録の閲覧をもって、直ちに一般的に公表することが許されていると解することはできない。
  • エ「住民監査請求の監査結果は監査委員に公表を義務付けているので、住民訴訟の原告つまり請求人の氏名も公表されている」との主張について
    住民監査請求の請求人氏名については、本県の県報に登載されており、法令若しくは条例の規定により又は慣行として公にされ、又は公にすることが予定されている情報(条例第7条第1号ただし書ア)に該当するとも考えられるが、住民監査請求人の氏名が記載された文書は、裁判所に提出された住民訴訟記録の一部であり、原告と住民監査請求人が同一人物であることから、住民監査請求人の氏名を公開することにより、訴訟記録の中で非開示としている原告の氏名が推定されることが考えられるため、非公開としたものである。原告の氏名を特定の個人を識別できる情報であるとして非公開としていることから、住民監査請求人についても同様に非公開としている。

第5 審査会の判断

1 判断における基本的な考え方について

条例は、その第1条にあるように、県民の行政文書の公開を求める権利を具体的に明らかにするとともに、行政文書の公開に関し必要な事項を定めることにより、県の保有する情報の一層の公開を図り、県政に関し県民に説明する責務が全うされるようにし、県政に対する県民の理解と信頼を深め、もって地方自治の本旨に即した県政の発展に寄与することを目的として制定されたものであり、審査に当たっては、これらの趣旨を十分に尊重し、関係条項を解釈し、判断するものである。

2 本件行政文書の内容について

本件行政文書1~15の内容については、別表2のとおりである。

3 民事訴訟法上の訴訟記録の閲覧制度について

審査請求人は、訴訟記録については法第91条第1項において、「何人も、裁判所書記官に対し、訴訟記録の閲覧を請求することができる。」ため、全部公開すべきである旨、主張している。これに対して、実施機関は、法第91条第2項及び第92条において閲覧制限がなされる例外規定があり、また、何人も訴訟記録の閲覧を請求できることをもって、個人に関する情報や法人の情報を条例に基づく情報公開手続において、直ちに一般的に公表することが許されているものと解することはできない旨、主張している。

本県条例では、第7条第1号ただし書アにおいて、「法令又は条例の規定により又は慣行として公にされ、又は公にすることが予定されている情報」を非公開情報から除くことと規定しているが、条例の解釈においては、当該情報は何人にも容易に入手できる状態に置かれている情報をいい、法令に何人もと規定されていても請求の目的等により閲覧が制限され、実質的に何人にも閲覧を認める趣旨でないものは該当しないとされている。また、同様の規定がある行政機関の保有する情報の公開に関する法律(平成11年法律第42号)の解釈においても、「『法令の規定』は、何人に対しても等しく当該情報を公開することを定めている規定に限られる。公開を求める者又は公開を求める理由によっては公開を拒否する場合が定められていれば、当該情報は、『公にされている情報』には該当しない。」とされている。

この点について、法の閲覧制度は、第91条第1項にて、「何人も、裁判所書記官に対し、訴訟記録の閲覧を請求することができる。」と定めている。しかし、裁判所で閲覧する際は、原則、裁判所に備付けの閲覧・謄写票に訴訟記録の事件番号、当事者氏名を特定して記入したうえで、申請人資格や閲覧等の目的も明らかにする必要があり、加えて、裁判所書記官は、民事事件記録等閲覧・謄写票に記載された申請人資格、閲覧等の目的から判断して、明らかに閲覧請求権の濫用と認められる場合には、法第91条第1項の解釈としても、閲覧を拒否することがある。また、法では、第91条第2項による公開禁止の措置、第92条による秘密保護のための閲覧等の制限の措置が規定されている。つまり、何人も閲覧することができると定められていても、あらゆる場合に閲覧ができるわけではないのである。判例(平成18年4月24日高松高等裁判所判決:平成17年(行コ)第17号)においても同様の趣旨が述べられている。

また、条例においては、何人も行政文書の公開を請求することができ、閲覧に伴い、写しの交付を受けることができる。一方で、法における閲覧制度は第91条第3項において「当事者及び利害関係を疎明した第三者は、裁判所書記官に対し、訴訟記録の謄写、その正本、謄本若しくは抄本の交付又は訴訟に関する事項の証明書の交付を請求することができる。」と定めており、謄写を受けられる者は当事者及び利害関係を疎明した第三者に限られ、それ以外の第三者には認められていない。したがって、法の閲覧制度は、情報公開制度と異なり、公開の方法についても制限があるといえる。

さらに、裁判所がインターネットで判例を公表する際も、ほとんどの事件について、訴訟当事者だけでなく、関係者が個人である場合は、個人の氏名を伏せて公表する措置をとっている。これは、訴訟が提起され、その記録が法第91条第1項で何人でも訴訟記録を閲覧できる建前になっていたとしても、そのことから直ちに、個人に関する情報を保護しなくてよいとの認識を社会一般が持っていないという実態を配慮した取扱いであると認められる。

これらのことを総合的に勘案すると、法第91条第1項に基づく閲覧制度が設けられていることをもって、当該訴訟記録に含まれる個人情報が、条例第7条第1号ただし書アの「法令又は条例の規定により又は慣行として公にされ、又は公にすることが予定されている情報」に該当するとは認められない。

法人についてもインターネットに判例が公表される際には名称等を伏せている事例がある。また、訴訟記録に法人の内部管理情報が記載されている場合、その訴訟記録を法第91条第1項に基づき、閲覧されることまでは当該法人が予見していたとしても、条例の手続きに基づき、当該訴訟記録の写しが訴訟に関係のない第三者に交付され、情報が広範囲に伝播することまでを予想しているとは言い難く、法第91条第1項で閲覧制度が設けられている訴訟記録に法人の内部管理情報が記載されていることをもって、どのような情報であるかを精査せずにこれを全て公開することは、当該法人の権利、競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがある。

4 過去の請求における決定及び答申について

審査請求人は、実施機関が過去に法第91条第1項の規定により全部公開をしており、過去の審査会においても、法第91条第1項の規定により「全部公開」すべき文書を一部非公開とした前例も存在しない旨、主張している。

確かに審査請求人が述べている平成18年に請求があったA幼児園に係る訴訟記録については全部公開の決定を下している。しかしながら、その後の平成23年10月6日付け審査会答申第485号等において法第91条第1項に基づく閲覧制度がある訴訟記録に係る情報公開請求に対して一部公開の答申を出している。

この答申では、条例第7条第1号に関して、「訴訟記録の閲覧制度や裁判の公開は、そもそも、裁判の公正と司法権に対する信頼を確保することなどの基本的な理念に基づき、特定の受訴裁判所の具体的判断の下に実施されているもので、その手続及び目的の限度において訴訟関係者のプライバシーが開披されるものであり、法第91条第1項で何人も訴訟記録の閲覧を請求できるからといって、そのことから直ちに、あらゆる場合に、条例に基づく訴訟記録の公開が個人のプライバシーを侵害しないとはいえないことは明らかであり、また、条例では、第3条第2項で実施機関の責務として、『この条例の解釈及び運用に当たっては、個人に関する情報が保護されるように最大限の配慮をしなければならない。』と定めており、個人に関する情報については特別な配慮を行うことが求められていることを勘案すると、実施機関が保有する訴訟記録に記載された個人に関する情報が、条例に基づく情報公開手続において、直ちに一般的に公表することが許されているものと解することはできない。」としている。

以上を踏まえた上で、以下本件行政文書の非公開部分について検討する。

  • (1)条例第7条第1号の該当性について
    条例第7条第1号では、個人に関する情報であって、当該情報に含まれる氏名、生年月日その他の記述等により特定の個人を識別することができるもの(他の情報と照合することにより、特定の個人を識別することができることとなるものを含む。)又は特定の個人を識別することはできないが、公にすることにより、なお個人の権利利益を害するおそれがあるものを非公開情報として定めており、その上でただし書に該当する情報を非公開情報から除くとしている。
    • ア 本件行政文書1~15の非公開部分のうち、原告並びに住民監査請求人の氏名及び住所の市名について
      審査請求人は、住民監査請求の監査結果について監査委員に公表を義務づけているため、住民訴訟の原告つまり住民監査請求の請求人の氏名も公表されている旨、主張している。これに対して、実施機関は、住民監査請求の請求人氏名が本県の県報に登載されており、条例第7条第1号ただし書アに該当するとも考えられるが、当該情報は住民訴訟記録の一部であり、原告と住民監査請求人が同一人物であることから、住民監査請求人の氏名を公開することで、訴訟記録の中で非公開としている原告の氏名が推定されることが考えられるため非公開とした旨、主張している。
      住民訴訟は住民監査請求前置主義を採用しており、住民訴訟を提起できる者は、地方公共団体の住民で、かつ当該訴訟で問題とする行為、事実について住民監査請求をした者である。本件行政文書の訴訟記録と同一内容の事件である平成25年度の政務活動費の支出に係る住民監査請求は1件で、監査請求人も1人であるため、本件行政文書における住民訴訟は必然的に当該住民監査請求人が提起したこととなり、実施機関も認めているとおり、住民訴訟の原告は、当該住民監査請求人と同一人物となる。
      これを踏まえて当審査会で本件行政文書に係る住民監査請求の結果が登載されている県報を見分したところ、平成27年5月12日付けの香川県報において、当該住民監査請求の結果が公表されており、監査請求人の氏名も公表されていた。よって、一般に公表することを目的とした県報において、当該住民監査請求人氏名が公になっている以上、当該住民監査請求人と同一人物である住民訴訟の原告の氏名も明らかになり、本件原告の氏名及び住民監査請求人氏名については、法令又は条例の規定により又は慣行として公にされている情報とみなされ、条例第7条第1号ただし書アに該当し、公開すべきである。
      なお、当該県報において住民監査請求人の住所も市名までは公表されていることから、同一人物である住民訴訟の原告の住所の市名についても明らかになり、原告及び住民監査請求人の住所の市名については、法令又は条例の規定により又は慣行として公にされている情報とみなされ、条例第7条第1号ただし書アに該当し、公開すべきである。
    • イ 本件行政文書1~15の非公開部分のうち個人の印影、職業及び上記以外の個人の氏名、住所について(公開する部分を除く)
      個人の印影、職業、氏名、住所はいずれも個人に関する情報であって、特定の個人を識別できる情報であることから、条例第7条第1号本文に該当すると考えられる。
      これらの情報については、法令等の規定により又は慣行として公にされている情報であるとはいえず、条例第7条第1号ただし書アに該当しないと判断される。また、ただし書イからエに該当しないことは明らかである。
  • (2)条例第7条第2号の該当性について
    条例第7条第2号では、法人等に関する情報又は事業を営む個人の当該事業に関する情報であって、公にすることにより、当該法人等又は事業を営む個人の権利、競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがあるものを非公開情報と定めている。ただし、事業活動によって生じ、又は生ずるおそれのある危害から人の生命、健康、生活又は財産を保護するため、公にすることが必要であると認められる情報については、非公開情報から除くこととしている。
    • ア 本件行政文書1~15の非公開部分のうち訴訟代理人及び法人等の印影について
      印影は、一般的に法人等又は事業を営む個人が事業活動を行う上での重要な内部管理に属する情報であり、このような情報を外部に対して明らかにするかどうかは本来、法人等又は事業を営む個人が自らの業務の関わりの中で自主的に決定すべきことであり、法人等又は事業を営む個人は、公開すべき相手方を限定する利益を有しているというべきである。
      本件行政文書と同様の内容の文書は法第91条第1項において閲覧制度が設けられている。しかしながら、当該閲覧制度においては上記のとおり写しの交付を受けられる者が限られている。一方で、条例における写しの交付は何人にも行うこととなっており、情報の伝播の範囲が法における閲覧制度よりも広くなる。加えて、複製技術が格段に進歩した今日では、写しの交付がなされることで印影から印鑑を偽造され、当該法人等又は事業を営む個人の権利、競争上の地位その他正当な利益を害するおそれが高い。
      よって、本件印影は、当該法人等又は事業を営む個人の内部管理情報として管理されているものと判断され、本件印影を、当該法人等又は事業を営む個人の事業活動に関わりなく本条例により広く一般に公開することは、当該法人等又は事業を営む個人の正当な意思、期待に反し、正当な利益を害するおそれがあると認められるので、条例第7条第2号本文に該当し、ただし書に該当しないと判断される。
    • イ 本件行政文書1~15の非公開部分のうち法人の口座情報について
      口座情報は、一般的に、法人等が事業活動を行う上での重要な内部管理に属する情報であり、このような情報を外部に対して明らかにするかは、本来、法人等が自らの業務の関わりの中で自主的に決定すべきことであり、法人等は、公開すべき相手方を限定する利益を有しているというべきである。
      しかしながら、このような情報であっても、当該法人等が内部管理情報として管理をしていないと認められる場合などには、これが公開されても、当該法人等の正当な利益を害するものとは認められない。
      本件口座情報は振込依頼確認書、振替払込請求書兼受領証、請求書、ご利用明細票等に記載されているものである。これらの口座情報は振込をした際に振込人自身が受け取るものや相手方を特定して交付するものであることからすると、当該法人において内部管理情報として取り扱われているものと判断され、本件口座情報を当該法人の事業活動に関わりなく、本条例により広く一般に公開することは、当該法人の正当な意思、期待に反し、当該法人の正当な利益を害するおそれがあると認められるので、条例第7条第2号本文に該当し、ただし書に該当しないと判断される。
      よって、当審査会は、「第1 審査会の結論」のとおり判断する。

第6 審査会の審査経過

(省略)

別表1
非公開部分 行政文書 該当号 タイトル
訴訟代理人の印影

1~15

条例第7条第2号

事業を営む個人の当該事業に関する情報であり、公にすることにより、当該個人の権利、競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがあるため。
原告の氏名

1、2、4~10、13、15

第1号

特定の個人が識別される個人の情報に該当するため。
原告の住所

1

第1号

特定の個人が識別される個人の情報に該当するため。
個人の氏名(公開する部分を除く)

3、11、12、14

第1号

特定の個人が識別される個人の情報に該当するため。
個人の職業(公開する部分を除く)

3

第1号

特定の個人が識別される個人の情報に該当するため。

個人の住所、印影(公開する部分を除く)

3、14

第1号

特定の個人が識別される個人の情報に該当するため。
法人その他の団体の印影

14、15

第2号

法人その他の団体(以下「法人等」という。)の事業に関する内部管理情報であり、公にすることにより、当該法人の権利、その他正当な利益を害するおそれがあるため。
法人の口座情報

14

第2号

法人の経理、経営等に関する内部管理情報であり、公にすることにより、当該法人の権利、その他正当な利益を害するおそれがあるため。
別表2
行政文書の名称  

行政文書1

訴訟を提起した趣旨等が記載された原告側の訴状の副本である。

行政文書2

訴状の訂正内容について記載された原告側の訴状訂正の申立書の副本である。

行政文書3

住民監査請求書の写しや監査の結果等を含む原告側の証拠説明書の副本である。

行政文書4

平成25年度の議員の収支報告が記載された原告側の証拠説明書2の副本である。

行政文書5

請求の趣旨等に対する答弁が記載された被告(県)側の答弁書である。

行政文書6

政務活動費マニュアル等を含む被告(県)側の証拠説明書である。

行政文書7

領収証の写しのリスト及び領収証の写しを含む原告側の証拠説明書3である。

行政文書8

被告(県)側に対して任意書証として提出を要請する原告側の準備書面1である。

行政文書9

原告側の意見が述べられた準備書面2である。

行政文書10

被告(県)側が原告の準備書面2に対して反論等を述べた準備書面(2)である。

行政文書11

香川県議会社会民主党・県民連合等について意見を述べた原告側の準備書面3である。

行政文書12

甲号証の一部をまとめた原告側の証拠説明書4である。

行政文書13

被告(県)側に文書の提出を求めた原告側の文書提出命令申立書である。

行政文書14

香川地域政策センターの支出に関することを明らかにすることを求めた原告側の求釈明申立書1である。

行政文書15

甲号証の一部をまとめた原告側の証拠説明書5である。

401号~450号 451号~500号 501号~

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