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むかしむかし、弘法大師が四国を巡礼していたころのお話です。筆岡(ふでおか)(現在の善通寺市中村町)のお不動さんの近くの井戸がにごってしまい、村人たちは困り果てていました。
ごはんを炊くにも水がなく、隣村まで水をもらいに行かなければならないありさまでした。
ある日のこと、一人のお坊さんがこの村を通りかかりました。
村人たちから、井戸の話を聞いたお坊さんは、うなずきながらこういいました。「それでは、わしが何とかして、きれいな水を出してあげよう。」そこでお坊さんは、自分の杖で地面をトントンと叩きながら、お経を読みはじめました。それを見ていた村人たちは、そんなことで水が出るもんかと、白い目でお坊さんを眺めていました。ところが、しばらくすると不思議なことに、地面から少しずつ水が湧きだしてきたではありませんか。
そして見る見るうちに水の量も増え、なんと澄みきった水があふれ出してきました。これには村人たちも、驚くやら、喜ぶやら、大騒ぎになりました。その騒ぎがおさまって、ふと気がつくと、いつの間にかお坊さんの姿は見えなくなっていました。
村人たちは誰からともなく、「あのお坊さんは、きっとあの有名なお大師さまに違いない」といいはじめ、この井戸を「お大師さんのおつえの井戸」と呼ぶようになりました。今でもこの井戸には、こんこんときれいな水が湧いているということです。
讃岐には、各地に大師の水と呼ばれる井戸やわき水があります。水は、この地の人々にとってお大師さん同様、偉大なものということでしょう。
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