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公開日:2007年12月26日

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平成19年12月26日 答申第454号(香川県情報公開審査会答申)

平成19年12月26日(答申第454号)

答申

第1 香川県情報公開審査会(以下「審査会」という。)の結論

香川県知事(以下「実施機関」という。)が一部公開決定(以下「本件処分」という。)により非公開とした部分のうち、次の部分については、公開すべきである。

  1. 乙法人作成の不動産鑑定評価書の別表1のうち、所在欄の町名、地積、取引時点、時点修正欄の変動率及び交通接近条件欄の距離を除いた部分
  2. 丙法人作成の不動産鑑定評価書の別表(a)のうち、(年/月)、所在欄の町名、規模及び時点修正率欄の変動率を除いた部分

第2 異議申立てに至る経過

1 行政文書の公開請求

異議申立人は、平成18年12月1日付けで、香川県情報公開条例(平成12年香川県条例第54号。以下「条例」という。)第5条の規定により、実施機関に対し、次の内容の行政文書の公開請求を行った。

  • (1)平成17年7月19日に県が甲法人に売却した下記所在物件(香川県健康増進センター)の売却価格決定の基礎資料となった不動産の鑑定評価書
    なお、評価を担当した不動産鑑定士の名前は非公開でかまわない。
    (所在:高松市浜ノ町265番3、同番4、同番8、計3筆11,040平方メートル)

2 実施機関の決定

実施機関は、公開請求のあった行政文書として次の行政文書を特定し、別表の「公開しない部分」が「公開しない理由」に該当するとして、平成17年6月28日付けで本件処分を行い、異議申立人に通知した。

  • (1)乙法人が平成17年2月2日に香川県知事に発行した大的場健康体育センター跡地等に係る不動産鑑定評価書(以下「本件行政文書1」という。)
  • (2)丙法人が平成17年2月2日に香川県知事に発行した大的場健康体育センター跡地等に係る不動産鑑定評価書(以下「本件行政文書2」という。)

3 異議申立て

異議申立人は、本件処分を不服として、平成18年12月19日付けで、行政不服審査法(昭和37年法律第160号)第6条の規定により実施機関に対して異議申立てを行った。

第3 異議申立ての内容

1 異議申立ての趣旨

香川県情報公開条例第5条の規定に基づく本件対象文書の公開請求に対し、平成18年12月11日付け18政策第43201号により香川県知事が行った本件処分について、これを取り消し、本件処分における公開しない部分のうち、本件行政文書1については、別表1「土地価格比準表」の取引事例の概要の所在のうち取引事例の所在・地番が特定される部分及び交通接近条件に関する記述に関する部分を除いた部分の公開、本件行政文書2については、別表(a)「取引事例比較法を適用して求めた価格」の事例地の概要のうち取引事例の所在・地番が特定される部分及び交通接近条件に関する記述に関する部分を除いた部分の公開をそれぞれ求めるというものである。

2 異議申立ての理由

異議申立書及び意見書における主張は、おおむね次のとおりである。

  • (1)本件行政文書1について
    • (a)条例第7条第1号該当性
      別表1「土地価格比準表」に記載されている取引事例の概要には、その所在・地番が記載されている場合には、これと何人でも閲覧できる法務局備付けの不動産登記簿・公図、市販の住宅地図等と照合することにより、当該取引事例地の所有者又は取引当事者が明らかとなることから、取引事例の概要欄に記載されている情報は、それぞれの取引事例地ごとに、取引事例地の所有者又は取引当事者が個人である場合については、全体として条例第7条第1号の個人に関する情報であって、特定の個人を識別することができる情報に該当すると認められる。そして、不動産鑑定士が評価対象地の鑑定評価額を算定するに当たって、どの取引事例地を使用したかについては法令の規定又は慣行として公にされ、又は公にすることが予定されている情報であるとはいえず、条例第7条第1号ただし書イからニまでに該当しないものと認められる。また、交通接近条件の記載部分には取引事例地の特定のきっかけとなるような具体的な当該取引事例地に関連する情報が記載されている場合(例えばJR東京駅から南へ直線距離で2.2km、都営バス上野公園停留所から東へ道路距離で100m等)には条例第7条第4号の非公開情報に該当し非公開が妥当である。
      そこで条例第8条第2項の適用について検討すると、所在・地番及び交通接近条件の記載部分は、特定の個人を識別することができることとなる部分に該当すると認められるが、当該部分を除けば、その余の部分については、誰の取引事例であるかが識別されないのであるから、これを公にしても、当該取引事例地の所有者等の個人の権利利益が害されるおそれはないものと認められる。例えば、別表2「公示(基準地)価格規準表」に記載されている基準地を取引事例に読み替えた場合、公示地・基準地の概要の所在及び地域要因の比較の交通接近条件に関する記述を非公開とし、当該部分を除けば、その余の部分を公開しても所在を特定することの可能性は社会通念上ないことからも容易に理解できる。よって条例第8条第2項に基づく公開情報に該当すると判断する。
    • (b)条例第7条第2号該当性について
      別表1「土地価格比準表」に記載されている取引事例の概要には、それぞれの取引事例地ごとに、取引事例地の所有者又は取引当事者が法人である場合には、全体として条例第7条第2号の法人に関する情報であって、上記(1)の場合と同様にこれにより、取引事例地に係わる土地の取引を行った法人が特定される。通常法人にとっては、個別の土地取引の状況は企業経営上の方針又は戦略に関する機微な情報として、競争相手等に対して秘匿しているのが一般的であると認められることから、当該部分が明らかになると、これにより、取引事例地に係わる土地の取引を行った法人が特定されることから、当該法人の正当な利益を害するおそれがあると認められ、条例第7条第2号の非公開情報に該当する。しかし、上記(1)と同様に、所在・地番及び交通接近条件に関する記述を非公開とし、当該部分を除けば、その余の部分を公開しても当該取引事例地に係わる法人は特定されないのであるから、法人の競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがある情報であるとは認められない。
    • (c)実施機関が提出した非公開理由説明書について
      当方が異議を申し立てているのは、平成18年12月19日付で提出した異議申立書四1異議申立の趣旨で記載したとおり、(ア)取引事例の概要の所在のうち取引事例の所在・地番が特定される部分及び(イ)交通接近条件に関する記述に関する部分を除いた部分の公開である。ところが県の非公開理由説明書3.異議申立ての対象となっている行政文書について(1)(a)の記載では上記(ア)のみを異議申立ての対象として捉えており、上記(イ)については何ら言及していない。非公開理由説明書4.非公開部分の非公開事項の該当性について(1)(a)((1))及び((2))においても、上記(イ)については何ら言及していない。
  • (2)本件行政文書2について
    • (a)条例第7条第1号該当性
      上記(1)本件行政文書1についての(a)と同様に条例第8条第2項に基づく開示情報に該当すると判断する。
    • (b)条例第7条第2号該当性について
      上記(1)本件行政文書1についての(b)と同様に法人の競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがある情報であるとは認められないと判断する。
    • (c)実施機関が提出した非公開理由説明書について
      上記(1)本件行政文書1についての(c)と同様である。

第4 実施機関の説明の要旨

非公開理由等説明書による説明は、おおむね次のとおりである。

1 情報公開請求対象の行政文書について

  • (1)本件行政文書1は、当該財産活用事業者募集に当たって、売却価格を算定するために参考とした乙法人が平成17年2月2日に香川県知事に発行した大的場健康体育センター跡地等に係る不動産鑑定評価書である。
  • (2)本件行政文書2は、当該財産活用事業者募集に当たって、売却価格を算定するために参考とした丙法人が平成17年2月2日に香川県知事に発行した大的場健康体育センター跡地等に係る不動産鑑定評価書である。

2 非公開部分の非公開事項の該当性について

香川県情報公開条例は、県民の行政文書の公開を請求する権利につき定め、地方自治の本旨に即した県政の発展に寄与することを目的とするのものであるが、原則公開の下であっても行政文書を公開することにより、請求者以外の者の権利、利益が侵害されたり、円滑な行政運営が損なわれるということがあってはならないため、原則公開の例外として条例第7条を規定し、その権利に一定の制限を加えているものである。
このようなことから、本件行政文書の公開・非公開の決定に当たっては、条例第7条各号の該当性について検討し、決定したものである。本件行政文書の非公開部分の非公開事項該当性は、次のとおりである。

  • (1)本件行政文書1のうち次の部分
    別表1「土地価格比準表」のうち、取引事例の概要の所在のうち取引事例の所在・地番が特定される部分を除いた部分、地積、取引時点、取引価格、事情補正、時点修正、個別的要因の標準化補正、街路条件、環境条件、行政的条件及び格差率
    • (a)条例第7条第1号該当性について
      行政文書の公開義務がない情報として、条例第7条第1号において、「個人に関する情報であって、当該情報に含まれる氏名、生年月日その他の記述等により特定の個人を識別することができるもの又は特定の個人を識別することはできないが、公にすることにより、なお個人の権利利益を害するおそれがあるもの。ただし、次に掲げる情報を除く」と定め、ただし書として、イからニまでにおいて、個人の権利利益を侵害しないと考えられ、非公開にする必要のない情報及び公開する公益上の必要があると認められる情報を規定し、これらについては、公開しなければならないとしてる。
      本件行政文書1の別表1「土地価格比準表」において、個人の取引に係る取引事例の取引事例の概要の所在のうち取引事例の所在・地番が特定される部分を除いた部分、地積、取引時点、取引価格、事情補正、時点修正、個別的要因の標準化補正、街路条件、環境条件、行政的条件及び格差率は、個人情報であって、他の情報と照合することにより特定の個人を識別することができる情報であるので、本号に該当する。また、本号のただし書のいずれにも該当しない。
    • (b)条例第7条第2号該当性について
      行政文書の公開義務がない情報として、条例第7条第2条本文において、「法人その他の団体(国、地方公共団体、独立行政法人等、地方独立行政法人及び出資法人を除く。以下「法人等」という。)に関する情報又は事業を営む個人の当該事業に関する情報であって、公にすることにより、当該法人等又は当該個人の権利、競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがあるもの」と定め、そして、ただし書として事業活動によって生じ、又は生ずるおそれがある危害から人の生命、健康、生活又は財産を保護するため、公にすることが必要であると認められる情報を規定し、これらについては、公開しなければならないとしている。
      本件行政文書2の別表1「土地価格比準表」において、法人等の取引に係る取引事例の取引事例の概要の所在のうち取引事例の所在・地番が特定される部分を除いた部分、地積、取引時点、取引価格、事情補正、時点修正、個別的要因の標準化補正、街路条件、環境条件、行政的条件及び格差率は、法人等の内部管理に関する情報であって、これを公にすることは、法人等の営む事業活動を損ない正当な利益を害するおそれがあるので、本号に該当する。また、本号のただし書のいずれにも該当しない。
  • (2)本件行政文書2のうち次の部分
    別表(a)「取引事例比較法を適用して求めた価格」のうち、取引事例価格、取引事情と補正率、時点修正率、画地条件以外の個別的要因格差修正率、画地条件に係る個別的要因格差修正率、地域要因格差修正率、総合修正率、事例地の概要のうち取引事例の所在・地番が特定される部分を除いた部分、個別的要因格差修正率、街路条件、環境条件、行政的条件、その他及び地域要因格差
    • (a)条例第7条第1号該当性について
      本件行政文書2の別表(a)「取引事例比較法を適用して求めた価格」において、個人の取引に係る取引事例の取引事例価格、取引事情と補正率、時点修正率、画地条件以外の個別的要因格差修正率、画地条件に係る個別的要因格差修正率、地域要因格差修正率、総合修正率、事例地の概要のうち取引事例の所在・地番が特定される部分を除いた部分、個別的要因格差修正率、街路条件、環境条件、行政的条件、その他及び地域要因格差は、個人情報であって、他の情報と照合することにより特定の個人を識別することができる情報であるので、本号に該当する。また、本号のただし書のいずれにも該当しない。
    • (b)条例第7条第2号該当性について
      本件行政文書2の別表(a)「取引事例比較法を適用して求めた価格」において、法人等の取引に係る取引事例の取引事例価格、取引事情と補正率、時点修正率、画地条件以外の個別的要因格差修正率、画地条件に係る個別的要因格差修正率、地域要因格差修正率、総合修正率、事例地の概要のうち取引事例の所在・地番が特定される部分を除いた部分、個別的要因格差修正率、街路条件、環境条件、行政的条件、その他及び地域要因格差は、法人等の内部管理に関する情報であって、これを公にすることは、法人等の営む事業活動を損ない正当な利益を害するおそれがあるので、本号に該当する。また、本号のただし書のいずれにも該当しない。

第5 審査会の判断理由

1 判断における基本的な考え方について

条例は、その第1条にあるように、県民の行政文書の公開を求める権利を具体的に明らかにするとともに、行政文書の公開に関し必要な事項を定めることにより、県の保有する情報の一層の公開を図り、県政に関し県民に説明する責務が全うされるようにし、県政に対する県民の理解と信頼を深め、もって地方自治の本旨に即した県政の発展に寄与することを目的として制定されたものであり、審査に当たっては、これらの趣旨を十分に尊重し、関係条項を解釈し、判断するものである。

2 本件行政文書の内容等について

本件行政文書1及び2は、大的場健康体育センター跡地等を売却するに当たり当該売却用地等の正常な取引価格を算定するため、2社の不動産鑑定業者から実施機関に提出された平成17年2月2日付けの不動産鑑定評価書であって、評価対象不動産、鑑定評価額、鑑定評価額算定の理由の要旨等が記載されているほか、取引事例比較法による鑑定評価額の算定に用いられた取引事例地に関する所在、地積、取引価格等の情報が記載された別表や附属資料が添付されている。

3 当審査会の審査対象について

異議申立書及び意見書によると、異議申立人が公開を求めるのは、本件処分のうち、本件行政文書1の別表1「土地価格比準表」の非公開部分及び本件行政文書2の別表(a)「取引事例比較法を適用して求めた価格」の非公開部分であると認められるので、これらの部分の非公開条項該当性について判断する。

4 条例第7条第1号該当性について

条例第7条第1号は、個人の尊厳及び基本的人権の尊重の立場から、個人のプライバシーを最大限に保護するために定められたものであるが、プライバシーの具体的な内容が法的にも社会通念上も必ずしも明確ではなく、その内容や範囲は事項ごと、各個人によって異なり得ることから、本条例は、プライバシーであるか否か不明確な情報も含めて、特定の個人が識別され得る情報を包括的に非公開として保護することとした上で、さらに、個人を識別することはできないが、公にすることにより、なお個人の権利利益を害するおそれがあるものについても、非公開とすることを定めたものである。しかし、これらの個人に関する情報には、個人の権利利益を侵害しないと考えられ非公開とする必要のない情報及び公益上の必要があると認められる情報も含まれているので、これらの情報を本号ただし書きで規定し、公開することを定めたものと解される。
この基本的な考え方に基づき、実施機関が本号に該当するとして非公開とした部分について検討する。

  • (1)所在について
    所在の欄には、町名までの情報しか記載されておらず、この情報だけで当該取引事例地の正確な所在地を特定することは困難といえる。
    しかし、鑑定評価における取引事例地が、鑑定評価対象地の面積と著しく相違していない土地から収集されるのが通例であることからすると、当該取引事例地は、当該鑑定評価対象地と同様、ある程度の規模を有する土地であると推測することができる。また、こうした取引事例地は、取引の時点が鑑定評価の価格時点と異なることにより、価格水準の変動が大きくならないように、鑑定評価の価格時点に近い取引事例地の中から収集されたものと推測できる。加えて、本件行政文書に記載された当該取引事例地の所在地をみる限り、その地域(町)においては、規模の大きな土地が活発に取引されているとまではいえない。
    そうすると、当該取引事例地に関連して、上記のような土地取引事情等が存在している限りにおいては、当該取引事例地が所在する町名の情報が公開されると、本件行政文書記載の街路条件、環境条件、行政的条件等の情報と組み合わせ、法務局で交付される登記事項証明書等の情報と照合することにより、当該取引事例地及びその所有者等の取引当事者を特定することが可能になると考えられる。
    ただし、当該取引事例地が所在する市名の情報については、対象となる地域(市域)が広範囲であるため、たとえその情報が公開されても、当該取引事例地等を特定するきっかけとなる情報には該当しないと考えられる。
  • (2)地積、規模について
    鑑定評価における取引事例地が、鑑定評価対象地の近隣地域又は同一需給圏内の類似地域から収集されるのが通例であることから考えると、当該取引事例地も鑑定評価対象地の近隣地域等に所在していると推測することができる。また、上記(1)のとおり、当該取引事例地は鑑定評価の価格時点に近い取引事例地の中から収集されたものであると推測でき、加えて、鑑定評価対象地の近隣地域等においては、当該取引事例地のような規模の大きな土地は活発に取引されているとまではいえない。
    そうすると、当該取引事例地に関連して、上記のような土地取引事情等が存在している限りにおいては、当該取引事例地の具体的な面積が記載された情報が公開されると、本件行政文書記載の街路条件、環境条件、行政的条件等の情報と組み合わせ、法務局で交付される登記事項証明書等の情報と照合することにより、当該取引事例地及びその取引当事者を特定することが可能になると考えられる。
  • (3)取引時点、(年/月)について
    上記(1)及び(2)のとおり、当該取引事例地については、鑑定評価対象地の近隣地域等に所在していること、ある程度の規模を有する土地であることが推測でき、加えて、そうした近隣地域等においては、当該取引事例地のような規模の大きな土地は活発に取引されているとまではいえない。
    そうすると、当該取引事例地に関連して、上記のような土地取引事情等が存在している限りにおいては、当該取引事例地の取引時点が記載された情報が公開されると、本件行政文書記載の街路条件、環境条件、行政的条件等の情報と組み合わせ、法務局で交付される登記事項証明書等の情報と照合することにより、当該取引事例地及びその取引当事者を特定することが可能になると考えられる。
  • (4)時点修正欄の変動率、時点修正率欄の変動率について
    時点修正の変動率の情報は、それが明らかになると、その数値から取引時点を容易に計算することができ、取引時点が明らかになれば、上記(3)のとおり、当該取引事例地及びその取引当事者を特定することが可能になると考えられる。
  • (5)交通接近条件欄の距離について
    上記(1)及び(2)のとおり、当該取引事例地は、鑑定評価対象地の近隣地域等に所在していること、ある程度の規模を有する土地であること、鑑定評価の価格時点に近い取引事例地の中から収集されたものであることが推測でき、また、鑑定評価対象地の近隣地域等においては、当該取引事例地のような規模の大きな土地は活発に取引されているとまではいえない。
    そうすると、当該取引事例地に関連して、上記のような土地取引事情等が存在している限りにおいては、当該取引事例地から高松駅までの具体的な距離が記載された情報が公開されると、本件行政文書記載の街路条件、環境条件、行政的条件等の情報と組み合わせ、法務局で交付される登記事項証明書等の情報と照合することにより、当該取引事例地及びその取引当事者を特定することが可能になると考えられる。
  • (6)以上のことから、当該取引事例地の取引当事者が個人である場合には、上記(1)(市名を除く。)ないし(5)の取引当事者の特定に資する情報は、特定の個人を識別できる個人に関する情報に当たり、条例第7条第1号本文に該当し、ただし書のいずれにも該当しないと判断されるが、上記(1)の市名は、同条同号には該当せず、公開が妥当である。
  • (7)上記以外のその余の情報について これらの情報は、上記(1)(市名を除く。)ないし(5)の情報が明らかにされない限り、これらを公開したとしても、その情報のみによっては、当該取引事例地の取引当事者である個人を特定することはできないと考えられることから、条例第7条第1号には該当せず、公開が妥当と判断される。

5 条例第7条第2号該当性について

条例第7条第2号は、法人等又は事業を営む個人の正当な利益を害することを防止する観点から、その事業活動の自由を保障し、公正な競争秩序を維持するため、公にすることにより当該法人等又は事業を営む個人の権利、競争上の地位その他正当な利益を害するおそれのある情報を非公開とすることとした上で、それらに該当する情報であっても、人の生命、健康、生活又は財産を保護するため、公にすることが必要であると認められる情報については、公開することを定めたものであると解される。
この基本的な考え方に基づき、実施機関が本号に該当するとして非公開とした部分について検討する。
当該取引事例地の取引当事者が法人等である場合においては、上記1の(1)(市名を除く。)ないし(5)の情報は、個人の場合と同様、本件行政文書記載の街路条件、環境条件、行政的条件等の情報と組み合わせ、法務局で交付される登記事項証明書等の情報と照合することにより、当該取引事例地及びその取引当事者である法人等を特定することができる情報と考えられる。
そして、通常、法人等にとっては、個別の土地取引の内容は、法人等の経営上の内部管理に属する情報として秘匿されるのが一般的であると認められる。
そうすると、上記1の(1)(市名を除く。)ないし(5)の取引当事者の特定に資する情報が公開されると、当該取引事例地を取引した法人等が明らかとなり、そうなれば当該法人等の正当な利益が害されるおそれがあると認められるので、これらの情報は、条例第7条第2号本文に該当し、ただし書には該当しないと判断される。
しかし、上記1の(1)(市名を除く。)ないし(5)以外のその余の情報は、その情報のみによっては、当該取引事例地の取引当事者である法人等を特定することはできないと考えられることから、条例第7条第2号には該当せず、公開が妥当と判断される。

よって、当審査会は、「第1 審査会の結論」のとおり判断する。

第6 審査会の審査経過

当審査会は、本件諮問事件について、次のとおり審査を行った。

(省略)

別表
  公開しない部分 公開しない理由
行政文書1 (a)不動産鑑定士(鑑定業者の社員)の氏名及び印影 個人に関する情報であり、特定の個人が識別できるため
(b)法人の印影 法人の内部管理に関する情報であり、公にすることにより当該法人の正当な利益を害するおそれがあるため
(c)別表1「土地価格比準表」のうち、取引事例の概要(所在・地積・取引時点・取引価格)、事情補正、時点修正、個別的要因の標準化補正、地域要因の比較(街路条件・交通接近条件・環境条件・行政的条件・格差率) 取引事例の収集は、土地所有者等の任意の情報提供に支えられており、それらを公にすることにより不動産鑑定士に対する信頼を損なう可能性が高く、今後の鑑定業務に支障が生じ、当該法人の正当な利益を害するおそれがあるため

取引の対象が個人の場合は、個人に関する情報であり、他の情報との照合により特定の個人を識別することができ、また、取引の対象が法人の場合は、法人の内部管理に関する情報であり、公にすることにより当該法人の正当な利益を害するおそれがあるため
(d)取引事例の所在位置図
行政文書2 (e)不動産鑑定士(鑑定業者の社員)の氏名及び印影 個人に関する情報であり、特定の個人が識別できるため
(f)法人の印影 法人の内部管理に関する情報であり、公にすることにより当該法人の正当な利益を害するおそれがあるため
(g)別表(a)「取引事例比較法を適用して求めた価格」のうち、取引事例価格(年/月)、取引事情と補正率、時点修正率、標準化補正(画地条件以外の個別的要因格差修正率、画地条件に係る個別的要因格差修正率)、地域要因格差修正率、総合修正率、事例地の概要(所在・土地の形状等及び用途地域の種類・規模)、個別的要因格差修正率、地域要因格差(街路条件、交通接近条件、環境条件、行政的条件、その他)、地域要因格差修正率 取引事例の収集は、土地所有者等の任意の情報提供に支えられており、それらを公にすることにより不動産鑑定士に対する信頼を損なう可能性が高く、今後の鑑定業務に支障が生じ、当該法人の正当な利益を害するおそれがあるため

取引の対象が個人の場合は、個人に関する情報であり、他の情報との照合により特定の個人を識別することができ、また、取引の対象が法人の場合は、法人の内部管理に関する情報であり、公にすることにより当該法人の正当な利益を害するおそれがあるため
(h)取引事例の所在位置図

401号~450号 451号~500号 501号~

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