ページID:13616

公開日:2020年12月10日

ここから本文です。

第4回ナラティブ発表

院内ナラティブ発表(看護部)

平成20年度の院内ナラティブ発表集録から一部分を抜粋して掲載します。
当院の看護師の患者さまやご家族の方に対する思い、看護への熱意や悩みなどを感じていただければ幸いです。
どうぞ、ご一読ください。

看護部長 松下

第4回ナラティブ発表内容

天使になる瞬間

・・・・・Aさんの調子が良い晴天日。車椅子に乗り、足浴後に一階に散歩に出かけた。「良い天気だね。気持ち良い。やっぱり外の空気がいいよね。」Aさんの表情はとても穏やかだった。二人でいろいろな話をした。若い頃、旅館に勤めていたからお酒は毎日飲んでいたこと、家族のこと、大好きなコーヒーの話・・・。
ふと、感じた…。「私はこの瞬間が好きなのだ」と。
もう少し、この10分が20分になり、患者が負担にならない程度の時間を共有できたらな…と思った。・・・・・

自分の体験を話すこと

・・・・・少し緊張しながら、そして重い気持ちでAさんのところへ挨拶に行った。
・・(略)・・Aさんは入院診療計画を出して、「これが病名や。癌という字は見たらすごいなぁ。長いことほっといたからなぁ…。」と言いながら見つめていた。私は、しばらく話をした後で「私は病気が見つかった時がスタートやと思っています。あの時、受診しとったら…と思うかもしれないけど、あの時には戻れないんです。今からです。一緒に頑張っていきましょう。」と、いつも自分自身に言い聞かせている言葉をAさんに伝えた。・・・・・

ターミナルケアを通して

・・・・・私はこの受持ち患者様の最後に立ち会うことができなかった。今思えば、最も心に残っている言葉…それは受持った当初、この方から言われた言葉である。
「あなたはまだ今は勉強中。できなくて当たり前。ここの看護師の先輩はみな良い人ばかりよ。何事も自分の目で先輩のやっていることを見て、自分のものにしていけばいいんだから。辛いこともあるけど、それ以上に良いことの方が数倍多いと思う。いつも笑顔を忘れずに、先輩のように優しくて気がつく看護師さんになってね。」と。
私はこの言葉を一生忘れない。・・・・・

ひと夏の小さな出会い

・・・・・それからもAさんのナースコールは頻回でした。そして数ヶ月で他の病院に転医されました。
転医前に「頑固で難しい父が大変お世話になりました。父があなたのことをお気に入りのようだったので、最後に父と写真を撮ってもらえませんか。」と息子さんから言われ、写真を撮りました。「元気がないときに見せます。」とも言ってくれました。
Aさんのいた病室に入ると、時々あのころを思い出します。今振り返ると、私はAさんのことを一人の人間としてとらえられていたか、処置の多い寝たきり老人と考えていなかっただろうか、と反省ばかりがこみあげてきます。
そんな私をお気に入りにしてくれるなんて・・・。
すまない気持ちでいっぱいでレポートをまとめながら涙が出ます。・・・・・

急変時の家族看護の難しさ

・・・・・ある深夜勤務で、危篤状態の患者が救急入院された。
当然、面識はなく、危機的な状況にいる家族になんて声をかけたらいいのかと悩んだ。人間関係ができていない分、とても気が重く逃げ出したい気分だったが、限られた時間の中でできる限りのことをしようと思った。
他のスタッフの協力もあり、この方のところに頻回に訪室した。頻回に訪室することで、家族に少しでも安心感を与えたかったし、信頼関係を築きたかった。血圧等を測る都度、今の状況を説明した。
私の母が倒れた時、どんな細かいことでもよいから情報が欲しかった、という自分の経験上からだった。・・・・・

命に寄り添う

・・・・・時に患者や家族から「いつまで生きられるか」と聞かれることがある。
そのときは「神さんがお呼びになるときまでは、誰も逝くことはできない。誰にもわかりません。」と答える。答えながら、もっと気の利いたことを言えないかと自問自答している。
限られた命に対しては無力です。尋ねる時、患者は、家族は、ほんとうに生きる期限を聞いているのか、他の何かを聞きたいのか、何かしてもらいたいことがあるのか、と顔を見つめてしまう。
患者の願い、家族の願いをよく聞き、最後をいかに迎えられるか、寄りそっていこうと思う。・・・・・

なぜ!人工肛門が私についた?私は知らない、こんなものは

・・・・・Aさんは人工肛門を増設されました。しかし、Aさんは人工肛門のパウチを見ようともしません
看護師がパウチを交換していても、ガス抜きをしていても、顔はテレビの方を向いたままです。・・(略)・・
「パウチを剥がして貼るだけが、どうして難しいと思うのですか?」と問いかけました。簡単な動作を難しいと思うのは何故なのかを考えてもらいたかったのです。少し考えている表情になったので、パウチを半分剥がしたところで手伝ってもらうことにしました。「後半分を手伝ってください」と言うと、自然に手が伸びてきて注意深く剥がすことができました。その後は、すべての動作を看護師とAさんで半分ずつすることにしました。
一つ一つの動作が終わるごとに「上手にできています」とほめるとAさんは大きく頷いていました。パウチ交換が終わった時、Aさんは用具の後始末を自分でされました。
箱を閉めるとき、大切なものを扱うようにゆっくりと閉めていました。
Aさんが人工肛門を受け入れた瞬間だと思いました。・・・・・

感謝がみえた瞬間

・・・・・久しぶりに余裕のある日勤で、Aさんの足浴をした時のことだった。
Aさんの足は白く、カサカサだった。
「汚い足やのに、ごめんよ。あんたのきれいな手が汚れるな。もったいない、もったいない。ありがとよ。」
穏やかな、静かな声に私が顔をあげると、Aさんは笑顔で私の顔をじっと見ていた。終わって部屋を出るときも「ありがとよ。ありがとよ。」と、両手を合わせてくれた。
まるで拝むようにして・・・。
(私はこんなに拝んでもらえるような、いい仕事はしていない。ただ足を洗っただけなのに。こちらこそありがとう。)心の中で思い、ニコッとして軽く頭を下げた。
この15分ぐらいの出来事で、いつもと違う微妙な気持ちになった。穏やかな気持ちに。
喜んでくれてありがたい。心の底から感謝がみえた瞬間だった。・・・・・

私のナラティブ

・・・・・しかし、腸管内の腫瘤は大きく、針の穴ほどしか通らず、便が詰まると腸閉塞をおこしてしまう危険性が高いため、絶飲食となってしまった。
Aさんは物静かに「おなかがすいた。」「私のご飯は?」と言われ、ご家族からは「せめて飴をなめさせてあげたい…」とのご希望があった。誤嚥しないように棒つきの飴を面会時になめるのを楽しみにされ、「おいしい、おいしい」と笑顔を見せられたが、その姿が私には切なかった。ご家族は「96歳まで頑張って生きてきて、最後の最後に食べたいものも食べられないなんて…」と涙され、私も一緒に泣いてしまった。
もし、Aさんが自分の肉親だったら…と。・・・・・

看護部長のひとりごと看護部のページへページの先頭へ戻る

外来診療日程 外来診療のご案内 入院のご案内 各科・部門のご案内

各課医師 人間ドッグ・脳ドッグ 地域医療連携 健康教室・イベント

お見舞いメール よくある質問など ご意見・ご要望・ご質問 救急・時間外受診のご案内

リンク申請 職員募集

このページに関するお問い合わせ