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公開日:2020年12月10日

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古田3号塚 2019年度

香川県埋蔵文化財センター

何となく?

6月19日(水曜日)、2か月に及んだ遺跡の確認調査の最終日を迎えました。事務所の前まで来たのですが、収穫前の豆や麦があり飛ばした3つの調査地点が残っていたため、再び遠距離の往復が復活していました。それも今日が最後となれば、作業員さんの足取りも何となく軽やかに感じます。

最後の調査区も基盤整備を受けていましたが、鎌倉時代の溝跡2条を検出できました。遺構を掘るのも今日が最後となれば、作業員さんの道具を振るう手も、何となく寂しげに感じます。

いよいよ調査が終わり、最後の埋め戻し作業となりました。2か月間聞きなれてきた重機のキャタピラが発する金属音も、今日が最後となれば、何となく哀しい悲鳴のように感じます。

埋め戻しが終わり、作業員さんと重機の操縦士さんがお別れのあいさつを交わしていました。2か月間、協力しながら調査を行う中で連帯感が生まれ、互いにリスペクト(尊重)する良い関係が生まれたからだと感じました。

最終的に33箇所の田畑などに合計71本のトレンチ(細長い筋状の調査区)を掘りました。検出した遺構の数や遺物の量は多くはないですが、得られたデータを基に、「何となく」ではなくきっちりと本調査する範囲を確定する作業を進めていきます。短い間ですが、本発掘現場通信にお付き合いいただきまして、ありがとうございました。
(完)
(6月21日)。

作業風景

最後の遺構を掘る作業員さん

埋め戻し
埋め戻しもいよいよ最後だ!

ないということ

今回の調査で柱穴や土器類がまとまって見つかった箇所は一部に過ぎず、何も出てこない「ない」箇所の方が多いということが見えてきました。「ない」ことの原因として1.もともと遺跡がなかった、2.遺跡があったが後の時代に壊されてしまった、という2つのケースが考えられますが、これを区別することはとても難しいものです。地域の歴史を考える上で、全く逆の意味合いとなってしまいますから。農業の効率化のため大規模に土地を造成した農政事業が行われ、昔の地面が削られてしまったことも分かりにくい原因の一つになっています。本格的な発掘調査の必要な範囲を決める今回の調査に直接関係はしませんが、大事な課題ですので、周辺の地形や土の堆積状態などを綿密に調べながら、慎重に考えたいと思います。

今後は、麦や豆などの作物があったため後回しにした数か所について、北に戻って調査を行い、6月末で終了する予定です。

そうだ、前回写真を掲載したしたヒマワリ畑は、約1週間でほぼ満開となりました(夏だ!)。
(6月13日)。

ない調査区の全景

写真1 「ない」調査区の全景

水平に削られた地面
写真2 水平に削られた地盤

作業員さん

現在、調査をしている部分の隣にはヒマワリ畑があります。どのヒマワリも緑のつぼみが膨らみ、開花一歩手前の状態。そんな中、盛夏を待ちきれなかったのか、花開いた1輪を見つけました。緑一色の畑が黄色に染まるのも間近のようです。

さて、今日は一緒に汗を流している作業員さんのお話です。男性2名と女性5名の計7名で、もう長いこと発掘作業に携わってきたベテランさんばかりです。土を掘りたくて仕方がないらしく、重機が幅広い筋状の調査区を掘っている時間がとにかく待てずに「次は何をする?どこを掘る?」の大合唱(まるで、ヒバリの子が「ピーチク、パーチク」大騒ぎしているみたい)。その圧力には調査員も圧倒されるほど(笑)です。
その代わり、出番となれば暑さもいとわずに、キツイ作業でも黙々と取り組む姿には、頭が下がります。その手際や作業員さん同士の連携も見事で、調査はどんどん進んでいきます。本当に心強い、力強い仲間たちです(感謝!)。
(6月6日)。

手際のよい作業員
手際の良さが光る作業員さんたち

麦秋に 眠りを覚ます V字溝

周辺では田植えが始まったと前回に書きましたが、麦が「麦秋(ばくしゅう)」を迎えた畑もあります。麦秋とは、麦が実って収穫の時を迎えた初夏の頃のことで、夏の季語とされています。
……が、ここ連日は初夏どころか夏真っ盛りのような日差しと暑さで、麦も立っているのがツライように目に映ります。

調査は予定地のおおよそ半分を超えて、折り返しを迎えていした。あれほど長かった調査地までの往復も、距離がおおむね半分になり、どうやらダイエット効果は極めて低いことになりそうな予感が出てきました。

さて、調査ですが、昭和時代の農業基盤整備事業に伴う大規模な土地区画の改変によって、昔の生活面(地面)が削られていることが、見つかった柱穴や溝の浅さからわかります。そんな中でも、幅約1.6m、深さ約1.2mで断面がV字形をした大きな溝が見つかりました。緩くカーブしているようで、水を流すだけでなく何かを区画している可能性もあります。土器などが見つからず年代を推定する手掛かりはありませんが、周辺の旧地形などを読み解きながら、その性格を考えていきたいと思います。
はてさて、これから何がみつかるのか。期待にワクワクしながら調査は続きます。
(5月31日)

溝
大きな溝

断面
見事なV字形の断面

初夏とともに訪れた「お客さま」たち

調査地の周辺の水田にも水が入り始め、田植えも始まっています。カエルの合唱も始まり、夏の到来を感じているところです。また、人の膝丈ほどに伸びた雑草の中で、巣に収まったヒバリの赤ちゃんとばったり出会ったこともあります。重機や人に踏まれないように、やや離れた場所で慎重に調査を行いました。振動や騒音で迷惑をかけちゃいましたね。

まだ調査は半ば、これからどんな住人とお会いできるのかと、楽しみにしています。
あっ、肝心の調査ですが、調査員も作業員も頑張って進めています。
(5月24日)。

発掘調査
進んでいく発掘調査

調査が終わるころには、ダイエット完了?!

今回の調査は、調査範囲の北端部分から着手しました。路線の延長が約1.2kmととても長いうえに、事務所の位置が最南端となってしまったため、午前1往復、お昼の休憩をはさんで午後1往復と、毎日2往復(なんと約4km!)も歩いています。

これから来る暑い夏の時期には少しでも事務所に近づけるよう、調査員も作業員も頑張って調査に取り組んでいます。
そんな我々の頑張りに応えてくれるかのように、柱穴や溝などの遺構が見つかり始めました。細長い筋掘りのため、全体の大きさなどはわかりませんが、掘立柱(ほったてばしら)建物など人が住んでいたことは確実です。「古田3号塚」の近くであり、中世の遺跡である可能性もあります。ごみ捨て場と思われる穴からは赤い漆塗りの木片も見つかりました。お椀だったとみられます。

(5月9日)

調査区の様子
見つかった柱穴などの遺構

漆椀
ゴミ捨て穴から出土した赤い漆椀

古田3号塚の発掘調査が始まりました!

県道円座香南(えんざこうなん)線は高松西インターチェンジと高松空港を結ぶ道路で、部分的に開通しています。今回は高松市香南町内の建設工事に先立ち、路線の中に遺跡があるのかどうかを調べる調査を、4月から7月の予定で行います。

周辺にはすでに知られている遺跡として中世の塚である「古田3号塚」がありましたので、現在はその名を借りて遺跡名としています。
調査の結果、新たな遺跡が見つかれば、本格的な発掘調査に切り替えて進める予定です。

写真1は遺構や遺物といった遺跡を示す証拠を探すために、幅の広い筋状に掘り下げているところです。スタートは重機で掘り始めますが、途中から作業員さんにバトンタッチして、人の手で探します。

写真2は遺構や遺物を探すだけではなく、どのように土が堆積して現代にいたっているのかについて、記録を取っているところです。土地の成り立ちや歴史を示す大事な記録になります。
(4月19日)

遺構や遺物を探す
写真1 遺構や遺物を探す

土の堆積
写真2 土が堆積している様子

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