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公開日:2020年10月14日

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平成18年7月3日 答申第380号(香川県情報公開審査会答申)

平成18年7月3日 答申第380号

答申

第1 香川県情報公開審査会(以下「審査会」という。)の結論

小豆総合事務所長(以下「処分庁」という。)が行った一部公開決定(以下「本件処分」という。)は妥当である。

第2 審査請求に至る経過

1 行政文書の公開請求

審査請求人は、平成15年9月11日付けで、香川県情報公開条例(平成12年条例第54号。以下「条例」という。)第5条の規定により、処分庁に対し、「〇〇に建設予定の自治会館に関して、香川県公告第884号指定、村内地区急傾斜地崩壊危険区域の敷地造成許可に係る一切の書類」について公開請求(以下「本件請求」という。)を行った。

2 処分庁の決定

処分庁は、本件請求に対応する行政文書として「急傾斜地崩壊危険区域内制限行為許可申請について(平成15年9月1日付け起案文書、15小総第31533号)」(以下「本件行政文書」という。)を特定し、別表の「公開しない部分」に掲げる部分が、「公開しない理由」に該当するとして、平成15年9月25日付けで本件処分を行い、審査請求人に通知した。

3 審査請求

審査請求人は、本件処分を不服として、香川県知事(以下「諮問庁」という。)に対して、行政不服審査法(昭和37年法律第160号)第5条の規定により、平成15年10月2日付けで審査請求を行った。

第3 審査請求の内容

1 審査請求の趣旨

「本件処分を取り消すとの裁決を求める」というものである。

2 審査請求の理由

審査請求書において主張している理由は、おおむね次のとおりである。

  • (1)本件処分は、香川県の情報公開条例の解釈適用を誤った違法な処分であり、本件処分を取り消し、全部公開をすべきである。
  • (2)本件「決定通知書」の「公開しない理由」は、香川県の情報公開条例の非公開事由に該当しない。特に、同意書及び土地使用同意書は少なくとも一部公開は可能である。
  • (3)本件「決定通知書」の「公開しない理由」には、適法に処分理由が明示されていないので、香川県行政手続条例第8条に違反し本件処分は無効である。

第4 諮問庁の説明

諮問庁による説明の概要は、次のとおりである。

1 条例第7条第1号の該当性について

条例第7条第1号においては、個人に関する情報で、特定の個人が識別され得るものについては、公開しないことができると規定されている。これは、個人の尊厳及び基本的人権の尊重の立場から、個人のプライバシーを最大限に保護するため、特定の個人が識別され得るような情報は、原則として非公開とすることを定めたものであり、個人のプライバシーを最大限に保護するため、個人のプライバシーに関する情報であると明らかに判別できる場合はもとより、個人のプライバシーに関する情報であるかどうか不明確である場合も含めて、個人に関する情報は、非公開を原則としている。以上の観点及び文書の性格から判断すれば、同意書及び土地使用同意書については、所有者、住所及び氏名が記載されており、明らかに特定の個人が識別され、また特定の個人が識別され得る思想、考え方が記載されており、公にすることにより、権利利益を害するおそれがあるため、本号の非公開理由に該当する。岩質判定者の「氏名、印影」については、明らかに特定の個人が識別されるため、本号の非公開理由に該当する。

2 条例第7条第2号の該当性について

条例第7条第2号においては、法人等に関する情報又は事業を営む個人の当該事業に関する情報で、公開することにより、当該法人等又は当該個人に不利益を与えるおそれがあると認められるものについては、公開しないことができると規定されている。
申請者の「印影」については、法人等が公開の範囲を限定している経理等の重要な内部管理に属する情報であって、また同意書及び土地利用同意書については、法人等の意思決定等に関する内部管理に属する情報が記載されている。これを公にすることにより、当該法人の権利、競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがあるため、本号の非公開理由に該当する。

3 条例第7条第4号の該当性について

条例第7条第4号においては、県の機関、国の機関又は県以外の地方公共団体が行う事務又は事業に関する情報で、公にすることにより、当該事務又は事業の性質上、当該事務又は事業の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあるものについては、公開しないことができると規定されている。
同意書及び土地使用同意書については、関係者の意思決定等に関する情報が記載されており、公にすることにより、関係者の信頼を失い、事業者が協力を得られなくなるなど、今後の同種の事務の適正な執行に支障を及ぼすおそれがあり、本号の非公開理由に該当する。

第5 審査会の判断理由

1 判断における基本的な考え方について

条例は、その第1条にあるように、県民の行政文書の公開を求める権利を具体的に明らかにするとともに、行政文書の公開に関し必要な事項を定めることにより、実施機関の保有する情報の一層の公開を図り、県政に関し県民に説明する責務が全うされるようにし、県政に対する県民の理解と信頼を深め、もって地方自治の本旨に即した県政の発展に寄与することを目的として制定されたものであり、審査に当たっては、これらの趣旨を十分に尊重し、関係条項を解釈し、判断するものである。
また、非公開情報の該当性の判断に当たっては、処分庁が主張する非公開理由のうちいずれかに該当すると判断した情報については、他の非公開理由の該当性についての判断は行わないものである。

2 本件行政文書の内容等について

急傾斜地崩壊危険区域内で制限行為を行おうとする者は、急傾斜地の崩壊による災害の防止に関する法律(昭和44年法律第57号)第7条第1項の規定により、都道府県知事の許可を受けなければならないこととされている。
本件行政文書は、この規定に基づく急傾斜地の崩壊による災害の防止に関する法律施行細則(昭和45年規則第2号。以下「法律施行細則」という。)第3条の規定により提出された急傾斜地崩壊危険区域内制限行為許可申請書(以下「当該申請書」という。)に対する急傾斜地崩壊危険区域内制限行為許可(以下「当該許可」という。)の起案文書である。
本件行政文書は、当該許可書案及びその添付書類である調査意見書並びに当該申請書及びその添付書類である位置図、計画説明書、関係市町長の意見書、地縁団体台帳、土地の登記簿、同意書及び土地使用同意書、安定計算書、実測平面図等並びに岩質判定書から構成されている。

3 非公開条項の該当性について

条例第7条第1号は、個人の尊厳及び基本的人権の尊重の立場から、個人のプライバシーを最大限に保護するために定められたものである。しかし、プライバシーの具体的な内容が法的にも社会通念上も必ずしも明確でなく、その内容や範囲は事項ごと、各個人によって異なり得る。そこで、本条例はプライバシーであるか否か不明確な情報も含めて、特定の個人が識別され得る情報を包括的に非公開として保護することとし、そのうえで一般的に非公開とする必要のないものを例外的に本号ただし書において公開することとしたものと解される。
また、条例第7条第2号は、法人等又は個人事業者の正当な利益を害することを防止する観点から、その事業活動の自由を保障し、公正な競争秩序を維持するため、公にすることにより、当該法人等又は個人の権利、競争上の地位その他正当な利益を害するおそれのある情報については非公開とすることとした上で、それらに該当する情報であっても、人の生命、健康、生活又は財産を保護するため、公にすることが必要であると認められる情報については、公開することを定めたものであると解される。
以上の基本的な考え方に基づき、処分庁が非公開とした部分について検討する。

  • (1)申請者の印影について
    印影は、一般的に、法人等が事業活動を行う上での重要な内部管理に属する情報であり、このような情報を外部に対して明らかにするかどうかは、本来、法人等が自らの業務の関わりの中で自主的に決定すべきことであり、法人等は、公開すべき相手方を限定する利益を有しているというべきである。しかしながら、このような情報であっても、当該法人等がそのような管理をしていないと認められる場合には、これが公開されても、当該法人等の正当な利益を害するものとは認められない。
    本件印影は、急傾斜地崩壊危険区域内制限行為許可申請書に押印されているものであり、当該法人等がこのような文書を提出する相手方は、処分庁に限定されていると考えられる。
    よって、本件印影は、内部管理情報として管理されているものと判断され、本件印影を当該法人等の事業活動に関わりなく、本条例により広く一般に公開することは、当該法人等の正当な意思、期待に反し、当該法人等に不利益を与えるおそれがあると認められるので、条例第7条第2号本文に該当し、ただし書に該当しないと判断される。
  • (2)同意書及び土地使用同意書について
    急傾斜地崩壊危険区域内で制限行為を行おうとする者は、法律施行細則により当該申請書に規定の書類を添えて、当該急傾斜地崩壊危険区域を所管する土木事務所又は香川県小豆総合事務所の長に提出しなければならないこととされている。
    また、添付が必要な書類として、申請者が当該行為を行うことについて、権原を有すること、又は権原を取得する見込みがあることを示す書面が定められており、本件行政文書には、当該書面に相当するものとして、個人からの同意書及び土地使用同意書並びに法人からの土地使用同意書が含まれている。
    • (ア)個人からの同意書及び土地使用同意書並びに法人からの土地使用同意書の個人印について
      個人からの同意書及び土地使用同意書については、同意をした個人については、誰がどのような条件で同意をしたのか、当該同意が相続人によるものであるか否か等がわかる情報であることから、その全体が個人の内心に関わる情報、資産に関する情報であって、特定の個人が識別され得る個人に関する情報と認められるので、条例第7条第1号本文に該当し、ただし書に該当しないと判断される。
      また、法人からの土地使用同意書の個人印については、特定の個人が識別され得る個人に関する情報と認められるので、条例第7条第1号本文に該当し、ただし書に該当しないと判断される。
    • (イ)法人からの土地使用同意書について
      当該土地使用同意書は、法人の考えである同意等の内容とともに、法人の名称、代表者の職氏名等が記載されるとともに、法人の印影が表示されており、その全体が法人の同意等に関する情報であると認められる。
      また、申請をした法人等の事業に利害関係等を有するものが誰であるかや、そのうち、誰からどのような条件で同意を取得したのかは、当該法人等の内部管理情報であるほか、同意をした法人についても、同意をしたか否か、どのような条件で同意をしたのかは、同意をした法人の内部管理情報である。
      よって、これらを公開することにより、それぞれの法人等の正当な利益を害するおそれがあると考えられ、条例第7条第2号本文に該当し、ただし書に該当しないと判断される。
  • (3)岩質判定者の氏名、印影について
    これらはいずれも特定の個人が識別され得る個人に関する情報と認められ、条例第7条第1号本文に該当し、ただし書に該当しないと判断される。

4 第3の2の審査請求の理由のうち(3)の理由について

条例の解釈、運用に関するものでないので、審査会では判断しないものとする。

よって、当審査会は、「第1 審査会の結論」のとおり判断する。

(省略)

別表
公開しない部分 公開しない理由
申請者の「印影」 法人等の内部管理に属する情報であって、公にすることにより、当該法人等の権利、競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがあるため(条例第7条第2号該当)
同意書及び土地使用同意書
  • 特定の個人が識別され得る個人に関する情報又は個人の権利利益を害するおそれのある情報であるため(条例第7条第1号該当)
  • 法人等の意思決定等に関する内部管理に属する情報であって、公開することにより、当該法人の権利、競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがあるため(条例第7条第2号該当)
  • 関係者の意思決定等に関する情報であり、公開することにより、関係者の協力が得られなくなるなど、今後の当該事務の適正な執行に支障を及ぼすおそれがあるため(条例第7条4号該当)
岩質判定者の「氏名、印影」 特定の個人が識別され得る個人に関する情報であるため(条例第7条第1号該当)

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