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公開日:2019年12月27日

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平成18年12月26日 答申第415号(香川県情報公開審査会答申)

平成18年12月26日 答申第415号

答申

第1 香川県情報公開審査会(以下「審査会」という。)の結論

香川県教育委員会(以下「実施機関」という。)が行った非公開決定は、妥当である。

第2 異議申立てに至る経過

1 行政文書の公開請求

異議申立人は、香川県情報公開条例(平成12年香川県条例第54号。以下「条例」という。)第5条の規定により、実施機関に対し、平成17年12月21日付けで次の内容の行政文書の公開請求(以下「請求1」という。)を行った。

  • (1)県知事メール(平成17年10月中ごろから後半にかけて)
  • (2)香川県教育委員会から特定高等学校長への照会文書もしくは照会があったかどうかの記録(以下「校長への照会文書」という。)また、異議申立人は、条例第5条の規定により、実施機関に対し、平成18年2月3日付けで「平成17年11月17日受付の香川県教育委員会あてのメールの差出人への回答」について公開請求(以下「請求2」という。)を行った。

2 実施機関の決定

実施機関は、公開請求のあった行政文書として、請求1の(1)については、「平成17年11月17日受付の香川県教育委員会あてメール(以下「本件メール」という。)」を特定し条例第7条第1号に該当するとして、また、請求1の(2)については、請求対象となる行政文書が不存在として、平成17年12月27日付けで非公開決定(以下「本件処分1」という。)を行い、異議申立人に通知した。
また、請求2について、実施機関は、公開請求のあった行政文書として「平成17年11月17日受付の香川県教育委員会あてメールの差出人への回答(以下「本件回答文」という。)」を特定し、条例第7条第1号に該当するとして、平成18年2月13日付けで非公開決定(以下「本件処分2」という。)を行い、異議申立人に通知した。

3 異議申立て

異議申立人は、平成18年2月8日付けで本件処分1を、平成18年3月7日付けで本件処分2を不服として、行政不服審査法(昭和37年法律第160号)第6条の規定により実施機関に対して異議申立てを行った。

第3 異議申立ての内容等

1 異議申立ての趣旨及び理由

異議申立書において主張している趣旨及び理由は、おおむね次のとおりである。

  • (1)本件処分1について
    メールの内容が人権侵害・名誉毀損・誣告罪等の刑事事件に該当するおそれがあるため、非公開決定を取り消し、文書の全部公開を求め、法務局により違法であるかどうか判断して貰うため。
  • (2)本件処分2について
    回答は私が学校長の質問により、事実を述べたものであるので、当該文書を公開しても、相手の権利利益を害するおそれがあるためと記載されているが、実際には、私個人の権利利益を相手は知り、私の権利利益が守られていないため。
    これは、相手だけが私の権利利益を知ることとなり、私が事実を述べた回答が非公開となるのは、おかしいのではないか。私は事実を述べているので、回答したメールを知る権利が私にもあるのではないか。又回答文書で、相手の権利利益が害されるとは思わない。

2 その他異議申立人の主張

  • (1)意見書による主張
    意見書において主張している内容は、おおむね次のとおりである。
    1. 非公開理由等説明書中の本件メールの説明について
      「本件メールについては知事への私信という形をとり」と記載されているが、私信ならば、他人の人権侵害や障害者差別は許されるのか、又送信者の個人の権利利益は守られ、被害者となった私の権利利益は守られないのか。
    2. 知事へのメール・回答メールに関して
      送信者のメール内容は、事実と異なった内容のものがある。送信者の送った内容と事実が異なるのなら、送信者の思い込みや他人からの情報であるので、どちらが正しいのか再審議していただきたい。また、私に直接尋問をし、当審査会にてどちらの主張が正当なのか審議していただきたい。
    3. 送信者の障害者への人権侵害及び障害者への偏見、社会参加の否定について
      送信者は、明らかに人権侵害事件をおこしており、障害者に対する偏見をもち、社会参加を否定をしている。これはれっきとした刑事事件であり、送信者は加害者である。知事へのメールでは、このような人権侵害事件をする人間をかばうのか。送信者の権利利益をかばうのなら、香川県及び送信者に対して、刑事告訴を行う。
      送信者に関しては、憲法の条文にあるとおり、個人の思想の自由は守られると明記されているが、差別をしてもよいとは日本国憲法にも法律や香川県の条例にもない。
      知事への私信であるというならば、これはインターネットを利用して法を破り、人権侵害をしてもよいということか。いくら送信者が非公開を望んでも、違法な場合には香川県が送信者に指導するべきである。
      それができないのなら、刑事事件として送信者、香川県、香川県知事及び香川県教育委員会を相手取り告訴を行う。
  • (2)意見陳述による主張
    意見陳述において主張してる内容は、おおむね次のとおりである。
    1. 当該知事へのメールの回答について
      回答文に関しては、非公開となっているが、これは私が校長の質問に対して答え、校長が教育委員会総務課へ回答し、教育委員会総務課が送信者に対して回答しているものである。
      回答の内容については、私が回答したものであるので、自分が回答したことが正しく送信者に伝わっているのかどうか確認するため、公開を求めている。公開されて私の名前が公になることになってもかまわない。
      また、知事がこの回答文書を見て、教育委員会総務課から回答したのであれば、知事がその内容を承諾したという文書を公開していただきたい。
    2. 送信者の障害者への人権侵害及び偏見等について
      送信者は、単に障害者であるということで差別的な発言があったり、偏見をもっている。それを知事へのメールという媒体を使って送信し、私の人権、また職場での立場を非常に侵害している。今回公開を求めているのは、送信者に対して私的な恨みをもって仕返しをするのではなく、法務局人権担当課に持って行き、公平な立場をもって人権侵害があるかどうかを判断していただきたいと考えているからである。
      言われなきことによって名誉毀損されても、私たち職員は反論できないのか。送信者は私が障害者であるという個人情報を調べ、私の個人情報はすべて筒抜けになっている。相手の個人情報が守られ、私の個人情報が守られないのはおかしい。
      知事へのメールは、内容によって非公開を望み、匿名希望をすれば、個人を誹謗中傷し、人権侵害をするようなことを書いてもいいのか。それによって、送信者の権利利益は守られ、その結果、調べられた職員の権利利益は守られているのか。
      また、文書を受理した広聴広報課並びに教育委員会総務課は、人権担当課に相談したのだろうか。そこに最初のメール文を持っていってこれは人権侵害に当たるかどうか県自体が判断すべき問題であり、それによって人権侵害のおそれがある場合には、送信者に対して、まず、人権侵害のおそれがあると警告すべきである。法務局や弁護士にも相談したが、まずは実際の文書を見ないと、人権侵害や虚偽報告であるかの判断はできないと言われている。最後に、なぜ相手の権利利益ばかり守られて、私の個人情報がまもられないのかを一番に聞きたい。そして、私でなく、審査会でなく、第三者である法務局等によって判断してもらいたい。そうすれば一番公平である。

第4 諮問庁の説明の要旨

非公開理由等説明書による説明は、おおむね次のとおりである。

1 異議申立ての対象となっている行政文書について

  • (1)本件メールについて
    「知事へのメール」として知事に送付され、その内容が実施機関から回答すべき内容であったため、差出人の了解を得て、平成17年11月17日付けで実施機関に転送され受け付けたメール文書である。
  • (2)校長への照会文書について
    公開請求の趣旨は、本件メールについての事実確認等のために作成・送付された教育委員会事務局から特定高等学校長への照会文書に対する公開請求であるが、校長への照会は口頭で行ったため、該当する行政文書は存在しない。
  • (3)本件回答文について
    本件メールに対する回答として、平成17年12月14日に教育長名で差出人に送付したメール文書である。

2 非公開条項の該当性等について

  • (1)条例第7条第1号の該当性について
    条例第7条第1号では、個人に関する情報であって、当該情報に含まれる氏名、生年月日その他の記述等により特定の個人を識別することができるもの又は特定の個人を識別することはできないが、公にすることにより、なお個人の権利利益を害するおそれがあるものを非公開情報と定めている。ただし、本号のただし書に掲げる情報については、非公開情報から除くこととしている。
    本件メールについては、知事への私信という形をとり、差出人の思想や主張等が文書全体にわたって記述されている。このような特定個人の思想や考え方等に係る情報は全体として、条例第7条第1号本文に規定する個人に関する情報であり、他の情報と照合することにより特定の個人を識別することができる情報、又は特定の個人を識別することはできないが、公にすることにより、なお個人の権利利益を害するおそれがある情報に該当し、かつ条例第7条第1号のただし書イからニには該当しない。
    次に、本件回答文については、差出人が指摘した事項について、事実確認の結果や学校が講じた措置などを回答したメール文書であり、全体として本件メールの内容を容易に類推することができるため、条例第7条第1号本文に該当し、かつただし書イからニには該当しない。
    また、本件メールは「知事へのメール」制度を利用して匿名で県に届いたものであり、差出人は本件メールの非公開を希望する旨を明記している。差出人の意に反して文書を公開すると、今後、県の公聴制度に対する県民の信頼が損なわれ、県政に対する率直な意見や提案を得ることが困難になり、事務の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがある。
    以上のことから、本件メール及び本件回答文については非公開とすることが適当であると判断したものである。
  • (2)該当する行政文書の不存在について
    教育委員会事務局では、平成17年11月17日に受け付けた本件メールの内容について、事実確認等を特定高等学校長に口頭で指示した。
    数日後、校長から、事実確認の結果及び校長として講じた措置について口頭で報告を受け、それをもとに本件回答文を作成し、平成17年12月14日に差出人にメールで回答した。
    このため、校長への照会文書に該当する行政文書は存在しない。

第5 審査会の判断理由

1 判断における基本的な考え方について

条例は、その第1条にあるように、県民の行政文書の公開を求める権利を具体的に明らかにするとともに、行政文書の公開に関し必要な事項を定めることにより、県の保有する情報の一層の公開を図り、県政に関し県民に説明する責務が全うされるようにし、県政に対する県民の理解と信頼を深め、もって地方自治の本旨に即した県政の発展に寄与することを目的として制定されたものであり、審査に当たっては、これらの趣旨を十分に尊重し、関係条項を解釈し、判断するものである。

2 本件行政文書の内容等について

「知事へのメール」は、県民とともにつくり、分かち合う参加の県政を推進するため、広く、県政に対する自由な意見・提言・要望等をしてもらう趣旨で設けられた制度であり、回答を要するものは広聴広報課から関係課長に照会し、関係課長から回答を受け取った後、知事の決裁を経て送信者に送付することとなっている。
ただし、本件メールは「知事へのメール」として送られたものではあるが、その内容が実施機関の所管事項であったため、広聴広報課が送信者の了承を得た上で、「教育委員会に対する意見・要望」(知事へのメールと同様の制度)として実施機関が受付し、送信者に本件回答文を送付したものである。

3 非公開情報該当性について

  • (1)本人による自己情報の公開請求について
    条例による公開請求は、請求の目的のいかんを問わず、いずれの請求権者にも等しく認められるものであることから、個人情報については、それが請求者本人のものであっても、原則として非公開とされている。
    すなわち、条例第7条第1号は、その条文構造からすると、同号のただし書イ~ニに該当しない限り、同号本文に定める特定の個人を識別できる情報等は非公開情報となるのであり、本件情報が異議申立人本人に関する情報であることや、自らこれを公開することに承諾していることなど異議申立人の主張する理由は、同号における個人情報の公開・非公開の判断に影響を与えるものではない。
    なお、本件事案において異議申立人は自己の情報が記録されている行政文書の公開を求めているものと思われるが、このような実施機関が保有する個人情報についての本人への開示については、個人情報の適正な取扱いの確保について定めた香川県個人情報保護条例(平成16年香川県条例第57号)による個人情報の開示制度においてその適否が判断されるべきものである。
  • (2)条例第7条第1号の該当性について
    本号は、個人の尊厳及び基本的人権の尊重の立場から、個人のプライバシーを最大限に保護するために定められたものであるが、プライバシーの具体的な内容が法的にも社会通念上も必ずしも明確ではなく、その内容や範囲は事項ごと、各個人によって異なり得ることから、本条例は、プライバシーであるか否か不明確な情報も含めて、特定の個人が識別され得る情報を包括的に非公開として保護することとした上で、さらに、個人を識別することはできないが、公にすることにより、なお個人の権利利益を害するおそれがあるものについても、非公開とすることを定めたものである。しかし、これらの個人に関する情報には、個人の権利利益を侵害しないと考えられ非公開とする必要のない情報及び公益上の必要があると認められる情報も含まれているので、これらの情報を本号ただし書きで規定し、公開することを定めたものと解される。この基本的な考え方に基づき、実施機関が本号に該当するとして非公開とした部分について検討する。
    審査会で見分したところ、本件メールの内容は特定個人の意見であり、本件回答文はその意見に対する教育長の回答であることが確認できた。
    また、その具体的記載内容から判断すると、公にした場合、本件メールの差出人その他の者が誰であるか特定することができるものと認められる。
    したがって、本件メール及び本件回答文は、いずれも個人に関する情報であって特定の個人を識別し得るものであり、また、公にすることにより、個人の権利利益を害するおそれがあるものであると認められ、条例第7条第1号本文に該当すると判断される。次に、同号ただし書の該当性について検討する。ただし書イは、法令等の規定により公にされるものや、慣行として公にされるもの等については、同号本文に該当する個人情報であっても、公開することを定めたものである。
    審査会で調査したところ、「知事へのメール」制度は、意見文と知事からの回答文の公表の可否をあらかじめメール送信者に確認していること、及びメール送信者がこれに同意しない場合は県のホームページ等において公表しないこととしていることが確認でき、審査会で本件メールを見分したところ、当該メール送信者は非公開を希望する旨明記していることが確認できた。
    また、実施機関に確認したところ、「教育委員会に対する意見・要望」制度は、送信者に回答文を送付するのみで、意見文やその回答文の公表を予定している制度ではないとの説明があった。
    したがって、実施機関及び知事においては、制度上非公表として本件メール及び本件回答文を取り扱っていると認められるとともに、本件メールの内容のような個人の意見を広く一般に公表する慣行があるとは考えられず、よって、本件メール及び本件回答文は、ただし書イに該当しないと判断される。
    次に、ただし書ロは、人の生命、身体、健康、財産又は生活を保護するため、公にすることが必要であると認められる情報については、同号本文に該当する個人情報であっても、公開することを定めたものである。
    異議申立人は、本件メールには人権侵害に当たるおそれのある記載があるため、本件メールを公にし、法務局等によりそれが違法であるか否か判断してもらいたいこと等を主張しており、これは、当該ただし書ロの規定により公開すべき旨の主張とも理解できる。
    しかしながら、条例により公開するということは、本人その他関係者だけでなく不特定多数の者に本件メール及び本件回答文の内容を広く知らしめる結果となるのであり、本件メール及び本件回答文の内容から判断すると、かかる公開方法で本件メール及び本件回答文を公にすることは、異議申立人の主張とは逆に、本人等の権利利益を著しく害する結果につながると考えられる。
    よって、本件メール及び本件回答文については、ただし書ロに該当しないと判断される。
    また、ただし書ハ及び二については、審査会で本件メール及び本件回答文の内容を見分したが、これらの規定に該当する情報は記録されていないと認められる。
    以上のとおり、本件メール及び本件回答文については、条例第7条第1号本文に該当するとともに、ただし書には該当せず、非公開妥当と判断される。
  • (3)校長への照会文書及び異議申立人の主張する文書の不存在について
    校長への照会文書の不存在について、実施機関は、本件メールの内容についての事実確認等を当該学校長に口頭で指示し、その事実確認の結果及び校長として講じた措置についても口頭で報告を受けたと主張している。
    このような事務処理が不可能なものであるとはいえず、また、実施機関の当該主張を虚偽であると考えるべき特段の事情も見当たらないことから、実施機関の主張は、是認できる。
    また、異議申立人は、意見陳述において、本件回答文について知事がその内容を承諾したことが分かる文書の公開も求めているが、このことについて、実施機関に説明を求めたところ、本件回答文は、「教育委員会に対する意見・要望」として教育長が回答したものであり、知事の決裁は必要がないことから、かかる文書については不存在であるとの説明があり、当該説明は是認できる。

4 その他

異議申立人は、その他種々主張するが、いずれも当審査会の上記判断を左右するものではない。

よって、当審査会は、「第1 審査会の結論」のとおり判断する。

(省略)

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