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公開日:2019年12月27日

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平成19年3月27日 答申第433号(香川県情報公開審査会答申)

答申日:平成19年3月27日(答申第433号)

答申

第1 香川県情報公開審査会(以下「審査会」という。)の結論

「平成8年度から平成12年度までの港湾課の定期監査調書」(以下「本件行政文書」という。)について、香川県知事(以下「実施機関」という。)が一部公開決定(以下「本件処分」という。)により非公開とした部分のうち、次の部分については、公開すべきである。

  1. 「平成11年度定期監査調書」34ページの現年の「22 補償、補填及び賠償金」の金額が記載された部分及びその金額が分かる部分
  2. 「平成12年度定期監査調書」33ページの現年の「22 補償、補填及び賠償金」の金額が記載された部分及びその金額が分かる部分

第2 異議申立てに至る経過

1 行政文書の公開請求

異議申立人は、平成13年8月28日付けで、香川県情報公開条例(平成12年香川県条例第54号。以下「新条例」という。)第5条の規定により、香川県監査委員に対し、次の内容の行政文書の公開請求を行った。

  • (1)監査委員又は監査委員事務局において保有している高松港管理事務所の定期監査調書。但し、平成9年度以降に作成されたものに限る。
  • (2)監査委員又は監査委員事務局において保有している港湾課の定期監査調書。但し、平成9年度以降に作成されたものに限る。
  • (3)監査委員又は監査委員事務局において保有している高松港管理事務所の定期監査の講評その他の監査結果を記載した一切の文書。但し、平成9年度以降に作成されたものに限る。
  • (4)監査委員又は監査委員事務局において保有している港湾課の定期監査の講評その他の監査結果を記載した一切の文書。但し、平成9年度以降に作成されたものに限る。

2 実施機関の決定

  • (1)実施機関は、請求の(2)について、香川県監査委員から平成13年9月4日付けで事案の移送を受けた。
  • (2)実施機関は、公開請求のあった行政文書として本件行政文書を特定し、「職員番号及び休暇等の状況が記載された部分」が新条例第7条第1号又は香川県公文書公開条例(昭和61年香川県条例第30号。以下「旧条例」という。)第6条第1号に、「漁業補償金の歳出科目である「補償、補填及び賠償金」のうち、金額が記載された部分(これが分かる部分を含む。)」が新条例第7条第4号又は旧条例第6条第5号に、それぞれ該当するとして、平成13年9月10日付けで本件処分を行い、異議申立人に通知した。

3 異議申立て

異議申立人は、本件処分を不服として、平成13年10月7日付けで行政不服審査法(昭和37年法律第160号)第6条の規定により実施機関に対して異議申立てを行った。

第3 異議申立ての内容

1 異議申立ての趣旨

「本件処分を取り消すとの決定を求める」というものである。

2 異議申立ての理由

異議申立書において主張している理由は、おおむね次のとおりである。

  • (1)本件処分は、香川県の情報公開条例の解釈適用を誤ったものであり、全部公開をすべきである。
  • (2)本件「決定通知書」の「公開しない理由」の記載は、香川県の情報公開条例の非公開事由に該当しない。
  • (3)本件「決定通知書」の「公開しない理由」には、適法に処分理由が明示されていないので、香川県行政手続条例第8条に違反し本件処分は無効である。

第4 実施機関の説明の要旨

非公開理由等説明書による説明は、おおむね次のとおりである。

1 職員番号及び休暇等の状況が記載された部分について

新条例第7条第1号又は旧条例第6条第1号において、個人に関する情報であって、特定の個人が当該情報により、直接、間接的に識別される情報又は個人の権利利益を侵害することがあると認められる情報は、公開しないことができると規定されている。

したがって、職員番号及び休暇等の状況が記載された部分は、個人の権利利益を侵害するおそれがある情報であり、新条例第7条第1号又は旧条例第6条第1号に該当する。

2 漁業補償金の歳出科目である「補償、補填及び賠償金」のうち、金額が記載された部分(これが分かる部分を含む。)について

これは、漁業補償及び施設の移転補償等に係る金額であり、仮に公開されることになれば、漁業補償及び施設の移転補償等を行う港湾事業は少なく、各年度において補償を伴う事業はほとんど1事業であることから、事業ごとの補償金額が推測可能となる。「補償、補填及び賠償金」のうちの大部分を占める漁業補償については、事業ごとの補償金額が明らかになることにより、自己の補償金額から他の漁業協同組合(以下、「漁協」という。)の補償金額を推測し、無用の詮索や憶測を抱くおそれがある。

漁業補償交渉は、交渉の経緯及び結果を第三者に公開しないことを前提として、関係漁協ごとに個別に行うことを慣例としているため、補償内容が当該漁協関係者以外に明らかにされていない。また、漁業補償交渉については、関係漁協との信頼関係を維持することが必要不可欠であり、特に、高松港港湾区域においては、高松港○○地区直轄港湾整備事業など港湾計画に基づく重要な事業が残されており、今後とも反復継続して実施されることから、漁協との信頼関係は特に重要である。よって、公開することは信義則に反することとなり、これまで築き上げた県と関係漁協との間の信頼関係を損なうとともに、県に対する不信感を募らせることにもなる。

また、漁業補償以外の施設の移転補償等についても、事業ごとの補償金額が明らかになることにより、事業名等から容易に相手方が特定され、補償金額も明らかになることにより、将来の港湾事業に伴う移転補償等において、物件の類似性や規模等から自己の補償金額を誤って推測したり、無用の詮索や憶測を抱くことにより混乱を招き、相手側との信頼関係が損なわれ、いたずらに交渉が遅延したり、不成立に終わるおそれがある。

このことから、これを公開することにより、将来において行われる漁業補償等の適正な遂行に著しい支障を及ぼすおそれがあるので、新条例第7条第4号又は旧条例第6条第5号に該当する。

第5 審査会の判断理由

1 判断における基本的な考え方について

新条例は、その第1条にあるように、県民の行政文書の公開を求める権利を具体的に明らかにするとともに、行政文書の公開に関し必要な事項を定めることにより、県の保有する情報の一層の公開を図り、県政に関し県民に説明する責務が全うされるようにし、県政に対する県民の理解と信頼を深め、もって地方自治の本旨に即した県政の発展に寄与することを目的として制定されたものであり、審査に当たっては、これらの趣旨を十分に尊重し、関係条項を解釈し、判断するものである。

なお、新条例の施行日である平成12年10月1日前に作成し、又は取得した旧条例第2条第1項に規定する公文書に該当する行政文書であって平成18年4月1日前の公開請求の対象となったものについては、新条例附則第3項の規定により、旧条例第6条各号の解釈、運用が適正であったか否かにより非公開情報の該当性について判断するものである。

また、非公開情報の該当性の判断に当たっては、非公開理由のうちのいずれかに該当すると判断した情報については、他の非公開理由の該当性についての判断は行わないものである。

2 本件行政文書の内容等について

本件行政文書は、地方自治法第199条第4項の規定に基づく定期監査の監査調書である。

そのうち、「1.職員現況調」の「(2)職員調書」には、各職員の職・氏名、職員番号、出張日数、休暇等の状況(年次休暇、病気休暇、特別休暇、休職、その他(育児休業、職務専念義務免除等)が記載されており、漁業補償金の歳出科目である「補償、補填及び賠償金」のうち、金額が記載された部分については、漁業補償、施設の移転補償等に要した金額が記載されている。

3 非公開情報該当性について

  • (1)新条例第7条第1号又は旧条例第6条第1号の該当性について
    新条例第7条第1号は、個人の尊厳及び基本的人権の尊重の立場から、個人のプライバシーを最大限に保護するために定められたものであるが、プライバシーの具体的な内容が法的にも社会通念上も必ずしも明確ではなく、その内容や範囲は事項ごと、各個人によって異なり得ることから、本条例は、プライバシーであるか否か不明確な情報も含めて、特定の個人が識別され得る情報を包括的に非公開として保護することとした上で、さらに、個人を識別することはできないが、公にすることにより、なお個人の権利利益を害するおそれがあるものについても、非公開とすることを定めたものである。
    しかし、これらの個人に関する情報には、個人の権利利益を侵害しないと考えられ非公開とする必要のない情報及び公益上の必要があると認められる情報も含まれているので、これらの情報を本号ただし書きで規定し、公開することを定めたものと解される。また、旧条例第6条第1号も基本的な考え方は同様と考えられる。この基本的な考え方に基づき、実施機関が本号に該当するとして非公開とした部分について検討する。
    1. 職員番号が記載された部分について
      職員番号とは、職員として採用された際に実施機関が一人一人に対して付した個人識別符号であり、職員の健康診断書など職務外の文書又は用途においても個人を識別する目的で用いられており、審査会で調査したところ、実施機関は、職員番号を公にしていない。したがって、職員番号は、個人に関する情報であって特定の個人を識別することができるものであるので、新条例第7条第1号本文又は旧条例第6条第1号本文に該当し、いずれのただし書にも該当しないと判断される。
    2. 休暇等の状況が記載された部分について
      休暇等の状況が記載された部分については、既に氏名が公開されている職員の公務とは関係のない個人に関する情報であると認められるので、新条例第7条第1号本文又は旧条例第6条第1号本文に該当し、いずれのただし書にも該当しないと判断される。
  • (2)旧条例第6条第2号の該当性について
    旧条例第6条第2号は、法人等又は事業を営む個人の正当な利益を害することを防止する観点から、その事業活動の自由を保障し、公正な競争秩序を維持するため、公にすることにより当該法人等又は事業を営む個人の権利、競争上の地位その他正当な利益を害するおそれのある情報を非公開とすることとした上で、それらに該当する情報であっても、人の生命、健康、生活又は財産を保護するため、公にすることが必要であると認められる情報については、公開することを定めたものであると解される。この基本的な考え方に基づき、実施機関が非公開とした部分について検討する。
    1. 「10年度定期監査調書」34ページの現年の「22 補償、補填及び賠償金」の金額が記載された部分及びその金額が分かる部分について
      審査会で調査したところ、上記「補償、補填及び賠償金」は、株式会社への施設の移転に関する補償1件の金額である。この金額は、事業用資産の処分に関するものとして、当該法人の経理に関する内部管理情報であり、県の行う事業の状況から補償相手の法人は容易に推測されることから、これを公開すれば、当該法人の補償金額が明らかになり、当該法人の権利、競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがあると認められる。
      よって、諮問庁は明確に主張していないが、当該「補償、補填及び賠償金」の金額が記載された部分及びその金額が分かる部分は、旧条例第6条第2号本文に該当し、ただし書のいずれにも該当しないと判断される。
  • (3)新条例第7条第4号又は旧条例第6条第5号の該当性について
    新条例第7条第4号は、県の機関等が行う事務又は事業の目的達成又は適正な執行の確保の観点から、当該事務又は事業に関する情報の中で、当該事務又は事業の性質、目的等からみて、執行前あるいは執行過程で公開することにより、当該事務又は事業の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがある情報については、非公開とすることを定めたものであると解される。
    また、旧条例第6条第5号も基本的な考え方は同様と解される。この基本的な考え方に基づき、実施機関が本号に該当するとして非公開とした部分について検討する。
    実施機関の主張は、次のとおりである。「補償、補填及び賠償金」は、漁業補償及び施設の移転補償等に係る金額であり、当該補償を行う港湾事業は少なく、各年度においてほとんど1事業であるため、仮に公開されることになれば、事業ごとの補償金額が推測可能となる。そして、「補償、補填及び賠償金」の大部分を占める漁業補償の金額については、事業ごとの補償金額が明らかになることにより、漁協が自己の補償金額から他の漁協の補償金額を推測し、無用の詮索や憶測を抱くおそれがある。また、漁業補償は、その交渉の経緯及び結果を第三者に公開しないことを前提として、関係漁協ごとに個別に交渉を行うことを慣例としていたため、漁業補償の金額を公開することは信義則に反し、これまで築き上げた県と関係漁協との間の信頼関係を損ない、県に対する不信感を募らせ、今後の漁業補償の適正な遂行に著しい支障を及ぼすおそれがある。
    以上の実施機関の主張を考慮し、「補償、補填及び賠償金」の内容によって、本号の該当性について判断する。
    まず、「補償、補填及び賠償金」の金額が漁業補償のみの場合は、当該金額が漁業補償の金額であることが分かれば、当該金額を公開することにより、これまでに築き上げた県と漁協との間の信頼関係を損なうとともに、県に対する不信感を募らせ、今後の漁業補償交渉の遅延や非協力等を招くことが十分に予想される。
    また、「補償、補填及び賠償金」の金額が漁業補償のみでなく、施設の移転補償等との合計金額である場合も、当該金額に漁業補償が含まれていることが分かれば、当該金額を公開することにより、当該金額から漁業補償の積算根拠となる各種の基準や条件と関わりなく、物件の類似性や規模等から自己の補償金額を誤って推測したり、無用の詮索や憶測を抱くことにより混乱を招き、交渉の長期化や不調につながる可能性が生じるとの実施機関の主張も是認できる。
    補償を行う港湾事業は少なく、県の行う事業の状況から漁業補償があることは容易に推測されるので、漁業補償のみの場合はもとより、漁業補償の金額が含まれる「補償、補填及び賠償金」の金額が記載された部分及びその金額が分かる部分を公開すると、将来の補償事務の公正若しくは円滑な執行に著しい支障を及ぼすおそれがあるため、新条例第7条第4号又は旧条例第6条第5号に該当すると判断される。
    なお、実施機関は、県内の漁協と協議の上、平成17年4月以後の漁業補償交渉については、これまで関係漁協ごとに個別交渉してきた慣例を改め、交渉は関係漁協を代表する者で構成する交渉団体との一括交渉、契約は交渉団体代表者との一括契約を原則とするよう変更し、補償総額及び漁協名を公開する方針を決定した。しかし、平成17年3月以前に締結された契約については、第三者に明らかにしないことを前提とした信頼関係の上に締結された契約であり、当該部分を公開すると県と漁協との間の信頼関係を損ない、将来の補償交渉の公正若しくは円滑な執行に著しい支障を及ぼすおそれがあるため、上記の判断は、この方針によって影響されない。
    1. 「10年度定期監査調書」39ページの明許繰越の「22 補償、補填及び賠償金」の金額が記載された部分及びその金額が分かる部分について審査会で調査したところ、上記「補償、補填及び賠償金」の金額は、漁業補償のみの金額であるので、上記の理由により当該「補償、補填及び賠償金」の金額が記載された部分及びその金額が分かる部分は、旧条例第6条第5号に該当すると判断される。
    2. 「11年度定期監査調書」34ページの現年の「22 補償、補填及び賠償金」の金額が記載された部分及びその金額が分かる部分について審査会で調査したところ、上記「補償、補填及び賠償金」の金額は、複数の法人への施設の移転に関する補償金額の合計額であるので、これを公開しても、各法人の補償金額は明らかにならず、補償対象物である施設により補償金額は自ずと異なることから、将来の補償事務の公正若しくは円滑な執行に著しい支障を及ぼすおそれがあるとまでは認められない。よって、当該「補償、補填及び賠償金」の金額が記載された部分及びその金額が分かる部分は、旧条例第6条第5号に該当しないと判断される。
    3. 「11年度定期監査調書」39ページの明許繰越の「22 補償、補填及び賠償金」の金額が記載された部分及びその金額が分かる部分について審査会で調査したところ、上記「補償、補填及び賠償金」の金額は、施設の移転補償と漁業補償の合計額であるので、上記の理由により当該「補償、補填及び賠償金」の金額が記載された部分及びその金額が分かる部分は、旧条例第6条第5号に該当すると判断される。
    4. 「12年度定期監査調書」33ページの現年の「22 補償、補填及び賠償金」の金額が記載された部分及びその金額が分かる部分について
      審査会で調査したところ、上記「補償、補填及び賠償金」の金額は、地方公共団体への公共施設の移転に関する補償1件の金額であり、これを公開しても、将来の補償事務の公正若しくは円滑な執行に著しい支障を及ぼすおそれがあるとは認められない。
      よって、当該「補償、補填及び賠償金」の金額が記載された部分及びその金額が分かる部分は、新条例第7条第4号に該当しないと判断される。

4 第3の2異議申立ての理由のうち、(3)について

新条例及び旧条例の解釈、運用に関するものでないので、審査会では判断しないものとする。

よって、当審査会は、「第1 審査会の結論」のとおり判断する。

第6 審査会の審査経過

当審査会は、本件諮問事件について、次のとおり審査を行った。(省略)

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