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公開日:2019年12月27日

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平成19年10月17日 答申第446号(香川県情報公開審査会答申)

平成19年10月17日 答申第446号

答申

第1 香川県情報公開審査会(以下「審査会」という。)の結論

香川県教育委員会(以下「実施機関」という。)が行った非公開決定(以下「本件処分1」という。)及び一部公開決定(以下「本件処分2」という。)は、妥当である。

第2 異議申立てに至る経過

1 行政文書の公開請求

異議申立人は、平成18年4月5日付けで、香川県情報公開条例(平成12年香川県条例第54号。以下「条例」という。)第5条の規定により、実施機関に対し、次の内容の行政文書の公開請求を行った。

  • (1)県内の中学教員(部活顧問)が1995年、1999年に生徒に対してセクシャル・ハラスメント行為をしたとして被害生徒および保護者から訴えがあり、県議会で取り上げられた事件に関する一切の資料。
  • (2)県内公立学校教員によるセクシャル・ハラスメントがあったという指摘を受けた案件について、実施機関が取得、作成した一切の資料のうち、上記(1)以外のもの。

2 実施機関の決定

実施機関は公開請求のあった行政文書として、別表1に掲げる行政文書(以下それぞれの行政文書を「行政文書1」、「行政文書2」などと示す。)を特定し、行政文書1~3については公開決定を、行政文書4~6については別表2の「公開しない部分」が「公開しない理由」に該当するとして本件処分1を、行政文書7~10については別表3の「公開しない部分」が「公開しない理由」に該当するとして本件処分2を行い、平成18年5月30日付けで、異議申立人に通知した。

3 異議申立て

異議申立人は、本件処分1及び本件処分2を不服として、平成18年8月3日付けで、行政不服審査法(昭和37年法律第160号)第6条の規定により実施機関に対して異議申立てを行った。

第3 異議申立ての内容

1 異議申立ての趣旨

「本件処分1及び本件処分2を取り消すとの決定を求める」というものである。

2 異議申立ての理由

異議申立書において主張している理由は、おおむね次のとおりである。
実施機関は、条例第7条第1号、同条第4号の非公開事由に該当するとして完全に非公開としているが、これらは条例の非公開事由の拡大解釈である。
百歩譲って、条例第7条第1号又は同条第4号に該当する情報が含まれているとしても、その部分だけを非公開とすればよいのであり、そのような情報が含まれていることを理由として、当該文書全文を非公開とすることは、これらの条項を不当に拡大解釈するものである。
なお、一部公開決定処分をされた文書の中でも、行政文書7、8及び10の県立学校教職員の懲戒処分等についての3件の調査報告書は文書自体が完全非公開であるので、一部公開決定通知書ではなく、非公開決定通知書の中に含めるべきものであり、事務手続き上も不適切である。
昨年の元・中学校教員による強制わいせつ事件が示すように、問題が指摘されたときに学校や教育委員会の調査や対応が不適切であったことが事件を繰り返させ、さらなる被害者を生むことにつながっている。
今回、非公開となった文書は、何か問題が指摘されたときに実施機関の調査が適切に行われているかどうかを示すものであり、仮に条例第7条第1号、同条第4号に該当する部分が一部含まれているとしても、その部分のみを厳密に区分した上で、いつ、どのような調査が行われたのか、あるいは、行われなかったのか、などを示す文書自体は公開されるべきものである。
もし、今回の決定のように、これらの文書が完全に非公開とされると、県民は実施機関がきちんと調査をしているのかどうかさえ判断することができない。
なお、行政文書9のような安易な黒塗り非公開も、条例の非公開事由を厳密に適用しているとは言えず、極めて不適切である。

3 意見書による主張

意見書による主張は、おおむね次のとおりである。
平成17年10月に生徒に対する強制わいせつ事件を起こした元・中学教員は前任校でも問題を起こしていたことがわかった。この事件においては、問題が指摘されたときに、学校や教育委員会がどのように調査し、どのように対応をしたのかが、大きな問題となった。指摘事項や調査結果の記録をきちんと残し、後で検証できるようにすることが大変重要だということが改めて明らかになったのである。
実施機関は、「学校でのセクハラ・体罰110番」に寄せられた情報について2000年末から2001年初めにかけて調査をしたはずであるが、今回の公開請求に対して特定された文書の中には、県内中学教員によって繰り返された2件のセクハラ事件以外、調査結果の記録はなく、他の指摘事項などについては、実施機関が文書での記録を残していないことがわかった。
こうした問題が繰り返されている現状を考えると、教員の体罰やセクハラなどの訴えがあった場合、きちんと調査し、その結果を記録しておくことによって、問題が繰り返されることを防いだり、実施機関の対応について検証できるようにしておくことの重要性はますます高まっている。
そして、県民の情報公開の請求に対しても、実施機関の対応について説明責任を果たせるような公開がなされるべきである。
また、実施機関の非公開理由等説明書は、非公開や一部公開の根拠として、平成15年に出された審査会答申第229号、第245号、第256号などをあげている。
これらの審査会の判断に対しては、条例の拡大解釈であると反論しておきたいが、仮に、平成15年当時はこうした答申が妥当だったとしても、平成17年10月に教員によって繰り返された強制わいせつ事件が発覚し、教育行政の当時の対応や調査、情報共有のあり方などが大きな問題とされた後は、実施機関が説明責任を果たすための公開の範囲について再考されてしかるべきだと考える。
被害生徒のプライバシーなどを口実に安易に全面非公開とすることは、条例第1条に掲げられた条例の目的に反する。
条例第7条を厳密に運用した上での非公開部分はあるにしても、実施機関が一体どのような調査をしたのか、その調査の内容が適切なものであったのかどうかを検証するためには、少なくとも、条例第8条第1項により、最小限の非公開情報を除いた部分を公開すべきである。

4 意見陳述による主張

意見陳述による主張は、おおむね次のとおりである。
一昨年強制わいせつ事件を起こした先生がいたが、その先生は以前にも問題が起きていたのに、うやむやにしており、その情報は全く共有されていなかった。ここにやはり問題の根っこがあると思う。そこで、実施機関がどういう対応をしたのか、どういう調査をしたのかということをきちんと検証する必要があると思い、今回情報公開請求をしたのである。こうした問題があったときに、責任を問われる側が調査・対応をすると、どうしてもうやむやにしてしまう。
大きく3点ほど異議申立書及び意見書を補足しながら説明すると、まず一点目は、懲戒処分等に関する調査報告書というものが3件とも完全非公開になっているのに、一部公開決定の中に含まれていることについてである。要は懲戒処分に関する一連の書類の中の調査報告書という位置づけなのかもしれないが、このような場合、一部公開決定の中に入れるのはおかしい。非公開決定の中に調査報告書を入れておくべきものではないのか。なにか紛れこませているような感じがした。
次に、二点目は、条例第8条の運用についてである。
例えば、先ほど述べた懲戒処分に関する調査報告書について、もちろんその中には被害生徒のプライバシーに関わることなど公開できない部分はある。しかし、それを除いた残りの情報というのは有意の情報だと思う。どういう調査をしたのかということが、やはりきちんと残ることが重要であり、簡単に非公開としてしまうことはおかしい。
こういう調査をしたときに、当事者にいつ聞いているのか、どの時点で聞いているのか、どういうことを聞いているのかということがわからないと、実施機関の対応を検証する資料にはならないのである。個人情報の部分が多く黒塗りになるとしても、もう少し情報がわかるものでないと、これでは条例第8条の運用誤りである。
そして、三点目は、実施機関が、非公開理由等説明書の中で、過去の審査会答申を引用していることについてである。審査会の答申というのはその時点では一つの結論として引用できるとしても、状況が変わると当然判断も変わるべきではないのか。教員による強制わいせつ事件が発覚して、結局、以前問題があったときにきちんと事故報告されていなかったことがわかったのだから、教員は基本的にそのようなことをするはずがなく、ここまで公にする必要はないという考えに基づき判断されていたものは変わるべきで、当然、実施機関としては、その後もっと説明責任を果たすべきである。したがって、過去の審査会答申は必ずしも絶対的な判断材料にはならない。
処分されるとそれは記録として残るが、そうでなければ残らないのではなく、問題があったときには、きちんと報告して、情報を共有すべきであり、そうすることが、どうやったら繰り返さずにすむのかということを考える上でとても重要なことなのである。また、きちんと記録が残れば、責任の所在を明らかにすることができるのだから、問題のある先生がいた場合にそれをうやむやにすれば、調査した者や対応した者も当然責任を問われるということで、いいかげんなことはできなくなっていくと思う。
非公開にして守らなければいけない部分もあるが、往々にして、被害生徒のプライバシーといいながら、守っているのは学校の都合であったり、教育委員会の責任を問われたくないという体質なのである。やはり、こういうところから正していかなければ、生徒の被害というものは続いてしまうと思う。

第4 実施機関の説明の要旨

非公開理由等説明書及び意見陳述による説明は、おおむね次のとおりである。

1 本件行政文書の内容について

  • (1)行政文書4について
    特定個人から香川県教育委員会教育委員長及び教育長あてに提出された要望書であり、(a)「学校でのセクハラ・体罰110番に寄せられた情報について調査および問題解決を求める要望書(12月28日付)」、(b)「県内公立学校でのセクシュアル・ハラスメント事件への対応に対する抗議文と要望書(3月27日付)」、(c)「香川県内公立中学校部活動顧問によるセクシュアル・ハラスメント事件に関する要望書(6月8日付)」の3件である。いずれも、年月日、提出先、要望者の氏名、所属団体名、要望書の標題及び当該事件に関する具体的な抗議・質問・要望等が記載されており、上記(b)には、当該事件の被害生徒及びその保護者からの報告文書が添付されている。
  • (2)行政文書5について
    該当事務所等、セクハラ・体罰110番情報の概要、調査内容・方法等、調査結果等について確認できたこと等及び関係市町教育委員会の判断等が記載されている。
  • (3)行政文書6について
    刑事事件の処分等の照会について、関係検察庁から教育長あての回答書で、罪名、処分、処分庁、係属裁判所名、公訴事実の要旨等が記載されている。
  • (4)行政文書7~10について
    教職員に対する分限懲戒処分又は服務監督上の措置を行うにあたっての、調査の内容及び検討事項等が記載されたものであり、処分等の検討、決定及び報道発表等に用いたものである。各事案ごとに差異はあるが、次の文章等で構成されている。
    • (a)行政文書7の(a)、8の(a)、9の(a)、10の(a)、10の(c)及び10の(k)について
      • ア 起案文書の表紙、起案理由
      • イ 処分等の内容が記載された辞令書案(服務上の措置として対象者に交付する文書を含む。)
      • ウ 処分理由が記載された処分説明書案
      • エ 調査報告書
      • オ 教育長から関係教育事務所、関係教育委員会及び関係学校長あての処分通知案
      • カ 教育長から香川県人事委員会委員長あての通知案
      • キ 関係教育事務所長から教育長あての県費負担教職員の処分についての進達書
      • ク 関係教育委員会から教育長への内申書
    • (b) 行政文書7の(b)、8の(b)及び10の(b)について
      教育委員会会議録
    • (c) 行政文書7の(c)、7の(d)、8の(d)、8の(e)、10の(g)及び10の(h)について
      • ア 記者発表用資料
      • イ ホームページ掲載用資料
    • (d) 行政文書7の(e)、8の(f)、10の(i)及び10の(j)について
      • ア 解雇予告除外申請の起案文書の表紙、起案理由
      • イ 教育長から関係市長あての解雇予告除外認定申請書案
      • ウ 義務教育課長から関係教育事務所長あての通知案
      • エ 関係教育事務所長から実施機関あての解雇予告除外認定申請の進達書
      • オ 香川県人事委員会委員長、関係市長から実施機関あての解雇予告除外認定書
    • (e) 行政文書8の(c)及び10の(d)~(f)について
      • ア 学校事故報告書
      • イ 関係教育事務所長から教育長あての学校事故報告書の進達書
      • ウ 関係教育委員会から教育長あての学校事故報告書の副申書
    • (f) 行政文書9の(b)について
      高校教育課において調査の経過や内容を整理した資料
    • (g) 行政文書9の(c)について
      聞き取り調査結果や特定個人が高校教育課に持参した資料の内容をまとめた資料
    • (h) 行政文書9の(d)について
      関係者への聞き取り調査結果の報告書
    • (i) 行政文書9の(e)について
      特定団体から香川県教育委員会教育長あてに提出された要望書
    • (j) 行政文書10の(l)について
      • ア 起訴事実要旨照会に係る起案文書の表紙、起案理由
      • イ 教育長から関係検察庁あての起訴事実要旨照会書案

2 非公開又は一部公開の該当性について

  • (1)行政文書4について
    これらの文書には、県内中学校部活顧問による2件のセクシュアル・ハラスメント事件に関係する者の所属、氏名等の個人情報が記載されており、条例第7条第1号に規定するところの、特定の個人を識別することができる情報であることは明白であり、ただし書にも該当しない。また、個人識別性のある部分を除いても、個人の人格と密接に関連する情報や個人の権利利益を害するおそれのある情報が不可分一体として記載されているものであり、加害者とされる教員の特定が結果として被害者の特定につながることは明白である。
    また、関係者しか知り得ない当該事件に関する詳細な情報及び教職員の人事管理に関する情報等が記載されており、公開することにより関係者との信頼関係が損なわれ、今後の学校教育活動や地方教育行政の運営に支障をきたすおそれを生じることから、公にすることにより、公正かつ円滑な人事の確保に支障を及ぼすおそれのある情報であることは明白である。
    以上のことから、当該文書は非公開に該当するものである。
    なお、当該文書については、過去に審査会において審査され、審査会答申第229号(平成15年7月10日)により、条例第7条第1号に該当するとされているものである。
  • (2)行政文書5について
    当該文書については、行政文書4の要望書に基づき調査されたものであることから、同事件に関わる者の所属、氏名等の個人識別情報が記載されている。加えて、事件当事者やその家族の主張、行動等が全体にわたって記載されていることから、これらを公開することは事件関係者の権利利益を害するおそれがある。
    また、事件当事者やその家族の主義・主張、行動等が全体にわたって事件関係者の権利利益に関わる情報が記載されており、これらを公開することは事件関係者の権利利益を害するおそれがあり、条例第8条第2項による一部公開はすることはできない。
    以上のことから、当該文書は非公開に該当するものである。
    なお、当該文書については、過去に審査会において審査され、審査会答申第229号(平成15年7月10日)により、条例第7条第1号に該当すること及び第8条第2項による一部公開はできないと判断されているものである。
  • (3)行政文書6について
    当該文書は、刑事事件の処分等の照会に対する回答の文書であり、関係検察庁から教育長あてに、罪名、処分、処分庁、係属裁判所名、公訴事実の要旨等が記載されている。
    刑事訴訟法第53条の2に規定する「訴訟に関する書類」は、種類及び保管者を問わないと解されており、広く被疑事件や被告事件に関して作成された書類のすべてがこれに該当すると解されている。また、裁判官又は裁判所の保管する書類に限らず、検察官、司法警察職員、弁護人等の保管している書類も含むと解されており、この「弁護人等」には実施機関も含むものと解されている。
    したがって、以上のことから、当該文書は、刑事訴訟法第53条の2の「訴訟に関する書類」に該当し、条例第28条第1項により条例の適用除外となるものである。
    以上のことから、当該文書は非公開に該当するものである。
  • (4)行政文書7の(a)、8の(a)、9の(a)、10の(a)、10の(c)及び10(k)について
    • (a)行政文書7の(a)、8の(a)及び10の(a)のうち、調査報告書について
      教職員について、服務義務違反やその他の法令等の非違行為の疑いがある場合又は公務能率維持向上のため、必要がある場合には、その任命権に基づき、必要な調査、情報の収集、事実関係の把握を行い、地方公務員法に基づく懲戒処分若しくは分限処分又は服務監督権に基づく措置を行う必要性を検討し、県費負担教職員に対しては、市町教育委員会の内申をまって、決定する事務を行っている。
      調査報告書には、関係者から事情聴取した事件の概要、経緯、関係機関への照会に対する回答、懲戒処分等を行うに当たっての検討事項など具体的な状況が記載されている。
      実施機関においては、事件が発生した場合、事件の当事者である本人のほか、上司、同僚等の関係者に対する事情聴取を行うとともに、関係機関に照会を行い、必要に応じて関係資料の提出を求め、調査、分析を行っているが、これらの事情聴取等は、実施機関に強制捜査権限がないことから、他に公表しないことを前提に任意に行われているものである。
      したがって、調査報告書が公開されることにより、関係当事者間の協力関係、信頼関係を損ない、調査に支障をきたし、公正かつ円滑な人事の確保に支障を及ぼすおそれがあると判断できる。
      また、処分等を行うに当たっての考え方及び身分取扱いの具体的な状況等については、懲戒処分等を公正に行うため、秘密を前提に記載されるのが通常であることから、一般に知られることにより、的確な記載がされず、公正かつ円滑な人事の確保に支障を及ぼすおそれがあると判断できる。
      以上のことから、調査報告書は非公開に該当するものである。
      なお、調査報告書については、審査会答申第245号(平成15年9月30日)により、条例第7条第4号に該当すると判断されているものである。
    • (b)上記(a)以外の行政文書について
      これらの文書には、教員及び関係者に係る所属名、職名、氏名、年齢、性別、処分内容、関係教育委員会名、関係教育事務所名、関係教育委員会の公印の印影等が記載されており、これらは、条例第7条第1号に規定するところの、特定の個人を識別することができる情報又は特定の個人を識別することはできないが、公にすることにより、なお個人の権利利益を害するおそれがある情報であり、ただし書にも該当しない
      以上のことから、当該文書は非公開情報が記載されたものであり、一部公開に該当するものである。
  • (5)行政文書7の(b)、8の(b)及び10(b)について
    これらの文書は香川県教育委員会定例会の会議録であり、教員及び関係者に係る職名、氏名、年齢、関係する年月日、住所等の情報が記載されており、これらは、条例第7条第1号に規定するところの、特定の個人を識別することができる情報又は特定の個人を識別することはできないが、公にすることにより、なお個人の権利利益を害するおそれがある情報であり、ただし書にも該当しない。
    また、発言した委員がわかる部分については、公にすることにより、発言者が特定されることから、率直な意見の交換が損なわれるおそれがあり、懲戒処分等の人事に係る事務に関し、公正かつ円滑な審議の確保に支障を及ぼすおそれがあることから条例第7条第4号に該当すると判断される。
    以上のことから、当該文書は非公開情報が記載されたものであり、一部公開に該当するものである。
    なお、教育委員会会議録については、過去に審査会において審査され、審査会答申第256号(平成15年12月22日)により、条例第7条第1号に該当すると判断されているものである。
  • (6)行政文書7の(c)、7の(d)、8の(d)、8の(e)、10の(g)及び10の(h)について
    これらの文書は、教職員の懲戒処分に関してマスコミに発表した資料及びホームページ掲載用資料であり、処分を受けた職員の所属、職名、氏名、年齢、性別、発令内容等の情報が記載されている。これらの情報は、条例第7条第1号に規定するところの、特定の個人を識別することができる情報又は特定の個人を識別することはできないが、公にすることにより、なお個人の権利利益を害するおそれがある情報であり、ただし書にも該当しない。
    マスコミについては、報道の正確性を期するため、事故の概要など個人情報も含めた情報提供を行っているところであるが、当該文書をマスコミに提供する際には、事故を起こした者や被害者が特定されないよう配慮を依頼しており、事案により、所属、氏名等が伏せられて報道されていることから、当該文書のすべてが公開決定されるべきではない。
    また、事件の内容がセンシティブな内容に関するものであり、その取扱いは十分慎重に行われるべきであり、氏名等を公開することにより、当該事件関係者、とりわけ被害者の権利利益を害するおそれがあるので非公開としたところである。
    以上のことから、当該文書は、非公開情報が記載されたものであり、一部公開に該当するものである。
    なお、マスコミ発表資料については、過去に審査会において審査され、審査会答申第256号(平成15年12月22日)により、条例第7条第1号に該当し、いずれのただし書にも該当しないと判断されているものである。
  • (7)行政文書7の(e)、8の(f)、10の(i)及び10の(j)について
    これらの文書は、教職員の懲戒処分に係る解雇予告除外申請書であり、被処分者及び関係者に係る所属、所属先の所在地、職名、性別、雇入年月日、処分等の対象となった事件の発生及びその後の経過に係る年月日・日時・場所、学校名、関係市町名、関係教育事務所名、関係市町の公印の印影等の情報が記載されており、これらの情報は条例第7条第1号に規定するところの、特定の個人を識別することができる情報又は特定の個人を識別することはできないが、公にすることにより、なお個人の権利利益を害するおそれがある情報であり、ただし書にも該当しない。
    以上のことから、当該文書は非公開情報が記載されたものであり、一部公開に該当するものである。
  • (8)行政文書8の(c)及び10の(d)~(f)について
    これらの文書は、学校長や関係市町教育委員会教育長から提出された学校事故報告書であり、教員及び関係者の所属、職名、氏名、年齢、性別、住所、事故発生及びその後の経過に係る日付・時間・場所・学校名、市町名、市町教育委員会名等が記載されており、これらの情報は条例第7条第1号に規定するところの特定の個人を識別することができる情報又は特定の個人を識別することはできないが、公にすることにより、なお個人の権利利益を害するおそれがある情報であり、ただし書にも該当しない。
    さらに、当該文書には関係者しか知り得ない当該事故に関する詳細な情報及び教職員の人事管理に関する情報等が記載されており、公開することにより関係者との信頼関係が損なわれ、今後の学校教育活動に支障をきたすおそれを生じることから、条例第7条第4号に規定するところの、公正かつ円滑な人事の確保に支障を及ぼすおそれのある情報であることは明白である。
    以上のことから、当該文書は非公開情報が記載されたものであり、一部公開に該当するものである。
    なお、学校事故報告書については、過去に審査会において審査され、審査会答申第226号(平成15年7月10日)と審査会答申第227号(平成15年7月10日)により、条例第7条第4号に該当すると判断されているものである。
  • (9)行政文書9の(b)~(d)について
    これらの文書は、当該事案に関して調査した結果を整理し、まとめた行政文書であることから、関係者の所属、氏名等の個人識別情報が記載されている。加えて、関係者から事情聴取した当該事案の経緯、関係者の主張など具体的な状況が記載されている。これらの情報は条例第7条第1号に規定するところの特定の個人を識別することができる情報又は特定の個人を識別することはできないが、公にすることにより、なお個人の権利利益を害するおそれがある情報であり、ただし書にも該当しない。
    以上のことから、当該文書は非公開情報が記載されたものであり、一部公開に該当するものである。
  • (10)行政文書9の(e)について
    当該文書には、教員及び関係者に係る職名、氏名、年齢、関係する年月日、住所等の情報が記載されており、これらの情報は条例第7条第1号に規定するところの、特定の個人を識別することができる情報又は特定の個人を識別することはできないが、公にすることにより、なお個人の権利利益を害するおそれがある情報であり、ただし書にも該当しない。
    以上のことから、当該文書は非公開情報が記載されたものであり、一部公開に該当するものである。
  • (11)行政文書10の(l)について
    当該文書は、公訴の提起があった場合の公訴事実等を検察庁に照会する文書であり、教員の氏名、職名、住所、生年月日等の情報が記載されており、これらの情報は条例第7条第1号に規定するところの特定の個人を識別することができる情報又は特定の個人を識別することはできないが、公にすることにより、なお個人の権利利益を害するおそれがある情報であり、ただし書にも該当しない。
    以上のことから、当該文書は非公開情報が記載されたものであり、一部公開に該当するものである。

3 その他

異議申立人は、異議申立書において、今回非公開となった文書は、なにか問題が指摘されたときに実施機関の調査が適切に行われているかどうかを示すものであり、いつどのような調査が行われたのか、あるいは行われなかったのかなどを示す文書自体は公開されるべきものであると主張しているが、この異議申立人の主張は、本件行政文書の非公開情報該当性の議論とはなんら関係のないものであり、非公開理由に該当しないという主張になっておらず、理由のないものである。
今回、異議申立人がいう非公開となった文書がなにを示しているのかは定かではないが、調査報告書を示しているのであれば、前述のとおり、条例に基づいて非公開としているところであり、もし仮に、一部公開をしたとしても、調査報告書は懲戒処分若しくは分限処分を行うに当たって、最低限必要な情報が記載されていれば十分であって、この文書によって、実施機関の調査が適切に行われているか、調査が十分であるかを判断することは不可能である。
また、異議申立人がいう非公開となった文書が、行政文書5を示しているとすれば、上記で説明したように、個人の事件関係者の権利利益を害するおそれがある情報であり、条例第8条第2項による一部公開はできないものである。
さらに、異議申立人は、意見書において、平成17年10月に生徒に対する強制わいせつ事件を起こした教員等の事案を取り上げて、実施機関の調査のあり方や調査結果の記録等について指摘しているが、異議申立人の主張は、再発防止のために実施機関がどのようにやっていくべきか、そのためにはそのような文書を作って、どのように役立てていくべきかという議論であって、本件行政文書の非公開情報該当性の議論とはなんら関係のないものである。

第5 審査会の判断理由

1 判断における基本的な考え方について

条例は、その第1条にあるように、県民の行政文書の公開を求める権利を具体的に明らかにするとともに、行政文書の公開に関し必要な事項を定めることにより、県の保有する情報の一層の公開を図り、県政に関し県民に説明する責務が全うされるようにし、県政に対する県民の理解と信頼を深め、もって地方自治の本旨に即した県政の発展に寄与することを目的として制定されたものであり、審査に当たっては、これらの趣旨を十分に尊重し、関係条項を解釈し、判断するものである。
なお、非公開情報の該当性の判断に当たっては、実施機関が主張する非公開理由のうちのいずれかに該当すると判断した情報については、他の非公開理由の該当性についての判断は行わないものである。

2 本件行政文書の内容等について

  • (1)行政文書4及び5について
    当該文書は、平成13年6月香川県議会定例会において、特定議員が一般質問で取り上げた当該事件に関し、個人から提出のあった要望書と、それに対して実施機関が関係市町教育委員会から聞き取り調査を行った結果であり、その内容は次のとおりである。
    • (a)行政文書4について
      特定個人から香川県教育委員会教育委員長及び教育長あてに提出された3件の要望書であり、いずれも年月日、要望者の氏名、所属団体名、要望書の標題及び当該事件に関する具体的な抗議・質問・要望等が記載されてる。そのうちの1件については、生徒及びその保護者からの報告文書が添付されてる。
    • (b)行政文書5について
      該当教育事務所等、セクハラ・体罰110番情報の概要、調査内容・方法等、調査結果等について確認できたこと等及び関係市町教育委員会の判断等が記載されてる。
  • (2)行政文書6について
    実施機関は、行政文書10の処分等を検討するに当たり、行政文書10の(l)で公訴提起の有無及び公訴提起があった場合の公訴事実等を関係検察庁に照会しており、当該文書はそれに対する関係検察庁からの回答文書である。
  • (3)行政文書7~10について
    実施機関は、当該事務局及び学校その他の教育機関の職員並びに県費負担教職員について、服務義務違反やその他の法令違反等の非違行為の疑いがある場合又は公務能率の維持向上のため必要がある場合には、その任命権に基づき、必要な調査、情報の収集、事実関係の把握を行い、当該事務局及び学校その他の教育機関の職員に対しては、地方公務員法(昭和25年法律第261号)に基づく懲戒処分若しくは分限処分又は服務監督権に基づく措置(以下「処分等」という。)を行う必要性を検討し、県費負担教職員に対しては、市町教育委員会の内申をまって、同法に基づく懲戒処分又は分限処分を行う必要性を検討し、その措置の内容をそれぞれ決定する事務を行っている。
    行政文書7~10には、当該教職員に対する処分等を行うにあたっての調査内容及び検討事項等が記載されており、当該処分等の決定に用いられたものである。
    なお、行政文書8,9及び10の懲戒処分は、香川県教育職員等分限懲戒審査委員会でその懲戒処分案を審査し、その審査結果に基づき教育委員会に付議の上、当該処分等を行うこと及び当該処分等の内容を決定している。
    これら文書の個別の内容については、実施機関の説明のとおりである。

3 非公開情報該当性について

条例第7条第1号は、個人の尊厳及び基本的人権の尊重の立場から、個人のプライバシーを最大限に保護するために定められたものであるが、プライバシーの具体的な内容が法的にも社会通念上も必ずしも明確ではなく、その内容や範囲は事項ごと、各個人によって異なり得ることから、本条例は、プライバシーであるか否か不明確な情報も含めて、特定の個人が識別され得る情報を包括的に非公開として保護することとした上で、さらに、個人を識別することはできないが、公にすることにより、なお個人の権利利益を害するおそれがあるものについても、非公開とすることを定めたものである。
しかし、これらの個人に関する情報には、個人の権利利益を侵害しないと考えられ非公開とする必要のない情報及び公益上の必要があると認められる情報も含まれているので、これらの情報を本号ただし書きで規定し、公開することを定めたものと解される。
条例第7条第4号は、県の機関等が行う事務又は事業の目的達成又は適正な執行の確保の観点から、当該事務又は事業に関する情報の中で、当該事務又は事業の性質、目的等からみて、執行前あるいは執行過程で公開することにより、当該事務又は事業の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがある情報については、非公開とすることを定めたものであると解される。
この基本的な考え方に基づき、実施機関が非公開とした部分について検討する。

  • (1)本件処分1について
    • (a)行政文書4について
      本件要望書の内容は、提出者自身の問題を訴えたのではなく、提出者個人が当該事件に関して収集した情報をまとめた上で必要な措置等を要望しているものであり、全体として当該事件に関する者の所属、氏名等の個人識別情報が記載されている。
      そして、一般的に要望書は希望の表明として個人の考え方が自由に記載されたものであると考えられ、本件要望書についても、提出者個人の疑問、要望、抗議等の率直な意見が記載されており、本条例により広く一般に公開することは、提出者の権利利益を著しく害するおそれがあると考えられる。
      よって、当該文書は、全体として個人に関する情報で特定の個人を識別し得るものであり、また、公にすることにより個人の権利利益を害するおそれがあると認められ、条例第7条第1号本文に該当し、ただし書に該当しないと判断される。
    • (b)行政文書5について
      当該文書については、行政文書4に基づいて調査されたものであることから、同事件に関わる者の所属、氏名等の個人情報が記載されている。加えて、事件当事者やその家族の主義主張、行動等が全体にわたって記載されていることから、これらを公開することは事件関係者の権利利益を害するおそれがあることは否めない。
      よって、当該文書は、個人に関する情報であって特定の個人を識別し得るものであり、また、公にすることにより個人の権利利益を害するおそれがあるものと認められ、条例第7条第1号本文に該当すると判断される。
      また、異議申立人は、このような問題があったときに実施機関がどのような調査・対応をしているか、調査関係書類を公にし、適切に行われているか検証されることが事件の再発防止につながる等主張しており、これは、同号ただし書ロの規定により公開すべき旨の主張とも理解できる。
      しかしながら、同条例により公開するということは、不特定多数の者に当該文書の内容を広く知らしめる結果となるのであり、当該文書がセクシャル・ハラスメントというセンシティブな内容であることから判断すると、かかる公開方法で当該文書を公にすることは、当該事件関係者等の権利利益を著しく害するおそれがあると考えられる。よって、当該文書については、ただし書ロに該当しないと判断される。
      また、ただし書イ、ハ及びニについては、審査会で当該文書の内容を見分したが、これらの規定に該当する情報は記録されていないと認められる。
      以上のとおり、当該文書は、条例第7条第1号本文に該当し、ただし書に該当しないと判断される。
      次に、一部公開の可否について検討する。
      条例第8条第2項は、公開請求に係る行政文書に条例第7第1号の情報が含まれている場合において、個人を識別することができる記述等を除くことにより、公にしても個人の権利利益を害するおそれがないと認められるときには、当該部分を除いて公開する旨規定している。
      そして、異議申立人は、条例第7条第1号、同条第4号に該当する部分が一部含まれているとしても、その部分のみを厳密に区分した上で、いつ、どのような調査が行われたのか、あるいは、行われなかったのかを示す文書自体は公開されるべき等主張しているが、上記で検討したとおり、本件調査結果には、全体にわたって事件関係者の権利利益に関わる情報が記載され、個人識別性のある部分を除いたとしても、公にすることにより、なお個人の権利利益を害するおそれがあると認められる。
      よって、当該文書は、条例第8条第2項の規定による一部公開はできないものと判断される。
    • (c)行政文書6について
      条例第28条第1項では、「この条例の規定は、法律の規定により、情報公開法の規定が適用されないこととされたものについては、適用しない」と定めており、刑事訴訟法第53条の2では、「訴訟に関する書類及び押収物については、情報公開法の規定は、適用しない」と定められているが、「訴訟に関する書類」を情報公開法の適用から除外した趣旨は、「総務省行政管理局編・詳解情報公開法」によれば、次のとおりである。
      • ア 訴訟に関する書類及び押収物については、刑事司法手続の一環である捜査・公判の過程において作成・取得されたものであるが、捜査・公判に関する国の活動の適正確保は、司法機関である裁判所により図られるべきであること。
      • イ 刑事訴訟法第47条により、公判開廷前における訴訟に関する書類の公開を原則として禁止する一方、被告事件終結後においては、同法53条及び刑事確定訴訟記録法により一定の場合を除いて何人にも訴訟記録の閲覧を認め、その閲覧を拒否された場合の不服申立てにつき準抗告の手続によることとされるなど、これらの書類は、刑事訴訟法(第40条、第47条、第53条、第299条等)及び刑事確定訴訟記録法により、その取扱い、開示・非開示の要件、開示手続等が自己完結的に定められていること。
      • ウ これらの書類及び押収物は類型的に秘密性が高く、その大部分が個人に関する情報であるとともに、開示により犯罪捜査、公訴の維持その他の公共の安全と秩序の維持に支障を及ぼすおそれが大きいものであること。
        すなわち、「訴訟に関する書類」については、これらの書類が類型的に秘密性が高く、開示により犯罪捜査や公訴の維持等に支障を及ぼすおそれが大きいものであることや、刑事訴訟手続の特殊性等を総合考慮した結果、これらの書類の取扱いは刑事訴訟手続にゆだねることとされ、情報公開法の規定の適用が除外されたものと考えられる。
        また、刑事訴訟法第53条の2の「訴訟に関する書類」は、被疑事件又は被告事件に関して作成された書類をいい、裁判所又は裁判官の保管している書類に限らず、検察官・司法警察員・弁護人等の保管しているものを含むと解されており、この解釈から判断すれば、実施機関において保有している場合も含まれると考えられる。
        この基本的な考え方に基づき、以下、当該文書が刑事訴訟法第53条の2の「訴訟に関する書類」に該当するかについて検討する。
        実施機関は、当該懲戒処分及び分限処分を検討するにあたって公訴事実等の情報提供を関係検察庁に求めており、当該文書は、それに対する関係検察庁からの回答文書である。
        審査会で見分したところ、当該文書には、事件の処分等が記載されており、これは関係検察庁が当該事件の処分を行うにつき作成した文書にある情報と認められる。
        つまり、当該文書は、関係検察庁が当該事件の処分を行うにつき作成した文書の内容に基づき、関係検察庁自らが当該回答をするためにまとめ作成したものであることから、当該文書には、訴訟に関する書類と同一の内容が記載されていると考えられる。
        そして、訴訟に関する書類は、刑事訴訟法及び刑事確定訴訟記録法により開示手続等が自己完結的に定められていること等から、情報公開法の適用除外とした趣旨から判断すると、当該文書は、訴訟に関する書類に該当すると認められ、条例第28条第1項を適用したことは妥当であると判断される。
  • (2)本件処分2について
    • (a)別表3の公開しない部分のうち、1について
      これらの調査報告書には、各事案ごとに記載内容の違いはあるものの、処分当事者の経歴、実施機関が関係者から事情聴取した事件の概要、経緯、関係機関への照会に対する回答、懲戒処分等を行うに当たっての検討事項など具体的な状況が記載されている。
      審査会で調査したところ、実施機関は、事件が発生した場合、事件の当事者である本人のほか、上司等の関係者から事情を聴取するとともに、必要に応じて参考となる資料等の提出を求め、関係資料の調査、分析を行っており、このような調査は、実施機関に強制捜査権限がないことから、他に公表しないことを前提に任意に行われているものであることが確認された。
      したがって、関係者から事情聴取した事件の概要、経緯等が公にされることにより、関係当事者間の信頼関係、協力関係が損われるおそれがあると認められる。
      そして、このような調査においては、関係者からの事情聴取が情報を得る手段として非常に重要なものとなっていると考えられること、また、懲戒処分等を行うにあたっての検討事項等については、懲戒処分等を公正に行うため、秘密を前提に記載されるのが通常であると考えられることから、公にされることとなれば、関係者が報告を躊躇したり、調査に対し十分な協力をしなくなること等が考えられ、公正かつ円滑な人事の確保に支障を及ぼすおそれがあると認められる。
      よって、調査報告書は、条例第7条第4号に該当すると判断される。
      また、調査報告書は、人事管理に係る事務に関するものであるとともに、処分当事者やその関係者の所属、氏名、経歴等が全体にわたって記載されていることから、条例第7条第1号本文に該当する個人情報とも言える。
      異議申立人は、調査関係書類を公にし、調査・対応が適切に行われているか検証されることが事件の再発防止につながること、また、調査報告書の中には条例第7条第1号及び同条第4号に該当して公開できない部分があるにしても、それを除いた残りの情報というのは有意の情報であるのだから一部公開すべきこと等主張しているが、行政文書5で判断したと同様の理由で、条例第7条1号ただし書に該当しないと判断されるとともに、全体にわたって事件関係者の権利利益に関わる情報が記載されていることから、条例第8条第2項の規定による一部公開はできないものと判断される。
      以上により、調査報告書については、条例第7条第4号に該当するとともに、条例第7条第1号本文に該当し、ただし書に該当しないと判断される。
      なお、異議申立人は、調査報告書はその全体が非公開であるのに、一部公開決定の中に含めるのは事務手続きにおいて不適切であり、非公開決定に含めるべきである旨述べている。事務処理の統一的な取扱いを定める香川県情報公開条例事務取扱要領は、「文書、図画又は写真については、事務決定手続を一にするもののほか、合理性、関連性のあるものとしてひとつにまとめて保有しているもの等を1件とする」旨規定しており、本件処分2では、懲戒処分ごとにその一連の行政文書を1件の行政文書として特定し、公開・非公開を判断しているところであり、1件の行政文書の中に全体が非公開となる文書が含まれているとしても、公開請求に係る行政文書の一部を公開するときに該当し、一部公開としたことは適当であると判断される。
    • (b)別表3の公開しない部分のうち、2の(a)~(f)について
      • ア 懲戒処分を受けた者の所属・職名・氏名・年齢・性別、事件発生の年月日、場所及び事件関係者の所属・年齢について
        当該非公開部分は、個人に関する情報で特定の個人を識別し得るものであり、また、公にすることにより個人の権利利益を害するおそれがあると認められ、条例第7条第1号本文に該当すると判断される。
        しかし、これらの情報は、行政文書7の(c)、7の(d)、8の(d)、8の(e)、10(g)及び10の(h)の記者発表資料及びホームページ掲載用資料により、懲戒処分決定時に記者発表し、既に公表されている情報であると認められることから、同号ただし書イに該当し、公開すべき情報であると考えられる。
        この点について、実施機関に説明を求めたところ、「懲戒処分等の公表基準」により免職の懲戒処分である場合と被処分者が管理職である場合は被処分者の所属及び氏名を明らかにして処分の概要等を公表しているが、当該事案はセクシャル・ハラスメントというセンシティブな内容であることから、被害者等の個人が特定されないよう配慮を依頼した上での情報提供であったとの説明があり、通常の記者発表とは性格が異なることが認められ、当該情報が、公表済み情報であるとまでは言えず、同号ただし書イには該当しないと判断される。
        また、ただし書ロ~ニについては、審査会で当該文書の内容を見分したが、これらの規定に該当する情報は記録されていないと認められる。
        したがって、当該情報は、条例第7条第1号本文に該当し、ただし書に該当しないと判断される。
      • イ 上記ア以外の非公開情報について
        当該非公開部分は、いずれも個人に関する情報で特定の個人を識別し得るものであり、また、公にすることにより個人の権利利益を害するおそれがあると認められ、条例第7条第1号本文に該当し、ただし書に該当しないと判断される。
    • (c)別表3の公開しない部分のうち、2の(g)について
      当該非公開部分には、教育委員会定例会で発言した委員の氏名の頭文字が記載されている。
      議事に関する意見や考え方を述べた発言者が誰であるかがわかる情報が公開されると、別表3の公開しない部分のうち2の(a)~(f)の情報を除き、議事内容は、本件処分2により既に公開されていることから、当該発言内容について個々の委員が外部からの圧力や干渉等の影響を受けるおそれ等があると推認される。
      その結果、率直な意見交換又は意思決定の中立性が損なわれるおそれがあり、今後の香川県教育委員会の公正かつ円滑な議事運営の確保に支障を及ぼすおそれがあると認められる。
      よって、条例第7条第4号に該当すると判断される。

4 その他

異議申立人は、その他種々主張するが、いずれも当審査会の上記判断を左右するものではない。よって、当審査会は、「第1 審査会の結論」のとおり判断する。
(省略)

別表1

  1. 『「学校でのセクハラ・体罰110番」に寄せられた情報についての県教委の調査の問題点に関する要望と公開質問状』(2001年2月9日付)
  2. 『第5回「学校でのセクハラ・体罰110番」開設報道のお願い』(2005年11月2日付)
  3. 「中学教員による強制わいせつ容疑事件に関する要望及び公開質問状」(2005年11月4日付)
  4. 平成12年12月28日から平成13年6月8日までに提出された「学校でのセクハラ・体罰110番」、「セクシャル・ハラスメント事件」に関する要望書(県内中学校顧問による2件のセクシャル・ハラスメント事件に関するものに限る。ただし、『「学校でのセクハラ・体罰110番」に寄せられた情報についての県教委の調査の問題点に関する要望と公開質問状』を除く。)
  5. 香川県教育委員会が行った「学校でのセクハラ・体罰110番」に関する調査結果(県内中学校顧問による2件のセクシャル・ハラスメント事件に関するものに限る。)
  6. 事件の処分等の照会について(回答)(平成17年11月11日付)
  7. 平成13年7月19日付県立学校教職員の懲戒処分に係る以下の行政文書
    • (a)県立学校教職員の懲戒処分等について(平成13年7月19日付)
    • (b)平成13年度香川県教育委員会7月定例会議事録
    • (c)記者発表資料(平成13年7月19日付)
    • (d)県政電子ニュース登録用資料
    • (e)解雇予告除外認定申請書について(平成13年7月13日付)
  8. 平成15年2月28日付県立学校教職員の懲戒処分に係る以下の行政文書
    • (a)県立学校教職員の懲戒処分について(平成15年2月28日付)
    • (b)平成14年度香川県教育委員会2月定例会議事録
    • (c)学校事故報告書(平成15年2月17日付)
    • (d)記者発表資料(平成15年2月28日付)
    • (e)教育委員会結果概要及び香川県情報NAVI用資料
    • (f)解雇予告除外認定申請書について(平成15年2月18日付)
  9. 平成16年3月25日付県立学校職員に対する服務監督上の措置に係る以下の行政文書
    • (a)県立学校職員に対する服務監督上の措置について(平成16年3月25日付)
    • (b)整理資料No.1-6
    • (c)状況資料(持参資料)
    • (d)報告書No.1-4
    • (e)要望書No.1・2
  10. 平成17年11月22日付県費負担教職員の懲戒処分に係る以下の行政文書
    • (a)県費負担教職員の懲戒処分等について(平成17年11月22日付)
    • (b)平成17年香川県教育委員会11月定例会会議録
    • (c)県費負担教職員の処分について(進達)(平成17年11月18日付)
    • (d)教員の強制わいせつ事件について(進達)(平成17年11月18日付)
    • (e)教職員の強制わいせつについて(副申)(平成17年10月24日付)
    • (f)学校事故報告書(職員事故)(平成17年10月24日付)
    • (g)記者発表資料(平成17年11月22日付)
    • (h)教育委員会結果概要及び香川県情報NAVI用資料
    • (i)解雇予告除外認定申請書について(平成17年11月17日付)
    • (j)解雇予告除外認定申請について(進達)(平成17年11月18日付)
    • (k)県費負担教職員の分限処分について(平成17年11月12日付)
    • (l)起訴事実要旨照会書について(平成17年11月9日付)

別表2

公開しない部分 公開しない理由
行政文書4及び行政文書5
  • 条例第7条第1号該当
    特定の個人を識別できるもの、及び特定個人を識別することはできないが、公にすることにより、なお、個人の権利利益を害するおそれがある情報が含まれているため。
  • 条例第7条第4号該当
    関係者しか知り得ない当該事故に関する詳細な情報及び教職員の人事管理に関する情報が記載されており、今後の学校教育活動に支障をきたすおそれがあるとともに、人事管理に関する事務若しくは、将来の同種の事務事業の公正かつ円滑な執行に支障を及ぼすおそれがあるため。
行政文書6
  • 条例第28条第1項該当
    刑事訴訟法第53条の2の「訴訟に関する書類」に該当し、条例の適用除外となるため。

別表3

公開しない部分 公開しない理由
1
  • 行政文書7のうち、調査報告書
  • 行政文書8のうち、調査報告書
  • 行政文書10のうち、調査報告書
  • 条例第7条第4号該当
関係者しか知り得ない当該事案に関する調査情報及び教職員の人事管理に関する情報等が記載されており、公開することにより、関係者との信頼関係が損なわれ、今後の学校教育活動に支障をきたすおそれがあるとともに、人事管理に関する事務若しくは、将来の同種の事務事業の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあるため。

2 公開請求に係る行政文書のうち、次の部分(公開部分を除く。)

  • (a)教員及び関係者に係る役職名、氏名、年齢、性別、住所、部・学年組、所属部・学科、分掌名、担任をしている学年・組、教科、部活動、所属学校を設置している市町の別、被害の程度など、個人が特定され、または個人の権利利益を害する部分
  • (b)関係する年月日、曜日、時刻、校時など、日時が特定される部分
  • (c)個人及び学校の特定につながる場所の所在地・住所など
  • (d)警察署、病院等の名称及び所在地等に関する情報で、個人や学校の特定につながる部分
  • (e)事実関係、状況等のうち、個人及び学校の特定につながる部分、個人の権利利益を害することにつながる部分及び任意の協力に基づく調査等に関する情報、または人事管理に関する情報
  • (f)文書番号、校長の所属・氏名・公印の印影、市町教育員会の名称・公印の印影・文書番号、市町教育委員会教育長の氏名及び教育事務所名など、学校の特定につながる部分
  • 条例第7条第1号該当
    特定の個人を識別することができる情報又は特定の個人を識別することはできないが、公にすることにより、なお個人の権利利益を害するおそれがある情報であるため。
  • 条例第7条第4号該当
    関係者しか知り得ない当該事案に関する調査情報及び教職員の人事管理に関する情報等が記載されており、公開することにより、関係者との信頼関係が損なわれ、今後の学校教育活動に支障をきたすおそれがあるとともに、人事管理に関する事務若しくは、将来の同種の事務事業の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあるため。
  • (g)発言した委員がわかる部分
  • 条例第7条第4号該当
委員の率直な意見の交換が損なわれるおそれがあるなど、審議に支障を及ぼすおそれがあるため。

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