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1月28日(水曜日)に讃岐国府跡調査指導専門委員会が開かれ、調査委員会の委員と、坂出市教育委員会文化財担当者、埋文センター国府調査担当者など関係者が集まりました。
まず、調査現場の視察から始まりました。11月から始まった調査も3か月が終了し、ほぼ今年度の成果がまとまった頃で、調査委員会の委員からのご意見、ご指導をいただきました。全国の国府や郡衙(ぐんが 国の下に置かれた郡を統括する役所)などの官衙(かんが)の調査例を引きながら、現在調査中の建物跡や柵列跡、溝跡などは国府の中でどのような役割を考えられるのか、活発な意見交換もありました。
視察の後の会合では、調査成果の検討に加え、今後の調査の進め方についても話し合いました。
調査指導専門委員会の指導を受けて、今年度の調査の成果をまとめ、現地説明会の準備をピッチを上げて進めていきます。現地説明会では皆様のお越しをお待ちしています。(1月30日)
現地での調査指導
現在、讃岐国府跡の調査を進めていますが、調査で見つかっているのは国府の時代のものばかりではありません。
国府が設置された奈良・平安時代の建物跡や柵列跡などはおおむね周辺の地割と同じ方向を向いていますが、その中に真北を向く建物跡が1棟見つかりました。平成23年度の調査で真北を向く大型建物が見つかっていますが、おそらくこれとほぼ同時期で、国府が設置される直前の7世紀後半~8世紀初頭頃の建物と考えられます。この頃は、国府の西側にそびえる城山に古代山城が築かれた時期でもあります。真北を向く建物がどのような性質のものか、今後の検討課題です。
さらに今回の調査では、竪穴建物が数棟見つかりました。いずれも7世紀前半~中頃の方形の竪穴建物で、作り付けのカマドが確認できるものもあります。この場所が公的な性格を帯びた建物群以前の人々の暮らしぶりの一端を示す貴重な成果となりました。(1月30日)
10世紀の大型土坑(どこう)を掘り下げたのちに見えてきた竪穴建物
竪穴建物から見つかった須恵器
新年は1月5日から調査を再開しました。寒い日、風の強い日もありますが、現場では旧年中に引き続き熱い調査が繰り広げられています。
現在、調査を行っている最も広い調査区では、旧年中から大きな柱穴跡が多く見つかっていましたが、これらの柱穴跡の配置を確認し、大型建物の位置や大きさをより明らかにするため、調査区の西側を用地内ぎりぎりまで掘り広げ調査を進めています。柱穴跡を見分けにくい土、重なる柱穴跡も相変わらずで、2人の調査担当者が時には白熱した議論を戦わせながら調査を進めていますが、調査担当者をはじめ発掘作業員や国府ボランティアの日々の苦労と努力、埋文センターの他の職員や調査委員会のメンバーなど外部の先生方の助言もあり、調査は少しずつ前進しているといえます。2月中旬頃に予定している現地説明会に向け、調査を進める日々です。(1月16日)
並ぶ大型の柱穴跡。センター職員や外部の先生も現場の様子をまめに見に来ます。
柱穴からは土器や瓦が出土することも
冬休み初日、クリスマスの12月25日に小学校高学年~中学生を対象に「もっと知りたい!讃岐国府」を開催しました。讃岐国府跡で発掘体験をし、その後国府跡から出土した遺物をじっくり手に取って観察するもので、発掘調査と出土遺物から讃岐国府について知ってもらおうと企画しました。
発掘体験では、讃岐国府跡の発掘調査で現在どんなものが見つかっているか調査担当職員から説明を受けてから、実際に道具をもって発掘調査をしました。まずはガリカケで柱穴跡を見つける体験。地面の表面を薄く平らに削って柱穴跡などを見つける大事な作業です。ガリカケで土質や色調の差から柱穴跡を見つけることができたでしょうか。そして、土器を含む包含層の掘り下げ。少し掘り進むと土器や瓦が続々と顔を出し、そのたびに参加者は担当職員に「これ、土器?」とうれしそうに差し出していました。初めての発掘で土器や瓦がたくさん見つかって大満足の様子でした。
1時間ほど発掘体験をしたのちには、埋文センターへ戻って、過去に讃岐国府跡の調査で出土した土器や瓦、硯などいろいろな遺物を手に取って観察しました。国府跡からは、日常で使う食器以外に、緑色の釉をかけた京都や滋賀でつくられた緑釉陶器、国府で働く役人が使ったであろう硯、建物に葺かれる大量の瓦類など、国府跡に特徴的な遺物も多く出土します。参加者は先を争うように手に取って、目で見るだけでなく感触や重さを確かめていました。最後に、1月から開催する「讃岐国府跡を探る 6」で展示する土器や瓦、硯などを手に取って見学しました。
少し風が強く寒かったですが、寒さに負けずに発掘して、初めて土器を手にしたときのうれしかった気持ちを忘れないでほしいと思います。また、展示室で手に取った土器や瓦は、年明けから展示ケースの中で皆様のお越しをお待ちしています。展示ケースに収まった土器や瓦もぜひ見に来てほしいと思います。そして、これからも発掘や讃岐国府に興味をもってほしいです。(12月26日)
まずは現場の説明から。大きな柱穴が並んでいます。
柱穴跡を見つける作業に挑戦。わかるかな?
12月19日に讃岐国府跡で職員の現地研修を行いました。ここ数日の悪天候や寒波で、養生シートの上には水がたまったり氷が張ったりして、養生シートをめくるのも大変な作業でしたが、現場作業員さんや国府ボランティアさんのおかげで、現地研修がスムーズに進みました。
現在調査中の4か所の調査区について、調査担当者からの現在の調査状況のくわしい説明を受けながら、センター専門職員が集まり、実際に現場の状況を見て、活発な質疑応答や意見交換を行いました。
讃岐国府跡の調査は、香川県の古代史を探るうえでとても重要な調査です。センターの職員は、それぞれ時間をとって讃岐国府の現場へ足を運んでいますが、一堂に会する現地研修が、センターの職員が共通した認識や理解を持つ機会になっています。(12月22日)
近くの池もこのとおり!一面に氷が・・
この調査区では、平成24年度に見つかった北側の一本柱塀の延長と考えられる部分が見つかりました。
周辺の地割と同じ方向に柱穴が並んでいます。瓦を捨てたゴミ捨て穴も見つかりました。
一番広い調査区。ここでも周辺の地割と同じ方向に柱穴が並んで見つかりました。
調査が始まって一月あまりが過ぎ、調査も佳境に入ってきました。柱穴があるのかないのか、見極めが難しい地面と格闘しながらガリカケ(柱穴などを探すため、土の上面を薄くきれいに削る作業)にガリカケを重ねて柱穴を探し出します。これまでに円形や大型の隅丸方形の柱穴がいくつも見つかり、中には規則的に並ぶものもみられます。古代の土器や瓦も日々多量に出土しています。
柱穴には形(円形、隅丸方形など)や方向(隅丸方形の場合、1辺が周辺の条里地割を向くもの、正方位を向くものなど)、土質・色調の差や、出土する遺物の時期の違いなどいろいろな違いがあります。中には時期が違う柱穴が重なっているため、円形や隅丸方形の柱穴が連結したような形で見つかることもあります。柱穴が見つかれば遺構配置図を作成し、似た個性を持つ柱穴を拾い出し、組み合わせて、どのくらいの規模の建物が何棟建つのか慎重に検討し、併せて出土遺物を検討しながら時期を知る手がかりとします。
見つかっている柱穴を組み合わせてどのような建物があったのか、現在検討の真っ最中です。遺構配置図を検討しながら建物を構成する柱穴を探し出し、また見落としている可能性のある柱穴があればさらにガリカケ作業をします。讃岐国府跡の現場では地面と格闘する毎日が続いています。(12月18日)
柱穴はここか!
軒丸瓦が出土
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